世界の秘密

この週末、二つのネバーランドの物語に触れました。

片方は、ネバーランドを壊すことを望み、
もう片方は、ネバーランドを守ることを望んだ。

でも、そのどちらもが、子どもが大人になる物語だった。

そして、そのどちらもが、未来を掴み取る物語、だった。


少年社中リーディング公演
「ネバーランド」オリジナルキャスト

2020.12.18 紀伊国屋ホール(配信)

脚本・演出:毛利亘宏

出演:井俣大良、大竹えり、唐橋充、椎名泰三、杉山未央、ザンヨウコ


かつてネバーランドで冒険をした、今は大人となってしまった姉弟。
事故で無くなった両親のお葬式で久々に集まった三人。
ジョン(椎名鯛造)は、芸術家になる夢を諦めて、家族のために貿易商(かな?)として武器を売り、
マイケル(唐橋充)は役者を目指してオーディションの毎日。
そし作家を目指すウェンディは、妊娠をきっかけに結婚を決意したところ。
それぞれに夢と現実の狭間で揺れ動く三人の前に、一人の男が現れます。
それは、大人―――というかおじさんになったピーター・パン(井俣大良)でした。
大人になってしまったことで空を飛べなくなってしまったピーターは、
ウェンディたちに助けを求めにやってきたのです。
彼を追って来たフック船長(唐橋充)に、ジョンの子どもたちは攫われてしまいます。
戸惑う彼らの前に次に現れたのは、ピーターの影(椎名鯛造)。
影は彼らに言います。
「子どもたちを助けるには、ピーターがフック船長に負ければいい」
そして、彼らはネバーランドへ(走って)向かいました。
なぜか辿り着いたネバーランドで待っていたのは、
ピーターと同じように大人になってしまった迷子の子どもたちとティンカー・ベル(ザンヨウコ)。
そして、フック船長の船を襲う酋長(大竹えり)―――かつてのタイガー・リリーが率いるインディアンたち。
インディアンたちは、フック船長が奪ったチクタク時計を奪い返そうとしていました。
彼らが大人になった理由―――それは、フック船長がチクタク時計を使って、
止まっていたネバーランドの時間を動かしたため。
このままではネバーランドは滅んでしまう―――
ネバーランドに集った彼らは、それぞれの選択を迫られ・・・


という、「ピーター・パン」を原案とした、少年社中の舞台の朗読劇版でした。
元の舞台を私はDVDで観たのですが・・・号泣してしまいました。
ネタバレしてしまうと、
ネバーランドが続くためには、フック船長とピーター・パンが戦い続けなくてはならない。
けれど彼らの命も有限で―――だから、代替わりが必要。
フック船長の死をきっかけに、ピーター・パンがフック船長に、
ピーター・パンの影がピーター・パンに―――
そう、フック船長は、先代のピーター・パンだった。
永遠を続けるために、少年は大人になり、命を終え、そしてかつての少年に未来を託す。
ネバーランドという、世界の秘密。
残酷な、秘密。
全ての秘密を知りながら、自分と同じ道をたどる少年と戦い続けたフック船長も。
ネバーランドを守るために、子どもで在り続けるのではなく、
本当の大人に―――フック船長になることを選んだピーターも。
ピーターに憧れながら、フック船長も大切に思うピーターの影も。
その秘密を守り、伝えるために命を懸ける酋長も。
大人になるピーターを見守り支えるウェンディとティンクも。
誰もが残酷な秘密を前に、“覚悟”を求められた。

ネバーランド。
綺麗で、楽しい、子どもたちの楽園。
大人たちの覚悟が守り続けた、子どもたちの―――永遠ではない子どもたちの、永遠の楽園。
でもそこは、子どもたちが大人になる覚悟を決める場所でもあって。
終盤、ピーターの影がピーターと対峙するとき、
ピーターがフックと最後の戦いをするとき、
そして、新しいピーターが、空へ飛び立つとき。
それぞれに透けて見える“覚悟”が、あまりにも切なくて、あまりにも強くて、
あまりにも綺麗で―――本当にもう泣くしかなかった。

そんな風に、とても好きな作品だったので、朗読劇ではどうなるのかなあ、と思ったのですが、
物語の本質はそのままに、舞台よりもむき出しの言葉がまっすぐに届いてくるようでした。
6人の役者さんがそれぞれにいくつもの役を演じる楽しさもあって、とても楽しく拝見しました。
うん、やっぱりこのお芝居、大好きだなあ。


朗読劇では、舞台の中央に円形劇場での舞台セットの模型が置かれ、
その後ろに6人が座る、という形。
衣裳は、白をお基調として、色とりどりの、様々な形のアップリケが飾られていました。
それに加えて、女性陣は華やかな髪飾り、男性陣は服と同じテイストの飾りをつけた帽子。
井俣さんはハンチング、唐橋さんはシルクハット、椎名くんはベレー帽なのだけど、
それがそれぞれに非常にお似合いでございましたv
全員が複数の役を演じるのですが、その演じ分けが非常に挑戦的だったり(笑)、
ザンさんと杉山さんが二組の母娘を逆の立場で演じていたり、
とある人の演技に、ほかの人からついつい笑いがおきちゃったり。
そんなちょっとぬるい感じもありつつも、
1対1お非常に迫力と緊張感のあるシーンもあって、とても見応えがありました。
あとでまたDVDを見直そうと思います。


役者さんのことも少しずつ。

井俣さんはピーター・パンをメインに、海賊のスミーと迷子の一人トゥートルズを演じていました。
メタボなおじさんだけど、心は少年のままというアンバランスな、
面白くもどこか悲しさの感じられるピーター・パンでした。
フック船長に切りおとされた左腕の痛みに悶えながら、
ネバーランドの真実を知り、そして大人に―――フック船長になって、
ネバーランドを守る覚悟を決める。
その過程を丁寧に見せてくださったように思います。
ピーターが、マイケルに促されて、「ネバーランドを守りたい!」と何度も叫ぶシーンは、
とんでもなくベタなのに、びっくりするほどまっすぐで―――
うん、こういう体育会系な演技、めっちゃ好きかもしれない、私(笑)。


大竹えりさんは、大人になったウェンディと、迷子の一人カビー。
夢を捨てきれないまま、妊娠という現実の前に漠然とした不安を感じるウェンディが、
ネバーランドの真実を知る中で、守るものを決め、母となる覚悟を決める。
死んでいく―――消えていくフック船長に、彼の物語を語ることを約束し、
そして彼を「坊や」と呼ぶ顔は、確かに“お母さん”の顔だったと思います。
物語が彼女の言葉で進んでいくため、膨大な台詞量なわけなのですが、
ストーリーテラーとしての冷静な言葉と、ウェンディとしてのリアルな感情を乗せる言葉、
そして、その中で一瞬で生意気なカビーになれるのはさすがだなあ、と。


唐橋さんは、フック船長を主として、マイケルと、迷子のニブスとスライトリーを担当。
フック船長は、なんというか、すごいかっこよかったです。
この物語の中で、唯一本当の大人としての魅力を示す役なのではないかなあ、と。
でも、それは、ちゃんとかつて子ども―――ピーター・パンだった自分を内包していて。
その事実を知ってみていると、フック船長の台詞の一つ一つがなんとも意味深で・・・
彼の左腕は、ワニにではなく、彼が殺したかつてのフック船長に切られたのかと思うと、
彼が左腕について語る言葉が凄く重かった。
アフタートークで、まだこの物語のフック船長に追い付いていない、と言っていたけど、
だからこその魅力でもあるのかなあ、と思います。
でもってマイケルは味があったし、迷子二人は・・・とっても楽しかったですv(笑)


椎名くんは、ジョンにワニ神にピーター・パンの影に、海賊のスターキーを演じていました。
ジョンは、何かを諦めて大人になろうとしている、たぶんとてもまっとうな男を、
スターキーは、強くて大胆な海賊としての骨太さを、
ワニ神は深く響く声にどこかコミカルさを交えて、
そして、ピーター・パンの影は、子どものまっすぐさと頑是なさを見せてくれました。
朗読劇では、彼の魅力の一つである身体能力は見られないのだけど、
その分、彼の声の、演技の力を存分に感じさせてもらえた気がします。
ピーター・パンの影は、ピーター・パンになった瞬間に、
この世界の秘密を忘れてしまうのかな。
忘れて、忘れていないフック船長と戦い続けるのかな。
そして、いつか大人になって、そしてもう一度この世界の秘密に打ちのめされるのかな。
そう思うと、ラストシーンでウェンディの娘と一緒に空へと飛び立つ彼の朗らかな声に、
なんだか涙がこぼれてしまいました。
アフタートークで、いつか大人のピーターを、そしてフック船長を演じたいと言っていたけど、
それを観ることができたら嬉しいなあ。
でも、メタボなピーターにはならなそうだわ(笑)。


杉山未央さんは、酋長とティンクの娘・ベルベル、
少女(のウェンディ)とジャッキー(ジョンの息子)を演じていました。
いやー、酋長がめっちゃかっこよくって!!
ネバーランドを守るために、フック船長とは別の立場で命を懸けたその覚悟が、
もの凄い圧で伝わってきたような気がします。
なのに、ベルベルはめっちゃ可憐でv
このベルベルと影の、ティンクとピーターが思い浮かぶようでした。


ザンヨウコさんはティンクとタイガー・リリー、ジェームズ(ジョンの息子)役。
大人・・・というかおばさんとなったティンクがまた魅力的でねー。
間違いなくおばさんなんだけど、それがとっても素敵だったんです。
ウェンディとティンクのやり取りとか、酋長を交えた女子会シーン(?)は、なんとも微笑ましくv
台詞がいきなりミュージカル調になっちゃったりする自由さも楽しかったなあ。
そして、最後の戦いで、まじ泣きしながら、それでもちゃんとピーターを助けたティンクも、
本当に愛しかった。
タイガー・リリーが、ジョンと語りあうシーンも良かったなあ。
タイガー・リリーは、最初から覚悟が決まっていたようにも思います。


冒頭の、ピーターとフック船長の戦いが、終盤でもう一度同じ言葉で語られます。
でも、そこにいるのは、大人になったピーターと、
ネバーランドを守るという覚悟を貫き通したフック船長で。
彼らは、ネバーランドを終わらせるという選択もできたのだと思う
フック船長が、ピーターが、ネバーランドを守ると決めたその理由を、
多分私はちゃんと理解できてはいない。
でも、笑顔で、明るい声でピーターを挑発し、そして彼の短剣を自らの胸に突き立てさせるフック船長は、
本当に優しい、満足そうな笑顔をしていた。
スターキーが、そして全員が歌うハッピー・バース・デイの歌は、
新たなフック船長への言祝ぎであると同時に、フック船長への葬送の歌でもあったんだろうなあ。
あの歌声に重なるかつてピーターだったフック船長の慟哭が、今も耳に残っています。

そんなこんなで朗読劇Ver.も本当に楽しかったです。
役者さんたちの技術と想いと遊び心を堪能させていただきました。
ニューキャストも気になってはいるのだけど、今回はこの“彼ら”を記憶に残しておきたいかな。
そしていつか、また舞台Ver.も観ることができますように!


あ、ちなみに、もう一つのネバーランドは「約束のネバーランド」でした。
原作、大人買いしちゃったよ(笑)。

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