WISH

先日、仕事関係の講演会で、行動心理学のお話を聞く機会がありました。
テーマは、不公平を嫌うのは人間だけか、というもの。
マウスのいろんな実験から、正の共感や負の共感、不公平嫌悪、不公平選好などが解説されて、
非常に面白く聴講しました。
印象に残った内容はいろいろあったのですが、最後にあったこの言葉もその一つ。

「相対的社会比較=WISH」には「定常状態=満足」がない。

WISHという単語には、祈りとか願いとか希望とか、
そういう漠然としたプラスの印象があって、ちょっと意外に思いました。
でも同時に、満足がない、ということにも凄く納得してしまったのです。

今生きるここではない、違う場所で。
今とは違う、明るい未来を。
今手にしていない、幸せを。
今を変えるための、奇跡のような夢を。
人は願い、祈り、そのために努力する。
でも、手にしてしまった未来は、幸せは、“今”になってしまうわけで。

2年ぶりにこの4人を観た時、なぜかこの言葉を思い出してしまいました。


「JERSEY BOYS」 TEAM WHITE

2018.9.29 マチネ シアタークリエ 4列10番台

出演:中川晃教、中河内雅貴、海宝直人、福井晶一、太田基裕、阿部裕、畠中洋、綿引さやか、
    小此木まり、まりゑ、遠藤瑠美子、大音智海、白石拓也、山野靖博、石川新太


2年前の初演で喝采を浴び、数々の賞を取ったこのミュージカル。
再演されたらできる限りチケットをとって通うんだ!と思っていたんですが、
何気に仕事の忙しい9月・・・結局白組は1回しか観ることができませんでした(^^;)
しかも、そのあともろもろの事情で2週間以上観劇記録を書くことができず・・・
記憶もさすがに曖昧になってしまっているので、
今回は2チーム続けてさらっと役者さんの感想だけでも記録しておきたいな、と思います。

今回このチームで一番心惹かれたのは、実は中河内くんのトミーでした。
印象としては前回とあまり変わらないのです。
面倒見が良くて、情が深くて、責任感が強くて―――けれど愚かで幼い。
大きな借金を背負って、そのことが明らかになったときにデカルドさんに、
「どうするつもりだったんだ?」と問われて、
途方に暮れた表情で「気が付いたらこんな額に・・・」的なことを言うんだけど、
なんというか、中河内くんのトミーは、本当にその言葉通りだったんだろうなあ、と思う。
青組の伊礼トミーが、確信犯だったんじゃないかと思ったのとは対照的。
もちろん、その考えなしの行動は愚かすぎて庇いようもないし、
正座させて説教したい、というのは前回同様の感想なわけなのだけど(え)、
今回は、それも仕方がないなあ、と思えてしまったのです。

だって、彼はフランキーに夢を見たんだから。

劇中、メアリーとフランキーの結婚を語るときに、トミーは言いました。
「メアリーは、ここから抜け出したかった」(言葉は違うかも(^^;))
そして、その手段として、メアリーはフランキーを選んだ。
その時、トミーの口調には、どこか自嘲のようなものが混じっていたように思うのです。
この生活から抜け出す―――その夢を見たのは、トミーも同じだったのだから。

それよりも前。
トミーが投獄されている時、夜更けの協会でニックがフランキーに歌を教えるシーンがあります。
セットの2階で、ニックのアドバイスに導かれるように放たれる透明で力のある歌声。
この日、私は前方センターの席だったのですが、このシーンではほぼ真正面にトミーがいました。
リアルでは、この歌声を牢獄の中の彼が聞いているはずはない。
でも、一歩前に出て空を見上げるように佇むトミーには、確かにその歌声が聞こえていた。
その表情は、私にはなぜか祈っているように見えました。
逸材をみつけた歓喜でも、名を上げるという野望でもなく、
ただ静かに、どこか恍惚とした表情で空を見上げるトミー。
ああ、彼にとってフランキーの歌声は、まさに“天使の歌声”だったんだ。
自分を、この世界から救い上げてくれる、天使。
―――そして、トミーはフランキーに夢を見た。

その夢を形にするために、トミーは自分なりに頑張って頑張って。
でも、叶ってしまった夢は、次の夢を運んでくる。
決して満足することのない望みという深みに、トミーは嵌りこんでしまったんだなあ。
その姿に、私は怒りや呆れよりも、哀れみを強く感じました。
それはもしかしたら、フランキーも同じだったんじゃないかな、と思う。

アッキーのフランキーは、何というかもう別次元の存在だなあ、という感じ。
リアルな等身大の少年の中に、人知を超えた才能を持ってしまったら、
それは周りの人たちも巻き込まれざるを得ないよねー、と思いました。
でもって、そのことが、多分彼をどんどん孤独にしていった。
彼が周りに与える“夢”は大きすぎて。
無意識のままに、周囲を侵食していくその“夢”を、きっと彼自身はどうすることもできなかった。
ボブが加入したことで、格段に完成度の上がった楽曲。
駆けのぼるチャート。
一変する周囲の状況。
抜け出したはずの貧しい生活。
なのに離れていく家族の心。
自分の手には負えないそんな生活の中で、
最初から自分と共に在ったトミーの存在だけが変わらないはずのもので。
それはきっとフランキーにとって原点というか、よりどころだったのだと思う。
でも。
変わらない彼が、こんなにも小さな存在であることに、あの時フランキーはやっと気づいたのだと思う。
そして同時に、変わらない彼が、誰よりも何よりも大切で愛しくて―――
だからこそ、フランキーはトミーの借金を全て背負って決別を選んだんじゃないかなあ。
変わることのできないトミーを守るために。
だって、彼が一番変わっていく自分を知っていたはずなんだから。

フランキーとは真逆で、海宝くんのボブは、心底トミーのことが嫌いだったように見えました。
いやもうほんとに容赦なく嫌ってたよね?(^^;)
海宝くんのボブは、なんというか全然隙がない。
もちろん、最年少設定で悪いお兄さんたちにいろいろ教わっちゃう初々しさもあるんだけど、
最初から最後まで彼は優先順位がもの凄くしっかりしていた。
自分の未来に必要なもの、必要でないものの区別が明確で、
必要なものはどんな手段を使っても守るけれど、必要でないものにはとことん無関心。
フランキーに対してすら、純粋な友情はなかったんじゃないかな、と思うし、
トミーに対しては、嫌いというよりも嫌悪というくらいの感情で、
だからトミーが切れるなら借金背負うぐらい何とでもない、というような印象でした。
・・・すみません、めっちゃ穿った見方してますよね(^^;)
でも、海宝ボブは、笑顔でも目が笑ってなかったような気がするんですよねー。
そういうシビアさがあったからこその成功なんだろうなあ、とは思うのですが、
私にはちょっと怖い存在だったかなあ。
最後、ステージか去る前に言う台詞が、ほんとにしっくりしました。
うん、君が全ての元凶だ、って(笑)。
ボブが加入しなければ、いや、ボブがフランキーと組まなかったら、
きっと彼らはここまで有名にはならなくて、
もしかしたらバンドは解散してしまったかもしれないけれど、
そこそこの幸せを手にして、そこそこ満足な人生を送っていたんじゃないかなあ。

福井さんのニックは・・・フランキーに夢を見ていたのかどうかは良くわかりませんでした。
適度に才能があって、適度に要領が良くて、適度に悪さもして、
適度な距離感で、適度に夢を見る―――そんな風に見えました。
それは、凄く大人な対応なのかな、と。
そういうある意味安定感のあるニックに他の3人は無意識に甘えていたのかもしれないし、
ニック自身も大人の余裕で見守っていたら、気が付いたら色々溜めこんでいた感じ?
でも、そういう大人な彼だからこそ、
ボブが自分たちそれぞれをどういう目で見ているのか知っていたし、
フランキーの危うさもわかっていたけど、
トミーの子どもっぽさにも我慢して、彼なりにグループの最善を模索していたんだと思う。
でも、その彼の努力は裏切られた。
ニックが去っていく前、マイクスタンドに上着をかけるシーンがあります。
福井さんのニックは、本当に無造作に、投げ捨てるように上着をひっかけた。
どんな表情よりも、どんな怒号よりも、一瞬のそのしぐさこそが、彼の本心を表しているように見えて。
その絶望の―――いや、愛情の深さに、なんだか呆然としてしまいました。


そうやってグループがバラバラになった後に歌われる、♪Can’t Take My Eyes Off Youは、
やっぱりその孤独の深さに見るたびに泣けてしまいました。
曲の途中から、舞台の奥に「FOUR SEASONS」の電飾が浮かび上がるのだけれど、
彼らが創り上げたFOUR SEASONSはもうどこにもないのだということが、
全てはもう壊れてしまったのだということが、
抗うことのできない事実として突きつけられているような気持ちになりました。
白組の四人は、多分それぞれに一つで在ろうとしていたんだと思う。
トミーは、フランキーに夢を見て。
フランキーは、変わらない何かを信じて。
ボブは、自分の才能を世に出してくれる場所として。
ニックは、仲間との絆を大切にして。
FOUR SEASONSという4人の世界を、どうにかキープしようとしていた。
でも、それは結局空中分解してしまった。
そのことが本当に悲しくて、本編が終わった後もしばらく立ち直ることができませんでした。
あの楽しいカーテンコールでも、笑いあってる彼らを見てまた泣けてしまって、
なかなか笑顔になれなかったからなあ(^^;)
いやでも楽しんだけれども(笑)。

メアリー役の綿引さんは、トータルで見るとそんなに出番は多くないと思うのだけれど、
一つ一つのシーンで、とても強い印象を残してくれました。
物語を知っている、というのもあると思うのだけれど、
FOUR SEASONSが形になっていくのと反比例して、
彼女のメンタルが消耗していく様が凄くクリアで、見ていて辛かったです。
♪SHERRY が流れるTVの中で、歌うフランキーの頬に指を伸ばすあの背中が忘れられない。

阿部さんは、どの役も凄いインパクトでしたが、デカルドはやっぱり絶品だなあ、と思います。
トミーに対しての感情も、白と青で全然違うのが凄く良くわかった。
畠中さん演じるワックスマンとの台詞のないやり取りがとても意味深で、
前方で4人が緊迫したやりとりをしているのに、
ついつい上方の二人の後ろ姿に目が行ってしまいました(笑)。
というか、初出演の畠中さんが素晴らしく!!
メインのワックスマンの、怖さの中に確かに彼らに対する情があるのも、
ボブ兄さんの何気にノリノリなところも、
神父様の、フランキーの絶望に寄り添おうとする静かさも素敵でしたv
もともと好きな役者さんでしたが、一つの役をじっくり見せていただくことが多かったので、
こんなにも瞬発力のある方だったのかと改めて感嘆。
今回、アンサンブルさんたちの見分けも付いていたので、
この役をあの人が!と楽しくなっちゃう発見もいろいろあったのですが、
その中で、ん?と目を引かれる役がたいてい畠中さんでした・・・ほんとに凄い!

ボブ・クルー役の太田くんは、初演で初めて彼を知って、うっかりよろめいちゃったので、
今回も出てくれてほんとに嬉しかったですv
クルーはねー、なんというか、めっちゃ濃くなってた(笑)。
ボブの、「ちょっと変わった人だな、と思った」という台詞が凄い説得力・・・
でも、ただ変わった人ではない優秀さとか、
無意識に溢れてトミーを刺激するいいとこの坊ちゃん感とか、
恋人への溢れる愛情とか(え)、
FOUR SEASONSと共に歩んできた、描かれていない彼の時間とか、
そういうものもちゃんと感じさせてくれました。
あと、舞台の始まりのカメラマンな彼の笑顔の鮮やかさとか、
フランキーとメアリーの初デートの時のソロパートが素敵だったとか・・・
いやまて、ただのファンだな、私(笑)。

小此木さんは、小さいけどパワフルな感じが見ていてほんとに爽快!
春の境界のシーンで警官とニックに挟まれるのですが、
あの身長差でのコミカルな雰囲気が可愛くて大好きでした。
いや、ロレインはめっちゃ切なかったけど・・・
彼女は、フランキーの現実を見ていたと思っていたのだけれど、
もしかしたら、彼女もフランキーに夢を見ていたのかなー。
そういえば、小此木さんと大音くんがフランキーと同じ旋律を歌っていたと初演の時に聴いたので、
今回歌のシーンではついついお二人に目が行っちゃったのですが、
ほんとにぴったりアッキーと重なっていてびっくりしました!
いや、私の耳はめっちゃ笊なので、音楽的に音程が合っていたかとか、
重なっている声の聴きわけとかは全然できないのだけど、
私の見えた範囲では、歌うタイミングがぴったりだったんです。
アッキーって、この舞台ではなりを潜めてはいたけれど、
結構自分のタイミングで歌うことが多いと思うんですね。
それに合わせるって、しかもあの高音を濁らせずに重ねるって、ほんとに大変だと思う。
それを笑顔で、かつちゃんと自分の演技もしながらやってのけるお二人には、
内心拍手喝采しちゃいました!
大音くんは、この舞台以外では拝見したことがないのですが、
劇中やカーテンコールでのソロパートも素敵だったので、別の舞台でもぜひ拝見したいです!
(カーテンコールのソロ、直後にアッキーが思いっきり張り合ってたよね?(笑)
 そんなアッキーを、大人気ないなー、って感じに見る周りに和みました(*´▽`*))

遠藤さんは、エンジェルズがめっちゃかっこよくって!
迫力のある歌声と、キュートなのに全然媚びてない感じが見ていて気持ちよかったです。
看護師さんも、ほんとに一瞬なのだけど、フランキーに向ける視線にいろんな感情が乗ってて、
呆然とするフランキーの姿とあわせて、本当に胸が締め付けられる思いでした。
それにしても、初演でも書いたけど、エンジェルズの衣裳、可愛いなあv

まりゑさんは、今回その変幻自在さに目を奪われました。
というか、他の方もそうなのだけれど役ごとに全然イメージが違うのが本当に凄い。
特にまりゑさんは、フランキーのお母さんと、娘のフランシーヌの両方を演じているのは、
もともとの指定なのかしら?
この配役そのものに、深い意味があるのかなあ、なんて思いました。
フランシーヌは・・・フランキーの語りで、距離が縮まった的な台詞があるけれど、
本当にそうだったのかなあ、とちょっと不安になる時もありました。
今回白青合わせて3回観たのだけれど、フランシーヌが階段の上からフランキーを見下ろすシーンでは、
最後に彼女が笑うかどうか、いつもドキドキしていました。
あそこで彼女が笑わない、というのもありなのかもしれないけれど、笑ってくれてほっとしたな。


白石さんと山野さんも変幻自在!
二人がフランキーを騙すシーンは、あの演出と相まって、毎回とっても楽しませていただきましたv
あのテンポの良さは本当に素晴らしい!
田舎の警官4人組も楽しかったなー。
物語が結構シビアな方向に流れるので、男性アンサンブルさんたちのシーンは結構癒しでしたv
石川くんも、2年でかなり大人な雰囲気になっていて、おばさんは感動です(笑)。
ジョー・ペシの大型犬の仔犬みたいな雰囲気可愛かったv
トミーに邪険にされて、文句言いながらも全然めげないところが大物感あり?
でも、なんだかんだ言って、最後までトミーとの関係性を継続してるのって彼なんですよね?
この二人の間の友情?にもちょっと興味があります。

個別の役もですが、皆さんの歌声は今回も本当に素晴らしかったです!
不安なく、というか期待を越えたハーモニーを聴けるのが、このミュージカルの醍醐味でもありますね。
そういえば、最後に観た日が下手通路脇だったのですが、
カーテンコールで客席降りしてくれた時、山野さんがすぐ傍で立ち止まってくれて、
マイク越しでない歌声が聞こえてちょっと感動しました・・・わかってたけど、めっちゃいい声!
この舞台は、きっとまた再演されるんだろうな、と思うけど(というか、再演してください!)、
この次もぜひこのメンバーでお願いしたいなあ、と思います。
というか、後から参入する方、めっちゃハードル高そうだ(^^;)

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