左手の記憶

ピーター・パンが一番に合う役者は誰か、と言われたら、
迷わず挙げる名前があります。

椎名鯛造くん。

少年社中の「ネバーランド」は、本当に名作だと思うし、
「ピカレスク・セブン」でも素敵なピーター・パンを見せてくれました。

そして今日。

彼が見せてくれたのは、“その先の”ピーター・パン―――


ひとりしばいvol 9 椎名鯛造
「ネバーランド、アゲイン」

2020.11.8 配信

作・演出:ほさかよう
出演:椎名鯛造


以前から変わらずこっそり応援中の椎名くん。
ひとりしばいに出演!ということでチケットを買ってみました。
Zoomでの配信とか初めてだったので、ちょっとドキドキでしたが無事に観ることができました!
Zoomアカウントもとったので、これでお友達とWebお茶会もできるかな?(笑)

物語は、椎名くん演じる青年が翌日のオーディションに向けてピーター・パンの演技練習をしているところから始まります。
元気と明るさが溢れるような、お日様みたいなピーター・パン。
でも、どこかで見たことのあるような、ピーター・パン。
試行錯誤というか迷走しながら稽古する彼の部屋の壁を、不意に叩く音が!
さすがにうるさかったかと壁腰に謝る彼に、
壁の向こうの誰かは、むしろ彼を励ますような言葉をかけます。
同業者―――つまり役者だという隣人に、彼は自分の演技へのアドバイスをお願いします。
最初は当たり障りのなり褒め言葉だったアドバイスは、
彼の要望で容赦のないダメ出しになり、自分で願ったにもかかわらず落ち込む彼。
けれど、隣人の言葉に導かれるように演じたピーター・パンは、
これまでとは違っていて・・・もっと話を聞きたいという彼に応えた隣人の言葉は、
いつしか彼の内側の深いところに踏み込んでいきます。
彼の中にある、喜び、驕り、焦り、恐れ―――それらを演技として表に表すこと。
演じるということに改めて向き合った彼に、隣人は言います。
自分はもう、何年も舞台に立っていない、と。
そして語り始めた“隣人”の正体は―――


というような物語でした。
序盤の元気いっぱいなピーター・パンに、誰よりもピーター・パンが似合う役者・椎名鯛造!とか思って、
にこにこしていた自分の浅はかさに、終演後苦笑いでした。
いやー、この物語を椎名鯛造という役者のために書いたほさかさん容赦ないし、
それに真っ向勝負した椎名くんを心から称賛したいです。
いやだってこれ、結構怖いこと言わせてたよね?(え)
ネタバレをしてしまうと、隣人は青年の未来の姿で、
自分の現状と、演技の才能について打ちひしがれた彼が、
かつて住んでいて今は廃墟(?)となったアパートに入りこんだとき、
演技の稽古をするかつての自分の声が聞こえてきて、
昔の自分を変えれば今の自分も変わるんじゃないか、といろいろアドバイスをして、
でも結局何も変わらなくて―――という流れなわけなのですが、
衣裳(隣人はコートと帽子と眼鏡着用)だけでなく表情や声音も全く別人だった二人が、
物語が進むにつれてどんどん“一人”になっていくのに、思わず食い入るように見つめてしまいました。
前半のアドバイスを受けて、彼のピーター・パンが変わっていくのも凄かった。
「死ぬって凄い冒険なんだろうな」(だったかな)という台詞を、
全く違うものとして3回も聴かせてくれたのには、ちょっと鳥肌が立ちました。
自分の中に在るものを表に出す―――表現は表に現れると書く、というような台詞があったのですが、
彼の中に在るものが、この邂逅のなかで変わっていったということなのかな、と思った。
なぞるだけの浅さから、漠然とした怖れに、そして恐れを知ったからこその覚悟に。

椎名くんは、初めて見た頃から表情が本当に魅力的で、
演じているというよりも、そのものとしてそこに生きている、という感覚を与えてくれるのですが、
今回もその魅力を改めて感じました。
彼が本当のことを語り始めて、客席に降りて、客席を横切って、
壁に向かって呟くときの表情とか、その後の彼の選択の説得力が凄まじくて、ちょっとどうしようかと思った。
最終的に、彼は(多分)遠ざかっていた“親友”に電話をして、
親友を讃え、そしてもう一度挑戦することを告げるのだけれど、
電話をするときの怖れに強張った表情も、
親友を讃える時の、どこか吹っ切れたような、でもわずかに震える声音も、
その後の抑えきれない嗚咽も、どれもが鮮やかだった。
あの時、親友が彼にどういう言葉をかけたのかは示されていません。
「待ってた」だったのか、「待ってる」だったのか、「頑張れ」だったのか。
親友の対応が、そっけないものだったのか、暖かいものだったのかもわからない。
彼が挑戦するオーディション―――フック船長のオーディションに、
ピーター・パンになれなかった彼が受かるのかどうかもわからない。
でも、それがどんな結果であったとしても、彼はもうあの選択を―――死を選ぶことはないのだと思う。

そういえば、終盤、彼に手を差し伸べるかつての彼(かな)が、
一度差し伸べた右手を左手に変えて、その後彼が自分の左手を見つめるシーンがあって、
あそこで手を差し伸べたのはピーター・パンの流れだった気がするのだけど、
あれはフック船長の左手だったのかなあ。
失くしたがゆえに得たもの、痛みの記憶と共にある未来、みたいな?・・・ベタすぎるか(^^;)

感動のまま勢いで書いてしまったから粗い上に訳のわからない感想になってしまった・・・(^^;)
なんにしろ、いろんなことを思った濃密な1時間弱でした。
二人のやり取りを、文字で示すのも、配信ならではな感じで面白かったし、
後ろのスクリーンに映るいろいろな空の色も印象的でした。
なによりも、椎名くんの魅力をこれでもか!と見せてくれたのが嬉しかった。
ある意味、椎名くんだからこそ成り立つ脚本だと思うし、
椎名鯛造という役者の凄味を改めて感じた舞台でもありました。
終演後のアフタートークで、今度は観客の前で再演したい、というお話があったけど、
再演、ぜひお願いします!
というか、彼のライフワークとして、何度も“その時の”椎名鯛造で観てみたいお芝居だな、と思いました。
とりあえず、アーカイブで見なおしたいと思います。

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