彼の帰る場所

彼らが抱える喪失と、そこにある消えない悲しみ。
散りゆく葉のように、惜しんでも過ぎさっていく日々は、
ただその悲しみを深めていくだけかもしれないけれど。
でも。
冬枯れた木々がまた緑を纏うように。
喪失は喪失のままで、それを抱える彼らは立ち止まらずに未来へと進んでいくのだと。
そう思わせてくれた彼らの“日常”でした。


舞台「刀剣乱舞 慈伝 日日の葉よ散るらむ」

2019.8.4 ユナイテッドシネマ前橋 I列10番台(大千穐楽ライブビューイング)

脚本:末満健一
出演:荒牧慶彦、和田雅成、健人、前山剛久、加藤将、川上将太、磯野大、飯山裕太、
   木津つばさ、大崎捺希、設楽銀河、横山真史、武子直輝、小林涼、小坂涼太郎、
   谷水力、梅津瑞樹、蒼木陣、和田琢磨


いろいろな意味で深い爪後を残した「悲伝」から1年。
刀ステの新作公演を観てきました・・・とはいっても、今回(も?)見事にチケ争奪戦惨敗しまして(^^;)
例の如くライビュでの観劇となりました。
今回は60公演もあったし、複数回観に行けている人もいるから、
これは本当に私の運の問題なんだろうなあ(._.)
まあ、刀ステも刀ミュもライビュはあるし円盤も確約されてるので、
仕方ないよね!と自分を納得させました(笑)。

とはいえ、生の舞台を観れなかったのはとても悔しかったので、
その反動で初日が開けてからネタバレ感想を読み漁りまして(そっちか・・・)。
ですから、今回のライビュは心穏やかに観れた―――はずなんですが!

いやー、知ってても、OPのあの明るさと軽やかさには度肝を抜かれましたよ。
え?ちょっと待って?ここって別の本丸??と素で思っちゃったよね。

でももちろんそんなことはなくて。
この本丸は、あの本丸―――結の目となった三日月さんを失くした本丸で。
三日月さんの名前は終盤まで出てこないけれど、
その気配は―――彼が遺した爪痕、いや、傷痕は、随所に見られたように思います。

物語は、彼らが新しい本丸へ引っ越してきた、そのとある1日を描いています。
あの桜の季節の後、夏の間放浪した彼らがやっと腰を落ち着ける本丸を見つけた晩秋。
そこに政府から配属された山姥切長義(梅津瑞樹)。
彼と、山姥切国広(荒牧慶彦)を巡るあれこれ。
引越しの最中、五虎退(設楽銀河)が失くしてしまった“何か”。
ジャンルとしてはシチュエーションコメディになるのかな?
舞台転換はなく、沢山の刀剣男士たちが入れ代わり立ち代わり出入りし、会話を交わす。
その中で描きだされる刀剣男士たちの関係性と、それぞれのスタンス。
時間遡行軍の出てこない、彼らの“日常”の中でのみ描かれる物語は、
普段は見えない彼らの個人的でとても柔らかいところに直接触れるような、
そんな不思議な感覚がありました。

前田くん(大崎捺希)をストーリーテラーに、いくつかの物語で構成されるこの舞台。
一つ一つの物語から受け取ったものはたくさんあるのだけれど、
それを記録するにはまだ自分の中で上手く消化できていない部分もあるので、
今回は自分の覚書みたいな感じで、役者さんのことを少しずつ書いていこうと思います。
それでもたくさんいるから長くなりそうだけど(^^;)


へし切り長谷部役、和田雅成くん。
なんというか、和田くんの長谷部の不器用な誠実さと、
ちょっと素直じゃない情の深さは、本当に得難いものだなあ、と思う。
山姥切くんのことを心配して、山伏さんと一緒に空回り続けるのだけれど、
それだけ彼は山姥切くんのことを、隣で見てきた、ということなんだよね。
顕現の時期は明確には描かれないけれど、
多分彼は本当に最初の頃から山姥切くんと一緒にこの本丸に在って。
山姥切くんの弱さも、惑いも、過ちも、覚悟も、成長も、嘆きも、怒りも、後悔も、
ずっと傍で見つめて、そしてそれらの感情を多分多かれ少なかれ共有していた。
だからこその心配であり、信頼なんだろうな、と思う。
それでも、ただ情に流されるのではなく、きちんと公正なところも長谷部だなあ、と。
長義くんに対しても、彼自身のことはちゃんと受け入れていて、
ただ、どういう風に二人が出会うのが良いのかを一生懸命模索していた。
まあ、ほぼ効果なしだったわけですが(^^;)
でも、そういう冷徹にはなりきれない情の深さが、和田くんの長谷部の魅力なのだと思います。
それにしても、山姥切くんとの信頼関係は、本当に素晴らしいと思う!
模擬戦で長谷部と山姥切くんが切り結ぶシーンがあるのだけれど、
あの瞬間の長谷部の嬉しそうな顔といったら!
仲間であり、家族であり、ライバルでもある―――そういう少年漫画を地で行ってるよね。
あの時点で、山姥切くんはまだ混迷を抜けきっていないはずなのだけれど、
長谷部はああいうやり方で山姥切くんにその気持ちを伝えていたのかなあ。
というか、二人の殺陣、凄かったです!
あの速さ、あの緊迫感、あの力強さ―――これも二人ならでは何だろうな。

横山さんの山伏国広は、序盤で長谷部と一緒にわたわたしていたけど、
実際は長谷部に付き合ってただけなんじゃ?とちょっと思いました。
長谷部とは別の形の信頼関係というか。
長谷部が、山姥切くんを傷つかないように守ろうとしているのとは違って、
傷ついたときに支えようとしている感じ?
長谷部が山姥切くんと一緒に走り抜けるのだとしたら、
山伏さんはまさに山姥切くんの背中をまもっているんだろうな、と思う。
そういう懐の深さを感じました。
長義くんともラストシーンであっという間に仲良くなってたしねー。
山伏さんと大包平に両側からバンバン背中や胸を叩かれてた長義くんが、
お返しという感じで山伏さんの胸を拳で叩いて、
でも山伏さんは全然応えてなくて、長義くんが呆然としていたのが可愛かったですv

武子くんの同田貫正国は、ジョ伝のときそのままに真っ直ぐで漢気のある刀でした。
山姥切くんと長義くんを会わせないように頑張るところとか、ほんと頑張ってた!
まあ、ああ何度もマントをかぶせられた長義くんはたまったものではないでしょうけど(笑)。
というか、マントをかぶせられると動きが止まっちゃう長義くんが可愛らしくv
長義くんの「偽物くん」発言にも激怒するんだけど、
我を忘れて殴りかかるのではなく、彼はちゃんと説明しようとしてるんだよね。
言葉足らずかもしれないけど、凄く誠実な言葉で「山姥切は偽物じゃない」って。
序伝から外伝、如伝を経て、描かれていない悲伝でも、
同田貫が山姥切くんと信頼関係を築いていたのだと、そう感じられました。
ああ、そういうちゃんと筋を通したうえで沸点が上がっちゃうところが同田貫なんだろうけど(笑)。
あと、模擬戦の最後で山姥切くんが長義くんに切りかかろうとしたとき、
その刃を受けたのは南泉くんだけど、同田貫も抜刀しようとしてたのが見えて、
彼は自分の“守るべきもの”とその方法をちゃんと知ってるんだな、って思った。
最後は長義くんと笑いあってたしね。
うん、やっぱりいい男だな、彼は!

良い男といえば、今回飯山くんのソハヤのツルキが最高に良い男でした!
彼がいてくれて本当に心強かったです。
にぱっという陽性の笑顔も、あっけらかんとしてみえて思慮深い言葉も、
山姥切くんや光世さんだけでなく、本丸のみんなに向けた優しさも、
彼自身の過去と未来へのスタンスも、ほんとうに観ていて惚れ惚れしました。
光世さんとの殺陣も凄いかっこよかったし!
凄い近い距離で刃を交わしている感じで、はらはらしたけど見惚れてしまいました。

大典太光世役は磯野さん。
細い体も長い脚も、鋭いのにどこか悲しみを感じさせる眼差しも、
光世さんだなあ、としみじみ思ってしまいました。
ネガティブではあるのだけれど、他者の言葉や思いを素直に受けいてる感じが、
何気に箱入り息子な光世さんっぽいなあ、とも(笑)。
前田くんと一緒に五虎退くんがなくした「このくらい」のものを探しに行く姿に、
なんだかほっこりしちゃいましたv
刀剣男士という人の体と心を得て、彼もまた自分自身の物語を紡いでいく存在なのだと、
そう思いました。

前田藤四郎くん役は大崎くん。
ちょっときつめな雰囲気の凛々しい少年で、
個人的には前田くんのイメージと違ったのだけど、
落ち着いて冷静に、でもちゃんと気持ちを込めた言葉で物語を進める姿が、
とても前田くんっぽいなあ、と思いました。
序盤、鶴丸さんが五虎退くんの探し物の大きさを当てた時に、
一緒に喜んでハイタッチしようとして気づいてもらえなくて、
挙げた手でなんとなく髪を整える仕草が可愛かったですv

五虎退役は設楽くん。
声と姿勢がめっちゃ五虎退くんでした!
俯いていることが多いのでお顔があまり見えなかったのが残念。
気弱で可愛い五虎退くんなのですが、模擬戦の時の会心の一撃のときの迫力といったら!
決め台詞のあとに「・・・いちおう」ってつけちゃところがまたv
五虎退くんの探し物は、一期さんに作ってもらった巾着で、
その中には三日月さんから託されたドングリが入っていて、
それが山姥切くんの旅立つ背中を押すことになるわけなのですが・・・
三日月さんがどうして五虎退くんにドングリを託したのかは描かれませんが、
山姥切くんに請われてドングリを渡す彼の控えめで柔らかな笑みを見て、
良い意味で“我”の感じられない五虎退くんだからこそ、
三日月さんの想いを、願いをまっさらな状態で届けることができるのかもしれないなあ、と思いました。

今回の粟田口短刀ももう一振りが木津くんの博多藤四郎。
ちょっと背が伸びた?
賑やかし担当!という感じではありましたが、
ジョ伝や外伝でもあった彼の見守るときの暖かな表情が今回もあって、
それがとても嬉しかったです。
でもって、短刀3振りでの殺陣、連携しつつも個性があって見ごたえがありました!
しかし、そんな3人(と南泉くん)をあっさり倒しちゃう大人げない太刀が一振り(笑)。

そんな大人げない太刀な大般若長光は川上くん。
いや、大人げないのは戦闘の時だけで、他の時はめっちゃ大人でした!
長船のよしみで長義くんに寄り添いつつも、肩入れしすぎることはなく、
さりげなく多方面をフォローしていたように思います。
殺陣は本当に強くてかっこよかったです!
室内戦って太刀は不利だと思うのだけど、南泉くんのトリッキーな戦法をいなしつつ、
縁側(?)に出たところで一気に勝負に出るとか、凄いなあ、と。

南泉一文字役は谷水くん。
この子もビジュアル的には完璧な南泉くんでした!
というか、動きが思ってた以上に猫っぽくってびっくり!
昼寝する姿も、びっくりして飛び跳ねる姿も、五虎退くんを威嚇する姿も、
運び込む荷物で爪をとぐ姿も、酔っぱらって長義くんに懐く姿も、
大般若さんやむっちゃんにじゃらしてもらう姿もほんとに猫!
思わずちょっとよろめきましたよ。家にいて欲しい・・・(笑)
殺陣も低い位置からとびかかる感じが猫っぽかったなあ。
南泉くんは、あの後に顕現した刀なのかなあ。
山姥切くんともあまり親しくない感じだったし、あまり会話する機会もなかったのかも?
彼は、もしかしたらリアルには三日月さんのあれこれを知らなくて。
これまでの本丸を知らないからこそ、なんの思惑もしがらみもない立場で、
山姥切くんに向き合い、長義くんを庇い、諌め、寄り添うことができたのかなあ。
彼の「心を化け物に」という台詞はゲームの回想の台詞をベースにしていると思うのだけど、
だからこそあの台詞があんなにも純粋に聞こえたのかもしれないな。
というか、普段は離れてるのに、弱っている時には寄り添ってくれるとか、ほんと猫!(笑)

小林くんの太郎太刀は、穏やかなのに締めるところはびしっと締める厳しさが、
まさに太郎さんという感じでした。
三味線、お上手でしたv
小坂くんの二郎太刀は、明るくて世話好きでちょっとお調子者な美人の酔っ払いさんで、
これまたまさに次郎ちゃん!
男舞い、かっこよかったですv
というか、内番衣裳がの模様がキラキラしてた!
大太刀の殺陣とかどうなるのかなあ、と思っていたけど、
まさか抜刀まで見せてくれるとは思いませんでした。
端っこで暗がりだったので良く見えなかったのが残念!
二人が一緒に戦うシーンでは、背中合わせになった二人が上向きと下向きに刀を構えて、
その絵面がとても美しかったり、
太郎さんが水平方向に薙ぎ払う感じなのとは対照的に、
二郎ちゃんは垂直方向に振り回している感じで、ほんとに嵐が起きそうでした。
というか、あの衣裳とあの大太刀でかっこよく殺陣ができるって凄い!
まあ、室内戦では鴨居や壁に突き刺さっちゃってましたけどね(^^;)
時間遡行軍相手だとどうなるのか凄い気になる・・・!

加藤くんの大包平はねー(^^;)
そういう演出で、かつ凄い説得力はあったんだけど、
いやちょっと君落ち着こう?!って真顔で言いたくなりました(笑)。
でも、酔っぱらって動作や声が大きくなっても、
言っていることは(多分)素面と変わらない感じで、
そういう大包平の裏表のない感じというか、いつも直球全力投球なところ、
あの本丸での救いの一つなのかなあ、と思いました。
でもって、酔っぱらった後のわりに凄く冷静な殺陣だったのに、
彼の成長を感じたというかなんというか(笑)。
山姥切くんに間違えられて布をかぶって小さくなっちゃうところの、
所在無げな感じもまた、叱られた大型犬みたいで可愛かったですv

前山くんの鶯丸の在り方もとても心強かったなあ。
基本柔らかで美しい笑みを浮かべているのですが
(大包平相手だとちょっと悪い笑みになるところがまたv(笑))
終盤、長義くんと話している時、三日月さんの名前を出した瞬間に、
その笑みが消えてとても厳しい表情になったのに息を呑みました。
普段、決して表立って動いたりすることはなくても、
ここぞという時に本当に頼りになるのが鶯丸さんなんだなあ、と思ったり。
でもって、襖の締め方がめっちゃ優雅でちょっとびっくりしました。
なんなのあの気品?!

健人くんの鶴丸国永は、今回めっちゃ悪戯ができて楽しそうでしたv
畳を跳ね上げて出てきてたけど、あの空間はもともとあったのか、鶴丸さんが作ったのか・・・?
というか、この本丸の構造が凄い知りたいです。
引越したばかりとはいえ、みんな結構迷ってたよね?(笑)
成り行きで山姥切くんに間違えられて長義くんに絡まれるシーンは、
もうほんとに楽しそうで、長義くんには悪いけど大笑いしちゃいました。
山姥切くんの口癖(?)が完璧なあたり、さすがです!
でもって、最後まで鶴丸さんだって誰にもばれていないところが更にさすが(笑)。
長谷部くんには濡れ衣着せられてたけど、まあそれは自業自得かなー。
あとで思い出した山姥切くんに怒られるといいよ!
殺陣は、今回短かったですが、三池二人を相手取って退けをとらない強さ!
袖を翻して高く飛ぶ姿がとても綺麗でした。
あと、階段を登るとき2回とも五虎退くんをエスコートしてたのも素敵v
そんな風に笑わせたりうっとりさせたりしながら、
三日月さんのドングリのシーンでは、悲伝からの時間と想いをしっかり感じさせてくれました。
「心に非ずではなく、心はここに在ったんだな」
鶴丸さん自身も、三日月さんのあの結末には多分いろんな想いがあって。
引き留められなかったこと、力になれなかったこと、頼ってもらえなかったこと、
心が、届かなかったこと―――心を、知り得なかったこと。
五虎退くんから伝えられた三日月さんの“心”。
いつか鶴丸さんが修行に行く時、彼の懐にこの約束(ドングリ)はきっとある。
あってほしい。そう思いました。
冬の新作では、鶴丸さんは染谷くんが演じるらしいですが、
健人くんの鶴丸さんにも、またぜひ戻ってきてほしいです!
まあ、それに意味を持たせそうな末満脚本がちょっと怖いですが(^^;)

陸奥守吉行役は蒼木くん。
刀ミュのむっちゃんとは違う、でも、確かなむっちゃんがそこに居ました。
さらっとハンドスプリング決めちゃう身軽さと、刀と銃を一緒に使う器用さ、
そして、常に未来に向かう明るさ。
台詞の中で、本丸の初期からいた、と言っていましたが、
その言葉に凄く説得力のあるむっちゃんだったと思います。
ある程度の距離を置きながら、でも山姥切くんと同じ時間を過ごしてきた。
「まんば」「吉行」っていう呼び方もなんとなく歴史を感じます。
一緒に、この本丸を守ってきた。
一緒に、沢山の刀たちを受け入れてきた。
ちょっと語弊はあるかもだけれど、
山姥切くんが三日月さんを照らす太陽なら、
むっちゃんはこの本丸を照らす太陽なのかもしれないなあ、と思いました。
支えて守るのではなく、牽引して守る―――そんな感じ。
今回の物語では、元の主との関係性は台詞で少し出てきたくらいですが、
(けん玉を失敗して「日本の夜明けが遠い・・・」と蹲るのも微笑ましくv
 成功したら「日本の夜明けは近い!」だったのかな?)
新作では多分ガチで向き合うことになるのだと思います。
その時に、どんな陸奥守吉行が見られるのか、とても楽しみです。

そういえば、元の主のことは歌仙さんとも語らっていましたね。
会場替わりキャストの、和田さんの歌仙兼定は、相変わらずかっこよくてキュートでしたv
さりげなく山姥切くんを庇ったり、場の空気を変えたり、何気に大活躍!
むっちゃんに問われて元の主のことを語るときの表情に、
義伝での邂逅のシーンが思い浮かんで、ちょっと涙目になりました。
各会場のキャストも出演シーンは同じだと思うのですが、
もし同じような台詞だったとしても、全然違うシーンになってたんだろうなあ。
不動くんが信長さまをどんなふうに語ったのか、凄く気になります。
全キャストの登場シーン、DVDではもれなく収録して欲しい!

山姥切長義役は梅津くん。
・・・なんというか、本当に大変な役だったろうなあ、と思いました。
長義くんの行動や言い方、プライドの高さというよりも、
自分の居場所を得るためとか、いろんなことに必死で余裕のない感じで、
観ていてちょっと辛くなりました。
いや、要所要所ではしっかり笑わせてもらったんですけどね(^^;)
政府から配属された、実戦経験はないのに戦う術は持っている刀。
詳しいことはわからないけれど、この時点で刀剣男士としての彼の物語は始まっていない。
山姥切長義という名前が、山姥を斬ったという伝説が、この時点の彼の拠り所で。
取り戻すことのできない過去だけが、彼を形作っていて。
そんな状況で、実力も経験もある自分の写しが、自分ではない存在が、
山姥切という名前も、その伝説も背負って目の前にいる。
そしてその存在は、この本丸で確かな信頼と居場所を得ている。
それは、まだゆく先の定まらない彼にとって、どれだけの恐怖だったのだろう。
“偽物”と“本物”
その、ただ一つの拠り所を守るために、居場所を得るためには、
彼は“偽物”を否定するしかできなかったのかな。
そして、だからこそ彼は気づけなかったのだと思う。
この本丸のみんなは、既に彼を受け入れていることに。
この本丸には、もう彼の居場所があることに。

あの模擬戦を経て、山姥切くんにこてんぱんにやられて。
偽物に負けるくらいなら、このまま折れてもいい。
そのくらいの悲壮感が彼にはあったように思う。
でも、それは南泉くんが、いや、南泉くんだけでなく彼を見守るみんなが許さなかった。
だって、彼はもうこの本丸の仲間なんだから。
それは、彼にとってこの上ない屈辱だったかもしれないけれど、
同時に憑き物が落ちたような感じでもあったんじゃないかなあ。
その後、鶯丸さんに、山姥切くんに負けた理由―――山姥切くんが強い理由を教えられ、
山姥切くんの―――この本丸の物語を知識としてではなく実感として知り、
“山姥切の本歌”ではなく、山姥切長義として自分を見ている周囲に気づき、
彼は、山姥切国広を、同時に山姥切長義というこれから自分だけの物語を紡ぐ自分自身を受け入れた。
模擬戦まで、長義くんの頬は蒼褪めているように見えた。
血の通わない人形のように滑らかで冷たさの感じられたその頬が、
模擬戦のあとは赤みがさしているように見えました。
それはもしかしたら照明の加減だったのかもしれないけれど、そのことになぜかひどくほっとした。
山姥切長義という歴史を持つ一振りの刀剣男士として、
彼はこの本丸で物語を紡いでいく。
その物語を、いつかまた観ることができるといいなあ、と思います。


山姥切国広役、荒牧くん。
今回の物語では、悲伝で彼が負った疵の深さにまずは愕然とする思いでした。
悲伝の最後、彼の笑みに未来を感じたはずなのに、その笑みがなかった。
(まあ、序盤は翻弄されてたので笑うどころではなかったかもですが(^^;))
穏やかで落ち着いているようにも見えるのに、どこか危うさも感じられる山姥切くんで、
これは長谷部でなくても心配するよ!と思ってしまいました。
そして物語が進むにつれて、三日月さんから託されたこの本丸を守るために、
ひたすらに強くなろうと自分を追い詰めていた彼の時間が感じられて、
彼の中の喪失の大きさに、なんだかたまらない気持ちになりました。
それが一番感じられたのはやっぱり模擬戦のシーンかなあ。
長義と相対する山姥切くんから凄い怒りを感じて、
そして、6人を相手に戦う姿が悲伝の三日月さんと重なってちょっとぞっとしました。
途中で、「ははは」って笑ってたとことか、「刃をもって語らおう」という台詞とか・・・
殺陣はスピードや鋭さが増していて思わず見惚れるほどだったけれど、
もちろん三日月さんとは全然異なっていて。
なのに、その姿は、振る舞いは三日月さんを彷彿とさせた。
山姥切国広は、「三日月宗近のように」「一人で」この本丸を守ろうとしている。
三日月宗近という存在の喪失は、ここまで彼に自分自身を見失わせていたのかと。
そう思ったら、なんだか泣けて泣けて仕方がありませんでした。
長義くんに対する怒りと容赦のないしうちもそう。
三日月さんが創り上げたこの本丸を「本物を知らないかわいそうな本丸」と否定されたこと。
その後、本丸自体は認めたけれど、それは自分が近侍だからではないと言われたこと。
それは、山姥切国広という存在の否定よりもなにより、
三日月宗近が在った本丸の否定であり、
三日月宗近が創り上げた本丸を“偽物”である自分自身が貶めているという絶望であり、
それが“怒り”という形で迸ったのかな、と思った。
抑えきれずに、力でねじ伏せるようにして長義に自分の―――この本丸の強さを知ら締めてしまったのか、と。

長義くんと相対したことで、昔の自分を思い出した、と、
本物の山姥切なら三日月を失うことはなかったのか、と彼は言ったけれど、
うん、そうだよね。
序伝のころの山姥切くんは、こんな風に真っ直ぐに頑なに感情を迸らせる刀だったよね。
でも、三日月さんと出会ったことで、共に戦い物語を紡いだことで、
記憶にないままに幾度も約束を交わし、その約束を果たしたことで、
山姥切国広は成長し、強くなった。
その強さは決して、三日月さんによるものではないはずなのに。
自分一人だけで、この本丸を守るための強さではなかったはずなのに。
ああ、山姥切くんも、長義くんと同じように近くにあるものが見えなくなっていたんだなあ。
そのくらい、彼の中の喪失は深かったんだなあ。

でも。
長谷部やむっちゃんとの語らいの中で、独りよがりであった自分を知り、
五虎退から受け取った三日月さんの気持ちに、この本丸の絆を知り、
山姥切くんは仲間にこの本丸を託して、修行に出ることを決めます。
もっと、強くなる。
その“強さ”とは、決して刀としての強さだけではないのだろうと思う。
もちろん彼らは刀だから。
でも、彼らは刀剣男士だから。
人の体と、心を持つ刀の付喪神という存在として、
己の心を知り、他者の心を受け止め、彼はきっともっと強くなる。
強くなって、この本丸に帰ってくる。
その強さはきっと、あの日の三日月宗近の強さとはまた違ったものになるのだと、
その強さはきっと、あの日見失った未来を引き寄せるのだと、
旅立つ彼の輝くような笑顔を見て、そんな風に思いました。

カーテンコールでは、一人一人のご挨拶がありましたは、
荒牧くんのご挨拶は、荒牧くん自身の言葉でもあり、山姥切国広の言葉でもあったように思いました。
新作は新ステージということで、初めて山姥切くんのいない舞台になります。
この舞台がどの時間軸なのかとか、既にいろいろ推測が流れていますが、
山姥切くんが修行に行ったまま、ということはない・・・ですよね?
役者としても成長している荒牧くんには、もっといろんな役を経験して欲しいけど、
いつか極めた山姥切くんを舞台で観れるのを信じて、待っていようと思います。

そういえば、ライビュでは最後に特典(?)な一言挨拶があったのだけど、
荒牧くんは和田くんと一緒に出てきて、
和田くんに「ずっと隣にいてくれてありがとう」的なことを言って、
「いきなりどうしたー!」って言いながら和田くんが思いっきりハグしてて可愛かったです。
うんうん、外伝からずっと、山姥切くんの隣には長谷部が、荒牧くんのとなりには和田くんがいたよね。
またこの二人が一緒のところが観れるといいなあ。
でもって、ハグの時に、荒牧くんの顔が見えるのように抱き付きなおした和田くん、さすがだ!(笑)


やっぱりこの人数だと役者さんの感想だけでも長くなっちゃいますね。
物語やシーンの細かいところには触れられなかったけれど、
過去もしっかり背負いつつ、未来へと繋がる良い舞台でした。
EDの真っ白い番傘に映像で名前が映されるのも楽しかったな。
ライビュ1回では見れていないところがたくさんあるので、
DVDが今からとっても楽しみだったりしますv

そういえば、この舞台のイメージビジュアルが青空と緑で、
パンフレットも同じ色合いだったのに、
舞台は秋晴れとはいえ晩秋でちょっとびっくりしたのですが、
過去を取り戻すのではなく、未来へと歩む彼らのこの先には、
きっと冬を越えた青空の下の緑があるのだと信じています。
そしてその夕暮れにはこの大千穐楽と同じように綺麗な三日月が輝いていることを、
心から願っていようと思います。

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