祈りの言葉

妹を引き留める時。
仲間の背を押す時。
自らを鼓舞する時。

何度も何度も叫ばれたその言葉は、
まるで祈りのように聞こえた。


舞台「鬼滅の刃」

2020.1.18 ソワレ 天王洲銀河劇場 2階C列20番台

原作:吾峠呼世晴
脚本・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
出演:小林亮太、髙石あかり、植田圭輔。佐藤祐吾、本田礼生、高木トモユキ、
   星瑠、其原有沙、柿澤ゆりあ、久家心、舞羽美海、佐藤永典、佐々木喜英、
   竹村晋太朗、夛田将秀、西分綾香、星賢太、星乃勇太、前田ゆう、森田力斗


物語の舞台は大正時代の日本のどこか。
貧しいながらも母と4人の弟妹と共に幸せに暮らしていた炭焼きの少年、竈門炭治郎(小林亮太)。
けれどある冬の日、その幸せは血の匂いと共に断ち切られました。
自分の留守に、惨殺された家族。
かろうじてまだ温かかった妹の禰󠄀豆子(高石あかり)を助けようと、
彼女を背負って山を下りる彼を襲ったのは、鬼と化した禰󠄀豆子でした。
その時に出会った鬼殺隊員・冨岡義勇(本田礼生)の助言に従い、
炭治郎は家族の敵を取り、妹を人間に戻すすべを得るため、
鬼狩りとなるべく、育手である鱗滝左近次(高木トモユキ)の下へと向かいます。
それは、彼の過酷な道の始まりで―――


*以下、例の如く盛大にネタバレします。
 ネタバレ回避は自己責任でお願いいたします!
 個人的には原作を知っていても、
 というか知っているからこそ前情報なしで見た方が面白いと思いますよー。


というわけで、「鬼滅の刃」の舞台に行ってきました。
昨年のアニメ化以降人気爆発中な少年漫画ですが、
私もタイトルが気になってアニメを見始めて、
物語が好みだったというのもあるのですが、
とにかく、アニメとしての力に思いっきり嵌ってしまいました。
以前「宝石の国」のアニメを見た時に、
アニメ化する意義、アニメーションの力というものにとても感動したのですが、
鬼滅のアニメも、アニメだからこそできる表現がこれでもか!と繰り出されて。
絵の力。
声の力。
音楽の力。
間の力。
それらが合わさったときに生まれる、圧倒的な力。
―――アニメを見て呆然とする、という状況を久々に経験しました。
で、その後原作を一気読みしまして。
そうこうするうちに舞台化が決まって。
知らない役者さんばかりだけど、脚本が末満さんだし、
佐々木くんの無惨さまはめっちゃ似合うだろうし、となんとなく申し込んだ先行が当選。
うん、欲望センサーは今回も鋭敏でした(^^;)
刀ステ大千穐楽ライビュも当たってたし、
あの世界をどう舞台化するのか、ちょっと不安もあったので悩んだのですが、
せっかくなので、観に行ってみました。
(あ、ライビュチケットはリセールに出したら速攻引き取っていただけました(笑)。)

結果、めちゃくちゃ面白かったです!
内容的には、コミックスの4巻、那田蜘蛛山に向かうまでの物語。
端折られたエピソードももちろんありましたが、
台詞も流れもかなり原作に忠実だったと思います。
末満さんが脚本なので、どんなトラウマの素をぶち込んでくるかと警戒してたのですが杞憂でした。
というか、良く考えたら原作がそもそも容赦なかったよ(笑)。
むしろあまりに原作忠実なので、冒頭から大泣きしてしまった・・・

そして、末満さん演出は今回も素晴らしかったです。。
アニメではアニメならではの表現が素晴らしかったように、
舞台ならではの表現が素晴らしかった。
まあ、思い返してみれば、ツッコミどころも結構あったとは思います。
鬼は大体着ぐるみだし、下手なマジックみたいな表現もあったし、
あのスローモーションの毬の動きはどうにかならなかったのかとも思ったし。
でも、観ている間は頑張っているなー、と微笑ましく思ったし、
むしろそういうことを凌駕する素晴らしさもありました。

生身の役者さんの、声の、動きの、表情の、歌声の力。
音楽の力。
映像の力。
黒子さんの力。

演出面で言ったら、映像と黒子さんの使い方がとにかく秀逸。
プロジェクションマッピングを多用して景色を描くことで動きを表現し、
炎を描くことで鬼の消滅を描く。
そこに、黒子さんの人力の表現が重なるわけです。
炭治郎の修行のシーンや鼓の鬼の家のシーンでは、大小の箱を縦横無尽に動かし、
炭治郎と錆兎の殺陣では、黒子さんが役者さんを持ちあげたり、
黒子さんの上を転がったりして、常ではない動きを表現し、
矢琶羽との戦いのシーンでは、黒子さんたちが赤い紐で炭治郎を絡めることで、矢印を視覚化。
セット自体はシンプルなのに、人の力による動くセットが、
原作の絵の勢いにも、アニメの動きの滑らかさにもつながり、
そこにスピーディで迫力のある殺陣が繰り広げられるという、
舞台ならではの立体的な空間演出が創り出されていて、何度も感嘆してしまいました。

そして、最後の響凱との戦いのシーン。
舞台の、文字どおり上から空間を侵食する青白いスモーク。
炭治郎の振るう刀が、そのスモークを纏い、切り裂き、渦を描くその様は、
息をのむほどに美しくて、同時に舞台でしかできない表現に鳥肌が立ちました。
スモークの演出は、多分舞台ならではで。
「宝塚BOYS」のレビューのシーンや、「ビリー・エリオット」の幻想のバレエのシーン、
「レ・ミゼラブル」の下水道のシーンなど、印象に残るシーンはたくさんある。
でも、上から降ってくるというのは、多分私は初めて見たし、
スモークという形のないもので形を作りだす様は、圧倒的な何かがあったように思いました。

あと、歌とダンスも素晴らしかった!
末満さん演出の舞台は刀ステとTRUMPシリーズを幾つか観ただけなのですが、
ミュージカルではない刀ステでもOPとEDでは歌とダンスがあったので、
今回もそうなのかなあ、と最初は思っていたのですが、とんでもない!
ミュージカルと言ってしまってもいいくらい、要所要所でみんな歌うし踊ってました。
物語の導入も歌だったし、義勇が炭治郎に向ける言葉も、
錆兎との邂逅も、藤襲山での双子の説明も、
無惨さまの言葉も、珠世さん(舞羽美海)の願いも、
善逸(植田圭輔)の状況の説明も、響凱との戦いも・・・他にも歌はたくさんあって、
でもどれも唐突さはなく、本当に滑らかに物語を紡ぎ、
彼らの心情を調べに乗せ、そして増幅して伝えてきてくれたように思います。
うん、これってミュージカルと言ってしまっていいと思う!

そんなこんなで、総じて舞台化の醍醐味に溢れた舞台でした。
私が観たのは初日の夜公演だったので、多分まだ粗さがあって。
これから役者さんの演技も、映像と人の力による演出も、
きっとどんどん洗練されていくのだと思います。
役者さんにもスタッフさんにも負荷の大きい舞台だと思いますが、
お体に気をつけて千穐楽まで走り抜けてほしいなあ。


では、役者さんのことを少しずつ。

炭治郎役、小林亮太くん。
多分初見の役者さんなのですが、こちらの気持ちを有無を言わさず巻き込む演技、
そして歌声の力に心震えました。
なんというか、彼が炭治郎だから、この舞台は成り立ったんだと、思った。
炭治郎の強さも、優しさも、頑なさも、全てを全身全霊で表現していました。
ほぼ出ずっぱりで、喋り、歌い、叫び、走り、飛び、戦い、傷つき、嘆き、
喜び、怒り、打ちのめされ、けれどまた立ち上がる。
その在り方は、まさに炭治郎だったと、そう思う。

炭治郎という少年の“正しさ”は、驚くほどに揺るぎない。
その“正しさ”で、彼は目に映るものを全て“善きもの”としてとらえる。
いつか―――
いつか、その“正しさ”が、正しさゆえに誰かを傷つけるのではないか。
正しさゆえに、彼を孤独にするのではないか。
アニメを見ても、原作を読んでも、そんな風に感じる時がありました。
でも、そんな気持ちは、彼の炭治郎を見ていてどこかに行ってしまった。
その“正しさ”と同じくらいに揺るぎない“優しさ”が、“怒り”が、彼にはあった。
善逸が聴いた、優しい音。
崩れゆく鬼たちが感じた、優しい眼差しと温もり。
それでも揺るがない、鬼への―――無惨への怒り。
そして生まれる、彼の強さ。

「頑張れ」と、炭治郎は何度も言います。
鬼へと変貌した妹を引き留める時。
恐怖に震える誰かを励ます時。
そして、挫けそうになる自分を鼓舞する時。
強いその言葉の響きは、歌声は、けれどどこか祈りのようにも聞こえました。

彼の歌声は、ミュージカルという意味では美しいとは言えないかもしれない。
地声に近い、時に叫ぶようなその歌声は、
けれど一人の少年の全身全霊から迸るように、確かに私の心を震わせた。
そのことがとても嬉しくて、炭治郎としても、小林亮太という一人の役者さんとしても、
この先の彼の旅路を見守りたくなりました。


禰󠄀豆子役、高石あかりちゃん。
めっちゃ可愛かったです!!
そして、アクションもかっこよかった!
あの竹を加えた状態での殺陣、凄い大変だと思うんだけど・・・(^^;)
とてとてとて、という感じの歩き方もまんま禰󠄀豆子ちゃんv
台詞は冒頭だけで、あとはほとんど声も出さないのですが、
大きな目が後方席まで雄弁に感情を伝えてくれたように思います。
最終選別から炭治郎が帰ってきた時の、引き戸を蹴り破った後(豪快でした・・・)、
号泣する炭治郎を抱きしめる手が本当に優しくて泣けました。


善逸役の植田くんも、もう全てが善逸!
ビジュアルの完成度もなのだけど、動きとか声とかが本当にアニメから抜け出してきたみたい。
まさに技あり!という感じでした。
登場シーンの一連のあれそれのあと、思わず拍手しちゃったよね。
植田くんは若旦那しか観たことがなかったので、ちょっとびっくり(笑)。
総じて重い物語なのだけれど、善逸のシーンは素直に笑うことができました。癒し。
鼓の鬼の家で眠ってしまう時、原作の囲み台詞がそのまま映像で映されたのには笑いました。
で、直後の殺陣はめっちゃかっこよかった!
その後の説明の歌では女の子に囲まれてて、よかったねー、と思いつつ笑っちゃいました。
いやだって善逸寝てるし!(笑)
そういう笑いもとい癒しな存在だったのですが、シリアスなシーンもちゃんと見せてくれました。
炭治郎の「優しい音」の下りは、思わず見入ってしまいました。凄い説得力だった。


伊之助役、佐藤くんも初見。
ほんとに原作通りにずーっとあのイノシシの頭をかぶってました。
その上であの殺陣するって凄くないですか?
あれ、見えているんだろうか・・・? いや、見えてなきゃ危ないよね。
筋肉の感じもちゃんと伊之助。凄い。
ちゃんとした出番は2幕に入ってからなので、ちょっと出落ちてきな立ち位置ではありましたが、
続編があるなら彼の物語もちゃんと描かれそうで楽しみです。


顔が出ていないといえば、鱗滝さん役の高木さんも、
最初から最後までしっかりお面をかぶってらっしゃいました。
高木さんのかっこいいお顔が見えなかったのはちょっと残念ですが(^^;)
お面をかぶっていると、どうしても声が籠った感じになっちゃうのですが、
説明的な部分もしっかり聞かせてくださったのはさすが。
鋼鐵塚さんとのやりとりも楽しかったですv
炭治郎が隊服に着替えるまでのつなぎでダジャレや大正こそこそ噂話をしてくれたのですが、
あれはアドリブパートなのかなあ。
1幕での数少ない癒しの場面でしたv
というか!
鋼鐵塚さんも造形がしっかり原作通りでした。
でもって、めっちゃ声が良かった!!
あれ、アンサンブルさんなのかしら? 
まさか佐々木くんだっりしないよね?
鋼鐵塚さんだけでなく、最終選別では玄弥やカナヲちゃんもちゃんといました。
遠目だったけど、ビジュアルもちゃんと作っていたし、
玄弥や一連の台詞もちゃんとありました。
朱紗丸(西分あやか)や矢琶羽(星乃勇太)のビジュアルもしっかりしていたし、
他の鬼の背景もきちんと描かれてました。
善逸と行動を共にする正一くんもいいキャラ造形だったしv
クレジットはされていないので、アンサンブルさんなのだと思うけれど、まさに大活躍!
せっかくだからクレジットや香盤表付けてほしいなあ。


義勇役の本田くんは、炭治郎への言葉の歌が圧巻でした。
「生殺与奪」「笑止千万」という言葉がしばらく頭を回りましたよ(笑)。
剣士としての圧倒的な強さを見せつけるには、ちょっと時間的に短かったのだけれど、
あの歌で歌われた義勇の言葉がなければ、炭治郎は歩み出せなかったのだと思うので、
そういう意味での存在感はしっかりあったように思います。

短い登場でも印象的だったのは、星瑠くんの錆兎も。
もともと好きなキャラクターではありましたが、
面を割られた瞬間のあの笑みにはほんとに泣けました。
其原有沙ちゃんの真菰も原作のイメージそのままの可愛らしさでした。
最終選別後の、大好きな鱗滝さんのところに帰る―――というシーンは、
原作通りでやっぱり泣けてしまいました。

珠世役は舞羽さん。
歌声の美しさはやっぱり別格だなあ、と思いました。
凛とした美しい歌声に、ちゃんと珠世さんの躊躇いも感じられて。
原作では端的な短い台詞なのだけれど、歌になることで、
そういう彼女の揺らぎのようなものも強く表現されていたように思います。
着物姿も美しかったv
そして、愈史郎役の佐藤くんとのやりとりも、テンポが良くて微笑ましかったですv

歌声といえば、双子役の柿澤ゆりあちゃんと久家心ちゃんも素敵でした。
ハモりがめっちゃ綺麗v
咲き乱れる藤の映像と相まって、とても幻想的な雰囲気でした。
個人的には黒髪役の心ちゃんの歌声がめっちゃ好みでした。
・・・って、あれ?黒髪って確か・・・?(笑)

そして、無惨さま役の佐々木くん!
似合うとは思っていましたが、予想以上にお似合いでした!!
帽子をかぶっていたし、後方席だったので、表情までははっきり見えなかったのですが、
出てきた瞬間に目が行き、その場の雰囲気がガラッと変わる感じは、
照明の力だけではないと思います。
というか、舞台の始まりがそもそも無惨さまオンステージだったよね(^^;)
EDでも、敵の真ん中でただ一人、周りと違う旋律を歌っていたのだけど、
圧倒的な数の差に負けてない存在感はさすがだな、と思いました。
終演後にプログラムを読んでいて、自分の役との共通点は?という質問に、
「女装に関しては似合う自信がある」と答えてたのには爆笑しましたが(笑)。
うん、それは私もそうだと思う。
あのシーンまで舞台化されるといいねー。
というか、お館様と無惨さまは瓜二つのはずだから、
お館様が登場する場合一人二役になるのでしょうか・・・それは観てみたいかも!


さらっと書くつもりが、思いがけず長くなりました。
物語そのものに踏み込んだ記録は今回は書けなかったけれど、
この舞台そのものが導入部分、ということもあるかな、と思う。
評判が良ければ、続編も作られるのかなあ。
登場人物が多いし、なかなか難しい部分もあるかもしれないけれど、
個人的には2.5D舞台の新しい挑戦となる舞台だと思うので、
シリーズ化して欲しいなあ、と思います。
あ、でも末満さんがあんまり忙しくなっちゃうと刀ステが進まないか・・・うーん、悩ましい!(笑)

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