1.4秒の飛翔

以前、有川浩さんの小説を読んだときに、
潜水艦は沈むんじゃなくて潜るんだ!と力説されていたのがとても印象に残りました。
そうか、同じ水底に在るのでも、沈むと潜るでは全然意味合いが違うなあ、と。
この舞台を観た時、ふと、そのことが思い浮かびました。

彼らの1.4秒も、きっと“落ちる”のではなく、“飛ぶ”なんだろうなあ。


「DIVE!!」The STAGE!!

2018.9.28 ソワレ THEATER 1010 1階3列10番台

出演:納谷健、牧島輝、財木琢磨、杉江大志、高橋健介、名塚佳織、唐橋充、安達勇人、宮城紘大、
   瀬戸祐介、西野太盛、廣野凌大、大島涼華、藤岡沙也香、光宣、
   AKI、柏木佑太、田嶋悠里、西田直樹、平山唯斗、渡辺誠也、和田啓汰


原作は水泳の飛込競技を題材にした森絵都さんの小説。
今回の舞台は、アニメ化の舞台化なので、カテゴリーとしては2.5次元らしいです。
私は、原作は読んでいたのですが、アニメも映画も見ておらず、
原作が好きだったのと、主演が納谷くん、ということでチケットを取ったので、
全くそういう認識ではなく、原作の舞台化、という認識での観劇になりました。
で、結果どうだったかというと、
原作のエッセンスを、大切に、丁寧に、真摯に描いたとても素敵な舞台でした。
きっと、アニメをご覧になってる方だと、キャラクターのビジュアルの完成度とかでもたのしめたんだろうな。
私は、アニメのビジュアルの知識はなかったのですが、
それでも、舞台の上に生身の彼らがいる!!と本当に嬉しくなりました。


存続の危機に陥ったダイビングクラブ(DC)で、そこに所属する少年たちと、
突然現れた新コーチ、彼女が連れてきた未知のダイバーが、
存続の条件である高飛び込みオリンピック代表枠を目指す青春小説なわけですが、
そこはやっぱり森さん!(笑)
高い目標のために、否応なくそぎ落とされていく学生としての“普通の”日常。
残酷なまでに明らかな才能の差。
大人たちの思惑に翻弄される少年たち。
ぎこちない、けれど確かに存在する家族の絆。
ただ、何かを超越するために、ひたすらに前を見つめるその覚悟―――
そういったものが、決してきれいごとではなく、けれど瑞々しく描かれた物語。
舞台表現では、しかも2.5次元というジャンルでは、
それは必ずしも“リアル”とイコールではなくて。
でも、あの日、あの舞台の上にいたのは、
確かに私の大好きな小説の中で、傷つき、戸惑い、迷いながらも、
決して立ち止まることのなかった生命力に溢れる“彼ら”でした。


知季役の納谷くんは、小夜ちゃんの印象がとても強くて。
でも、役を外れた時の素の笑顔が凄く素敵な子なので、
彼が全開の笑顔を見せる舞台を観ることができて感無量でした。
というか、納谷くん、やっぱり脱いだら凄かった!(え)
確か、体脂肪率一桁とどこかで読んだ気がするんだけど、
一つ一つの筋肉の形がわかるような見事な筋肉で、
美術室や理科室(え)に飾っておきたいくらいでした(笑)。
というか、筋肉の質って、人によって本当に全然違うんだなあ、と思った。
ふくらはぎの形とか、全く違うの。
納谷くんは、凄くたくましい感じで、財木くんはそれこそ文字通り若鹿のようにすらっとしてました。
・・・役に話を戻しまして。
飛込競技に強く心惹かれていながら、その気持ちの方向性が決まっていない知季。
彼が、麻木コーチ(名塚佳織)に出会って、その類稀な素質を見抜かれて、
更に強く、そして深く競技に嵌っていく姿を、とても鮮やかに見せてくれました。
競技に心血を注ぐことで、失っていく沢山のもの―――
自分のことを好きになってくれた彼女、
一緒に飛び込みを続けてきたはずの友達、
学校の友達との、普通の中学生としての日常。
それらが、自分から削ぎ落とされ、引き剥がされていく痛みに打ちのめされながら、
自分の中に湧きあがる抑えきれない欲望―――自分の持つ何かを形にしたい、
何かを、超越して行きたい―――その思いを、見据えて、受け入れて、前に進む力への昇華していく知季。
彼の強さ、惑い、怒り、喜び、覚悟―――
その一つ一つの感情がとても鮮やかで、前を見据える瞳の強さに戦慄する思いでした。
なんというか、無垢なのに獰猛な、野生の獣の子どもみたいだった。
ラストシーンでのインタビューに答える彼の姿に、
この2時間の物語の全てがそれこそ走馬燈みたいに思い浮かんで、なんだか泣けてしまいました。
納谷くんは、多分知季みたいに、凄く稀有なものを持った人だと思う。
そのキラキラしたものが、これから先、曇ることなく、どんどん役者として輝きを増してくれるといいいなあ。
原作を知らない2.5次元舞台にはなかなか行く勇気がありませんが、
2.5次元に限らず、これからも彼の活躍を応援していきたいと思います。

要一役は、牧島くん。
初めて見る役者さんでしたが、ヒーローではない、等身大の高校生としての要一の姿を、
とてもしなやかに見せてくれたように思います。
正直なことを言ってしまえば、原作からのイメージとはちょっと違っていたのですが、
(それこそ、彼はもっと超越した存在のように思っていた)
惑い、悩み、それでも自分の中の譲れない何かを貫く姿は、
もしかしたら、やっぱりヒーローなのかもしれないなあ、と思ったり。
最後の、ピンキーもといレッド山田(笑)とのシーンは、凄いほのぼのしましたv

というか、山田役の安達くんもいい演技をしていたなあ、と思います。
ポジション的には、三枚目的な位置なのだと思うけれど、
でもって、前説や諸々のテンションに、実はちょっと付いていけない部分もあったのだけど、
終盤の大会のシーンで、要一をわかりにくく励ます彼の、
軽い物言いとは裏腹に真摯な表情、とても素敵でした。

いい演技していた、と言えば、陵役の杉江くんも凄く良かった!
それこそ、私は鯰尾くんな杉江くんしか観たことがなかったのだけれど、
まさに花が綻ぶような明るい彼の笑顔には、どこか陰のようなものがあるように思っていたのね。
私の感じていたそんな彼のそこはかとない陰の部分が、
凄くいいニュアンスになって、陵という役に嵌っていたように思います。
いつか、誰かが自分を見つけ出してくれる。
自分の中の、輝く何かを引き出してくれる。
それは、きっと誰もが一度は夢見ることなのだと思う。
でも、その夢が現実になることは、奇跡にも等しくて。
選ばれた友達と、選ばれなかった自分。
その残酷な現実の前で、足掻いて、傷ついて、怒りにまみれ、そして全てを諦めた。
そういう陵の立ち位置は、多分読者や観客に寄り添うもので。
だから、彼がしっかりと描かれることって、この舞台ではすごく大事だと思うし、
彼はその役割をしっかり全うしていたと思います。
後半では、幸也の役割も担っていたわけなのだけれど、
あんなにも―――誰よりも自分自身を傷つけていた彼が、
ちゃんと未来へと進んでいる姿を見せてくれたことに、なんだかとてもほっとしてしまいました。
大げさかもしれないけど、陵の存在は、絶望は全ての終わりではないのだと、
そのことをしっかりと見せてくれたように思います。

知季と陵の間で飄々としながら、でもしっかりとその存在を見せてくれたのが、
高橋くんのレイジだったと思います。
そういえば、蜂須賀さん役やってたんだよね、この子!
ちょっと浮世離れした感じは、もしかすると共通するかも?
原作で、実は何気にレイジがとってもお気に入りだったので、
彼の葛藤とか、飛躍とか、そういうものをちゃんと見せてくれたのが嬉しかったです。
もう一人のとうらぶ関係者(笑)な瀬戸くんの松野くんは、なんだか凄い癒し系だった気がします。
影が薄い、という設定で、結構邪険に扱われてたと思うのだけど(山田ほどじゃないか・・・)、
ちょっと困った感じに眉根を寄せた笑顔で、ほわほわと舞台上を行き来する姿に
こっそり癒されてました(笑)。

飛沫役の財木くんもとうらぶ関係者でしたね。
飛沫って、大倶利伽羅にちょっと通じるところがあるように思うので、
(馴れ合うつもりはないけど、いつの間にか馴れ合っちゃう不器用で優しいところとか)
配役を知った瞬間、ぴったり!と思いました。
私の脳内ビジュアル的にもぴったりv(笑)
一見大人で、ちょっとミステリアスな感じの飛沫ですが、
物語が進むにつれて、彼の中の幼さとか、不安とかが明らかになって、
更にはそういう揺らぎが徐々に揺るぎなさに変わっていくのが良かった。
祖父の飛び込みの映像を見るシーン、
舞台中央に恭子と一緒に座って、客席側にTVがある体で描かれるんだけど、
彼の表情が、不安から驚きに、高揚に、安堵に、そして決意に変わっていくのが、
本当にクリアで、ちょっとびっくりしてしまいました。
というか、その時の恭子役の藤岡さんの表情がめっちゃ良かったんですよ!
すぐ隣に寄り添って、同じ映像を見ているのに、
飛沫の気持ちは、自分とはかけ離れた場所へ向かっていっている。
その事実に対する悲しみと、そして同じくらいの喜びが彼女の中にはあって・・・
その複雑な泣き笑いの表情がとても自然で、凄く綺麗だった。
原作で描かれた恭子のその後の紆余曲折は、さすがに舞台では描かれないけれど、
あの表情には、それを彷彿とさせる奥行きがあったように思います。

麻木コーチ役の名塚佳織さんは、とんでもなくかっこよかったです!!
いや、正直この舞台の中で、メンタル的に一番かっこいいのは彼女だった気がする(笑)。
まあ、他は中学生高校生役だからね。
彼女の凛とした強さが、とても印象的でした。
腰に手を当てて立つ姿も、その姿勢での台詞の口跡の良さも、素晴らしくv
彼女の言葉は厳しいけれど、ちゃんと愛が感じられたなあ。
後から確認したら、アニメで同じ役をされてた声優さんなのですね。
納得です!

冨士谷コーチ役は唐橋さん。
眼鏡をかけてない唐橋さん初めてだったので、凄い新鮮でした(笑)。
最初、唐橋さんだってわからなかったし(^^;)
凄く静かで抑えた演技だったのだけど、だからこそ、繊細な表情がとても印象的でした。
ラスト近くの、要一がダイブする直前に叫ぶあのシーンは原作でも大好きなので、
下手席で近かったこともあって思わずガン見しちゃったんですが・・・ほんと泣けた。


舞台化が決まったとき、10mの台からの飛び込みを、舞台の上でどう表現するのか、
と思っていたのですが、なるほどこう来たか!という感じ。
飛び込み台を模したセットが二つ、その先から役者さんが飛び込むのですが、
その先は壁状のセットの陰になっていて、すぐに姿が見えなくなるんですね。
で、その先は照明や水に飛び込む音で表現したり、
ここぞ!という飛び込みでは、舞台後方の少し照明を落とした場所で、
パフォーマーの方が、ワイヤーアクションでのスローモーションで演技を見せてくれるわけです。
小説を読んだだけで、実際の競技は見たことがなかったので、
なるほど、これはこういう型なのか!とかなり楽しく拝見しました。
というか、飛び込む瞬間を見せてくれる役者さん、
一瞬とはいえ、本当に綺麗な型を見せてくれて、感嘆しちゃいました。
たぶん、壁の陰にはマットとかがあるんだと思うけど、
あれだけ綺麗な空中姿勢を、演技をしつつ見せてくれるって、本当に凄いなあ・・・!
パフォーマーの方も、ワイヤーアクションや最初の飛び込みのデモンストレーションだけでなく、
セットの移動とかもされていて、しかもちゃんと演技をしつつなんですよ。
本当に大活躍でした!


そんなこんなで、とても楽しめた舞台でした。
こういう風に、原作を大事にして、でも舞台だからこそ見える景色を大切にしてくれる舞台、大好きです。
公演自体はもう終わっているようですが、怪我なく走り抜けられたようで良かった!
役者さんも、スタッフのみなさんも、お疲れ様でした。
再演があるのかどうかはわかりませんが、もしあるなら、
原作ファンの方にも是非観ていただきたいなあ、と思います。

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