宵闇

封鎖されたその空間を満たす、澱んだ空気。
その澱みがはらわれた空には、満天の星と、三日月。
宵闇のその先に、きっと新しい夜明けが待つのだと。
光溢れる場所に、たどり着くのだと。
そう、祈るように思いました。


舞台「刀剣乱舞 維伝 朧の志士たち」

2019.12.22 マチネ 赤坂ACTシアター 2階A列一桁台
2019.12.22 ソワレ 赤坂ACTシアター 1階Q列40番台

脚本・演出:末満健一
出演:青木陣、櫻井圭登、三好大貴、田淵累生、小西詠人、玉城裕規、染谷俊之、
   岡田達也、神農直隆、一色洋平、唐橋充、池田優樹、岡村圭輔、小野寺俊、
   金谷春来、亀井英樹、川手利文、黒木伸一朗、小林嵩平、澤田圭佑、
   下尾浩章、中西奨、日野亮太、福島悠介、真鍋恭輔、山下潤、横山慶次郎


物語の始まりは、時の政府からの入電。
放棄された世界―――歴史改変されてしまった世界の特命調査を受けた本丸は、
時の政府の指示に従い5振りの刀剣男士を出陣させました。
和泉守兼定(田淵累)、堀川国広(小西詠人)、小烏丸(玉城裕規)、鶴丸国永(染谷俊之)、
そして、彼ら第二部隊を率いる隊長、陸奥守吉行(青木陣)は、
指示通り文久三年の土佐に向かいます。
そこで彼らを待っていたのは、政府権限で顕現した肥前忠広(櫻井圭登)。
正史と異なり土佐勤王党が恐怖政治を敷く城下町の調査を始めた彼らは、
今、この土佐にいるはずのない一人の男に出会います。
坂本龍馬(岡田達也)―――陸奥守吉行の、かつての主。
成り行きでひと時杯を交わした彼らは、
武市半平太(神農直隆)を死なせるわけにはいかないと説得へ向かう龍馬と別れ、
やはり政府権限で顕現した南海太郎朝尊(三好大貴)と合流。
姿を現さない敵の親玉を追い詰めるため、町の各所に罠を張りながら調査を進めていきます。
そして対峙した土佐勤王党には、肥前忠広のかつての主である岡田以蔵(一色洋平)、
南海太郎朝尊のかつての主である武市半平太の姿がありました。
彼らを率いるのは、土佐勤王党と対立し、以蔵に暗殺されたはずの吉田東洋(唐橋充)。
人ではありえない強さを持つ以蔵に追い詰められた仲間を逃がそうと、
以蔵を足止めするためその場に一人残った陸奥守吉行に、吉田東洋は呼びかけます。
刀剣男士、と。
思い出した、お前は、わしが折った刀剣男士だ、と―――


というわけで、刀ステ新作を観てきました。
今回は幸いにも2回分のご縁をいただけまして!
初回は2階席から、2回目は1階席からという、個人的に非常に満足な観劇となりました。
今回はイベントの文久土佐藩を舞台とした物語なわけなのですが、
土佐城下の建物を模したいくつものセットを人力で複雑に動かして、
その上を走り飛び降り飛び上がり、動くセットの隙間を縫うようにして殺陣が繰り広げられておりまして。
(動かしていた黒子さん、時間遡行軍のみなさん、お疲れさまでした!)
上から見ていると、その綿密に計算されて、
でもギリギリの緊迫感のある動きの迫力がとにかく凄い!という感じだったし、
1階席から見ると、視線も動線も遮られる圧迫感や不安が半端なかった。
しかも、そのセットの動きそのものが、ちゃんと伏線になってたというね・・・
終盤で、町が動いているということがわかった瞬間、ちょっと鳥肌立ちました。
そういうセットに加え、映像と照明もとても良かった。
土佐を覆うよどんだ空気、という感じの舞台奥の照明に、
ドッペルゲンガーみたいに映し出される刀剣男士の、歴史上の人物たちの影がとても印象的。
時にくっきりと、時に歪んで、時に本人を呑みこむように、時に複数にわかれ、
“本体”である彼らに纏いつく、影。
観終わった後、あの影がこの物語を象徴しているみたいに思えてしまいました。

物語としては・・・まあ予想通り容赦なかったよね(>_<)
土佐が舞台で、むっちゃんが主人公で、肥前くんも南海先生もいて、
それぞれの元の主が出てきて―――という時点で、
劇団☆新感線の「IZO」に号泣した私としては、きつさは覚悟しつつ、
更にそこに新撰組、しかも土方組の二振りがいて、
底知れない鶴丸さんと小烏丸さんがいるんだから、それはまあそうなるよね、
という感じではあったのですが・・・
それにしたって末満さんもこの本丸の審神者も容赦なさすぎる。
というか、審神者が黒幕なんじゃないかと今回も本気で思いましたよ(笑)。
描かれる“世界”の設定としては、謎が解けた部分もあれば、
謎が深まったり、新たな謎が出てきた部分もあって。
プログラムのあのページの意味深さには、もうつっこむ気も起きませんでした・・・
とりあえず、末満さんには全部書き切るまでほんとにお体に気をつけてほしいし、
私も全部見届けられるように体には更に気をつけてお仕事頑張ろうと思いました(笑)。

ちょっと話が逸れましたが、この時間軸云々については、
悲伝に引き続きいろいろ考えたりもしたのですが、
正直こんがらがるばかりなので、今回はそれについては触れないで、
役者さんの感想を中心に記録しておこうと思います。
余力があったら最後に書くかもしれないけど、多分無理(笑)。


陸奥守吉行役、青木陣くん。
慈伝の太陽みたいに陽性の力に溢れていた青木くんのむっちゃん。
この物語でも、その陽性の力は健在。
真っ直ぐで、でも柔軟性があって。
優しくて、でも厳しくて。
頼りがいがあって、でも甘やかしてはくれない。
隊長として、部隊も物語もグイグイ引っ張っていました。
とんでもない身体能力を活かした殺陣も凄いかっこよかった!
アクロバティックな動きも盛り込まれていて、見ていて凄くワクワクしました。
見ていてほんとに気持ちのいい殺陣。
でも、最後の殺陣は違いました―――最後の、龍馬との、殺陣。

本来なら土佐にいないはずの龍馬と出会い、
龍馬と酒を酌み交わし、龍馬とよさこいを歌い、龍馬を守り、龍馬に守られ、
そして龍馬と共に戦った、その果て。
“この”土佐藩の元凶となった、人でも、時間遡行軍でも、刀剣男士でもない、
不確かで朧な存在である、でもまぎれもなく“龍馬”としての何かを持つ、存在。
この国の未来という大きな何かと、
大切な幼馴染の命という世界と比べたらちっぽけで、でも同じくらいかけがえのない何かと、
両方を求めて、両方を守ろうとして、何かを見失った龍馬。
そのことを自覚した龍馬が笑顔で選んだ、幕引き―――家宝の刀に斬られること。
でも、その幕引きを陸奥守吉行は、坂本家の家宝であった彼は、受け入れなかった。
彼の望んだ未来、彼の選んだ世界、彼が守ろうとした何か。
その全てと対峙して、自分の全てで戦おうとした。

刀ミュの、龍馬の望んだ未来をも守ろうとしている彼にとても心惹かれたのですが、
こちらの陸奥守吉行もそうなのかな、と思った。
龍馬の生きた時間だけでなく、龍馬が望んだ未来も全て、彼は守ろうとしている。
その未来を歪める何かから、守ろうとしている。
例え、それが龍馬自身であったとしても―――

龍馬と陸奥守吉行が対峙したあの一瞬の静寂。
そして柔らかでどこか寂しい音楽と共に交わされる刃。
最初に観た時、遠目だったせいかもしれないけれど、二人が笑っているように見えました。
でも、ソワレで観た時、岡田さんの龍馬はその瞬間を楽しむように笑っていたけれど、
青木くんの陸奥守は怖いくらいに真剣な表情をしていた。
大きな目を見開いて、龍馬の動きの一筋も見逃さないように。
互いが互いの影のように、舞うように交わされる刃は、
怖いほど鋭いのに、ひたすらに優しくて、悲しいほどまっすぐで。
なんだかもう泣くしかありませんでした。

龍馬の物語と対峙させることで、陸奥守を更に強くする―――鳥太刀二振りが審神者から下された密命。
それは確かに成就して、陸奥守吉行は確かに更に強くなった。
でも―――
ラストシーン、「わしは刀じゃ!」と強い目で言う陸奥守吉行。
その眼に、物語の始まりにはなかった暗さを感じたのは、私だけだろうか。
歴史を守るのが刀の本能。
でも、その歴史が彼の守りたい歴史でなかったら?
陸奥守が龍馬たちに断言した“良い国”からかけ離れる正史であったなら?
そんなことを、ちょっと思ってしまいました。


肥前忠広役、櫻井圭登くん。
実装されたときから肥前くんはめっちゃ好みでして、
あっというまにカンストしちゃったくらいなのですが(笑)、
今回の舞台を観て更によろめいてしまいました。
何なのあの可愛さ!
細くて華奢なのに俊敏。
そして真面目!
鶴丸さんに「前の主は面白い男だったんだな」的なことを言われて、
ため息ついて肩を落とすとか、
鶴丸さんに驚かされて、びっくりしすぎて目の前の堀川くんに抱き付いちゃうとか、
南海先生にちょっと過保護なところとか、ほんと可愛かった!
でももちろん可愛いだけじゃなくて、殺陣もかっこよかったです。
基本低い姿勢で、抜刀術というのかな?
一度刀を鞘に納めてから素早く抜いて敵を斬り伏せるシーンが何回かあったと思うのですが、
交互に並んだ敵を彼が斬るごとに白い光が当たるのとか、
視覚効果としてもとても綺麗で迫力があったし、
逆手で刀を抜いて、セットの上にいる敵にあっという間に迫っていくのも凄かった。
元の主である以蔵の殺陣よりもちょっと洗練されている印象もあったかな。

というか、一色くん演じる以蔵の殺陣がまたとんでもなかったんですよ。
龍馬に再会してピョンピョンはねて喜ぶところとか、
肥前くん同様めっちゃ可愛いんですが、殺陣になるとその雰囲気が一変するの。
動き自体は粗雑というか、勢いは凄いけど無駄な動きもあるように見えるのだけど、
低い姿勢からあっという間に相手の間近に迫ったかと思うと、
いきなりセットに飛び上がったり、とにかく動きに予想がつかない。
なんというか、本当に獣みたいな動き。
陸奥守と龍馬の殺陣が対のように見えたのとは違って、
肥前くんと以蔵の殺陣は、似て非なるものだなあ、と思いました。
でも、見え方は違うのに、伝わってくるものは似通っているというか。
知識と表現力がなくて、上手く言えないのが凄くもどかしい・・・

肥前くんと以蔵の関係性も、なんというか涙なしでは観られませんでした。
本来の姿を現した以蔵が、刀を振るいながらその心情を吐露するのですが、
自分の刀に意味を与えられ、自分の居場所を得た喜びと、
人を斬りたくはないのだという苦悩が、本当に鮮やかだった。
肥前くんに追い詰められて、死にたくないと泣き叫び、
でも、ここで死ねばもう人を斬らなくてもいいのだと、ほっとしたように微笑む以蔵も、
(あのメイクだから良くわからなかったけど、多分微笑んでた・・・気がする!)
そんな彼に、「あんたがそう言ってくれるなら・・・」と呟く肥前くんも、
なんだか互いに救われたように見えた。
でも、だからこそ、その後武市に命じられて再び敵対した以蔵に向かって、
肥前くんが、「斬りたいわけじゃねえんだ、そんなの、俺が一番良くわかってる」って言う声が、
本当に本当に優しくて・・・肥前くんにとっても、以蔵にとっても、
何かが昇華した瞬間だったんじゃないかな、と思いました。
この、「斬りたいわけじゃねえんだ」という台詞、
ゲームで聴いたときには自分のことなのかなあ、と思っていたのですが、
以蔵のことでもあったのか、と今更ながらに気づいて、ちょっと呆然としました。
これ、ゲームの設定がこうなのか、末満さんのオリジナル解釈なのか、どっちかな。
どちらにしろ、うちの本丸の肥前くんはこっち解釈になりそうです(笑)。

そういえば、ボディガードになって、龍馬から刀―――肥前忠広を受け取った後、
以蔵さん、二刀流でしたね。
元の自分の刀がごつい感じだったので、最初鞘かな、と思ったのですが、
多分両方刀だったと思う。
しかも、片方で防いで片方で斬るんじゃなくて、
両方で斬るような感じの殺陣だった気がするけど・・・うーん、ちょっと自信ない(^^;)
あと、本来の姿になるときに、横に繋がった二つのセットの上に仁王立ちになるのだけど、
そのセットが90°動いて階段状になる間、ずっとその上に立ってて、
こういうセットの使い方が!とかなりびっくりしました。
というか、あの上に立っていられる身体能力が凄すぎる・・・


台詞の解釈といえば、南海先生のあの台詞も!
三好さんの南海先生は、なんというかほんとに南海先生でした。
あのマイペースさ、結構好きかも、私(笑)。
鶴丸さんにもペースを乱されないとか、凄すぎます、先生。
そして、最後の入電のタイミングも最高でした!
でもって、めっちゃいい声!
罠も、まさかトンカチと鑿(だよね?)が出てくるとは思わなくてちょっとびっくりしました。
あの暗転での笑い声はかなりマッドサイエンティストっぽい感じでした・・・
南海先生に体を調べられちゃった以蔵さんにちょっと同情しそうになりましたよ(^^;)
罠を仕掛けていくシーンは、本当に楽しくv
色とりどりの照明とめっちゃ軽快な曲にのって、
みんながノリノリで遡行軍を倒して、南海先生が罠にしていくんですが、
作るたびに言う台詞がほんとに素晴らしいタイミングでした。
真顔で足でリズムを取る兼さんとか、刀でエアギターする鶴丸さんとか、
鶴丸さんと一緒に罠をペシペシ叩く堀川くんとか、
だんだんいらいらしてきて、「罠を作ろうと言いだしたのは誰だい?!」と逆切れする先生とか、
ほんとにめっちゃ楽しかったですv
あとでイベントで回収した南海先生の台詞、見なおさなくちゃ、と思いました(笑)。

で、肝心の台詞。
「刀の延長線上に人間がいる」
この台詞、イベントの回想で観た時、そしてこの舞台のなかでその回想が再現された時も、
私はちょっと理解できていなくて。
むっちゃんと同じように、面白いことを言うなあ、と思っていたんですね。
でも、武市半平太がこの台詞を言った時、その前後の流れとあわせて、
浮かんだ自分の思考に、なんだか愕然としてしまいました。
人が振るう刀。
その人の背後に、守るべき存在があるのであれば、
その刀の延長線上にあるのは、斬り捨てるべき存在としての人間―――命なのか、と。
この辺は、ちょっといろんな方の考察を読んでみたいなあ。

南海先生は、弱い、という設定だったので、確かに弱かったのですが(え)、
殺陣は高い位置で大きく払うような動きが滑らかで綺麗だな、と思いました。
元の主である武市半平太と切り結びながら、
彼の特徴を言っていって、「こういう男だった」と呟く声が、
やっぱりとても優しくて、彼の中にある分析されるもの以外の情を感じました。
武市先生役の神農さんが、まさに実直、という感じで。
神農さん、どこかで見たことあるなあ、と思ったら、「1984」のオブライエンでしたか!
あの舞台ではめっちゃ怖い役でしたが、
武市先生の未来を憂える声の懸命さは、どこか愛しくなるような響きがありました。
陸奥守と龍馬の最後の殺陣の後、龍馬が陸奥守に、
「おんしの知る日本は良い国か?」的なことを聞いて、「ああ!」と答える陸奥守に、
「断言できるか?」と重ねて聞くのに、陸奥守がもう一度力強く答えるのですが、
その時に、武市先生、笑ってた気がするんですよねー。
あのメイクだから良くわからなかったのだけれど、多分。
というか、あのやり取りは、凄い重いなあ、と思いました。
陸奥守が見ている日本って、龍馬にとっても未来であると同時に、
私たちにとっての未来でもあるわけで。
身分差がなく平等で誰もが自由―――そんな国かと問われて、「ああ」と答えることが、
私にはできるのかなあ、とちょっと思ってしまいました。


田淵くんの兼さんは、とにかく若い!と思いました。
なんというか、良い意味で発展途上な感じ。
他のメンツとは、明らかに世代が違う。
鶴丸さんの格好の標的で、バシバシ(物理で)つっこまれてました(笑)。
その青さが、軽やかに彼を強く見せる瞬間もあれば、
幼ささえ感じさせる頑なさに繋がる瞬間も、
弱い自分への苛立ちを隠しきれないような瞬間もありました。
とりあえず、吉田東洋との戦いのシーンで、
弾き飛ばされた陸奥守の拳銃を兼さんが構えた時は、有無を言わさず泣かされたよね。
冒頭で、銃を否定する台詞をあんなにも強い響きで言っていた兼さん。
南海先生が、東洋が言う、土方さんの異なる歴史の可能性を、恐れるように否定した兼さん。
陸奥守の龍馬への想いの中に、何かを見つけた兼さん。
銃を構えたあの瞬間、兼さんの足場は、一つ確かなものになったような気がします。
3組の元の主と刀剣男士という強烈な物語の狭間で、もしかしたら地味だったのかもしれないけど、
この物語は確かに“和泉守兼定の物語”でもあったんだなあ、と思いました。
刀の時代の終わりの最先端。
うん。確かにその通りだね。


小西くんの堀川くん。
ビジュアル的に堀川くんも見事な完成度。
髪の毛がつやつやだったんだけど、あれは地毛なんでしょうか?
「えぇ~」という声がまんま堀川くんで、ちょっと微笑ましかったです。
そして、にっこり笑ってのあの決め台詞が、もの凄い似合ってたところが凄い!
立ち位置的には、一歩引いた場所からこの物語を支えていたように思います。
土佐の異質さを最初に感じ取っていたのは彼だったしね。
その分、彼の在り方には十分目を向けることができなかったんだけど、
兼さんが大好きなのは良くわかりました。
「相棒」って呼ばれた瞬間の笑顔が遠目でも輝くようだったよ!


それにしても、吉田東洋、強かった!!
もの凄いラスボス感でした。
唐橋さんはいくつかの舞台で拝見していますが、
どれもあまり動かない役だったので、あんなにも凄まじい殺陣をする人なのかと、
ちょっと本気で驚いてしまいました・・・すみません!
振るう刀の刀身がとても長いということもあるのだとは思いますが、
とにかく強い。大太刀並に強い。
そして、あれだけ激しい殺陣をしながらの、あの台詞の説得力!
刀剣男士!と陸奥守に告げる言葉の確信とは裏腹に、
朧である自分自身を語る言葉の繊細さにも圧倒されました。
それにしても、武市先生も吉田東洋もいきなりあの姿で出てきたのは、
南海先生の罠にかかってしまったということなのだろうか・・・?


小烏丸役、玉城さん。
悲伝の時よりも、普段の動きのふわふわ感がちょっと減ったかな。
片足立ちの瞬間が少なくなったというか。
袖の翻りが八重の椿みたい、という印象はそのままでした。
まくれた袖をなおす仕草とか、細かい瞬間、指の先まで小烏丸さんでした。
堀川くんとは違う意味で、物語を支えてたかなー。
つっこむべきところはつっこみ、フォローすべきところはフォローし、
間を取り持つべきところは取り持つ。
父がいて、本当に良かった、と思う瞬間もあったような。
でも、まあ小烏丸さんですからね。
高いトーンの柔らかな声が、低く重くなる台詞が何度かあって、
その響きにちょっとよろめきました。あれは狡いと思う!
殺陣も、華やかで軽やかで綺麗なのですが、以前よりも重さが加わったように思います。
重々しくなったというよりも、刀に乗る力の重さ、という部分で。
悲伝ではまだ顕現したてっぽかったので、
この物語までの間に、レベルが上がったということなのかなあ、と思ったり。
戦う時に、たん、と足を鳴らすのが印象に残りました。
でもって、小烏丸さんは強い相手から倒していくんだな、と。
堀川くんは強い相手を最後にのこしてた気がします。
この辺食べ物でも同じなのかな(え)。
今回は鶴丸さんとの共闘が多かったのですが、
赤と白の照明の中、赤と白の鳥太刀が踊るように袖を翻して敵を斬るシーンは、
その光が闇を払うみたいに見えました。
なんというか、凄い神々しかった・・・さすがです。
でもって、武市先生っぽい敵と戦う時、二人で蹴りを入れて壁にめり込ませてたの、
かなり容赦ないな、と思いました(^^;)
そして、物語の中、小烏丸さんも三日月さんを諦めていないことがわかって。
三日月さんと山姥切くんの果てを見届けた小烏丸さんだからこそ、なんだろうなあ。


鶴丸国永役は染谷さん。
虚伝の初演をライビュで見て、思いっきりよろめいた染鶴さん。
いつか生で観たいなあ、と思っていたので、それが叶って本当に幸せでしたv
私的に、ビジュアルや在り方のイメージが、ゲームの鶴丸さんに一番近くて、
一番しっくりくるのが刀ミュの鶴丸さんで、
健人くんの鶴丸さんは、刀ステの本丸ではなくてはならない存在で、
そして、染谷さんの鶴丸は、その強烈な存在感ととらえどころのない底知れなさで、
なんというか全力で私をよろめかせに来る鶴丸さんだったりします(笑)。
トリックスターっぽい感じがたぶんめっちゃ好みなんだろうなあ。

今回の舞台でも、あの容赦のない自由奔放さは素晴らしくv
一見突飛なことをしてるように見えて、全てに意味があるように感じられるのが凄い。
失言した兼さんに(物理で)つっこんだかと思ったら、
次の瞬間思いっきり失言して口を手で覆ったり(めっちゃ可愛かった・・・!)、
龍馬と陸奥守が歌うよさこいにあいのてをいれて、
龍馬に「おんしはだまっちょれ!」とか言われて落ち込んでたり、
南海先生の罠にめっちゃワクワクしたり、
南海先生に躱されて苦笑いしたり・・・ころころ変わる表情に、
ああ、虚伝の鶴丸さんだ!と嬉しくなってしまいました。
一触即発な肥前くんと兼さんの間に割って入るときの、
「ちょっとー、刀剣男士! 喧嘩しないで仲良くしよっ!」という台詞には、
めっちゃ笑わせてもらいました・・・その言い回し、どこで覚えたの?(笑)。
疲れてよろよろの堀川くんを、「♪あんよはじょうず」って歌いながら手招きして、
抱き留めて愛でてるのとか、めっちゃ孫とおじいちゃんだったし、
南海先生に罠のスイッチを押させてもらう時の、ワクワクキラキラした様子も微笑ましくv
でもって、この舞台での日替わりも、もちろん鶴丸さんが担っておりましたv
罠用の時間遡行軍の成れの果てを山盛り背負ってきたのに、
南海先生にもういらない、と言われるシーンなのですが、
まだ生きてるやつがいる!と言って、腹話術的な感じで南海先生に話しかけるんです。
教えて、刀剣博士!って(笑)。
マチネは、茎って何?って聞いて、南海先生が説明をはじめたら、
「それって長くなりますかー?」って聞いてて、南海先生むっとしてたし、
ソワレは、ハバキってなんですか?って聞いて、南海先生が説明をはじめたとたん、
ぐーぐー寝てしまって。
余りのリアルな寝息に(?)肥前くんが笑い落ちて後ろを向き、
声をかけようとした南海先生も笑ってしまって後ろを向き、
なかなか進まない状況に、鶴丸さんが「腰が・・・!」と(笑)。
なんとか立ち直って、「始末してこい!」(だったかな?)って言えた肥前くん、偉い!

もちろん、そういう楽しい鶴丸さんだけではなくて、
かっこいい鶴丸さんも、怖い鶴丸さんも、いろんな表情を見せてくださいました。
殺陣は、鶴丸さんも虚伝よりも重さが増したかなあ。
セットを駆け上がったり、飛び乗ったり飛び降りたりもしているのだけれど、
動き自体は飛び跳ねるというよりも、ふわっと浮き上がるような感じ。
殺陣のスピードも速くて、鋭く空間を削ぐような印象なのだけど、
やっぱり刀に乗る力が凄く大きくて、その軌跡が凄く滑らかなように思いました。
まあ、素人の印象なんですけどね。
殺陣の間、要所要所でいれる決め台詞も、言葉の強い響きと凄味のある笑みに圧倒されました。

なのにね。
時々凄く揺らぎを感じる瞬間もありました。
天も驚かせてみせる、という時の、祈るような響き。
この世界には自分の知らない驚きがまだまだあるから、
俺の心はまだ死なないらしい、という時の笑みに感じたやるせなさ。
ただ寂しいだけだ、と呟いた時の、切ないほどの静かさ。

ああ、この鶴丸さんは、三日月さんを自分の手が届かない場所で失ったのだと、そう思った。

この舞台のパンフレットに、刀剣男士の名前が並ぶページがありました。
一連の舞台に出てきた刀剣男士たち。
キャスト替わりは、ちゃんと二振り名前がある。
これは、たぶんこの本丸の顕現順で。
虚伝再演でキャストが変わったときから、時間軸のこととか、
キャスト替わりは刀剣破壊されたということでは、という考察が流れてた。
私的には、破壊ではなく、円環の中の齟齬でもなく、
ただ単純にこの本丸には二振りの鶴丸さんがいるのかな、と今回思いました。
だって、取り戻したい、という強い想いは、寂しいという素直な言葉は、
健人くんの鶴丸さんとは少し違う気がしたのです。
あの時―――本丸が襲撃されて、三日月さんを失った時。
染谷さんの鶴丸さんは、別の任務で本丸を離れていたんじゃないかな。
どうやっても自分の手が届かない時に、三日月さんは失われた。
その喪失は、たぶんあの瞬間に立ち会った刀剣男士たちとは異なる色合いの、
悲しみであり、痛みであり、怒りなのではないかな。
だからこそ、染谷さんの鶴丸さんは待つのではなく、信じるのではなく、
あの時届かなかった自分のこの手で、彼を引きずり戻そうとしてるんじゃないかな。
そんな風に、感じました。うん、まあ多分全然違うんだけど(^^;)

今回の舞台で、時間遡行軍を阻止できずに歴史改変された時間軸がいくつもあること、
その時間軸が正史に影響するかもしれないから隔離―――封鎖されていること、
そこには、時間遡行軍に敗れた刀剣男士の存在があるのかもしれないこと、
といった推測が話されていました。
悲伝を観た時、三日月さんが結の目となった本丸は、三日月さんごと円環の中にあるのか、
円環を戻るのは三日月さんだけで、本丸は幾千幾万の分岐としてそれぞれの時間を刻んでいるのか、
と悩んで悩んで、結局わからないままなのですが、
今回提示された推測からだと、後者なのかな、と思ったり。
隔離された時間軸で三日月さん、何かをしているらしいしね。
悲伝で山姥切くんが負けた時間軸は、三日月さんのいない時間軸として進んでいて、
山姥切くんが勝った時間軸は、この本丸の正史として慈伝、維伝に続いている。
そして、負けた三日月さんはもう一度ループして、隔離された時間軸の中にいるのかなあ、とか。
そもそも、三日月さんにとっての“正史”が何なのか、ということもあるんですよね。
三日月さんが許容できない“何か”が、三日月さんの円環の始まりだとすれば、
それは仲間である刀剣男士たちが破壊される、ということなのかもしれない。
本能寺で、関ケ原で、小田原で、京で、そして土佐で。
その弱さゆえに時間遡行軍に破れ、折られた刀剣男士。
その結果として改変されてしまった歴史。
それを正史へと修正するために、今度は正しい歴史を繋ぐために、三日月さんはループする。
そうなのだとしたら、三日月さんの本能が守ろうとする歴史は、
人の歴史なのか、刀剣男士の歴史なのか。
刀剣男士の歴史を守ることは、刀の本能と一致するのか。
人の正史ではない歴史を守ろうとする刀は、刀ではないのか。
うーん、やっぱり良くわからないなあ。

というか、あの金髪の時間遡行軍は何なんですか?!
遠目だと荒牧くんの山姥切くんにそっくりだったし、
殺陣も、くるくると刀を回すところとか、山姥切くんっぽかったし、
傘の縁を下げるところとか、布を引っ張る仕草に似てたし、
そもそも最後の台詞は荒牧くんの声にエフェクトかけてましたよね?
ものがたりをおくれ。
もっとつよくなるために。
そんなようなことを、彼は言いました。
そして、陸奥守を助け、守り、
(二階席からは見えなかったけど、通路でガチで陸奥守ってた・・・
 そして龍馬さんは観客の傘を借りて土佐勤王党の刀を受けてた(^^;))
刃を交わした鶴丸さんには、お前はこの物語に必要だ、と戦うことを避けた。
あれは、三日月さんに負けた山姥切くんの時間軸の、更に土佐で負けた山姥切くん?
吉田東洋が折った部隊が、この本丸にいる六振りだったしなあ・・・
山姥切くん、骨喰くん、日本号さん、むっちゃん、大倶利伽羅くん、宗三さんだったと思う。
でも、最後の台詞は隔離された時間軸を渡り歩いているようにも聞こえたし・・・
というか、布がなかったのは極めた後だからとか言わないよね?
パンフレットで、慈伝と維伝の間にもう一つ物語があるっぽいのが凄い怖いんですけど・・・

まあ、考えても仕方ないか!(え)
実験が中らずと雖も遠からずとか、顕現という技術とか、瑕疵のある本丸とか、
意味深な言葉も(主に政府権限で顕現した南海先生から)出てたけど、とりあえず保留。
パンフレットの一覧で消されていた物語の数以上の物語が必要だとしても、
何らかの決着は付けてくれるものと期待して、待っていようと思います。


最後になりましたが、今回もアンサンブルさん、大活躍でした!
カーテンコールで並んだ姿を見て、こんなけしかいなかったのか!と今回も驚きました。
そのくらいほんとに大活躍。
今回は大太刀もいたしねー。あれはお一人だけで、何回も出てきてたのかな。
アクロバティックな殺陣も多いし、セットの動きも緻密だし、
内容的にも心身ともにめっちゃハードだし、
本当にプリンシバルさんもアンサンブルさんも、怪我には気をつけて頑張ってください!
とりあえず、千秋楽の配信(あるよね?)は購入しようと思います(笑)。


プログラムの最後のページを開いたとき、
そこには彼らの後ろ姿がありました。
彼らが目指すその先が、光溢れる場所でありますように―――

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント