羽ばたきの音

もうずっと大好きで特別なアルバムの一つが、GRASS VALLEYの「瓦礫の街」だったりします。
なんというか、もの凄く物語性のある作りで、収録曲一つ一つにも物語があるし、
全体を通しても物語が感じられるんですね。
その中で、更に特別なのが、♪瓦礫の詩人 という曲。

この舞台を観て、久々にこの曲が聴きたくなりました。
いや、直接関係はないんですけどね(^^;)


少年社中20周年記念ファイナル
少年社中第36回公演
「トゥーランドット ~廃墟に眠る少年の夢~」

2019.1.13 マチネ サンシャイン劇場 1階23列一桁台

脚本・演出:毛利亘宏
出演:生駒里奈、松田凌、赤澤燈、井俣太良、馬場良馬、山川ありそ、廿浦裕介、加藤良子、ザンヨウコ、
   内山智絵、大竹えり、堀池直毅、鈴木勝吾、岩田有民、杉山未央、藤木孝、有澤樟太郎、川本裕之、
   竹内尚文、長谷川太郎、


というわけで、今年の真の1本目(笑)はこちらの観劇になりました。
そう言えば去年の1本目は少年社中さんの20周年の1作目だったので、
最初と最後をそれぞれ年の初めに見せていただいたことになります。

物語の舞台は遠い遠い未来。
世界はビッグブラザーと呼ばれるコンピューターによって統括され、
全ての労働―――命を生み出すことすら機械に担わせた人々は、
争いのない“正しく美しい”ものになっていました。
そんな中、一人の少年・カラス(松田凌)が目覚めます。
自分の内から湧きあがる言葉を、その感情の迸るままに声に出して叫んだ彼は、
支配人と名乗る謎の男(鈴木勝吾)に、それははるか昔に禁じられた“演劇”であると教えられます。
演劇は世界を変える。
そう言う支配人に導かれるまま、仲間と共に演劇を創り上げようとします。
演じるのは、支配人に渡された1冊の台本―――「トゥーランドット」。
今は閉じられた劇場で稽古を続ける彼ら―――劇団シアターバードの下に、
ある日一人の少女が訪れます。
彼女こそ、今この世界を支配する王女トゥーランドット(生駒里奈)。
この世界を乱すものを全て抹殺する冷酷な王女として恐れられている彼女は、
けれどまっすぐにカラスの目を見て懇願します。

「私に、愛とは何かを教えてほしい」と―――

導入部分としてはこんな感じの物語。
結構複雑な入れ子式の物語になっていたので、多分細かい部分は理解できていないのですが、
とりあえず、AIの感情とか、AIと人間の恋愛とか、正直めっちゃ大好物なので(笑)、
いろいろ深読みしつつかなり楽しませていただきましたv

演劇で世界を変える。

というキャッチコピーが付いていましたが、
途中、いろんな演出家さんのパロディとかオマージュが組み込まれていたり、
記念公演のファイナルということで少年社中さんの過去の舞台の一節が語られたり、
最初の方は結構祝祭的な感じの舞台なのかなあ、と思いました。
私は少年社中さんの舞台は2~3個しか観ていないのですが、
それでも知っている舞台の台詞が出てくると胸に来るものがあったので、
昔からのファンの方にはたまらないだろうなあ、なんてのほほんと思ったりして。

でも、物語が進むにつれて、これは、演劇の―――演じるということの全てを描こうとしているんだ、
と感じました。
私自身は、演劇に携わったのは高校生の時のオペレッタぐらいで、
それも演技なんてとても言えないレベルだったので、それが正しいのかどうかはわからないけれど、でも。
演劇の楽しさも、辛さも。
演じることの幸せも、絶望も。
演じることを選ばずにはいられない熱情も。
演じることに選ばれない残酷さも。
演劇というものの根本にある希求も。
演劇というものを取り囲む現実も。
フィクションの世界の中で、これ以上ないほど赤裸々に描いていたように感じました。

終盤、演じる先に破滅しかないことがわかっているのに、
それでもシアターバードの面々が演じることを選び、
演じた先で全てをなくすことがわかっていても、
彼らの選択を受け入れて共に演じようとするカラスの姿に、
なんだかもう号泣してしまいました。

そんなにも、演劇というのは特別なものなのだということに。
そして、そんな特別なものを選ばなかった―――選ばれなかった自分自身に。

この物語には、沢山の登場人物がいますが、
一番気持ちを持っていかれたのが、杉山さん演じる高貴な女だったりします。
この美しい世界を守ることが正しいと信じ、
そのために手段を選ばない高貴な女―――真のトゥーランドット。
信じていた父皇帝―――ビッグブラザー(藤木孝)から、その信じる世界を疑えと言われ、
正しくないはずの全てを破壊することでその世界を守ろうとして果たせずに、
否定していた演劇を目の当たりにして、自分の中に湧きあがる感情を持て余す、彼女。
彼女の中にある揺らがないはずのものが、否応なく揺らいでいくその様がとても鮮やかで。
そしてその瞬間まで美しく整ったその表情が、泣きわめく子どものように歪む様は、
痛ましいと同時に、どこかほっとするような温かさがあった。
ああ、彼女は、選ばれない自分を受け入れたんだ―――そう、思った。
そして、それは、選ばれなかった私自身をも受け入れてもらったような気持ちになったのかもしれません。
まあ、それはあまりにも個人的な感情なんですけどね(^^;)

いずれにしても、彼女は彼女が否定した美しくない、正しくないはずの世界を―――そこに向けた変化を受け入れた。
それは、その先に続く未来の始まりだったのかもしれないけれど、
その代償は、呆然とするほど大きかった。
実はロボットだったシアターバードの面々とトゥーランドット―――ケツァールの、死。
そして、取り残される、実は人間だったカラス。

実は私、結構最後まで楽観視していたんですね。
シアターバードがその舞台を上演した後、どんな結果になってもロボットである彼らは停止する。
そう高貴な女が言っていても、途中大将軍ローラン(有澤樟太郎)に斬り伏せられた面々が復活したように、
最後もみんなビッグブラザーが生き返らせて大団円で終わるんじゃないかな、って。
でも、そんなことはなかった。
世界を変えるということは、そんなに甘いものではなかった。
そして、世界を変えようとした彼らの覚悟も―――

累々と横たわる仲間たちの中で、同じように動作を停止したケツァールを抱きしめながら、
独り呆然と空を見上げるカラス。
その光景は、美しくて、残酷で、悲しくて。
だからこそ最後の彼の台詞―――始まりを告げるその言葉が強く強く未来へと響く。
いつか世界を変えるかもしれない、小さな羽ばたきの音のように。
そんなラストシーンだったように思う。
そして、その光景を観ながら、もう一度この物語のキャッチコピーを思い出しました。

演劇で世界を変える。

その“世界”とは、なんなのだろう。
その答えを探すために、私はこれからも劇場に通うのかもしれないなあ、と思いました。


いろいろ考えすぎてちょっと訳のわからない記録になりましたが、
役者さんのことをちょこっと。

トゥーランドット/ケツァール役、生駒里奈ちゃん。
たぶん初めて拝見する方かと。えーと、アイドルだった方?(無知ですみません!)
不思議な響きの声が、不思議を形にしたようなこの役にとても似合っていたように思います。
最初の真っ赤な衣裳も可愛かったけど、ケツァールの名前をもらってからの衣裳、めっちゃ可愛かったv
幸福を運ぶ鳥なんですよね、確か。
実はお友達からもらったこの鳥の写真がタブレットのホーム画面だったりするので、
内心でケツァールへの距離感が凄く近くなってました(笑)。
世界を汚すものを抹殺していく冷酷な王女である自分に疑問をもち、
“愛”を知るために外の世界へ飛び出していく箱入りなお姫様なわけですが、
そんな風に変化を恐れずに外に飛び出していく彼女がロボットで、
変化を厭い全てを拒絶する高貴な女が人間だという設定が、個人的に結構胸熱でした。
他の面々を見ても、守りに入るのは人間の本能なのかなあ、なんてちょっと思いました(笑)。

カラス役、松田凌くん。
いろんな意味でしんどい設定をぶち込まれていた役でしたが、
松田くんの明るい笑顔と溌剌とした雰囲気があったからこそ、
あのラストシーンがちゃんと未来に向かっていたような気がします。
というか、描かれていない彼の過去というか背景がすっごい気になるんですけど?!
なんというか、本当にカラスには幸せになってほしいです・・・

インコ役、赤澤燈くん。
この方も初見かな。
個人的にとてもいいなあ、と思ったのがこのインコという役柄でした。
彼の不器用な情の深さが微笑ましくv
劇中劇でカラフのために自ら命を絶つ侍女(かな?)の役をされてましたが、
その立ち位置が実際のインコの立ち位置と絶妙に重なっていて、
彼がいることでこの物語がとても優しく愛しいものになったような気がします。
そういえば、この子も結構個性的な声だたなあ。
また別の舞台で観てみたいかも。

皇帝アルトゥム実はビッグブラザー役の藤木さんはさすがの一言。
多分あの姿は、人とコミュニケーションをとるためのロボットで、本体は別にいるんだろうな。
自らが創り上げてきた世界に、自ら疑問を呈するAI。
その矛盾故の底知れなさ、そしてあくまで彼は無機質な存在であると感じさせる揺るぎなさ。
うーん。もっと細かい設定が見てみたい!

謎の男役の鈴木勝吾くん。
ビジュアル的にどこかで見たことがある感じなんだけど何だか思い出せなくてもやもやする(笑)。
高貴な女が真のトゥーランドットだったように、彼こそが真のカラフ、ということなのかなー。
実はパンフレットのあらすじが、私が受け止めた物語と上手く重ならなくて、
ちょっとそこももやもやしてます(笑)。
ラストシーンで、彼と高貴な女が手を取り合っていたけれど、
あれこそがあらすじにある少年と少女の出会いで、あらすじに書かれていることは、
この物語の先なんだろうか・・・?
AIを愛と重ねる導入部とか、途中で野田さん関連の台詞があったりしたから、
多分二重三重の意味があるんだろうなあ、と思うけど、誰か解説して欲しい・・・
彼の存在というのは、ビッグブラザーの秩序の内だったのか、イレギュラーだったのか、
それも凄く気になりました。
もう1回観る機会があったなら、彼を中心に観てみたかったなあ。
DVD買うかちょっと悩む・・・

ガン役の馬場くんも多分初見。
インコとは対照的な描かれ方だったけど、
彼とは違う方向から物語の熱を上げてくれていたなあ、と思います。
あの号泣シーンのきっかけは彼でしたしね。

ローラン役の有澤くん。
もう何度も舞台やDVDやTVで見ているはずなのに、見るたびに彼の頭身に衝撃を受けてしまう(^^;)
今回の真っ白な衣裳が、更にそれを強調していた感じで、めちゃくちゃかっこよかったです。
彼こそが機械とミスリードさせる描かれ方なのだけど、
彼が皇帝に促されて不器用にいろんなことに疑問を持っていく様が、
殺伐とした状況なのにちょっと微笑ましく感じてしまいました。

というか、この舞台の衣裳、ほんとに素敵で!
シアターバードの面々の色鮮やかな衣裳と、高貴な女たちの白を基調とした衣裳、
そして、その中で異彩を放つ謎の男のシンプルな衣裳。
プログラムの写真で見なさんが纏っている中華風というか異国風な衣裳も綺麗で、
何度も眺めてしまいましたv

劇団員のみなさんは、本当にさすがの一言!
申し訳ないことにお一人ずつの感想が書けるほど見分けがついていないのですが、
主演お二人の初々しさが、劇団員のみなさんの存在で更に際立っていたような。
でも、熱量的には全然若者に負けてない、というかむしろ高いところが素晴らしい!
個人的にはペンギンさんがかっこよくってこっそりよろめいておりましたv
また機会があったら、ぜひ少年社中さんの舞台を観たいなあ、と思います。
とりあえずはその前に、タニス・リーの「銀色の恋人」(名作!)を読みなおそうと思います。

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