夢の花

互いを見つめる二人の晴れやかな笑顔。
二人がこれまで共に過ごした時間は夢だったのだと。
二人がこれから共に過ごす時間は夢の中でしかないのだと。
けれど、その夢は何よりも自由で甘やかなのだと。
だからこそ、現実の孤独を未来への光に変えていけるのだと―――
そう約束する、夢の、花。


「レディ・ベス」

2015.11.12 マチネ 帝国劇場 2階B列30番台

出演:花總まり、加藤和樹、吉沢梨絵、古川雄大、和音美桜、吉野圭吾、石川禅、涼風真世、
    山口祐一郎、大谷美智浩、中山昇、加藤潤一、寺元健一郎、石川新太、秋園美緒、
    池谷祐子、石原絵里、樺島麻美、島田彩、真記子、安岡千夏、山田裕美子、吉田萌美、
    朝隈濯朗、石川剛、榎本成志、奥山寛、川口大地、黒沼亮、後藤晋彦、竹内耕、
    田中秀哉、福永悠二、港幸樹、山名孝幸、Christopher、山田樺音、桑原愛佳


というわけで、「レディ・ベス」再演を観てきました。
3年前の初演の時は、思いがけずに嵌ってしまい、名古屋公演まで見にいちゃったこの舞台。
今回は諸々の事情で1回きりの観劇だったのですが、個人的にベストな組み合わせv
というか、確かこの組み合わせで土日って1回きりしかなかったので、チケットとれてほんとに良かった!

再演に当たっていろいろ変更があるみたい、というのはそこここで漏れ聞いてはいたのですが、
冒頭とラストの変更にはかなり驚いてしまいました。
なんというか、全然違う物語になってた気がする・・・
これは1回の観劇では、自分の中にすっきり落とし込むのは難しいなあ、と。
とはいえもう観に行く機会はないので、ひとまず今日受け取った役者さんの印象を。

花總さんのベスは、初演よりも少女っぽさが増した感じかな。
最初から女王としての器がある程度満たされていると感じた初演とは異なり、
「偉大なる父ヘンリー8世の娘」であることに縋りついているような頼りなさを感じました。
その根本にあるのは、多分母アン・ブーリンへのわだかまりで。
そういう意味では、この物語はベスがアンを理解して受け入れる物語でもあったような気がします。
アスカム先生寄りというよりもアン寄りというか。
だから、ロビンとの関係性も、もの凄く素直というか理性よりも感情!という印象でした。
この流れならロビンと旅立っちゃってもいいんじゃないかな、と一瞬思うくらい。
なので、ロビンとの再会から、女王と呼ばれ、そしてロビンにイモーテルを渡して立ち去るまでの流れが、
なんだか凄く唐突に感じられました。
いや、ベスの迷いも苦悩もロビンへの愛情も自由への希求も、ちゃんと感じられるんですよ。
義務を果たすべきだと言うベスも、それでもロビンの温もりを求めてしまうベスも、どちらも彼女の中にある。
なのに、その天秤がいきなりスパッと女王になることに傾いて、
そのことを潔いというにはあまりにもあっさりと受け入れてしまったように思いました。
まるで、それまでのロビンとの時間は、手にできたかもしれないロビンとの未来は全て夢で、
その夢から覚めてしまったみたいに。
どのタイミングでベスが一人の女である自分よりも、民衆の女王である自分を選んだのか。
それを私ははっきりと理解することはできなかったけれど、
一つはロビンが跪いた瞬間だったんじゃないかな、と思う。

加藤くんのロビンは、初演よりも政治的なことを理解しているロビンに見えました。
初演の時に感じた素直さやまっすぐさよりも、思慮深さのようなものを感じた。
そんな彼が、ベスに出会い、興味を持ち、心惹かれて、愛を誓う―――
彼女が心のままに生きることを誰よりも望んだロビン。
未来の女王としてのレディ・ベスにとって、自分は足かせにしかならなくても、
一人のお女であるベスと共になら、自由な未来を歩むことができると信じたロビン。
女王陛下、と呼ばれたベスに背を向けて空を仰いだその表情と、
振り返りゆっくりと跪いたその横顔に、なんだかはっとする思いでした。
その後のベスの歌(♪闇を恐れずに)は、まさに夢の終わりを告げる歌だったように思います。
そして、覚めてしまったその夢の証を―――イモーテルの花を、彼女はロビンに渡したんだな、と。

戴冠式で目を合わせたクイーン・エリザベスと流れ者のロビンは、どちらも晴れやかな笑顔だった。
全てが美しい夢だったと確認し合うような、覚めてしまった夢を懐かしむような、
未来へは決して続いて行かない笑顔。
晴れやかなその光景は、けれど、エリザベスが向かう玉座へと続いていて―――
ラストシーンのあの孤独な静寂に、初演では感じたことない冷酷さを感じてしまいました。


メアリー役、吉沢さん。
ギリギリのところで踏みとどまって頑張っている懸命さと余裕のなさが、
なんだかとっても切ないメアリーでした。
たぶん、冒頭の子役が出てくるシーンの影響なんだろうなあ。
ヘンリー8世が十字架を投げ捨て、メアリー親子を切り捨てて笑顔でベスを抱き上げるシーンとか、
そうやって自分から全てを奪った女が、首切り役人に斬首されるのを見てしまう幼いメアリーとか、
なんだかもう冒頭から見ているのが辛かったです。
これは、メアリーにとって凄いトラウマになるだろうし、
自分を脅かす全てを燃やし尽くす激しさは、
自分を苛む恐怖を克服するための縋りつくような決断だったんだろうな、と思う。
そんなメアリーを食い物にするルナールに、ちょっと怒りを覚えたよね(笑)。

終盤、ベスとメアリーが寄り添うシーンは、初演でも好きなシーンだったのだけれど、
今回は冒頭の子どもの頃の二人の姿が思い浮かんで、更にやるせない気持ちになりました。
ベスはアンに囚われ、メアリーはヘンリーに囚われて、それぞれ孤独の中にあった。
その孤独な魂が、それぞれの孤独を知り、歩み寄り手を取り寄り添って―――
けれど、それぞれの譲れないもののためにまた離れていく。
この二人が、幸せな姉妹として笑いあう、そんな幸せなシーンを夢想したくなりました。

和音さんのアンは、守護霊感というか怨霊感というか、なんというかもろもろ強くなってた気がします・・・
そのアンに、夢の中とはいえがっつり同じ土俵で対峙できる山口さんのアスカム先生も強かった(笑)。
でも、一番強いなあ、と思ったのは涼風さんのキャットでした。
「曲者ですか?!」の声がめっちゃ凛々しくて、ちょっとどうしようかと思った(^^;)
彼女が仕えていたのは、一人の少女としてのベスだったのか、女王となる運命にあるレディ・ベスだったのか。
その解釈次第で、キャットの存在もかなり違うものになるなあ、と思いました。

スペイン主従は、お互いに相手を出し抜こうとしているちょっとヒリヒリした関係性が、
思いがけず物語の中の癒しになってた気がします(笑)。
主従それぞれがお互いに嫌味を言うシーンとか、ちょっと笑ってしまった。
古川くんのフェリペは、策士っぽいというよりも、真正面から国の未来を憂いている、
ちょっと悪ぶってるけど実は真面目な王子、という印象でした。
「王国の子」のフェリペのイメージを重ねちゃったからかなあ。
まあ、メアリーに対しては完全にビジネスライクでしたが・・・
いやでも、最後までメアリーを騙し続けてくれたなら、それも優しさだったのかな(^^;)
吉野さんのルナールは、あの動きの一つ一つに意味があるのではと深読みしたくなる存在感がさすがでした。

癒しと言えば、もちろん吟遊詩人な3人も!
3人とも本当にいい声をしているので、もっとたくさん歌ってほしかったなー。
とりあえず、加藤くんは腰に気をつけてくださいねー(笑)。
いくらうまくバランスとってるとはいえ、あの斜めの舞台で男性二人の体重支えるのはきついと思うのよ(^^;)


今回は2階席からの観劇だったのですが、この舞台のセットはやっぱりほんとに綺麗だなあ、と思います。
アスカム先生が言うところの科学である占星術。
でも、それって逆から言えば、人は星に支配されている、ということなんだよね。
そんな逃れられない閉塞感も、今回はこの舞台セットから感じてしまいました。

・・・やっぱりいろいろ中途半端な感想になっちゃったなあ。
いろいろ疑問やもやもや感が残りはしましたが、でも個人的に大好きなミュージカルなので、
また機会があればぜひ観に行きたいと思います。
その時も花總さん、続投してくれるといいなあ・・・!

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