命題

彼が背負う天命。
彼を形作る命名。
彼が―――彼らが対峙する命題。

その答えは、未だ白い茫漠の彼方。



舞台「刀剣乱舞 悲伝 結の目の不如帰」

2018.6.2 ソワレ TOKYO DOME CITY HALL アリーナ14列50番台(ライブビューイング)
2018.6.5 ソワレ 明治座 1階16列10番台

脚本:末満健一
出演:鈴木拡樹、荒牧慶彦、三津谷亮、椎名鯛造、和田雅成、和田琢磨、健人、東啓介、川上将大、
   前山剛久、加藤将、玉城裕規、中河内雅貴、碓井将大、井上象策、小村泰士、小山蓮司、多田聡、
   夛田将秀、中西奨、早川一矢、平野アキム、福島悠介、星賢太、守時悟、山下潤、湯浅雅恭、渡辺洋平


(以下、盛大にネタバレしますので、未見の方はどうぞお気をつけて!)


奇跡のようなご縁をいただいて、刀ステ新作の初日ライビュと明治座公演を観ることができました。
序伝虚伝虚伝再演、外伝、義伝如伝、恕伝―――そして、悲伝。
流れゆく大河のその果ての、茫漠とした白い浜辺に降り立った気分です。
悩み、傷つき、惑いながら、少しずつ強くなっていった彼らのその物語は、
彼が語る彼のように、深く、静かで、美しい物語でした。
正直、2回見てもまだ、物語そのものを受け止めきれてはいないと思います。
これまでの物語に散りばめられた伏線を拾って、明確になった答えもあれば、
新しく浮き彫りになった疑問もある。
その辺については、余力があれば記事の最後でちょっとつらつらと書いてみようと思います。
でも、まずは役者さんの感想を。


三日月宗近役、鈴木拡樹くん。
・・・いざ感想を書こうと思うと、どんなふうに言葉にすればいいのかわからなくなります。
言葉で言い尽すことが不可能なくらい、あの板の上にいる彼は“三日月宗近”以外の何者でもなかった。
これまでの物語で、常に意味深な存在だった三日月さん。

彼が居る円環とは何なのか。
彼が目指す未来とは何なのか。
彼が―――彼らが戦う相手は何なのか。
そして、“彼”は、何なのか。

義伝を観た時に、三日月さんに感じた焦燥感。
その焦燥感は、物語の最初から感じられた。
義伝の時よりも更に、鋭利さを、速さを増した殺陣は、
思わず息をのんで見惚れてしまうほどの美しさがありました。
圧倒的な、その強さ。
ゲーム通り出陣を、経験を重ねるごとに、刀剣男士が強さを増していくのであれば、
その強さを得た彼は、どれだけの時間を過ごしてきたのか。
たった一人で、どれだけその円環を、その本丸の歴史を繰り返していたのか・・・?

気の遠くなるほど。

そう、三日月さんは言いました。
長い時を生きてきた刀であるはずの彼が言う、気の遠くなるほどの時間。
最後、真っ白な姿で山姥切くんの前に現れた三日月さんの姿そのものが、
その時間を語っているように思いました。
透き通るような、白。
燃え尽きた灰の白ではなく、永い時を経て結晶化した水晶のような、雲母のような、白。
それは本当に美しくて、でも、その姿が意味することに、泣くことも忘れて絶句することしかできませんでした。

その姿で山姥切くんと剣を交わすとき、三日月さんは叫ぶような大きな声をあげました。
これまで、どれほど多くの敵に囲まれようと、どれほど手傷を負おうと、
余裕の笑い声と短い気合の声しか発していなかった三日月さんの、獣の咆哮のような声。
茫漠とした真っ白な世界で、光の塊のような髪をした山姥切くんと、
真昼の月みたいに真っ白な三日月さんの殺陣は、
これまでの彼らの殺陣とはどこか異なっていたように思います。
懸命に、がむしゃらに、どこか楽しそうに、ただ言葉にできない想いを交わし合うような二人。
静謐で、濃密で、不可侵な、時間。
永遠みたいな、瞬間。
でも、その時間には終わりが来て。

結の目として、彼らの本丸のある時間軸の乱れの原因となっていた三日月宗近は、
審神者の儀式によって刀解されてしまいます。
三日月さんが、幾百幾千と繰り返したその時間は終わりを告げる。
山姥切くんと、いつか会いまみえることを、いつかまた刃を交わすことを、その時は山姥切くんが勝つことを。
左手の小指を伸ばして、山姥切くんと約束を交わして、笑顔で三日月さんは光の花弁になって散っていった。
これが、彼が目指した未来だったのかはわからない。
円環は壊れたのかどうかもわからない。
だから、この最後が正解なのかも、私にはわからない。
でも、どうして彼は一人で背負ってしまったんだろう、という気持ちはどうしても消せなかった。
「おぬしらに背負わせるわけにはいかぬ」
何故、と問う山姥切くんに、三日月さんはそう答えた。
山姥切くんが、強くなり、何かを変えてくれるのではないかと期待する矛盾を持ちながら、
でも、彼は最後まで一人で背負うことを選んだ。
それが自分の天命だと、それが自分に与えられた命題だと、そう思っていたのかな。
でも、それなら、彼は何て悲しいほどに傲慢だったんだろう、とも思う。
だって、彼はあんなにも愛されていたのに。

この物語の中、三日月さんに向けられる刀剣男士たちの想いが何度も何度も描かれます。
まだ三日月から何も聞いていない、と叫ぶ山姥切くんの想い。
そなたも父の子、という小烏丸さんの想い。
(そう言われた瞬間、後ろを向いた三日月さんの背中に泣けた)
どんな悲しい驚きも飲みこむ、という鶴丸さんの想い。
悲しい目をした三日月を一人にしたくなかった、という骨喰くんの想い。
今でも仲間だと思っている、という大般若さんの想い。
全てを話してほしい、と懇願する燭台切さんの想い。
静かに、真摯に見つめ、そして刀を向ける歌仙さんの想い。
天下五剣の名を貶めるな、という大包平の想い。
迎えに行く、という鶯丸さんの想い。
不動くんの目に映る三日月さんは虚ろではなく、
長谷部の目に映る三日月さんには義があり、
そして、山姥切くんが初めて目にした三日月さんの深さ、静かさ、美しさ。

三日月さんに向けられる想いは、全て、三日月さんが彼らに向けてきた想いなのだと思う。
それだけの想いを向けて、それだけの想いを向けられながら、どうして彼はひとりであることを選んだのか。

その答えはもしかしたら、鵺にあったのかもしれません。
碓井将大くんが演じた鵺とよばれる、という存在。
足利義輝の所持した名もなき刀たちが合わさってできた付喪神。
(顕現の仕方が刀剣男士と一緒だったけど、もしかして義輝って審神者の力を持ってた?)
刀剣男士たちとの戦闘を繰り返しながらレベルアップしていく鵺と対峙した時、
三日月さんは彼を“異物”と称しました。
そして、面白い存在、とも言っていた気がする。
鵺という存在は、もしかしたらこれまでのループの中にはなかったものかもしれなくて、
(それは小烏丸さんもそうかも、と思った)
異物が存在することで、この円環に何らかの影響を与えることを期待したのかな、なんて思いました。
そして、そう思う三日月さん自身が、もしかして自身を“異物”ととらえていたのかな、なんて。
いやいや、この辺書いていたらきりがないので、役者さんのことに戻します!

碓井くんは、これまで「ピアフ」「クレシダ」で観ていて、
雰囲気のあるいい役者さんだなあ、と思っていたのですが、今回も素晴らしい仕事っぷりでした!
たどたどしい言葉遣いの、レベル1という感じの弱い彼が、
刀剣男士と戦うごとに、どんどん殺陣が変わっていくのにびっくり!
詳しいことはわからないけれど、多分少しずつ戦った男士の太刀筋を取り入れてるのかな、と思う。
この辺どなたか詳しい方に解説していただきたい!(笑)

死した義輝を抱えて咆哮し、義輝を死なせないために強くなると誓う彼。
名もなき刀がいくつも集まった、混沌とした刀。
義輝を死なせない。その想いだけが、きっと彼を形作った。
でも、義輝が名を―――義輝を死へと誘う不如帰ではなく、
義輝をこの先の未来へと連れて行く時鳥という名を与えた時、彼は新たな命を得た。
まさに、命名。
このシーンは、ほんとに泣けました。
結局彼は、志半ばで不動くんに破壊されてしまうのだけれど、
その瞬間の「帰りたい。帰りたくない」と彼が言ったその場所は、どこだったのかなあ。

また、中河内くんの義輝が、ほんとに渋くてかっこよかったんですよ!
苛烈だけれど、静か。
豪胆だけれど、繊細。
このイメージって、もしかすると少し三日月さんと重なるのかなあ。
自分の目指す未来のためにあがき続けるその強さも、三日月さんに繋がるのかもしれない。
終盤、小烏丸さんと義輝が語らうシーンがあって、
刀とは?という義輝の問いに対する小烏丸さんの答えを聞いた義輝が、
「歴史を越えて乱れ舞う―――刀剣乱舞、見事なり」と言うのだけれど、
そうであれば、その時の“今”を乱れ舞うのが人なのかなあ、と思ったりしました。


骨喰藤四郎役は、今回から三津谷くん。
拝見するのは初めての役者さん。
相手の勢いを利用して斬っていく殺陣は、かっこよかったけどちょっとハラハラしました(^^;)
あの足技は鯰尾くんとお揃いかなー。
今回の骨喰くんは、記憶がないことにずっと向き合おうとしていたように思う。
三日月がどんな刀だったのか、大般若がどんな刀だったのか。
繰り返し彼は大般若さんにそう尋ねるけれど、
それはもしかしたら、自分はどんな刀だったのか、という問いかけの裏返しなのかな、とも思う。
愛した刀に、と義輝から介錯を頼まれたとき、「俺には愛された記憶がない」という骨喰くんに、
義輝は「わしが覚えている」と言います。
そして、義輝を介錯したあと、「記憶がないのに、悲しい」と骨喰くんは泣きじゃくる。
愛されたことを忘れていても、愛した人は愛したことを忘れない。
そして、その想いが、骨喰くんの一部になっている。
無意識下に、きっと残っている愛された記憶。
その事実が、彼を旅に誘ったのかもしれないなあ、と思いました。
そういえばジョ伝と比べて、今回の骨喰くんは泣き虫だったなあ、と思う。
三日月を追ってきた時も、彼を抱きしめて「あんたは何度この時間を繰り返したんだ」と言いながら、
ぽろぽろ大粒の綺麗な涙をこぼしていました(カメラさん、GJ!)。
なんというか、それだけ、彼の中に溢れてくる何かがあったのかなあ、と思う。
そしてそれは、これまでの物語があったからこそ、なんだよね。


大般若長光役は川上くん。
・・・めっちゃくちゃ大般若さんでした!!
ゲームではあんなに僅かな情報しかないし、アニメにもまだ出ていないのに、
大般若さんが居る!!って全く違和感なく納得してしまう佇まいでした。
殺陣は、重心が低くて、ちょっと三日月さんに近い感じかなあ。
洋装だからイメージとしては異なるんだけど。
凄いスタイリッシュでかっこよかったです!
この物語の大般若さんは、骨喰くん担当、という感じかな。
(で、鶴丸さんと小烏丸さんが三日月さん担当?)
さりげなく、でもしっかりと骨喰くんを支えていて、でもその距離感が絶妙でした。
共に並んでいた足利の宝剣、ということで、三日月さんや骨喰くんに関わってくるのだけど、
それが全然押しつけがましさがなくて。
飄々とした彼の中に、どんな熱情があるのかちょっと気になりました。

小烏丸役は玉城くん。
これまで名前は何度も見かけたけど、拝見するのは初めて。
あの華奢で綺麗なのに存在感は重量級な小烏丸さんをどう表現するのかと思いましたが、
こちらも見事な完成度でした!
髪は少し短くなってたけど、これはまあ仕方ない(^^;)
八重の椿みたいな長い片袖を抑えながら戦っていることが多いのだけれど、
時にそれをぱっと翻すのがとても鮮やか。
動きとしては最小限、という印象なのだけれど、隙が無い感じなのは、一部両刃の刀故なのかな?
刀の振り方が、他の男士たちとは違うように思いました。
時々片足立ちをしてるのも小烏丸さん、という感じv

この本丸に顕現してまだ間がないけど強い、という鶴丸さんの言葉に、
もしかして小烏丸さんもループしてるんじゃ?と思ったけど、
観終わってみると、彼が顕現したことが、この物語の終わりに向かう要素の一つだったのかな、とも思う。
三日月さんを甘えさせようとする様子とか、
三日月さんがいなくなって浮足立つ山姥切くんたちに、
彼らが見た三日月はどうだったか、と問うところとか、
(虚ろか? 義はなかったか?という問いかけがこれまでのタイトルに一致してるのにちょっと感動)
最後の山姥切くんと三日月さんの戦いに立ち会うところとか、
なんというか、ほんとに全刀剣の父としての役割を全うしてたと思う!
それにしても、あのシーンの「今ここにいる三日月の、山姥切の物語」的な言葉も良かったし、
白い光の奥で、静かに佇む赤いシルエットも綺麗だった。
そういえば、烏は太陽の化身でもあるんだっけ?
三日月さんは、二つの太陽に見送られたのか・・・
でもって、ちょっと獅子王くんと仲がよさそうな気配が嬉しかったりv(笑)

そういえば、今回名前だけだけど、これまで出た男士たちも出てきたの、嬉しかった。
まあ、出陣先の組み合わせは、やっぱりここの審神者、容赦ない!と思ったけど(笑)。
というか、今回審神者、出てきてめっちゃびっくりした!
本丸が時間遡行軍に襲撃された大ピンチの場面で、舞台奥から出てきたんだけど、
最初は逆光だったので、敵薙刀来た!ってちょっと絶望的な気持ちになったら審神者だった、と(^^;)
極めた不動くんと長谷部を引き連れてたので、すぐ誤解は解けたけど(笑)。
それにしても、この審神者って、三日月さんのループのことしってたのかな?
義伝でのやりとりとか見てると、知ってたような気がするんだけどなあ。
ここの審神者も謎です(^^;)
そして、時間遡行軍が降ってくるのも、ゲート(って言わないか)に吸い込まれるのも衝撃的だった・・・


鶴丸国永役は続投の健人くん。
相変わらず軽やかな殺陣がとても素敵でした。
小烏丸さんを助けに出てきた時に、小烏丸さんが「このなりではお互い飛べない鳥よの」って言ったのに、
「まだまだ飛べるさ!」って返したところとか、
燭台切さんに「立て、光坊!」って言うところとか、
なんというか、鶴丸さん、更に強く優しくなったなあ、と思った。
三日月さんとに投げかける言葉とかも、回りくどいけど、三日月さんのための言葉だった気がする。
きっと、もっと頼ってほしかったんだろうなあ。
というか、今回鶴丸さんのつっこみが、結構観客の気持ちを代弁してるんじゃないかと思った。
特にあの「そうきたか」は、個人的に思いっきりシンクロ致しました(^^;)


燭台切光忠役は、帰ってきた東くん。
この盛りだくさんな内容の中で、燭台切さんについて掘り下げてくれたのは嬉しかったな。
焼けた刀、という現在の姿について、初めて言及されてた。
彼が失った記憶がどの部分なのかは明言されません。
彼の本体が、焼かれる前の姿であることを考えると、焼かれる瞬間から後なのかもしれない。
でも、彼と刃を交わした黒甲冑は、彼が焼かれた身であると言った。
その姿では、刀とは言えない、と。
大般若さんとはちょっと違うけど、やっぱり飄々とした雰囲気の燭台切さん。
長い物語が進む中で、かっこいいだけの刀ではないこと―――幼さや弱さ、不安定さも見えてきて、
でも、今回彼は改めて、自分は戦う刀だと、戦って誰かを、何かを守る刀なのだと証明したように思います。
三日月さんと対峙した時や、惑っている時のどこか委縮した太刀筋が、
そう証明した瞬間に、本来の大らかさを取り戻した瞬間が、本当に鮮やかでした。
鶴丸さんとの共闘も、虚伝をちょっと思い出す感じで、二人が背中合わせに微笑み合うところとか、
戦いの最中なのに、気持ちがほっこりしました。
あ、一人ミュージカルもお疲れさまでした! やっぱりいい声v
しかし、黒甲冑には斬鎧剣が必要だよね!(笑)


今回燭台切さんを支えたのは、鶴丸さんだけではなく、歌仙さんも。
歌仙兼定役は、続投の和田さん。
振り返り上映のコメントがツイッターに流れてきて、
歌仙の殺陣は殴るみたいに、という指示があったというのを読んだのだけれど、
改めて見ると確かにそんな感じでした・・・でも雅なところが凄い!
今回の歌仙さんは凄く頼りがいのある存在でした。
なんというか、視野が広くてバランスがいい。
燭台切さんを、「刀の本分を忘れるな」とたしなめるところも、
本体の手入れをしながらさりげなく、でも鋭く「出陣先で何があった」と問いかけるところも、
山姥切くんを主や三日月さんのところに行かせるために、敵に立ち向かうところも、
この人なら大丈夫、という安心感がありました。
明治座で観た時、花道近くの席だったのですが、出陣の儀の後花道をみんなが駆け抜けるとき、
ちょっと距離はあったけど真横の位置で歌仙さんが転んじゃったんですよ。
凄いびっくりしたんですが、そのまま低い姿勢で駆け抜ける歌仙さんの横顔がほんとに凛々しくて、
ちょっとよろめきそうになりました。
というか、歌仙さん、美しさにも隙が無い(笑)。
まあ、小夜ちゃんという甘え先がいなかったから、というのもあるかもですが(笑)。
そういえば、最後の日常のシーンで、鶴丸さんと手合せをしにいくシーンで、
燭台切さんが加わって2対1、加羅ちゃんも呼んで3対1、貞ちゃんも呼んで4対1って鶴丸さんが言って、
「なんで僕がひとりなんだ!」って歌仙さんが何度も言うのだけれど、
初日の時には、燭台切さん(かな)が、「小夜ちゃんも呼ぶ?」って言うのに「あ、うん」って素直に答えてて、
明治座の時は「お小夜は僕が守る!」って宣言してました(笑)。
この辺と、軍議の終わりの三日月さんと山姥切くんの羊羹攻防は日替わりなのかなー。
貴重なほっこりシーンでしたv


鶯丸役は前山剛久くん。
そして、大包平役は加藤将くん。
この二人はやっぱりペアで語らざるを得ない!(笑)
並び立った時の色合いのしっくりくる感じや、印象が全く違うのにシンクロしている殺陣とか、
大包平をいじることで場を和ませる鶯丸さんの高等技術とか、
いやあれはそんな真意はないんじゃないかと思っちゃうような雰囲気とか・・・
鶯丸さんの殺陣は、重心が高い印象。
滑らかだけれど、しゃらっと力技も使うところが鶯丸さんだなあ、と(笑)。
大包平の殺陣は、大きくてまっすぐ。裏なんか全然ない。
真正面から自分の全部で向き合う感じ。
それは敵に対してだけではなくて、仲間に対してもそう。
三日月さんに対してみんなが疑念を抱いている時の、大包平の言葉にちょっと泣きました。
彼の天下五剣に対する想いって、対抗心やコンプレックスであると同時に、
心からの信頼の現れなんだなあ、と思った。
天下五剣であるならば。
三日月宗近であるならば。
自分に向けられるそのまっすぐな想いは、きっと三日月さんの気持ちを暖かくしたはず。
少なくとも私は、彼の存在が凄い癒しでした。
初回は、大包平が居たから、最後まで物語に向き合うことができたようにも思う。
本当に、体も、殺陣も、声も、言葉も懐も、全部が大きな存在でした。


不動行光役は椎名くん。
椎名くんの不動くんが観たくて観たくて、チケット全敗した時はほんとに泣く思いだったので、
今回観ることができて本当に幸せでした。
やっぱり椎名くんの不動くん、大好きだなあ・・・!
まあ冒頭でいきなり修行に行っちゃったときは呆然としましたが(^^;)
でも、修行のシーンを短い時間なりに丁寧に描いてくれたのは嬉しかったな。
坊丸と安土城下を買い物するシーン、坊丸が上様を語るのに、
瞬間辛そうに顔を歪めたのが切なかったです。
そうだよね、不動くんは信長さまだけでなく、蘭丸や坊丸の未来も知っているんだものね。
極めた不動くんが戻ってきた時は、シーン的に極限状態だったこともあって、大泣きしてしまいました。
ゲームよりも、もともとのやんちゃさをちょっと遺した感じの極不動くんだったかな。
殺陣ももちろんパワーアップ!
あの蹴りの高さには感嘆いたしました。
1幕ラスト、でっかい燭台切さんを支えて戦ってて、途中で下手に放り投げたのにはびっくりしました(笑)。
三日月さんへの想いも凄く素直な感じで、
彼の大切なものの中には、三日月さんはじめ仲間も入っているんだろうなあ、と思った。
そんな彼が、時鳥と対峙した時、「あれはもう一人の俺だ」と言います。
ジョ伝の弥助を見た時、この場に不動くんがいたら、どんな反応を示すのだろう、と思ったのを思い出した。
「自分たちができなかったからって、それを俺に強いるな」という鵺の言葉にうなだれながら、
けれど、彼に引導を渡した不動くんは、それまでの叫びが嘘のような静けさがあった気がします。
それがとても心強くて、でも、なんだかちょっと切なかった。


同じく極めたへし切長谷部役は和田くん。
極めたら、殺陣がめっちゃ重量級になってた気がする・・・
切り捨てるというよりも、破壊する、という感じ?
主のために、と敵も、三日月も斬ることを厭わない、長谷部。
でも、決して割り切ったわけではないんだろうな、と思った。
自分が決めた自分の在り方を全うするために、たとえその後で後悔に苛まれようとも、
悲しみに胸をふさがれようとも、それは全て自分が呑みこむ覚悟を持っている。
そんな風に感じました。
それにしても、不動くんと仲良しなのが微笑ましかったなあv
不動くんがへし切と長谷部をちゃんと状況で使い分けてるのにも、バディ感を感じました(笑)。


山姥切国広役は、荒牧慶彦くん。
殺陣は相変わらず鮮やかで、足の手術をした後とは思えないくらいの綺麗さでした。
リハビリ、頑張ったんだろうなあ・・・ほんとにお帰りなさい!
今回初めて彼の真剣必殺がでたのだけれど、
(というか三日月さんと極めた二人以外は真剣必殺出てましたね。
 あの緑のエフェクト、凄いきれいだった!)
登場の仕方がもう満を持して!!と言う感じに、とんでもなく力が入った美しさでした。
あの金髪が見えた瞬間、前の席のお嬢さん二人が感極まったように口を押えてたけど、
その気持ちは本当に良くわかる!

この物語は、三日月さんの物語であり、そして三日月さんが何かを託した山姥切くんの物語でもある。
三日月さんに導かれての、近侍としての成長がさりげなく描かれると同時に、
次々と迫りくる試練や、三日月の行動の前に、深く思考に沈んでいくような印象を受けました。
惑っているというよりは、考えている、という感じ。
一人で全てを背負って、一人で遠くへ行こうとしている三日月さんに対して、
きっと虚伝のころの彼だったら、手をこまねいて見送るしかできなかった。
でも、今の山姥切くんは、三日月さんにその手を伸ばした。
三日月さんの語る事実を、不確かな答えを、目の前の現実を、
悪い夢なら良かったと嘆きながら、彼は否定しなかった。
否定せずに、立ち向かった。
月を照らす太陽であることを、彼は望み、戦い、そして失った。
心に非ずと書いて、悲しい。
でも、心があるからこそ、悲しい。
虚伝で、何故刀である自分に心があるのかと、心とは何かと、三日月さんに問うていた山姥切くん。
あの時の三日月さんの答えが正しいのであれば、
三日月さんを美しいと思った山姥切くんの想いが三日月さんに宿り、
そしてまた、三日月さんの山姥切くんへの矛盾した想いも山姥切くんに宿っているんだろうな、と思う。

その後、彼らの本丸には“三日月宗近のいない”日常が、時間がそのまま流れていました。
喪失を抱えながら、この試練で得た強さを胸に、彼らは未来に進んでいく。
そのことが本当に切なくて、笑いあう彼らを見ながら、ひとりでぽろぽろ泣いてしまいました。
その未来は、三日月宗近が望み、山姥切国広に託した未来なんだろうか。
最初に三日月さんが語った言葉を、最後に山姥切くんが語ったこと。
この時、過去に飛ぶのが刀剣男士から審神者に変わったこと。
そして、カーテンコールの♪勝ち鬨の歌 で、最後に現れた三日月さんは歌ってはいなかったこと。
得た答えと同じくらい、新たな疑問が沸き上がる。
鈴木くんが“集大成”と言ったこの舞台。
刀ステがこれで終わりなのか、まだ彼らの、あるいは別の彼らの物語が続いて行くのかはわかりません。
刀とは何か。
歴史とは何か。
―――心とは何か。
そんないくつもの命題に対峙した彼ら。
その物語の一つの終わりを見届けられたことを、今はただ、感謝したいと思う。


そういえば、今回の刀ステ、セットが階段に戻ってましたね。
豪華な感じになっていたけど、虚伝の頃みたいで懐かしかった。
明治座は花道があるのですが、冒頭すっぽんから三日月さんが上がってきてびっくりしました。
すっぽんから上がってくるのは人外だったはずですが、
人外ばっかりの舞台で三日月さんかー、とちょっと面白いな、と思っていたのですが、
物語が進むにつれて、笑っていられなくなりました・・・
刀剣男士をも超えたか、って小烏丸さんに言われていたし(^^;)
で、終盤真っ白になった三日月さんがやっぱりすっぽんから現れた時には、
なんというかもう言葉もありませんでした。
これ、他の劇場ではどう表現するのかなー。
あと、舞台中央の奈落も使ってましたね。
1幕では真剣必殺な4人、それから2幕冒頭で極二人。
これもかっこよかった!
セットに映される映像も綺麗だったなあ。

でもって、今回も音楽が攻めてきてました!
今回はピアノの音色がとても印象的。
グレゴリオ聖歌みたな雰囲気の曲や、パッヘルベルのカノンみたいな雰囲気の曲もあって、
というか、後者の曲が本丸襲撃や最後の三日月さんと山姥切くんのシーンで使われていて、
そのチョイスにかなり打ちのめされました。
ジョ伝のチャチャチャよりも衝撃的だった(^^;)
カーテンコールでは、義輝と時鳥も名前入りの番傘を持っていたのだけど、刀剣男士以外では初?
アンサンブルの方々も、真っ白な番傘で踊ってらして、
名もなき刀の物語でもあるこの舞台にふさわしいな、と思いました。
今回、時間の狭間に堕ちた描写で、義経と弁慶や秀吉、家康、新撰組、竜馬のシーンがあって、
アンサンブルさんが多分総出演だったんじゃないかと思う。
この辺、どなたがどの役をやったのか、知りたくなりました。


散漫な記録なうえ、過去最長な記録になりましたが、記事を分けるのも何なので、
円環について考えたことも一緒に記録しておこうと思います。
思いつきを覚書代わりにざーっと書いただけなので、あしからず。


虚伝からずっと観てきて、三日月さんが円環の中にいる、というのは、
結構あからさまに示唆されてた気がします。
で、私は円環の中をループしているのは、三日月さんだけではなくこの本丸全体だと思っていたのね。
虚伝の初演と再演の齟齬とか、義伝の三日月さんと鶴丸さんの会話の位置の変化とか、
山姥切くんの成長とかを見ていて、そう思った。
この本丸は、あの本丸襲撃で殲滅されて、その後本丸ごとループして、
そして三日月さん(ともしかしたら審神者)だけが、その記憶を持っていた、と。
でも、今回初回のライビュを観た時、三日月さんだけが円環の中にいる可能性もあるんだな、と思ったのね。
三日月さんだけがどんどん強くなっていくところとか。
でも、三日月さんと山姥切くんは、これまでと同じ場所でこれまでと同じ約束を交わした。
なのに、あの本丸は消滅せずに、三日月さんのいない未来を進んでいる。
ということは、もし、あの本丸の未来の分岐がたくさんあって、
その度の終わりからも三日月さんだけが戻されてしまうのだとしたら、
これまで三日月さんが経てきた幾百幾千の分岐の中の一つとして、
悲伝の本丸が辿り着いた分岐がある、ということ? 
でもって、悲伝の、あるいはこれまで別の分岐をたどった本丸の彼らは、
それぞれの時間を刻んでいる、ということなのかな? 
でも、そうすると、もしかしたら悲伝の彼らがたどる未来のその先に、
二人の約束が果たされる瞬間があるのかもしれないということ?
いやでも、最後の曲があれだったから、本丸はまたループしたのかな・・・
そんなことを、ライビュを観た後にぐるぐる考えていたわけです。

で、明治座公演を観て、ちょっとまた違う方向もあるのかな、と。
この本丸はやっぱり三日月さんと一緒に何度もループしている。
そして、今回最後に二人が交わした約束は、
これまでしてきた約束とは異なっていて、円環は壊された可能性もあるのかな、と。
三日月さんは、過去に、未来に、何度もあの場所で山姥切くんと約束をした、と言いました。
その約束が何なのか、あの場所というのが二人が戦った場所なのかは明言されない。
もしかしたらこれまでは、この場所に至る前に三日月さんは山姥切くんたちに破壊されていて、
その破壊がきっかけでループしていたけど(義伝は政宗の死がループのきっかけだった)、
今回三日月さんの強さ(あるいは時を越える限界)、そして山姥切くんの強さがピークとして合致したことや、
小烏丸の顕現、時鳥という異物の存在といったいろんな要素が新たに加わって、均衡がくずれ、
その結果として三日月さんが時の政府の思惑の下、刀解され、絡まった結の目は解かれた。
そういう可能性もあるのかな、と思った。
(というか、何度も政府が支持をだしていたなら、さすがにそれは記録に残ると思うのよ)
そして、それこそが三日月さんの望んだ未来なのかな、と。
そう考えると、このラストシーンはハッピーエンドなのかもしれないけど、
そうすると、山姥切くんとのこの約束は果たされないことになっちゃうんだよね・・・

カーテンコールで歌わなかった三日月さん。
それはもしかしたら、山姥切くんたちがいる“今”に存在する三日月さんではない、という意味なのかな?
カーテンコールの三日月さんは、この物語を生きた“今”はいない三日月さんで、
最後に顕現した三日月さんは、ループした三日月さんではなく、新しい別の三日月さんなのかな?
声の感じが虚伝初演のころの三日月さんっぽかった気もするし。
でも、虚伝の最初の歌で終わってるんだよね(^^;)

うーん、本当に考えれば考えるほど訳が分からなくなってきます。
この辺、SF的な解釈とFT的な解釈とでまた違うんだろうな、と思う。
それこそ明確な答えを末満さんは観客に100%伝えようとは思っていないのだろうけど、
(演劇というのはそういうものだと私は認識している)
それでも、何らかの答えを求めてしまうくらいは打ちのめされました、本気で。
とりあえず、明治座公演が終わったばかりで、まだ50公演近くあるわけだから、
大千秋楽までに、義伝みたいにちいさな仕掛けがあったりするのかなー、なんて思ってみたりも。
ひとまず時間を見つけて過去作見直そうと思う。というか、戯曲買うべきかな(^^;)


それにしても、プリンシバルもアンサンブルも、殺陣の量、内容の精神的負担共に、
本当に大変な舞台だと思います。
これから約2ヶ月の長い公演、みなさんが怪我なく、トラブルなく、
この物語を生き抜くことができますように。
本当に、こころからお祈りしております。

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