ボーダーレス

この物語を初めて舞台で観たのは、サントリーホール、市村さんの一人舞台でした。
まだこのブログを始める前だったので、記録もしていなくて記憶が曖昧なのですが、
歌を交えた変幻自在な市村さんのペールの、魂の救済の物語だと思ったような思わなかったような(^^;)
そして、今回。
浦井くんが創り上げたペールを観てきました。


「ペール・ギュント」

2017.12.23 マチネ 世田谷パブリックシアター 2階B列30番台

原作:ヘンリック・イプセン
上演台本・演出:ヤン ジョンウン
出演:浦井健治、マルシア、趣里、浅野雅博、万里紗、チョウ ヨンホ、莉奈、梅村綾子、辻田暁、
    岡崎さつき、ユン ダギョン、石橋徹郎、キム ボムジン、ソ ドンオ、イ ファジョン、碓井将太、
    いわいのふ健、今津雅晴、キム テジン、古河耕史、
演奏:国広和毅、関根真理


ノルウェーの民話やおとぎ話をモチーフにして作られたというこの戯曲。
夢見がちな青年、ペールが世界を彷徨う物語です。
観ているうちに、そう言えばこういうお話だったなあ、と思いだしたりもしたのですが、
当然のことながら、市村さんの舞台とは全く違っていました。
何というか、凄く不思議な舞台でした。
ボーダーレス、というのかな?
夢と現実。
過去と現在と未来。
人間と異形。
罪と正義。
母と子。
絶望と恍惚。
静寂と騒音。
精神と肉体。
そういったものの境界が、凄く曖昧で、
観ながら、自分が今この物語のどこで何を観ているのか、ちょっとわからなくなる瞬間がありました。
観念的というか感覚的なものを、限りなく肉体的に表現している・・・そのどこか捻じれた印象が、
個人的に“不思議”という印象になったのかもしれません。
そもそも、日本語と韓国語で会話が成立しちゃってましたからね。
国境すらボーダーレスな感じなのかなあ。
大まかに言えば、ペールを旅へと誘う、あるいは排除しようとする存在が韓国語で、
ペールを繋ぎ止め、待ち続ける存在が日本語だったのかな?
いや、そんな単純なことじゃないか。

正直なことを言ってしまえば、たぶん、私はこの舞台をちゃんとは理解できていない。
というか、更に正直に言ってしまうと、
観ている間中、どうしてこんな表現になるのか疑問符が頭を飛び交っていたし、
登場人物の誰にも共感することができなかった。
はっとするほど美しい瞬間もあれば、
目を背けたくなる醜悪な瞬間もあり、
美しいのに恐ろしい場面も、
一瞬の静寂に戦慄する場面も、
迫りくる音と闇に押しつぶされ、耐えられない!と思った場面も
柔らかく差し込む光にふっと気持ちが緩む瞬間もあった。
・・・ああ、これってもしかしたら、人生そのものなのかもしれないなあ。

でもね、そんな風にぐちゃぐちゃになっていた思考や疑問が、
最後のマルシアさん演じるオーセの歌声で、
言葉は悪いけど、もうどうでもいいや!という気持ちになりました。
そのくらい、あの歌声は全てを捕え、浄化し、生まれ変わらせる力に満ちていたように思います。
うん。
最後、白い光の中、胎児のように丸まったペールが還る場所はあそこだったんだね。

浦井くんのペール。
何が彼をあそこまで駆り立てたのか、とても気になりました。
最初の方に出てきた、「空を飛んでみせる」という言葉が、凄く象徴的だったなあ、と。
多分彼は常に何かに向かって飛び立っていたい人で、
そして、飛んでいる間に、自分が何故飛んでいるのか、
どこへ飛んでいくのかわからなくなっちゃう人なんだろうな。
そんな彼を繋ぎ止めていたのが、母・オーセという存在だったのかな。
母の死の前後では、彼の笑顔の質や、彼の行動の根本が全く違ってしまったように思いました。
というか、その前のトロールの姫(ユン ダギョン)とその息子(ソ ドンオ)の関係性が、
彼の中に眠っていた記憶を呼び起こしたのかな、とも思ったり。
とりあえず、とんでもない酷い男だったけど、それでも二人の女に夢を見せ続けられたのは、
彼の持つ力なんだろうなあ。
そういえば、プログラムの表紙裏にある台詞。
もっと高らかに誇らしげに語られるのかと思ったら、
自分に問いかけるような、言い聞かせるような、どこか弱々しさと偏執さの感じられる響きで、
それもちょっとびっくりしました。

ソールヴェイ役の趣里ちゃんは「アルカディア」以来かな?
細く長い手足と華奢な体で軽やかに舞う姿がとても素敵でしたv
台詞ではなく佇まいで彼女の在り方を見せてくれたように思います。
彼女がペールの何に惹かれ、何を夢見て、何を信じたのかはわからない。
もしかしたら、彼女はペールを“理由”にしただけなのかもしれない。
ペールが彷徨している間の彼女のことは一切描かれないけれど、
最後、ソールヴェイの言葉と、オーセの歌声が重なるシーンには、ちょっと鳥肌が立ちました。

鳥肌が立ったと言えば、音楽!
ギターとパーカッションが主だったと思うのですが(というか演奏者二人ですし)、
マリンバとかオルガンとかの音も聞こえていたし、
いろんなジャンルの音楽をこれでもか!という感じで投入してきて、
とても二人とは思えない音楽でした。
トロールのシーンのヘヴィメタにはちょっと度肝を抜かれたんですが、あれ、生歌でしたよね?
カーテンコールの曲も、思いっきりロックな感じで、ちょっとそれに救われた感じも?(笑)
上手席だったので、演奏の姿があまり見えなかったのが残念でした。

そのほかの役者さんも、いろいろな役を演じてらっしゃって、それぞれに濃かったです(笑)。
ペールの旅路の景色の一つ、という感じで、その瞬間には鮮やかなのに、
次の瞬間には遠く色褪せてしまう感じの目まぐるしさに、かなり翻弄されましたが。

かなり端折った観劇記録になっちゃってすみません(^^;)
きっとこの舞台は考えても考えても答えにはたどり着かないだろうなあ、と思って。
まあ、たまにはこういう観劇も刺激的で面白いかな。

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