物語の主体

小さい頃から知っているけど、何度読んでも理解することのできない物語がいくつかあります。
理解できないのに、心惹かれる。
読むたび何かを見つけた気持ちになるけれど、次に読んだときには違う景色が見える。
そんな、物語。
だからこそ、心惹かれる、物語。


演劇の毛利さん -The Entertainment Theater Vol.0
リーディングシアター「星の王子さま」
2021.1.10 サンシャイン劇場 (配信で1月13日に視聴)
出演:小宮有紗・染谷敏行

演劇の毛利さん -The Entertainment Theater Vol.0
リーディングシアター「夜間飛行」
2021.1.14 サンシャイン劇場 (配信で1月15日に視聴)
出演:岡田達也、櫻井圭登

演劇の毛利さん -The Entertainment Theater Vol.0
音楽劇「星の飛行士」
2021.1.16 サンシャイン劇場 (配信)
出演:鈴木勝吾、伊藤理々杏、沙央くらま、櫻井圭登、伊藤優衣、
   里中将道、明音亜弥、山川ありそ、竹内尚文、ザンヨウコ、
   岡田達也、池田純矢、良知真次


「何故、演劇をやるのか?」
その問の答えに迫るために、少年社中の毛利亘宏さんが始めた新しいプロジェクトは、
サン=テクジュペリの“物語”を手掛かりとしたこの一連の舞台で始まりました。
砂漠にポツンと置かれた赤い飛行機のある舞台の上で演じられる、
「星の王子さま」と「夜間飛行」の朗読、そして音楽劇「星の飛行士」。
本来なら一つ一つ記録を書くべきなのかもしれませんが、
3つを観終わったところで、これは3つで一つの完成形なのだ、と感じたので、
まとめて書くことにしました。

朗読劇はたくさんの出演者、組み合わせがあったのですが、
今回はこの二組をチョイス。
「星の王子さま」は、小宮さんが王子さまを、染谷くんがそのほかの役全てを、という配分。
小宮さんは初見なのですが、めっちゃ可愛い声!
朗読劇なので、基本座っての演技なのですが、くるくる変わる表情がとても魅力的。
染谷くんの飛行士の飄々とした雰囲気とは異なるようでいて、
どこか同じ色をまとっているようにも見えました。
染谷くんは、様々な声音を使っての演じ分けがさすが!
個人的には蛇がイケボ過ぎてちょっとよろめきそうになりました(笑)。
最後の、夜空を見上げての独白(かな?)の表情が優しくて、でも寂し気で・・・
王子さまとの記憶は彼にとって大切な宝物なのだと、そう素直に思えました。

「夜間飛行」は、去年観た刀ステの竜馬と肥前くんが素晴らしかったのでこのお二人をチョイス。
基本的には櫻井くんがファビアンを、岡田さんがリヴィエールを担当し、
その他の役は二人で分担、時に一つの役も二人で、という感じ。
実は私、「夜間飛行」は読んだことがなくて。
こんなにシビアなお話だったのかと、観ながらちょっと動揺してしまいました。
最初の飛行シーンのファビアンの声が、本当に飛ぶ喜びと自信に満ちていて、
だからこそその幸福が、危険と表裏一体であり、痛みを伴う覚悟と共にあることが、
それでも、彼らは空を目指すのだということが、理屈でなく胸に迫ってきました。
ファビアンが最後に見た月光を反射する雲海の静謐な異界。
次のフライトを指示するリヴィエールの声の強さと、わずかに感じられる震え。
物語の中、二人が声を合わせるシーンが何回かありました。
それから、一人の言葉の最後に重なるようにもう一人が読みだすときも。
ファビアンとリヴィエールは違う存在で、でも、物語で語られるように、
きっと兄弟のような絆で結ばれていた―――そのことが、なぜかとても悲しかったです。


そして、音楽劇。
偵察機を攻撃されて命を落としたサン=テグジュペリ(鈴木勝吾)が、
先輩の星々(かな?)と親友のレオン(岡田達也)に導かれ、
自らの二冊の著書を介して失くしていた記憶を取り戻し、
星になることを―――死を受け入れていくまでの物語、かな。
朗読劇と同じステージで、かつ奥のスクリーンに映される映像もほぼ同じ、
そして物語の再現では同じセリフを言っているのですが、
朗読劇と音楽劇では、まったく異なるのだなあ、と当たり前のことを思ってしまいました。
私の立場的には、朗読劇は能動的で、音楽劇は受動的、という感じかな。
朗読劇は、届く言葉と表情、そしてわずかな動きから自分の中に世界を構築していて、
音楽劇は、舞台の上に創り上げられた物語を受け止めている、という感じ。
朗読劇は私の物語で、音楽劇は毛利さんの物語なのかなあ、なんて思いました。

この物語で、毛利さんが迫ろうとした問いの答えとしての音楽劇は、
たぶん私が二つの朗読劇から得たなにかとは違っていて。
だから、この音楽劇の中のサン=テグジュペリが得た3つの言葉と、
その上で彼が辿り着いた果ては、私にはちょっと違和感が残るものではあったのだけど、
でも、それはそれでいいのかなあ、とも思ってみたり。
なので、ここでは役者さんの感想を少しずつ。

サン=テグジュペリ役の鈴木くん。
彼の歌声は本当にドラマティックだなあ・・・!
最初の曲の歌声に、一気に気持ちを持っていかれました。
そしてなぜかステア(@「キャンディ・キャンディ」)を思い出したり(笑)。
結果的に、この物語の中の登場人物は星たちを除いてすべて彼自身なわけなのですが、
そのことを受け入れて―――自分自身を受け入れるまでの彼の葛藤は究極にエゴイスティックで。
でも、死を受け入れるというのはそういうことなのかもしれないなあ、と思いました。

王子さま役は伊藤さん。
朗読劇の王子さまとは違う強さと無邪気さ、そして身勝手さのある王子さまで、
でもそれが不思議に魅力的でした。
大人は身勝手、の曲、めっちゃ可愛かったなあ。
あのメロディは頭に残ります(笑)。

沙央さんは、サン=テグジュペリとファビアンの妻役。
短い登場シーンの中で、彼らの唯一の女性としての存在感を出すのは大変だなあ、と。
本では描かれなかったシモーヌの心情が描かれていましたが、
それは結局サン=テグジュペリが想像するものでしかなくて・・・
最後の、彼の背中を押す彼女の言葉も、そう。
・・・ああ、そこが、私が納得しきれなかった部分なのかもしれないなあ。

櫻井くんはファビアン役。
唯一朗読劇と同じ役柄でしたが、受ける印象が違ってちょっとびっくりしたり。
朗読劇で私が受け取ったファビアンよりも、硬質さのあるファビアンだったなあ、と思いました。
冒頭の夜間飛行のシーンは、暗闇に交差するいくつもの白い光と、
その光に浮かび上がるファビアンのシルエットがとてもかっこよくv
でもって、あの雲の上のシーンもとてもよかったです。
翼の上で本を抱きしめてうつむくサン=テグジュペリ。
飛行機の上で歌うファビアン。
周囲の闇の中を力なく歩む良知くんのリヴィエール。
二人の歌声の重なりの対比にちょっと涙してしまった。
櫻井くんの歌声は、今回初めてちゃんと聞いたけれど、柔らかな甘さがあるのが結構好みかもv

リヴィエール役は良知くん。
こういうおじさんの役をするようになったんだなあ、というのがまず衝撃(笑)。
朗読劇の岡田さんのリヴィエールよりも闇が深い感じ?
覚悟の方向性もちょっと違う風に感じました。
彼とサン=テグジュペリが飛行機を間に向かい合うシーンは、
硬質な照明と相まって、とても印象的でした。
彼が背負う勝利の重みは、きっといつか彼を押しつぶす―――
それでも、それをわかっていても、彼は笑顔で歩んでいくんだろうなあ。

池田くんは「星の王子さま」の飛行士役。
明るくて、まじめで、ちょっと子供っぽくて涙もろい。
王子さまへの愛情というか傾倒が本当にすさまじくて、
二人の別れのシーンで王子さまに縋りつく姿に、思わずもらい泣きしちゃいました。
サン=テグジュペリとのリンクを深く感じていた分、
ラストシーンでサン=テグジュペリが王子さまにサイドチェンジするのが、
ちょっとしたカタルシスだなあ、と思ってみたり。
でもって、池田くんの歌の力にもちょっと心が震えました。

岡田さんはサン=テグジュペリの友人、レオン役。
サン=テグジュペリに語り掛け、彼を導く姿にもですが、
ただ彼を見つめるその表情に、彼への友愛を、別離の悲哀を、変わらぬ信頼を、
見せてくれたように思います。
飄々と、軽やかに、けれど愛情深い・・・いい男だなあ!

星役は劇団員のみなさん、かな。
まず衣裳がめっちゃ可愛い!
でもって星の名前な役名に不思議に納得!
王子さまが出会うバラや大人たち、蛇やキツネをそれぞれ演じてらっしゃいましたが、
どれも技あり!な感じでした。
ザンさんのバラの複雑な感情と、それを理解しきれない王子さまが切なかったなあ。
キツネ役は伊藤さんかな? めっちゃ可愛かったですv
この星たちも、この世界で自分に向きあい、死を受け入れ、星になったのかなあ。
そんなことを想像させてくれる、不思議な存在でした。

この舞台を見て、「星の王子さま」のことをまた少しわかったような気もするけれど、
でも、きっとまたいつか「星の王子さま」を読んだときには、違うことを思うんだろうな。
私にとって、この物語は、そういう物語なのだと思います。


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