彼の心を満たすもの

今年の8月も終わりに近づいています。
子どものころは、夏休み最後の日、というちょっと特別な日でしたが、
大人のなるとあまり関係なくなっちゃいますね(^^;)
更には、地元は最近8月最終週から新学期が始まるので、
職場で会う子どもたちとの「宿題終わったー?」「まだー!」の会話も前倒しです(笑)。
平成最後の夏。
そんな時代の流れにもちょっとしみじみしつつ、8月の観劇記録は8月のうちに!ということで、
先週の観劇記録、最後の1個、行ってみます!


SHINKANSEN☆RS「メタルマクベス」disc 1

2018.8.23 ソワレ IHIステージアラウンド東京 17列20番台

出演:橋本さとし、濱田めぐみ、松下優也、山口馬木也、猫背椿、粟根まこと、植本純米、
    橋本じゅん、西岡徳馬、山本カナコ、磯野慎吾、吉田メタル、村木仁、冠徹弥生、富川一人、
    小沢道成、穴沢裕介、Erica、見目真菜、斎藤志野、鈴木智久、鈴木奈苗、橋本奈美、
    原慎一郎、山﨑朱菜、山﨑翔太、米花剛史、渡辺翔史、藤家剛、工藤孝裕、菊地雄人、
    熊倉功、あきつ来野良、横田遼、北川裕貴、紀國谷亮輔


2006年初演のこの舞台。
髑髏城の後に、鋼鉄城が回ることになると聞いたときには、
それはCDもレコードも回るからぴったりだよね、と思わず笑ってしまいました。
で、今回disc 1を観てまいりました。
事前情報で、髑髏城以上に回る、というのを目にしていたので、
回転に弱い私は戦々恐々としていたのですが、髑髏城より酔わなかったよ・・・なぜ?!
感覚的には、髑髏城より回ってなかったような気がするんですよねー。
1シーン1シーンが長かったのかなあ。
映像がさらにパワーアップしていて、まさにアトラクションを楽しんでるように感じたから?
というよりも、4時間があっという間に感じるくらい面白かったせいもあるのかもしれません。
上演時間4時間にも身構えていたのですが、1幕が終わったときには、正直「あれ?もう?」って思ったし、
2幕も本当にあっという間だったように思います。
ちょっと冗長かなあ、と思うシーンはもちろんあったし、
個人的にあまり好みでないシーンもあったのですが(え)、
それでも最後の瞬間まで一気に走り抜けていくあの疾走感に、見事に連れ去られました。
Jr. が「明けない夜は長い つまらない芝居は長い」って歌ってたけど、
面白い芝居は逆に短く感じるのを、改めて実感いたしました。

疾走感と言えば、あの円形のステージを、バイクが走っていたのにはびっくりしました!
あれ、排気ガスの匂いがしてたから、ほんとに走っていたんだよね?
劇場の中でバイク走らせてもいいんだ?!って、心底驚きました。
髑髏城ではみんなひたすら自分の足で走っていたのに(某一輪車とローラーブレードは除く)、
今回はあの円周を走るのは主にバイクだったように思います・・・もしや、役者の年齢を考慮した?(え)
いやだって、主要キャストの平均年齢、結構高かったですよね?
でも、若者の暴走ではなく、そういう“大人”な人たちが堕ちていく物語だったから、
余計にぐっとくるものがあったようにも思うのです。

思慮深く、人に慕われ、自身に満ち溢れているかのように見える一人の男。
その男の持ついくつもの顔は、けれど全て彼自身であり、
その男が堕ちていく地獄は、けれど彼自身が選んだ道だった―――

さとしさん演じるランダムスターは、ほんっとうにかっこよかったです!!
出てきた瞬間、思わず拍手しちゃいそうになりましたもの。
あの歌詞が、もうまさにその通り!って思わせてしまう説得力、さすがです(笑)。
変顔とか、冠くんの歌に乗せて戦況が語られるシーンでのお茶目な様子も、
妻に甘える様子や、妻の勢いに押されて戸惑う弱さを感じさせる様子も、
深い苦悩と、激しい恐怖と、暗い後悔に苛まれながら、自分自身を見つめ受け入れていくその様子も、
最後の戦いでの、全てを自分の中に納めたかのような静かな覚悟を感じさせる様子も、
最初から最後まで、目を離すことができませんでした。
ランダムスターが歌う曲に、♪スコーピオンハート~俺の心はサソリでいっぱい というのがあるのですが、
でもって、その歌詞が、物語が進む中で歌われるたびに変わっていくのですが、
それはまさに、彼の心を満たすものの変遷の物語だからなのだなあ、と思った。

魔女の予言に呼び起こされたダンカン王への叛心。
頂点に上り詰めたはずなのに彼を苛む猜疑心。
自分の―――妻の未来を守るために沸き起こる闘争心・
愛情すらも塗り替えてしまうような、妻に対する恐怖心。
けれど、妻を亡くした後に彼の心を満たしたのは呆然とするほどの悲しみであり、
そして、自分の中にある殺意を認めた彼の心を満たしたのは、多分闇のような絶望だった。

そうやって、彼の中に満たされるものがどんどん変わっていって、
その感情に蝕まれるように、彼自身が壊れていく様が、観ていて本当に悲しかった。
最期、何かに憑かれたようにギターを弾きながら電気を請うその姿が、
破滅を望んでいるようにも、破滅に抗っているようにも見えた。
最後の瞬間、ランダムスターは微笑んでいたんだろうか。
彼の心を最後に満たしたものは、一体何だったんだろう―――


濱田さんのランダムスター夫人は、いささか苛烈ではあるけれど、
基本的には愛情深い普通の女のように感じました。
鮮烈な美しさ。
激しい気性。
それを裏付けるかのような素晴らしい歌声。
でも、私には、彼女はとても小さな一人の女に見えた。
決断できない夫を罵り、自らその手を血に―――罪に染めたけれど、
彼女はただ、夫との未来を望んだだけだったんだろうなあ、と思う。
未来を望んで、けれどその手段を間違えた。
大きな箱には大きな幸せがあると信じて、その箱の中には悪魔がいることを知らぬまま、
手の中に在った小さく美しい箱を手放した。
こんなはずじゃない―――
徐々に壊れていく彼女は、声にならない声でそう叫んでいるように見えました。
それがなんだかとても悲しかったなあ。

エクスプローラー役のじゅんさんは、振り切れた演技をされていても、
根底に揺るがない何かが感じられて、そのことにとても安心できました。
ランディとは違って、彼の中を満たすものは常に変わらなかったんじゃないかなあ。
まあ、演技は自由奔放でしたけどねー。
下手通路側の席だったので、♪SAY YES を歌いながら階段を登ってくるじゅんさんを、
間近で見ることができましたv 生声も聴いちゃったよ!
ランディの言う通り照明から思いっきり外れてたので、顔は見えなかったけど(笑)。

グレコ役の山口さん。
久々に拝見した気がしますが、この舞台の中で新感線テイストと正統派シェイクスピアテイストを、
きっちり融合させていたのは凄いなあ、と思いました。
彼が喋り出すと一気にシェイクスピアっぽくなるんだけど、マグダフ山口の時は全然雰囲気が違ってて!
最後のランダムスターとの殺陣、帝王切開の下りではやっぱり客席から笑いが起きてましたね。
私も初めてこの台詞を聞いたときには思わず笑っちゃったのですが、
シェイクスピアの時代のことを考えると、母の腹を破って生まれた、というのは、
生まれながらにもの凄い業を背負っているということとなのだと思う。
もしかしたら、本人は拭えない罪を背負っていると感じていたのかもしれない。
そんな風に思っていたら、最後の彼の姿に思わず泣けてしまいました。
瓦礫の中から出てきて、ランダムスターの腕を掲げて「これが悪魔の右腕だ!」と叫ぶ逆光の後ろ姿は、
まさに母の腹を破って生まれてくるその瞬間のようにも見えて―――
彼は、また一つ大きな業を背負ったんだなあ、と思った。

レスポールJr.役の松下くん。
初演の森山くんほどのインパクトはありませんでしたが(特に元きよし)、
1幕の弱くてお調子者で頼りない王子が、絶望と哀しみと怒りを経て、
パール王の居城に再登場した時には、覚悟を決めた大人の顔になっていたのがとても印象的でした。
これはグレコも嬉し泣きするよね、と思った。
まあ、その後マーシャルと一緒にいるときは、元の少年の顔がのぞいていたけど(笑)。
それにしても、♪明けない夜はSO LONG は、ほんとに観てて気持ちが高揚するなあ、と思う。
松下くんのダンスもかっこよかったですv

レスポール王の西岡さん。
あの濃い感じが絶妙なレスポール王でした。
冒頭のはっちゃけっぷりも素晴らしく(笑)。
でも、マホガニー城でランダムスターと言葉を交わしたときの、
全てを見通しているかのような眼差しに、ちょっとぞくっとしました。
ああ、この王様はランダムスターの中にあす叛心も怯えも野心も、全てわかっている。
わかっていて、それでもなお、彼にその背を見せるんだ―――そんな風に思いました。

3人の魔女は、今回は植本さんと猫背さんと山本さん。
植本さんは、最初出てきた時、なんて綺麗なんだ!と思ってしまいました。
遠目だったからかな(^^;)
でも、魔女たちのテンションを思いっきり引っ張り上げるその勢いが素晴らしかったです!
猫背さんは、たぶん初めて見る役者さん。
魔女のテンションと、グレコ夫人の時のしっとりした感じのどちらも素敵でしたv
山本さんは、魔女もですが老婆のインパクトが強かったかなー。
というか、観終わってからキャスト確認して、あの老婆は山本さんだったんだ!って思った(^^;)
あの老婆はねー。
全てが破壊される世界の中で、王も息子も失って、それでも生きていかなくてはいけない。
その事実の残酷さと、「また生き残ってしまったか」的な台詞の、
悲しみも絶望も怒りも全て超越したかのような静けさの対比が胸に迫りました。

最後に生き残ったのは、この老婆と、マーシャルと、冠くんとグレコだけ、なのかな?
しかたないなー、という感じでマーシャルが予言通り王になるみたいだけど、
この国はこの後どうなっていくのかなあ。
それがなんだか気になりました。
でもまあ、グレコがいればなんとかなるか!(え)

そんなこんなで、思い返してみるととんでもない内容の舞台だったと思うのですが、
その勢いに巻き込まれるようにとっても楽しませていただきましたv
この後disc 2、3と続いて行くわけですが、演出は変えてくるのかな、そのままなのかな?
役者さんのカラーがかなり異なるので、
敢えて同じ演出で違いを見せてもらうのもいいなあ、なんて思ってみたり。
とりあえず、油断せずに三半規管を鍛えて臨みたいと思います!

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この記事へのコメント

みずたましまうま
2018年08月31日 23:33
2列後ろのほぼ同じ位置で見ていたようです(笑)。劇場の中央に近いと酔わずにすむみたいですね。

面白い芝居は短い、に同感でした。

読みながら、さとしさんやめぐさんの表情が鮮明に浮かび上がって泣きそうです。・゜゜(ノД`)
disc1は登場人物たちが大人だから、彼らが見た夢の重さと儚さと切なさが、より強調されるのかもしれませんね。

レスポール王とランディの会話は、1幕も2幕も鳥肌ものでした。

さとしさんとめぐさんは、並ぶだけで長年寄り添った夫婦感があって。
それが2幕で互いが壊れて離れていくのがすごく辛かったです(でもあの距離感と包容力、特に「キャラメルの歌」と、マクベスとローズのブルースは切なくて好きでした)

年の差夫婦のdisc2、30代で野心に燃えそうな年代のdisc3も楽しみですね。
恭穂
2018年09月03日 22:34
みずたましまうまさん、こんばんは。

さとしさんも濱田さんも凄かったですね。
大人だからこその切なさ儚さ、本当にその通りだと思います。
キャラメルを食べた後のランダムスター夫人の台詞には、本当に泣かされました。

disc2はチケット取っていないのですが、どこかで観にいけるといいなあ、と思っています。
disc3のお二人には、思いっきり暴走して欲しいですねー(笑)。

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