世代交換

平成最後の日。
先程、TVで「退位礼正殿の儀」の中継を見ました。
退位、という形は200年以上ぶり、と解説の方が言っていました。
昭和から平成に変わるときの記憶は、TVに流れるバイタルの数値とリンクしていて、
当然のことながら全然受ける印象は違います。

未来へと繋いでいく。

そんな言葉が思い浮かびました。
儀式の間を退出される天皇陛下の後ろ姿は、思っていたよりもとても小さくて。
でも、その声の暖かさは、笑みの穏やかさは、これまで折に触れてTVなどで接してきたそのままで。
その揺るぎなさが与える安心感を、もう感じることができないのはとてもさみしいけれど、
これまで、国民のために、世界のために祈り続けてくださった天皇皇后両陛下が、
これからの時間を、健やかに、穏やかに、過ごされますように。
深い感謝と共に、そう自然に祈る自分がいました。


これまでの時間を礎に、未来へと繋げるための変化。
大きなものの小さなものも、世界はそんな変化に溢れていて。
だから、平成最後の観劇記録がこのミュージカルなことも、
きっと私には意味のあることなのかな、と思う。



「レ・ミゼラブル」

2019.4.28 マチネ 帝国劇場 2階B列50番台

出演:佐藤隆紀、伊礼彼方、知念里奈、昆夏美、三浦宏規、小南満佑子、KENTARO、森公美子、相葉裕樹、
   大矢臣、岩瀬花音、桑原広佳、増原英也、伊藤俊彦、宇部洋之、丹宗立峰、木暮真一郎、中井智彦、
   持木悠、新井海人、横田剛基、染谷洸太、大嶺巧、佐々木淳平、長尾哲平、大津裕哉、島田彩、
   廣野有紀、桑原麻希、港陽奈、中村萌子、磯崎未伶雅、石丸椎菜、木南清香、小林風花、みい


というわけで、今期初の観劇となりました。
組み合わせ的に、新規キャストがわりと多めの回だった・・・かな?
1幕では、オケも含めて未完成というか、ちょっと模索中な印象があったのですが、
2幕では、その未完成さが凄い破壊力で涙腺を攻撃してきて、久々に大泣きしてしまいました。
この演目だけでなく、長く上演される演目では、
キャストが変わり、あるいは役が変わり、演出が変わり、
そのたびに踏襲されるものもあれば、壊されたその上に新しいものが作られ、
そうして今につなげられてきたわけなのだけれど、
今回は、特に“新しい風”を感じたような気がしました。

その筆頭はやっぱり佐藤くんのバルジャンでしょうか。
冒頭から♪独白 までのバルジャンは、なんというかちょっと世間知らず感というか、
外の世界と自分の中の時間の流れの乖離に、軋みをあげているように見えました。
彼自身が自覚できていないその乖離。
軋みをあげ、今まさに壊れようとするその瞬間に差し伸べられた手。
そして、与えられた救いと試練と―――約束。
♪独白 で端正さを花栗捨てて迸る若々しく荒々しいエネルギーは、
未完成さと同時に、このバルジャンがどう生きていくのかに、とても興味を引かれました。
その後のバルジャンの人生を、佐藤くんはとても丁寧に演じてくれていたように思います。
2幕はいろいろ気持ちを持っていかれてしまって、ちゃんと言葉にできるだけの理解ができていないのですが、
バルジャンの情感が徐々に増していくのがとても自然に感じられました。
佐藤バルジャンの中には、司祭様との、ファンテーヌとの、ジャベールとの、
コゼットとの、エポニーヌとの、マリウスとの―――たくさんの約束があって、
その全てを、彼はきちんと果たしたんだなあ、と思いました。
今期はもう佐藤バルジャンを観る機会はないのだけれど、
きっとしばらくはバルジャン役を継続されると思うので、
今後彼のバルジャンがどんなふうに深まっていくのか、とっても楽しみです。
あ、今回は2階席からだったのですが、♪Who Am I でセットに映る影の演出は、
視覚からも彼の中での相反する二つの想いの葛藤を見せてくれたこともあり、
歌声の揺らぎと相まって、その後の彼の選択にとても納得がいきました。

伊礼くんのジャベールは、硬くて鋭い外殻の中に、とても柔らかくて脆い何かが内包されている感じ。
バルジャンに対しても、強硬な姿勢で対峙しつつも、常に迷いというか揺らぎがあった気がする。
罪を見ているつもりで人を見てしまっている甘さというか。
バルジャンに命を救われるシーンは、対角線上で遠目ながら真正面だったのですが、
彼の中の迷いが恐怖に変わっていくように見えました。
「殺せ!」と叫ぶ声が、縋っているようにも聞こえた。
立ち姿もコート捌きも歌声も、文句なしにかっこいいジャベールなのだけれど、
そういう硬質で在り続けられない部分が、伊礼ジャベールの魅力になるのかもしれないな、と思いました。
個人的には、革命の後ガブローシュの前に佇んで、その手を重ねる姿が印象的でした。


知念ファンテーヌは、ここ数年私の中で一番好きなファンテーヌなのですが、
今回はこれまで感じたことのない“怒り”の感情の強さにとても驚きました。
でも、嫌な驚きじゃなかった。
その“怒り”の根本にあるのが、“愛情”であり、“希望”であると感じられたから。
こういう勝気なファンテーヌも知念ちゃんに似合うなあ、と思いました。
そしてやっぱりラストシーンの美しさは特別だな、と。
駆けこむコゼットを見る顔は、少し陰になっていた上に遠目で良く見えなかったのだけれど、
きっと慈しみに溢れていたんだろうなあ、と思う。

相葉くんのアンジョは、前回観た時とあまり印象は変わらなかったかな。
体調不良でお仕事お休みされてた時期もあったので、ちょっと心配していたのですが、
弱冠歌声を不安に感じる部分はあったものの、
学生の一員としてのリーダー、武骨とも言える気真面目さがありました。
♪彼を返して の時、砦のてっぺんでのアンジョに毎回注目しているんですが、
僅かな動きの中に、アンジョの感情の動きを深読みさせてくれる何かもあった気がします。
久々だった上に、2幕は本当に目奪われる局所戦があちこちで勃発しているので、
きっといろいろ見落としているんだろうなあ。
相葉アンジョはまた観る機会があるので、砦での彼の感情の変化を、
今度はもっとクリアに受け止められるといいな、と思います。


三浦くんのマリウスは、良い意味で普通の男の子な感じが良かった。
某兄者(笑)で感じた凄味は全くなくて、まっすぐな普通の男の子。
革命に対しても、仲間と共に戦うことを選びながらも、ずっと迷いが消えていなかった。
多分、彼の中には正義感はあっても、革命に対する現実感はアンジョよりも薄かったんじゃないかな、と思う。
そんな中で訪れた、コゼットという鮮やかで強烈な“現実”―――
エポニーヌの気持ちに気づいていたのかどうかまではちょっと受け取り切れなかったけど、
コゼットとの別れ、エポニーヌの死、ガブローシュの死、肌で感じる自身と仲間の死の予感・・・
そういうものに、彼の心が打ちひしがれていくのがわかった。
でも、そんな風に迷い続けた自分だけが、生き残った。
そして、コゼット共に生きたいと望む自分自身がいる。
その事実に対する絶望と希望、仲間への贖罪と訣別
ああ、どうやっても彼の心は未来へ向いているんだなあ、と思った。
だからこそ、♪カフェ・ソング で、仲間たちが一斉にキャンドルを吹き消す瞬間の残酷さに、
ちょっと鳥肌が立つ思いでした。
でも、そういうマリウスだからこそ、ラストシーンの明るさがあったんだろうな、とも思う。


小南さんのコゼットは、本当に芯の強いしっかりしたお嬢さん、という感じ。
正直三浦マリウスは尻に敷かれると思うし、その方が幸せだと思う(笑)。
カーテンコールでも、端っこに行く三浦マリウスを前に押し出したりしてたのが微笑ましくv
このコゼットは、子どもの頃の記憶がそれなりにちゃんとあったんじゃないかなあ、と思う。
あるいは、エポニーヌとの邂逅で蘇ったか。
あの一瞬の二人の表情の変化の濃密さに、思わず息を呑みました。
バルジャンが本当の父親ではないこともわかっていた。
ラストシーンの「生きるの」という歌声の強さがとても印象的でした。
バルジャンの手紙を読むときの笑顔も良かったなあ。
この子は、マリウスと一緒に絶対に幸せになれる、って思った。
そして、余計に泣けてしまったのだけれど。


昆ちゃんのエポニーヌは、その揺るぎなさが際立っていたように思います。
歌声もなんだけど、その生き方が。
小さな体で、大の男に蹴りを入れる姿もあったりして、
懸命に自分の人生を生きようとする強さが、とても素敵だった。
印象的なシーンはいくつもあったけれど、
マリウスの手紙をバルジャンに届けた後から♪On My Own までの流れの孤独感に胸が痛みました。
バルジャンがエポニーヌに掛けた労りの言葉は、
彼にとっては取るに足らない当然のことだったのかもしれないけど、
彼女の日常には、ああいう風に労わられ、気遣われるということはなかったんじゃないかな、と思う。
脅され、奪われる人生の中で、彼女が得たいと切望し、得られずに諦めていたものを、
コゼットは日常として甘受している―――その、事実。
そして、彼女がただ一人愛した男の心も、コゼットに向かっている。
そんな孤独と絶望の中で、彼女が選んだ未来。
♪恵みの雨 での、彼女のマリウスの名を呼ぶ声に溢れた愛しさ。
そのあまりの深さと美しさに、ちょっと呆然としてしまいました。
間近でそれを受け止めた三浦マリウスは、どれだけの衝撃を受けただろう・・・
あの後のマリウスの打ちひしがれ具合も納得だと思います(^^;)
でも、あの彼女の愛情は、きっとマリウスの中で未来へ繋がる種になっていると思う。
そう感じさせてくれるエポニーヌでした。


ガブローシュ役は大矢くん。
めっちゃ男前なガブローシュでした!!
いやほんと、文句なしにかっこよかった!
小柄なんだけど、不思議と目を引かれて、彼がどんなふうに考えて、どんなふうに生きようとしていたのか、
ちゃんと届けてくれたように思います。
溌剌とした歌声も良かったし、子どもらしい闊達さに自然と笑みが零れました。
その分、彼の最期は本当に辛かったのだけれど・・・
あれを目の前で見たアンジョの衝撃を考えると、それだけでちょっと泣けてくる。
革命のリーダーはアンジョだったけど、
革命の象徴はもしかしたらガブローシュだったのかもしれないなあ。
この後の観劇で、また彼のガブローシュに出会えるといいな、と思います。


テナルディエ夫妻は、これまで何度か観たことのある組み合わせ。
新しい風が吹く中で、がっしりと物語に楔を撃つ感じのお二人の存在感に脱帽です。
森さんは以前よりも遊びが少なくなった・・・かな?
KENTAROさんは地下道での行動の説得力が素晴らしくv
物語の中でこの二人のパートは明るいというかみんなで盛り上がる感じのシーンが多いけど、
明るさの中に確実にある闇の気配が本当に恐ろしいし、
バルジャンやファンテーヌとは真逆の強さに感嘆する思いでした。


そんなこんなで新しい風と揺るがない土台を感じた舞台でした。
年々チケットが取りにくくなっていくけど、やっぱりこれから先も見続けたい舞台だなあ。
でもって、いつかあの人のバルジャンとかあの人のコゼットとかあの人のアンジョとか観てみたい・・・
願っていれば叶うかな?(笑)

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