うつりゆくもの

毎年楽しみにしている、通勤途中のお屋敷の庭の白木蓮の大木が咲き始めました。
無数のふっくらした蕾は、これから真っ白な花を咲かせ、そして、散っていく。
毎年春は巡ってきて、毎年花は咲いて、毎年この日はやってくる。

日常が日常であることを感謝しつつ、私の非日常な日常の記録をしておこうと思います。



「ロミオ&ジュリエット」

2019.3.9 マチネ 東京国際フォーラム ホールC 1階16列30番台

出演:大野拓朗、葵わかな、三浦涼介、黒羽麻璃央、広瀬友祐、大貫勇輔、春野寿美礼、
   シルビア・グラブ、岸祐二、宮川浩、秋園美緒、姜暢雄、石井一孝、岡幸二郎、飯田一徳、祝陽平、
   大場陽介、岡田治己、小南竜平、小山銀次郎、酒井航、鮫島拓馬、鈴木凌平、高木勇次朗、
   仲田祥司、渡辺崇人、伊藤香音、おごせいくこ、織香織、小松芙美子、齊藤恕菜、Sarry、
   島田友愛、杉浦小百合、鈴木百花、平井琴望、深瀬友なし、松島蘭


というわけで、3回目、今期最後のR&Jはこちらの組み合わせでした。
いやー、面白かった!
複数キャストは組み合わせで届くものがかなり異なるのはわかっていたのですが、
ここまで違うのは久々で新鮮でした。

一番はやっぱり葵さんのジュリエット!
なんというか、お転婆というか、猪突猛進というか、思わず目を疑ってしまう暴走っぷりが素晴らしく!
そうだよ、ロミジュリって本来こういう若気の至りなお話なんだよ!と、深く頷いてしまいました。
いや、凄い可愛いジュリエットだったんですよ。
歌声も一生懸命で、ちょっとした仕草に意味を持たせてくるところとか、
さすが朝ドラヒロイン経験者!と思うところもあったり。
(そして、ロミオと並ぶとキースとおてんちゃん・・・と思ってしまった(^^;))
台詞とか、結構強い調子でまくしたてる感じがあったけど、良く聞き取れたし。
で、その強さというか一生懸命さというか前のめり感が、とにかくずーっと続くわけですよ。
立ち止まって考える瞬間が全くないの。
あれほど躊躇いなく神父様の薬を飲むジュリエット、初めて見た・・・
でもって、もの凄い表情豊かで、感情の振れ幅が大きいのね。
ロミオと出会ったことの喜びで周りが全然見えなくなっちゃうところもだし、
パリス伯爵を嫌がるのも、本当に全身で拒否ってたし、
お父様に対する「親じゃない!」という言葉も、凄い鋭くて・・・
ちょっと本気でお父様に同情いたしました(^^;)

大野ロミオがまた、人望はあるけど、どこかちょっと頼りない長男、という感じで。
実際に女の子もかなり泣かせているけど、根本的なところで夢を見てるお坊ちゃん感というか・・・
初回で観た時に感じた優等生感はどこに行ってしまったんだ!と(笑)。
そのくらい、彼の感情のふり幅も、ジュリエットに引っ張られるように大きかった気がします。
♪憎しみ~エメ とか、歌としては破綻するギリギリのところで、
歌というより感情を迸らせる台詞としての印象が強い感じで・・・実はちょっと泣けてしまいました。
ティボルトに復讐するときも、なんというか、怖いくらいの狂気のようなものを感じました。

というか、今回、あの戦いのシーンって、全体的にもの凄く狂気に満たされた時間だったように思うのね。
黒羽くんのマーキューシオは、前回の古川ロミオの時はロミオよりお兄ちゃんに見えたのに、
今回は紛うことなく末っ子な雰囲気。
で、ロミオを守るという意志は欠片も感じられなくて、とにかくいろんな怒りに支配されている感じだった。
ロミオの裏切りに対して。
ティボルトとのこれまでの確執に対して。
何も思い通りにならない自分自身に対して。
ほんとに、小さな獣みたいに見えた。
でも。
ティボルトに刺された後、ベンヴォーリオの腕の中で、マーキューシオは笑ったんです。
苦しい息の下、優しさと慈しみの感じられる晴れやかな笑み。
まるで、憑き物が落ちたみたいに、子どものように邪気のない純粋な笑み。
あんな笑みで逝かれてしまったら、残された者はただひたすら静かにその死を悼みつづけるか、
悲しみとやるせなさを怒りに変換するしかないんじゃないかな、と思った。
で、ロミオは後者だったんだよね。
マーキューシオのナイフを拾い上げて、ティボルトにゆっくりと近づくロミオの表情は、
それまでとは別人のように鬼気迫っていて・・・マーキューシオの狂気がうつったかのようだった。

それは、広瀬ティボルトもそう。
渡辺ティボルトに比べると、線が細いというか幼い印象のティボルト。
感情の表出も豊かで、渡辺ティボルトか抑えきれない想いが迸るのとは対照的に、
広瀬ティボルトはいろんなシーンで感情を迸らせていたように思う。
その点は、葵ジュリエットと従兄妹同士というのにとても納得できてしまう感じ。
伯父上に振り払われて、あんなに倒れ伏したまま立ち上がれないティボルトって初めて見た気がする・・・
なんというか、本当に大人の思惑に翻弄されてどうすることもできない子どものような痛々しさに、
ちょっと胸が痛んだし、キャピュレット夫人がこれまでになく悪女に見えました(^^;)
でも、そういう豊かな感情は、それでも純粋さのようなものも感じられていた。
なのに、♪今日こそこの日 の終盤から、一気にその色合いが変わった気がするのです。
怒りと、狂気に支配された、そんな感じ。
ロミオと向かい合った時、たどたどしくロミオの名前を呼びながら近づいていく様は、
まさに妄執、という感じでした。

名前は忘れたけれど(宮部さんかなにかの本で読んだのかな)、
悪しき心を人にうつしていく妖怪みたいなのがいたと思うのだけれど、
そんな感じで、あのシーンはティボルトもマーキューシオも邪心に憑りつかれていて、
それがマーキューシオの死の後ロミオに憑りついた・・・ってここまで書いてやっと気づいた。
それって“死”そのものじゃないですか!
うーわー、なんだか自分の中で凄い腑に落ちちゃいました。
そういえば、この日の大貫くんの“死”、前2回に比べて、人外感がましていた気がする。
十字架の後ろに一度隠れるときの様子とか、ぞっとするようなおぞましさがあって、
これまでそんな風に感じたことがなかったのでちょっとびっくりしたのだけれど、
これもやっぱり複数キャストでの化学反応なんだろうか・・・

そういう蔓延する狂気の中で、“死”に憑りつかれなかったのが、パリス伯爵で、
“死”の呪縛から抜けだしたのがベンヴォ―ルオだったのかもしれないな、とも思ってみたり。

姜さんのパリス伯爵は、最初に観た時「花輪くん(@「ちびまる子ちゃん」)・・・?」と思ってしまい、
その後ずっとそのイメージが付きまとってしまって困りましたが、
あの物語の中で、唯一“死”の視界に入らなかった人物だと思う。
実際、彼が出ているシーンに“死”が居たことはなかったはずだし。
過去の確執とか、家のしがらみとか、そういう周りが囚われているのもから彼だけが自由で。
それは、もしかしたらある意味真実に大人で、そして健やかな存在なのかも、とも思う。
ちゃんと自分の立ち位置がわかっているというか。
だからこそ、彼にはあまりドラマティックさがなかったのだろうけれど(^^;)
原作では、確かジュリエットに会いに霊廟に行って、ロミオと鉢合わせして殺されちゃうんだけど、
この物語のパリス伯爵は、自分の人生をしっかりと堅実に生き延びていきそうな気がするなー。
それもまたこの物語の一つの救いなのかもだけど。

そして、三浦くんのベンヴォーリオ。
最初に観た時、誠実で大人なベンヴォーリオ、と思ったのですが、
今回観ていて、なんて愛の深いベンヴォーリオなんだろう、と思いました。
でもって、めっちゃ人との距離感が近い(笑)。
マーキューシオをぐりぐりするのが、弟分な彼が可愛くて仕方ない!という感じでとても微笑ましくv
2幕冒頭から戦いのシーンにかけても、争いに対する疑念が徐々に大きくなっていく様子が、
静かだけれどとても鮮やかだったように思います。
だからこそ、マーキューシオの死以降の彼の嘆きの深さが本当に辛かった。
死へと旅立つマーキューシオを引き留めるかのように抱きしめる腕も、
泣き崩れるロミオを守るかのように抱え込む姿も、
勇気づけるかのようにその髪に口づける様も、
なんというかこのベンヴォーリオならそうするよね、って思う自然さでした。
そして、ティボルトの命を奪った―――ロミオに奪わせたマーキューシオのナイフ。
それに目を向けた時の、彼の悲哀と憎しみと嫌悪と苦悩がごっちゃになったような表情。
そして、忌まわしいそのナイフが、まぎれもなく親友の形見であることもわかっていて・・・
震える手でナイフを両手に包み込んで、口づけるような仕草をするのが切なかった。
そして、霊廟のシーン。
前回“死”に目を奪われて見損ねていたので、今回は頑張って彼を目で追っていたのですが・・・
めっちゃ泣かされました。

ロミオの、死。
それは、ベンヴォーリオにとっていくつもの意味で彼を打ちのめすものだったと思うのです。
もっとうまくロミオに伝えられれば、という後悔。
本当に、自分一人になってしまったという孤独。
そして、自分がロミオの生きる理由にはなれなかったという、事実。
その痛みを抱えながら、それでも彼は立ち上がった。
立ち上がって、ロミオとジュリエットが共に在れるように働きかけた。
ロミオが望んだ両家の平和を、自由に生きる権利を、自分が―――自分たちが成し遂げることを選んだ。
目覚めることのないロミオの額に口づけるその姿が、
まるで祝福のようにも、誓いのようにも見えて―――本当に、美しかったです。
泣きながら、けれど神父様に縋ることはなく、しっかりと自分の足で立つベンヴォーリオ。
彼の心にできたこの大きな喪失は、きっと埋まることはないのだろう。
彼の心は、ずっと血を流し続けるんだろう。
それでも、彼が受け取り、選び、歩んでいく未来はきっと明るい。
そんな風に思えるラストシーンで、最後の曲に素直に涙が流れました。
そういえば、あの時、飛びぬけて朗々と響く歌声があったのだけど、あれは岡さんだったかしら・・・?

そんなこんなで、今期の私のR&Jは終わってしまいました。
木下ジュリエットや平間マーキューシオが見れなかったのは残念ではありますが、
それぞれに色合いの違う舞台でとても楽しめました。
大貫くんの“死”も、それぞれに印象が違ったなあ。
というか、カーテンコールで広瀬くんとめっちゃ仲良しそうだったんですが、何事?
広瀬くんのマイクに顔を寄せて歌うとか、なんか凄い既視感があるんですが(笑)。
このミュージカル、若手の登竜門的な位置づけになってきているのかなあ。
次にいつ上演されるかはわかりませんが、まだまだ大貫くんの“死”は進化しそうな気がしますので、
次の上演でもぜひ大貫くんの“死”をお願いいたします!
・・・の前に、地方公演、キャストもスタッフのみなさんも、怪我なく病気なく、
ヴェローナでの生を生き抜くことができますように!

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