夢の残滓

彼女が撃ち抜いた夢の残滓。

それがきっと、新しい未来の始まり。


劇団☆新感線『修羅天魔 ~髑髏城の七人 Season極』

2018.5.12 マチネ IHIステージアラウンド東京 22列一桁台

出演:天海祐希、福士誠治、竜星涼、清水くるみ、三宅弘城、山本亨、梶原善、古田新太、
    右近健一、河野まさと、逆木圭一郎、村木よし子、吉田メタル、保坂エマ、川原正嗣、原慎一郎、
    武田浩二、加藤学、川島弘之、南誉士広、熊倉功、縄田雄哉、藤田修平、北川裕貴、穴沢裕介、
    生尾佳子、小川慧、上垣内平、小坂真奈美、鈴木智久、鈴木奈苗、田代絵麻、鉢嶺杏奈、
    森加織、渡部又吁


物語の舞台は、本能寺の変から八年後の関東平野。
髑髏党に追われる狭霧(清水くるみ)と、関東荒武者隊を率いる兵庫(福士誠治)は、
危ないところをどこからか放たれた銃弾に救われます。
その弾丸を撃ったのは、流しの遊女・極楽太夫(天海祐希)でした。
兵庫が二人を案内したのは、無界の里。
里を率いるのは、男でありながら般若太夫として名を馳せる夢三郎(竜星涼)。
その里で、しばらくの間滞在することにした極楽の前に客として現れたのは、
狸穴二郎衛門を名乗る男―――徳川家康。
かつて信長の命を狙った極楽―――雑賀のお蘭が、信長に夢を託す瞬間に立ち会った男でした。
髑髏城を率いる天魔王が、信長を陥れた影武者である可能性を告げた家康は、
極楽に一つの依頼をします。
―――天魔王の暗殺。
用心棒として家康がつけた清十郎(川原正嗣)と共に天魔王を狙った極楽が目にした天魔王の素顔は―――


という感じの物語。
これまでの「髑髏城の七人」とは全く違う、けれど、ドクロイヤーを締めくくるにふさわしく、
そして、次の七人に繋がる物語だと思いました。

1幕は、あの役のあの部分がこの役で、この役のあそこがああなって・・・と、
これまでの物語と比べながら、その違いや共通点を興味深く観ていて、
でも、きっと2幕では諸々裏切られるんだろうなあ、と楽しみにしていたのですが、
まさにその違いを裏切らない感じでした。
あ、なんかこれ、三五っぽい(笑)。
とはいえ、怒涛の情報量だったので、全部を受け止めることはできず・・・
もう1回くらい観たかったなー・
時間も経ってしまったので、ちょっと記憶が曖昧で、もしかすると勘違い思い違いなことも書くかもですが、
どうぞご容赦くださいませ。


極楽太夫/雑賀のお蘭役、天海祐希さん。
めっちゃかっこよかったです!!
着流し姿があんなにも似合う女性はめったにいないだろうなあ。
もちろん太夫の顔見世シーンの花魁姿もお美しかったのですが、
シンプルな白い着物で舞台の中央に立つ姿に、思わず見惚れてしまいました。
タイトルが出るときの、雨の中の瞬間もですが、
1幕ラスト、赤い彼岸花の中の姿には本当の惚れ惚れしました。
というか、これまで(花と月しか見ていませんが)の彼岸花が白かったのに、
今回の彼岸花が赤いということに、全然違和感がなかった。
纏う色は白だけど、彼女の中の熱情は、まさにあの彼岸花の赤なんだろうな、と思った。

全てを賭けて共に在ろうとした織田信長。
信長を破滅に導いた影武者である男―――天魔王は、けれど信長と同じ顔をしていた。
そして、彼が告げた“真実”―――真の信長は彼女の最初の銃弾に斃れ、
その後彼女が出会い心を交わした“信長”は、既に影武者であるこの男だったということ。

何が真実で、何が嘘なのか。
わからないままに惑い混乱する極楽は、けれど、
天魔王とその息子・伐折羅の夢虎―――夢三郎による無界の里の虐殺を前に、
兵庫たちと天魔王を倒すために髑髏城に向かうのだけれど・・・
その時点では、もう彼女の中には何の迷いもないように見えたのね。
自分の惑いが、無界の里を―――無辜の人々を死に追いやった。
その事実を真正面から受け止めて、狭霧たちと共に髑髏城を打ち壊した彼女は、“極楽太夫”だった。

でも。
家康の陣を襲った天魔王に立ちふさがった彼女は、極楽太夫ではなかった。
“信長”と共に在り、
“信長”を愛し、
“信長”を守り、
けれど、“信長”を助けることのできなかった、
雑賀のお蘭という一人の女だった。

古田さんの天魔王は、なんというか、とても凪いだ存在だな、と思いました。
相変わらずのいい声も、殺陣の時の隙のない存在感も、他者に対する容赦のなさも、
もちろん全てが鮮やかで苛烈なのだけれど、私にはとても凪いでいるように見えました。
彼が、信長として生きてきた影武者だったのか、
自らが生き延びるために、影武者として生きてきた本当の信長なのかは、私にはわかりません。
極楽―――お蘭が、最後に彼に突きつけた条件も、何が正解だったのかはわからない。
真実、“信長”はあんなふうに彼女には触れなかったのかもしれない。
でも、あの瞬間の彼女の表情―――きつく目を閉じ、何かを深く呑みこむかのような表情を見た時、
私の中には、一つの答えがあった。
彼は、ああいうふうに彼女に触れたことのある、真実の信長なのだと。
そして、そうであっても、お蘭―――極楽は、彼が“信長”ではないと判断したのだと。
今のこの男は、自分が愛した男ではない。
この男は、既に覚めてしまった夢の残滓でしかないのだと。
そして、男は、彼女のその結論を、ただ凪いだ心で受け止めた。

余りにあっけない天魔王の最期を見ながら、なんだか呆然とそんなことを考えていました。

この物語では、“夢”という言葉がとても印象的に使われていました。
これまでの髑髏城で、天魔王が蘭兵衛に飲ませた夢見酒が、今回は出てきません。
極楽―――お蘭は、けれど、長い長い夢の残滓に囚われていたのではないのかと思う。
男を殺し、家康と別れた後、極楽は一人空を見て立ち尽くします。
その彼女の後ろには、いくつもの光景が流れていった。

天魔王が築き上げた髑髏城。
贋鉄斉(逆木圭一郎)とカンテツ(三宅弘城)が共に鉄砲(刀?)を鍛える庵。
夢三郎が、無界の里の人々が、荒武者隊が華やかに笑いさんざめく無界の里。

それは、鮮やかで美しくて優しくて、でも今はもう決して手の届かない夢のような光景で―――
その夢を惜しむように、慈しむように、愛おしむように、一人立つ極楽の姿に、
なんだか泣くことしかできませんでした。

だから、その夢の覚めた先に、彼らが待っていてくれたことに、本当に驚いて、
同時に凄く救われた気持ちになりました。
これまでの物語では、七人はそれぞれの未来へと歩み去り、最後には空っぽの荒野だけが残ります。
でも、この物語では違った。
恐ろしい夢も、哀しい夢も、美しい夢も、やるせない夢も、全てが覚めたこの場所で、
彼らは、共に新しい夢を―――いや、現実を紡ぐ未来を選んだ。

「浮世の義理も 昔の縁も 三途の川に捨之助」

まさか、全ての物語の締めくくりにこの言葉がくるなんて思ってもみなくて呆然として。
でも、この言葉以上に、この物語を終わらせるにふさわしい言葉はなくて。
七人が逆光の中、シルエットになるあのラストシーンとあわせて、
なんというか、素晴らしい終わりと始まりを見せてもらいました。


兵庫役、福士誠治さん。
めっちゃ大人な兵庫で、まさに荒武者隊のアニキ!という感じでした。
すっごい頼りがいがありそう(笑)。
極楽に惚れこむ立場はそのままなのだけれど、
その気持ちが最前面に来るのは、きっとこの物語の後の物語で。
この物語では、むしろこれまでの極楽太夫的な役割を担っていたのにびっくりしました。
というか、月で鮮やかだった友情枠が、兵庫と夢三郎にあてがわれるとは!

夢三郎役の竜星くんは、ドラマでのイメージが強かったのですが、
舞台でもとても映える方だなあ、と思いました。
最初の花魁姿とか、大きくて綺麗で気風が良くて朗らかで凄味があって。
(1幕を観た時、なんだか既視感があるなあ、と幕間でずーっと考えていたのですが、
 次郎太刀(@刀剣乱舞)だということに思い至りました。
 今後刀ミュや刀ステに二郎ちゃんが出るなら、ぜひ彼に演じていただきたい!(笑))
兵庫と酒を飲み合うシーンとか、互いを認めあっている感じや、
極楽に目を奪われる兵庫をからかう感じとか、凄く中がよさそうで、
この時点では、七人の一人なんだろうなあ、とすっかり騙されておりました(^^;)
でも、上記のように裏切られる覚悟はできていたので(笑)、
2幕で彼が天魔王の息子として出てきた時には、そうきたか!と思うと同時に、
やっぱりなあ、となんだか納得してしまう感じでした。
ビジュアル的には蘭丸に近い感じなのだけれど、もっとまっすぐに、というか切実に、
天魔王に傾倒している感じが、なんだか凄く哀しかった。
彼が、天魔王の息子として迎え入れられるまで、どんな生活をしていたのかは描かれません。
けれど、彼にとって天魔王は、唯一の寄る辺だったんじゃないかな、と思う。
無界の里に対して、情がなかったとは思わない。
でも、その情を凌駕するだけの切実さが、無界の里を踏みにじっても手に入れたいものが、
彼の中にはあったんじゃないかな。

髑髏城で兵庫たちと相対した時、鎧を貫く弾丸に、天魔王に―――父に騙されたのだと、
見捨てられたのだと理解してもなお、彼は「さすが父上」と嘯いた。
あの時点で、もしかしたら兵庫は、夢虎が悪夢から放たれて、
夢三郎として戻ってきてくれることを期待していたのかもしれない。
観ている私も、ほんのちょっとだけ、それを期待した。
でも、彼はそれを選ばなかった。
それだけの覚悟を持って、彼は無界の里を焼いたのだろうし、
そこで今の自分を否定したら、自分の中の全てが崩れ去るほどに、
父である天魔王は―――天魔王の息子であるという“事実”は、彼の寄る辺だったのだと思う。
大切な弟分たちに続いて、心を交わした友を、本当に失った兵庫の慟哭は本当に辛かったけれど、
でも、この結末を、兵庫も納得していたんだろうな。

狭霧役、清水くるみちゃん。
これまで見たのがジュリエットとおりつちゃんだったので、
こんなに元気一杯動ける子だったのか!とちょっとびっくりしてしまいました。
・・・って、びっくりしてばっかりだな、私(笑)。
捨之助と霧丸の兄弟感が、極楽大夫と狭霧の姉妹感(ある意味兄弟感)に見事にシフトしていて、
二人の関係性にちょっとほっとしてしまいました。
髑髏城の壊しっぷりも、なんというか気持ちが良いほど思い切りが良くて!(笑)
贋鉄斎の庵での諸々は、ちょっとかわいそうでしたが(^^;)

カンテツ役は三宅さん。
タナカがめっちゃ記憶に残りました(笑)。
鉄砲鍛冶だけど、刀が好きでなんでも研いじゃう彼が、要所要所で凄い良い働きをしていて、
おおお!と思うところも何度か(笑)。
個人的には、逆木さんの贋鉄斎が渋くてかっこよくってお気に入りでしたv


かっこいいといえば、清十郎役の川原さん!
いやもうあの殺陣には見惚れるしかないですよねー。
怪我をしている状況での殺陣も、ほんとに怪我をしているようにしか見えず・・・でも強いんだな!
2幕中盤で、七人目は誰なんだろう?ってずっと考えてて、
清十郎が出てきた瞬間に、思わず内心で膝を打ちました・・・鈍くてすみません(^^;)
家康の配下として、最初は極楽を警戒していたはずの清十郎が、
ちょっとずつ極楽に心惹かれていく様子に、うっかりときめいてしまいましたv
千両箱を担いで出てきた時には思わず笑ってしまいましたが、
このあとの三角関係では、ぜひとも頑張っていただきたいと思いました。
・・・いやでも、三角関係になるかどうかは極楽次第だな(笑)。


山本さんの狸穴さまは、なんというか見事に悪役枠だったように思います。
極楽に対しても、およし(村木よし子)に対しても、全く誠実さが感じられない。
狸穴さまがこと切れた敵娼に手を合わせるシーン、結構個人的に泣きポイントなんだけど、
今回は全然泣けなかったなー。
清十郎が見限るのも納得な感じでした。
って、散々な書きっぷりですが、そういうぶれのない悪役っぷりが素晴らしい!
極楽たちがつくる新・無界の里に手を焼きながら、天下統一を頑張るといいよ!(笑)


河野さんの三五は、やっぱり大好きだなあ、と。
今回の衣裳のカラフルさと髪型にはちょっと目を奪われましたが(笑)。
髑髏党から抜け出そうと決意した理由には笑っちゃいましたが、
いやでも、確かにいきなり歌ったり踊ったりし始めたら何事?!って思うよね・・・
というか、原さんの宮毘羅の猛突はほんとに素晴らしかったです!!
あの朗々とした歌声には、油断しているといろいろ持っていかれて巻き込まれるよね。
踏みとどまった三五、実はめっちゃ冷静なのかも?(笑)
まさか髑髏党でがっつりミュージカルパートが来るとは思わなくて、
しかもそれが原さんって、もの凄い贅沢な使い方だなー、と思いました。
それにしても、あの曲・・・元ネタが何なのかずっと考えてて、喉元辺りまで出てきてるんだけど、
思い至らないのが凄いもやもやします(^^;)
ネット探せば答えが出てくるかなー。

そういえば、今回も劇中歌がとても素敵でした。
聴いている時には、物語に合った良い歌詞だなあ、と思っていたのに、
全然記憶に残っていない自分の頭が悲しすぎる・・・(^^;)
これまでの作品もですが、本当に速く映像化円盤化して欲しいなあ。
劇中歌集みたいな感じでCD化してくれてもいいかも?


そんなこんなで、私の回るお城は〆となりました。
公演自体もそろそろ終わりが見えてきているのかな。
最後まで、怪我なく機材トラブルなく、終わりと始まりの物語が回りつづけますように。

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