最後の名前

8月になった途端、いきなり夏空になりました。
昨日は雲の隙間から見えていた月が、今夜は遮るものなくその皓い光を降り注いでくれています。
そういえば、さっき見たこの舞台にも、月の下で歌う曲があったなあ。


SHOW-ISMS  Version マトリョーシカ

2020.8.1 マチネ シアタークリエ(配信)

出演:美弥るりか、平方元基、夢咲ねね。樋口麻美、今村実生、今拓哉、保坂知寿、
   塚本直、神谷直樹、池田美佳、井上真由子、
   中川晃教、彩吹真央、藤岡正明、水夏希、クミコ、JKim


というわけで、SHOW-ISMS、やっと観ることができました!
実は先週末にドラロマVerの配信を見る予定だったのですが、残念ながら休演となってしまって。
無事に再開されて本当に良かったです。
先週から今週にかけて気温差も激しいし、コロナでなくても風邪をひくリスクは高いなあ、と。
キャストのみなさんも、スタッフのみなさんも、きっともの凄く気をつけているのだと思いますが、
こればっかりは100%はあり得ないですものね・・・
みなさんの努力が実ることを祈るばかりです。


今回は、上演中止となった「マトリョーシカ」のミュージカルスケッチバージョン。
ダイジェスト、という感じだったのだと思うのですが、
物語の流れはしっかりと伝わって来ました。

物語の舞台は、とある都立高校の夜間コース。
最終学年の4年A組を教えることになったバンビ先生(美弥るりか)と、生徒たちの1年間が描かれました。
夜間コースに通う生徒たちは、それぞれに事情や悩みや傷を抱えていて・・・
学習障害を持つ建設作業員のヌーボー(平方元基)は、たぶんそれゆえのいじめや嘲笑を。
シングルマザーのモモ(夢咲ねね)は、目の前にある貧困と断ち切られた夢を。
元暴走族の番長(樋口麻美)は、過去に自分が犯した罪と、今を苛むDVを。
病気の妻の治療費のために家を失ったおやっさん(今拓哉)は、貧困と喪失の恐れを。
歌手を目指しているものの芽が出ず、先を考えて夜学にきたマイコー(塚本直)は挫折を。
読み書きのできない主婦のりちゃん(保坂知寿)は、過去の抑圧と同じ高校の普通コースに通う娘との関係を。
自粛期間のため、タブレット越しの最初の授業のシーンでは、
配られた緑のノートに毎日の宿題として書いた自己紹介をそれぞれが読む傍ら、
彼らの日常が見え隠れしていて。
そして、自粛明けの授業の中、バンビ先生は高校の合唱コンクールに出場することを提案します。
最初は反発しながらも、徐々に互いの心の距離感を縮めていく、4年A組。
コンクールで彼らが歌った♪翼をください は、それまでに彼らの状況が垣間見えていたこともあり、
一人一人の歌声の持つ美しさだけではなく、込められた想いや願いが見えるようで、
息を呑んで見つめてしまいました。
そして、そんな彼らの前で指揮するバンビ先生の後ろ姿が、なんとも雄弁で!

バンビ先生役の美弥さんは、申し訳ないことにお名前も初めて知った方でした。
きっと宝塚のトップの方だったんだろうなあ、と推測しているのですが(後で調べます!)、
その美しさも、かっこよさも、歌声もさることながら、
強い想いを伝えてくるような大きな瞳がとても印象的な方でした。
型破りな授業をする先生。
私の授業に演劇はかかせない、だったかな?
そんなことを言って、歌もダンスも指揮も・・・なんでもできる先生の過去は、
この物語の中ではあまり詳しくは語られません。
イギリスで生まれ、高校の頃に日本に帰ってきたけどあれこれあってイギリスに帰った、ということだけ。
でも、それだけの情報と、そして先生が生徒たちに向ける言葉が、眼差しが、
先生自身も何かを抱えているのだということを、伝えてくれました。

そんな先生に率いられて、生徒たちは学校祭のショーを自分たちで作ることになります。
その中で、明らかになっていくそれぞれの事情、それぞれの痛み、それぞれの夢―――
時には生活という日常に負けそうになり。
時には目の前に迫る喪失や自己否定の感情に流されそうになり。
そのたびに、先生が彼らを励まし、導いていきます。
その中で、サークルゲームをするシーンがありました。
先生の質問にイエスの人が円の中に入るというゲーム。
学校は楽しい?
先生は好き?
合唱コンクールのこと誰かに自慢した?
夢はある?
暴力を振るったことがある?
暴力を受けたことがある?
言葉の暴力で友人をなくしたことがある?
どんどんシビアになっていく質問の中、彼らは互いを更に深く知り、
そして、自分自身を見つめなおしていく―――

このシーン、先生の質問に、私も一緒になって円の中に入ったり、入らなかったりしていました。
夢がある?でモモさんと一緒に立ち止まり。
暴力の質問で、円の中に入った人たちの表情を見つめ。
友人をなくした時の気持ちを思い出しながら、躊躇いがちに足を進め―――
なんだか不思議な感覚でした。

そして、修学旅行が中止になった後、彼らがイメージの中で行きたいところに行くシーン。
先生のルーツのイギリス。
(♪ロンドン橋落ちると♪アメイジンググレイスと♪大きな栗の木の下での三重唱凄かった!)
ヌーボーが憧れるダ・ヴィンチの故郷イタリアの登山鉄道。
モスクワでバレエを見たいというモモさんが踊る白鳥の湖。
おやっさんが故郷を思って歌う、♪砂山。
番長が、帰国できない同級生を思って歌う韓国の歌。
そして、のりちゃんが歌い、故郷の歌―――ソーラン節の力強さ。
祖の歌にはそれぞれの人生があり、夢があり、希望があり、歩んできた道があり―――強さがあった。

自分ではどうにもならないことで、虐げられ蔑まれ追いやられ押しつぶされた、自分。
嘆いても、憤っても、逃げても、泣いても、自分からは逃れられない。
そして、その自分を引き上げることができるのは、前へ進ませることができるのは、
でも、自分しかいなくて。
だから、自分で立ちあがるしかないのだと、自分で歩くしかないのだと。
けれど、その道は一人ではないのだと―――

バンビ先生との1年間で、それを知った彼らが、
学校祭のショーで白い衣裳を着て、自分を苛み押さえつける何かと向き合い、
そして立ちあがっていくシーンは、本当に圧巻でした。

マトリョーシカの一番内側の人形の名前は、希望。

そのバンビ先生の言葉が、自然に思い出されるシーンでした。

スケッチということで、多分2~3時間の舞台を、1時間半くらいに縮めているので、
多分いろんなことが省かれているんだと思います。
マイコーの葛藤とか、のりちゃんと娘さんの歩み寄りとか、
普通クラスが夜間クラスのショーを手伝ってくれるまでの流れとか・・・
でも、全てが描かれていないからこそ、
この物語をより自分に寄せることができたのかもしれないな、と思いました。
でも、いつか、完全版を観ることができるといいなあ。

役者さんのことも少しだけ。
平方くんは、傷を抱えながらも純朴で前向きなヌーボーと、
嫌みなモグラ先生(笑)の二役、頑張ってました!
「学習障害なんだからしょうがない」という言葉を、必要以上に深読みしちゃったのは職業柄かな(^^;)
カーテンコールで藤岡くんにもいじられてたけど、体格いいから土方衣裳に合ってたv
夢咲さんのモモさはめっちゃキュートでしたv
妊娠して高校中退したシングルマザーって、男は何してるんだ?!と思ったよね・・・
♪翼をください では下がり眉で歌っていたのが、その後は晴れやかな笑顔だったのが、
モモさんの気持ちの動きを表しているようでほっとしました。
樋口さんは、もうパワフルな歌声にめちゃくちゃしびれました!
DVを甘んじて受けていたのは、過去の後悔もあるのかなあ。
彼女の笑顔がどんどん明るく素直になっていくのが嬉しかった。
今さんのおやっさんは、奥さんへの愛が深くて・・・奥さんの最後の言葉に泣きました。
そして、歌声はやっぱり素晴らしかったですv
塚本さんのマイコーは、もっと深く彼女の物語も観てみたかったなあ。
のぞみの同級生として歌った♪Over the rainbow の歌声がとんでもなく素晴らしかったです!
保坂さんののりちゃんは、どうしてそういう状況になってしまったのかがとても気になる・・・
下村さん演じるのぞみの言葉はとんでもなくきついけど、
あの中には不器用に母を気遣う気持ちが確かにあったように思うし、
それをのりちゃんもわかっていたんだろうなあ。
わかっていて、それでも受身でいたのりちゃんが、自分で歩き出したから、
のそみも変わってったんだろうなあ、と思います。

うん、やっぱりいつか完全版を見たいです。できれば劇場で!


「マトリョーシカ」の後は、間髪置かず「TATOO 14」に。
映像で内容を説明して呉れた後、登場したのは水さんお一人・・・
一緒に出ていた保坂さんはのりちゃんからの着替え中で、
ゲストで出てた人もたくさん袖にいるのに、出てきてくれない、と(^^;)
でも、お一人でも堂々と、♪Scar を歌ってくださいました。
「TATOO 14」は観ていないので、いまいち状況が良くわからなかったのですが、
水さんかっこいい・・・!と思いながら観ていました(笑)。
最初のトークで、宝塚を対談した直後で、ダンスが揃わないのに衝撃を受けた、とお話されてて、
例えば同じステップでもある人はこう、別の人はこう、と実演してくれたのですが、
どれが誰なのかちょっと気になりました(笑)。
それにしても、宝塚ってそうなのか・・・

そして、アンパレからはアッキーと藤岡くんと彩吹さん。
この演目は本当に大好きだったので、ここでまたちょこっとでも触れることができて本当に嬉しい!
震災の年に上演されて、稽古場難民になったこと、
花組芝居さんの稽古場をお借りすることができたこと、など、お話してくれました。
歌ってくれたのは、スケッチ12 Again and Againから。
いやー、泣きました。
このシーン、舞台で観た時も本当に印象的で。
白い照明の縁に立って上を見上げるという演出がその当時のままだったんですね。
地上から漏れる光は、月の光のように冴え冴えと白くて。
その光の中ではなく外側でその光を見つめながら生きることを歌う彼らの姿に、
やっぱり気持ちを揺さぶられました。
でもって、彼らの歌声がまた素晴らしかったんですよ!
それぞれに際立っているのに、なんというか「ひとつ」という感じで。
いろんな意味で再演は難しいのだと思うけど、これもいつか再演して欲しい演目です。

最後は「ピトレスク」からクミコさんと保坂さんとJKimさんとアッキー。
これも、どうにもタイミングが合わずに観れなくて涙を呑んだ舞台なので、
ここで少しでも触れることができて嬉しかったですv
状況を説明しつつ、クミコさんが♪群衆 を、
4人で♪ピトレスク と♪自由の歌 を歌ってくださいました。
これまた状況をざっくりとしかわかっていないのですが、
クミコさんの歌声は、私が今まで知っていた歌声とはちょっと違う印象でびっくりしたし、
♪ピトレスク はアッキー作曲なのだけど、これまた私の中のアッキーの曲のイメージと違っていて、
続けざまに驚いてしまいました。
第九を基にした♪自由の歌 、良かったなあ・・・
これも月や星の夜空を歌っていて、でも、彼らの上にあるのは裸電球が一つ―――
トークでは、それぞれの役柄や曲の状況などを説明してくれたのですが、
これまた観れなかった悔しさが再び湧きあがり・・・(^^;)
これも!
ぜひ!
再演していただきたいです!!

最後は全員でちょこっとお喋りした後1曲歌ってくださいました。
タイトルはわからないけど・・・ハレルヤ、という言葉の繰り返しに、
みなさんの強い想いを感じました。
この曲で歌われる状況が、早く実現できるといいなあ。


そんなこんなで大満足しつつも観劇欲求が更に強まった舞台でした(笑)。
とりあえず、明日の配信も楽しみにしていようと思います!

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