キセキの夜

満月の輝く長月の夜。
古ぼけた雑貨屋で起きた奇跡を形作ったのは、
時間を越えて交差した、沢山の人生の軌跡。


あちゃらかきっず 第28回公演
「ナミヤ雑貨店の軌跡」

2018.9.9 足利市民プラザ文化ホール 1階1列20番台

原作:東野圭吾
脚本:成井豊
演出:田島将雄
出演:いしかわのたかまろ、峰岸宏樹、七五三木貴宏、Kansai、あやぴょん、吉田道江、つねきち、
    とっきー、雨宮潤、さと、いとーーーーーーー、井上半端ないって、なほ、MIRAI、たてやまみずし、
    KAGAMI、KUMAKUMA、等松弘基、佐藤駿


先日久々に会ったお友達に誘われて、彼女が所属している劇団の公演を観てきました。
所属といっても今回は出演しておらず・・・
最前列かぶりつきで役者さんにプレッシャーをかける彼女に便乗して、
私も最前列で観劇させていただきました。
あちゃらかきっずさんの舞台を観るのは2度目。
一度目はもう15年以上前に、お友達が出演されている時。
確かスパイっぽい内容だったような記憶があるんだけど違うかなー(^^;)
テンポよく展開する物語が印象的だったような気がします。

で、今回。
東野さんの人気小説をキャラメルボックスさんが舞台化した時の脚本を使っているのかな。
映画かもされていますが、私は小説にも映画にも触れていないので、
まっさらな気持ちで楽しむことができました。
というか、最前列で思いっきり大泣きしたのは私です。
実はカーテンコールでも涙ぐんでしまって、顔をあげて拍手するのがちょっと大変だったり(^^;)
泣けた理由はたくさんあります。
原作がいい、というか泣かせる内容。
脚本がいい。
そもそも私が涙もろい(年のせいとも言う)。
でも一番は、演じているみなさんが、本当に真剣に、まっすぐに、懸命に自分の演じる役に向き合っていて、
そのことが、躓いたり悩んだり後ろ向きになったり頑なになったりしながらも、
自分の未来に向かって、そして誰かの想いを背負って懸命に生きる登場人物たちと、
とても深くつながり重なり合っていたからなのかなあ、と思います。

物語の舞台は、とある街にあるもう閉店した雑貨屋さん。
ある夜、訳アリの3人の男―――敦也(いしかわのたかまろ)、翔太(峰岸宏樹)、幸平(七五三木貴宏)が、
朝までの隠れ場所として、その雑貨屋に忍び込みました。
始発電車が出る数時間を凌ぐだけのはずだった彼らは、
閉じられた店のシャッターから投じられた一通の手紙をきっかけに、不思議な出来事に巻き込まれます。
その手紙に書かれていたのは、「魚屋ミュージシャン」を名乗る男からの悩み相談。
家の中にあった古びた雑誌によると、このナミヤ雑貨店の店主・浪矢雄治(Kansai)は、
本業の傍ら、悩み相談を受けていたらしいのです。
子どもたちの頓智勝負のような質問にも、深刻な悩みにも、
書いたその人のことを考えながら丁寧に描かれた回答は、
裏口の牛乳入れに入れられ、質問者がそれを開店までに受け取っていく、というシステムだったよう。
でも、それはもう30年以上前のことのはずでした。
けれど、今、彼らの下に届いた悩み相談の手紙。
彼らは戸惑いながらも、その質問に彼らなりの答えを書いて牛乳入れに入れました。
すると、間髪置かずにまた返事が届き―――何度か手紙をやりとりしながら、彼らは気づきます。
この手紙を書いた人は、彼らの生きる今―――平成28年ではなく、
過去―――昭和58年に生きる人であることに。
9月13日の0時から夜明けまで。
過去と未来を繋ぐ、その不思議な体験は、いつしか彼ら自身にも深く関わってきて・・・

というような物語。
舞台の上には大きなナミヤ雑貨店の店舗。
回転して店の外と中を見せてくれるこの大きなセットが、
夏休みの工作的な団員さんの手作りと知ってびっくり!
こんな凄いもの、手作りできるんだ・・・!
そのセットを中心に、上手下手にテーブルやソファなどを出し入れしてシーンを作りながら、
物語は進んでいきました。
昭和58年、平成14年、平成28年・・・いくつもの年代の、幾人もの人の、
それぞれのエピソードが複雑に交差しながら、最後に一つの結末に収束していく様は、
こういう時間軸の交錯する話が大好物な私にはとても楽しくv
あの言葉がここに繋がるのか!とか、あの人とこの人にこんな関係が!とか、
物語が進むにつれて、回収されていく伏線や、明らかになる新たな局面に、本当にワクワクしました。
正直なことを言ってしまえば、そこはアマチュア劇団。
台詞を噛むことも多かったし、棒読みっぽい感じの方もいたし、
ちょっとハラハラすることも無きにしも非ず・・・
でも、そういう部分を補って余りある魅力的な瞬間がたくさんあったように思います。

印象に残ったシーンや泣けたシーンはたくさんありましたが、
一番印象的だったのは、浪矢さんと共に物語の始まりを作った皆月暁子役のあやぴょんさんの表情かなあ。
たぶん、凄く若いお嬢さんなのだと思うし、一生懸命さが前に出ちゃうように感じた部分もあったのだけど、
彼女の浮かべる笑みが、本当に優しくて、純粋で、まっすぐで・・・この物語の象徴のように感じました。
若き日の浪矢さんと恋に落ち、駆け落ちを決意しながら、彼の人生を盾に父親に阻まれ、
彼との恋を諦めて、でも一生独身で、戦災孤児たちを集めた児童養護施設 丸光園を作った暁子さん。
この舞台では、最初の駆け落ちシーンで出てきた後は、終盤でしか出てこないのだけれど、
最後、浪矢さんの後ろ姿を見つめるときの表情や、
丸光園が火事で半壊したあと、姉が見守ってくれたから子どもたちは無事だった、と言う、
二代目園長の妹・良子(吉田道江)と、束の間向き合って視線を交わしすれ違うシーンの表情が、
とても印象に残りました。
というか、この瞬間、最初から最後まで年配の装いだった良子園長先生が、
なんだか少女に戻ったように見えて、なんだか泣けてしまいました。

泣けたと言えば、雨宮さん演じる克郎こと魚屋ミュージシャンさんの最期と、
それを受けてのなほさん演じるせりさんの歌声にも泣けたなあ。
幼いせりちゃんが鼻歌を歌う声が本当に綺麗で、
自分の曲を瞬時に耳コピした彼女に驚きながら、才能というのもを目の当たりにしたような、
克郎の複雑な表情も良かった。

Kansaiさん演じる浪矢さんは、最前列で観ると老けメイクにちょっと違和感がありましたが(え)、
途中でそんなことは気にならなくなるくらい、素敵な浪矢さんを見せてくださったように思います。
なんというか、暁子さんと別れてからの浪矢さんの人生が、
あの最後の手紙の言葉がなくても、ちゃんとわかるような気がした。
まっすぐに。
丁寧に。
相手の欲しい言葉を与えるのではなく、相手の幸せを願う言葉を紡ぐ。
それは、暁子さんに対しても、悩み相談をしてくる相手にも一貫していたように思う。
だからこそ、グリーンリバーさん(吉田道江)の顛末に彼は心を痛めたのだし、
だからこそ、暁子さんはそんな彼のためにあの奇跡の一夜を作ったんじゃないかなあ、と思う。
あ、舞台上でも原作でも、暁子さんが関わっているとは明言されていないけど、
個人的に、そういう設定で観てました(笑)。

雑貨店での、浪矢さんの最後の夜。
32年後に投げ入れられた手紙は、浪矢さんの手に届き、
その裏側の32年前に投げ入れられ手紙は、敦也たちの手に届いた。
浪矢さんが手にし、答えた沢山の悩みの中で、丸光園に関わる手紙はきっと僅かだったでしょう。
僅かで、でも暁子さんが紡いだ確かな縁の糸が、知らぬままに浪矢さんと敦也たちをつないだ。
敦也たちが手にした手紙が、遠く近く丸光園に関わるものだったことも、多分偶然ではない。
背中合わせになった32年の時を挟んで彼らの時間は交叉した。
敦也たちが書いた手紙の返事は、克郎を通して「水原せり」というミュージシャンを生み出し、
彼女の存在は、丸光園での彼女の後輩である敦也たちに光を与えた。
敦也たちが次に書いた手紙の返事は、武藤晴美(いとーーーーーーー)という一人の少女の未来を拓き、
晴美さんを通して丸光園を救い、巡り巡って敦也たちの未来を拓いた。
敦也が試しに投げ入れた白紙の便箋は、浪矢さんの最後の回答となり、
その答えは敦也たちの未来を照らした。
大きく弧を描くように背中合わせの時を結んだそれぞれの人生の軌跡が、
重なり合い、すれ違い、寄り添い、向かい合い、結び合い、一つの大きな花を咲かせるように、
彼らそれぞれを未来へと押し出した。
それは確かに、奇跡と呼ぶにふさわしいものであったと思う。

敦也たち三人を演じた役者さんは、多分原作の年齢設定からは少し年上なのだと思う。
原作(読みました!)だと、せいぜい20代前半なイメージだったから。
舞台を観た時はまだ原作を読んでいなかったので、見た目そのままの年齢設定で観ていたのだけれど、
途中でふっと3人が少年のように見えるようになりました。
それぞれに喪失を抱き、それぞれに過去に絶望し、それぞれに未来を悲嘆して、
それでも守りたいもののためにただ前に進む彼ら。
確かに、彼らの地図は白紙なのだと、
その白紙の地図が、彼らにとてつもない不安と恐怖を与えていたのだと、
そして、浪矢さんの言葉が、その不安と恐怖を振り払ったのだと。
浪矢さんの手紙を読む3人の表情の変化がとても鮮やかで、やっぱり泣けてしまったのでした。
最後に3人が晴美さんと向き合うシーンがED曲に乗せて描かれました。
あの時の晴美さんの笑顔が本当に優しくて・・・
晴美さんと3人の不思議な縁を、多分3人は晴美さんには明かさないと思う。
晴美さんが、3人を許すのかどうかもわからない。
でも、あの優しい笑みをたたえた晴美さんと、強い目を取り戻した3人は、
きっとそれぞれのやり方で丸光園を守り、それぞれの足で未来に進んでいくんだろうなあ。
そんな風に感じられるラストシーンだったと思います。

それにしても、晴美さん役のいとーーーーーーーさん、めっちゃかっこよかった!
秘書(かな?)な外島さん(等松弘基)さん、ハードルは高そうだけど、頑張って‼と思った(笑)。
そういえば、外島さんの車のキーにぐんまちゃんがついていたり、
舞台の町が前橋市になっていたりと、地元民には楽しいネタがちょこちょこありましたv
まあ、海に落ちるのはちょっと無理があったけど(^^;)
克郎のおじさんや博多の校長先生を演じていた井上さんもいい味だしてたなー。
実は、校長先生のシーンは、微妙に私の涙ポイントに嵌ってしまいまして、
笑い泣きという苦しい状況に陥りました・・・ほんと半端ない(笑)。

そんなこんなで、素敵な舞台をしっかり堪能させていただきました。
昨日当直をしながら原作を読んだところ、
登場人物の性別が変わっていたり、エピソードがまとめられていたりもあったけど、
読みながらこの舞台のシーンが脳内再生されました。
映画も観てみたいけど、三次元のナミヤ雑貨店はしばらくこの舞台のみなさんにしておきたいので、
地上波で放映されるのを待とうかなあ。
とりあえず、機会があったらまたあちゃらかきっずさんの舞台、観てみたいな、と思います。

あれ?
そういえば、今日は9月12日ですね。
これから数時間後、9月13日の0時から夜明けまで。
どこかにあるあの雑貨店で、いつかの過去と未来が、誰かの人生の軌跡が交差しているのかもしれません。
そう思うと、今夜はちょっと良い夢が見れそうな気がするなあ。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック