明順応

言葉も希望も約束も。
見えない大切なものを奪われて。
真っ暗な孤独を彷徨っても。
彼らの―――私の眼はあの光を覚えている。

だから。

この暗闇から抜け出したとき。
光に眩んだこの眼がとらえていく世界は。
きっと。
この日の灯りが描いたたくさんの花のように。

―――美しい。



Halo at 四畳半 無観客ワンマンライブ
「かたちのないばけもの」

2020.10.13 ZeppDiverCity(配信)

≪セットリスト≫
第1章
♪ ナラク
♪ 疾走
♪ フィラメント
第2章
♪ 百鬼夜行
♪ レプリカ
♪ 月と獣
♪ マグとメル
第3章
♪ リバース・デイ
♪ イノセント・プレイ
♪ 花飾りのうた
最終章
♪ 蘇生


数年前からこっそり応援しているHalo at 四畳半さん。
透明な色彩が重なるような、物語性のある楽曲がとても魅力的なバンドで、
いつかしっかりライブを観てみたいなあ、と思っていたのですが、
今回、こういう形で拝見することができました。

闇を赤く染める不穏な色合いの空間。
ガスマスクのようなものをつけたVoの渡井くんが歩いた先には、
小さなたくさんの灯りに囲まれて、たくさんの紙―――楽譜かな?が散らばった場所でした。
ガスマスクを投げ捨てたその手でギターを手に取った彼を迎え入れ、
十字を描くように配置された4人の中央には、ちょっと光に照らされた色とりどりの、花。
そして、物語が始まりました。

「かたちのないばけもの」というタイトルの絵本を読むように始まったライブ。

遠くの存在だと思っていた“ばけもの”。
ふと気づいた時には、その“ばけもの”がすぐ傍にいて、自分を蝕み始めていたことに気づいた春の黄昏の第1章。
“ばけもの”によって、形のない大切なもの食べつくされていく夜の始まりの第2章。
暗闇に慣れていく日々の果て、“ばけもの”との共存を選んだ世界は、既に自分の生きた世界ではなくて。
その見知らぬ世界の夜明けに向かう不安と期待が生まれる第3章。
そして、“ばけもの”に蝕まれた孤独の果てに彼が、彼らが生きる“今”―――最終章。

渡井くんが「寓話」と言っていた物語は、彼の言葉と絵と、そして、彼らの楽曲で作られていました。
そこに描かれる“ばけもの”は、COVID-19を直截的に描いているというよりも、
それらがもたらす、不安とか、疑心とか、焦燥とか、抑圧とかなのかな、と思った。
そういう、もしかしたら自分の中にある“なにか”で、
まるで身食いのように自身を蝕み、そして他者を傷つけていく―――そんな風にも感じました。
この物語に、たぶん彼はちゃんとした意味を込めていて、
でも、その意味は、受け取る人それぞれに委ねているのかな、とも思いました。
うん、そういう意味でも、これは「寓話」なんだろうなあ。

セットリストも、物語を更に深める、本当に考え抜かれたものだなあ、と思いました。
迫りくる闇の気配を感じながら、それでも日常の明るさと楽しさと希望に彩られた第1章は、
彼らの演奏の力強さに気持ちが沸き立つようでした。
曲が始まるたびに、好きな曲だ!とわくわくして―――語られた物語に想起された不穏を、
一瞬どこかに忘れてしまったようにも思った。
とりあえず、ベースの子の髪の毛つやつや!って思うくらいは気持ちに余裕がありました(笑)。
というか、ちゃんと彼らの顔を見るのは今回が初めてなのだけど、
白井くん、めっちゃ美人さんだね!
でも、だからこそ、放り込まれた闇の中を闇雲に走り抜けるような第2章はとても鮮烈で。
自分の中の深いところを覗きこむような。
その先の暗闇に惑うような―――
でも、その闇には小さな、けれど確かな灯りと、
彼らの足元を照らす。十字架のような、花のような青い光があって。
♪マグとメル で、空間を埋め尽くすようなスモークに乱反射する光に、思わず見入ってしまいました。

第3章は、私的にはかなり怖い物語だったのだけれど、
その後の♪リバース・デイ に確かな光を感じて。
上に向けられた青い照明が、まるで夜明けの空に浮かんでいるような錯覚を起こさせて。
そこから♪イノセント・プレイ へのつながりに、ちょっと涙が零れました。
彼らの居る場所は、光に溢れているように見えるけれど、
その光は第1章の時とは違って、未だ闇を背負っているように見えて。
彼は、未だ薄明の中にいて、光の中に飛び立つためにもがいているのかな、とも思った。
でも、♪花飾りのうた の時は、彼らの足元を照らす色とりどりの光が、
やっぱり大きな花のようにも見えて、なんだかちょっとほっとしてしまいました。

そして、最終章。
この瞬間に、渡井くんの中に生まれた言葉。
それまでの孤独と。
それまでの苦しみと。
それまでの悔恨と。
それまでの涙と。
だからこその気づきと。
だからこその勇気と。
だからこその自覚と。
そして、だからこその希望と―――形作られる、未来を。
噛みしめるように紡ぐ彼のことばの一つ一つが、まっすぐに届いてきたように思いました。

♪蘇生 という曲は、この状況になる前に作られた曲で。
でも、この流れの中で聴くと、CDで聴いたときとは違った世界を見せてくれたように感じました。
蒼い光の満ちた場所で踊る、目隠しをした白いドレスの少女。
彼らを取り囲む、いくつもの空へと向かう蒼い光。
少女と彼らを隔てる幕が開いて、彼らの形を確かめるように踊る少女の鮮やかな残像が滲んで。
自分の全部を込めるように演奏する彼らの空間を、目が眩むような白い光が満たした瞬間―――

そこに映ったのは、闇の中、ただ青い光の柱だけが乱立する、誰もいない空間でした。
まだ残響が残る、けれど体温の感じられないその場所は、
震えるほどに冷たくて。
怖いくらいに綺麗で。
引き寄せられるような何かの気配に満ちていて。
しばらく呆然としてしまいました。


彼らの、このライブの全部を、私はきっとちゃんとは受け止められてはいないと思う。
でも、この1時間のライブは、確かに特別な時間でした。
喪失の春の黄昏。
不意に気づく闇。
光の気配を感じる薄明。
その時々で静かに咲く色とりどりの花を見ているような感覚になりました。
まっすぐで、どこか歪で、繊細で、儚いのに確かな存在感が彼らだな
彼らのライブに行く機会は私にはもうないかもしれないけど、
こういう機会を持たせてくれたのは素直に嬉しかったです。
初めてちゃんと観た彼らは、楽曲から思っていたよりもどこか幼さが感じられて。
そんな彼らの未来が、明るく優しいものでありますように。
そう、心から願います。

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