文学の名のもとに

10月になりました。
10月の最初の日は、中秋の名月でしたが、秋の澄んだ夜空に皓い月が本当に綺麗でした。
あの舞台で彼が吠えたあの月も、こんな風に美しかったのでしょうか。


舞台「文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱」

2020.9.27 ソワレ 京都劇場(配信)

出演:平野良、佐藤永典、三津谷亮、椎名鯛造、深澤大河、和合真一、久保田秀敏、
   吉田メタル、佐藤優次、仲田祥司、町田尚規、多田滉、山田渓、田中慶、
   山内涼平、海本博章


オンラインゲーム「文豪とアルケミスト」の舞台化第3弾の配信を観ました。
プレーヤーである司書が近代の文豪たちを転生させて、
侵蝕者に侵蝕された彼らの本を浄化して守るために侵蝕者と戦う、という感じ?
ゲーム自体はお友達に薦められて結構早い時期から始めていたのですが、
気になる文豪が無事に転生してくれたり、
戦闘のテンポというかリズムに馴染めなかったりで、
暫く放置しては、気になる文豪が出るとイベントだけやる、という不良司書(笑)でした。
久々に図書館に行くと、いつの間にか館長なる人がいたり、喋る猫がいたり、
子どもが二人いたりと、情報が良くわからなくなっておりまして(^^;)
まあでもゲームをする分にはあんまり関係ないかなー、とふわっとゲームを楽しんでおりました。

で、舞台。
平野くんが主演だったりで1作目から気にはなるものの、
タイミングが合わず観にいくまではいかなかったのですが、
今回椎名くんが出演、でもって吉田メタルさんも出演、ということで配信を観たのですが・・・

役者さんたちはみなさん素晴らしくて、
それぞれの文豪の生き方とか関係性とか興味深かったし、
セットと照明の創り出す多彩な世界も美しかったし、
殺陣も舞うような感じで見惚れたし、
総じてとても楽しませていただいたのですが、
なんというか、「面白かった」「楽しかった」という言葉で片づけてしまってはいけないような気持ちになりました。

私は、近代文学はあまり得意ではなくて、
このゲームに出てくる文豪たちの著作は数えるほどしか読んだことがないし、
文豪たちの関係性とか、人生とか、行ってしまえばその時代との関わりの知識もほぼありません。
だから、ここに描かれる、“転生した”文豪たちが語る言葉が、
背負う前世の記憶が、その上で選ぶ新たな関係性が、
どういう意味を持つのかを、多分ほとんどわかっていない。

だから、何を見せられているのかわからなくて、途中めっちゃ混乱したし、
更には終盤の展開につていけずに思いっきり呆然としてしまったのだけれど・・・

観終わたったとき、ふと、思ったのです。
この舞台で描かれているのは、“文豪”ではなく“文学”なのかもしれないなあ、と。

1冊の本が、誰に望まれ、誰の心に届き、誰の一部になるのか。
1冊の本が、誰に拒否され、誰に踏みにじられ、誰に消されてしまうのか。
1冊の本が、誰を救い、誰を絶望させ、誰の道を照らすのか。
1冊の本を、誰が抱きしめ、誰が繋ぎ、誰が手渡すのか。

時代や人の想いの中で、破壊され再生紙連綿とその作品の個の魂の辿る道へと続くのが文学なのだと。
そんなことを、漠然と思いました。

それは、本―――小説には限らず、劇中で白秋が言っているように、
詩集も、短歌も、絵画も、音楽も、そして、多分演劇もそうで。

それらは、例えば日本刀のように物質として形在るものとは違い、
受け取る人やその時勢によって形も、正解も異なる、流動的で曖昧なもので、
けれど、日本刀が持つ逸話とは異なる、現実として確かにそこに存在したもので。

同じゲームということで、どうしても刀ステや刀ミュと無意識に比較して観てしまったけど、
だからこそ、この舞台が提示する、揺るぎなく、けれど同時に形のない“文学”というものの存在を、
なぜか強く強く感じたように思いました。


とはいえ、この辺を理路整然と言葉にすることはちょっとできなそうなので(え)、
役者さんの感想をちょこっと書いてお茶を濁そうと思います(笑)。


太宰治役、平野くん。
いやー、うざかった!
久々に、首根っこ掴んで正座させて説教したくなるキャラに出会いましたよ(笑)。
ゲームをしている時も、アニメを見ていた時もそういう風には思わなかったから、
これは平野くんの太宰の個性なのかなー。
好き嫌いも含め、自分の欲望にもの凄く忠実。
思いこみで暴走はするけど、でも周りの人の言葉も素直すぎるくらいに聞くし、
間違ったと思ったら、それを省みて正すことにも躊躇はしない。
そんな太宰のうざさというか、幼さというか、未成熟さというか、まっすぐさというか・・・
そういうものが、周りの人の気持ちを陽にも陰にも刺激したうえで、
最終的に愛され託されるところが文アルの、平野くんの太宰なのかなあ、と思いました。
自分の感情を、欲望を、隠すことなくさらけ出す。
それは、多分白秋が言うように薄い氷の上を歩いているような、ひどく危ういもので。
でも同時に、だからこそ強く、時に暴力的なまでの光を放つのかもしれないな。
終盤、彼が光の中に歩み出す時にの平野くんの表情―――溜息の後の笑顔に魅了されました。
とりあえず、あの武器での殺陣はめっちゃ大変そうだったけど、めっちゃかっこよかったです!
「ひとり三羽烏アターック!!」を聞いて、1作目も観ようかとちょっとよろめきました(笑)。


北原白秋役、佐藤くん。
えーと、初見の役者さんかな。
ゲーム通りのたおやかで慈愛に満ちた微笑みと、太宰とは色合いの違うまっすぐさが素敵でした。
これは芥川も懐くし、中也も弟子入りしたくなるし、太宰も思わず認めちゃうよね!と。
目の前にある醜いものをそのまま描くのではなく、
それを自分の中に閉じ込め、昇華し、そして読む人を優しい世界へ誘う言葉を紡ぐ。
劇中のその評に、思わず納得してしまう感じ
でも、戦いだすとそのたおやかさを裏切る武闘派でちょっとびっくりしました。
拳銃二丁というのも、単純に倍の攻撃力名だけではなくて、
結構接近戦で物理的な武器として使ってましたし(^^;)
ゲームの白秋先生はほとんど育ててなかったので、実際のバトルシーンを後で確認しようと思いました(笑)。


萩原朔太郎役、三津谷くんと、室尾犀星役、椎名くん。
いやー、めっちゃ可愛いコンビでした!
まさに月と太陽という感じの二人。
すべるの前提なコントも可愛かったし、
二人そろって白秋先生に纏わりついてるのも可愛かったし、
喧嘩も痴話喧嘩にしか見えないくらい仲良しなのも可愛かったし!(笑)
殺陣も、確か朔くんが右手、犀くんが左手に拳銃を持っていて、
背中合わせに戦うのがシンメトリカルで微笑ましくv
朔くんは、侵蝕者に出会うときゃあきゃあいいながら、でもしっかり仕留めるところがさすが!
犀くんは、蹴りや側転などアクロバティックな動きが入っていて見ごたえあり!
で、そんな仲良しな二人だったので、終盤はきつかったなあ。
中也を看取った後の朔くんの演技は、情感の三津谷くんの本領発揮だったし、
彼を亡くした後の椎名くんの嘆きは、その後の白秋先生の願いとも相まって、
見ていてとても辛かったです。
あの時点では白秋先生は無事だったわけだけど、
でも、そんな彼に「ちょっと月に吠えてくる」って言わせるのは、めっちゃ残酷だと思った。
更にその後の展開もとんでもない・・・
いやでも、そういう容赦のなさは結構好きです(笑)。
とりあえず、前橋文学館と前橋東照宮にまた行きたくなりました。


中原中也役の深澤くんも初見かな。
文アルでも文ストでも「妖怪と小説家」でも中原中也にたいていよろめく私ですが、
今回もみとごによろめきました。
何あの小動物系中也!
でっかい館長に頭ぽんぽんされてたよ!
飲んだくれてるように見えながら(いや、実際飲んだくれてるんだけど)、
結構人懐っこくって、周りに気を使ってて、でも、同時に凄く孤独が深い感じが良かった。
彼の最期に向かう流れは、ちょっと本気で見ていて辛かったし、
北原一門の三人に囲まれて、どこかほっとしたような顔で逝く彼に涙しました。
彼には本当に幸せになってほしいです。
殺陣は、かなり細かく動く感じだったかなあ。その辺も小動物系?(笑)


江戸川乱歩役の和合くんも多分初見。
めちゃくちゃ声が良いね、この子!!
流れるような乱歩の台詞と相まって、思わず聞き惚れちゃいました。
指先の動きとかもとても綺麗で、細かいところまで役を表現しているな、という印象。
物語の中では、他の文豪とはちょっと立ち位置が違ったのかなー。
彼の作品が侵蝕されたとき、アンサンブルのみなさんが彼と同じような帽子とマント姿だったのが、
ちょっと微笑ましかったですv
それにしても、鞭での殺陣ってむずかしそうだなー。
配信だと、彼だけ見ているわけにはいかなかったので、あまり殺陣の記憶がないのが残念。


芥川龍之介役は久保田くん。
なんというか、凄く儚い感じの描かれ方だなあ、と思いました。
誰かのためには生きるけど、自分のためには生きていない感じが危うい。
彼の語る未来は何一つ叶わないのだろうと思わせる在り方に、ちょっと辛くなりました。
白秋先生に懐く姿も、太宰に懐かれて戸惑いつつも手を差し伸べる姿も、なぜか心許ない。
自分が滅しても、自分の本を読んだ人の中で自分は生きている、というようなことを言うのだけど、
彼自らがそれを望んでいるようにも感じました。
だからこそ、何十回何百回と地獄は見て来た、という台詞にとても説得力がありました。
このメンバーでは唯一の刀使い(太宰のあれも刀だったっけ)なのですが、
流れる水のように滑らかで、力で押す感じではなかったように思います。
なので、力で押し進めるような館長との殺陣は、なんというか一方的で、
無惨さが際立ったように思いました。
そいえば、最後に太宰に向かって「また会えたね」的なことを言ってたけど、
やっぱりこのゲームでは芥川が三日月さんポジなのかなー。


館長役吉田メタルさん。
ビジュアルも台詞も殺陣もめちゃくちゃかっこよかったです!
あれ?アルケミストは司書じゃなかったっけ?館長と司書は別じゃないっけ?という、
私の基本的な疑問を力技でなかったことにしてくれるくらいは、かっこよかった(笑)。
でも、話が進む中で、どんどん言っていることが不穏になって、
それに気づかないで乗せられる太宰にめっちゃはらはらしました。
シンプルな日本刀での殺陣もかっこよかったです。
この物語での館長という存在については、ゲーム設定も理解していない私には何とも言えませんが、
“館長”を単純に“悪”だと言いきっては行けないのかもしれないな、とも思いました。


アンサンブルのみなさんは、衣裳とメイク(?)がめっちゃかっこよかったです。
戦闘シーンでの侵蝕者としてだけでなく、
図書館のシーンでも、情景を構成する要因として、様々な役割を果たしていました。
Twitterで、文豪たちの殺陣を受け方で表現していたという一連のツイートがあって、
なるほどなあ、とちょっと感動してしまいました。
やっぱり、こういう舞台って、受け手のアンサンブルさんの力量が、
本当に大事なんだなあ、と思ったり。

演出面では、急に台本を読み出したりしてちょっとびっくりしたのですが、
これまでの作品でも、そういう朗読的なものがあったのかな?
この物語が1作目に続くのでは、という感想も見かけたのですが、
やっぱり機会があったら1作目も観てみようと思います。
その前に、もうちょっとゲームを進めておくかな(^^;)

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