水鏡

澄んだ水のようなその瞳。
映る姿は光か、影か。


ミュージカル『刀剣乱舞』 ――東京心覚――

2021.3.7 ソワレ TOKYO DOME CITY HALL (配信で視聴)

出演:雷太、中尾暢樹、立花裕太、福井巴也、小西成弥、佐藤信長、山崎晶吾、永田聖一朗、
   三上一朗、川隅美慎、有馬自由、松島明朱里or及川結依、
   村中一輝、高橋祥太、大野涼太、鴻巣正季、今井稜、市川裕介、伊達康浩、塚田知紀、
   千葉恵佑、白金翔太、稲野純也、兵藤結也


刀ミュの新作公演。
今回も開幕のお祝いと、千秋楽までの無事を祈って初日の配信を視聴しました。
1月にとてもとても楽しませていただいた音曲祭の記憶もまだ新しかったし、
知ってる役者さんもほとんどいなかったし、
特にお気に入りな刀剣男士がいるわけでもなかったので、
全く気負いなく見始めたら、これまでの刀ミュとは全く違う雰囲気に、最初から最後まで翻弄されました。

何を見せられているのかわからなくて。
終演後も何を見たのかわからなくて。
でも、そのわからなさはもやもやする後味の悪いものではなくて。
わからないけど、面白い。
わからないけど、すごいものを見た。
そんな気持ちになりました。
この感覚、蜷川さん演出の寺山修司戯曲の舞台を観た後に近いかなー。

物語は、私の大好きな曲から始まりました。
ベートーベンの悲愴 第二楽章。
穏やかで優しく、透き通るようなビアノの旋律に、徐々に雑踏が重なっていきました。
現代の、東京。
そこに一人立つ、水心子正秀(小西成弥)。
闇の中、かすかな光をはじいて降り注ぐ一筋の砂。
舞うように現れた、能面(若女かな?)の少女。
水心子くんの脳裏に浮かぶ、様々な映像を無秩序につなげた映画のフィルムのような映像―――

ね? この時点で何事?!って感じですよね?(^^;)
なんというか、ものすごく現代劇っぽい感じで、ちょっとびっくりしてしまいました。
その感覚はその後もずっと続いていたのだけど、
でも観終わってみれば、これは確かにミュージカル『刀剣乱舞』でした。

物語は、水心子くんの見る映像のように、いくつもの時代の“東京”が断片的に描かれます。
平将門が戦う平安の“東京”。
太田道灌が江戸城を気づく室町の“東京”。
天海が結解を組もうとする江戸の“東京”。
彰義隊が最後の戦いに向かう幕末の“東京”。
様々な光と音とあふれる人と、けれど確かな闇のある現代の“東京”。
そして、もはや誰もいない、来ることもない、道すらも必要なくなった、どこか―――

このいくつもの“東京”は、彼らが任務として訪れた地なのか、
それとも単独の意志でもって訪れた地なのか、
そもそもその時間軸はつながっているのか、
正直私には全然わかりませんでした。
でも。
断片的に描かれるその“東京”で、彼らは確かに刀剣男子として生きていた。
そこに生きる人々とふれあい、
歴史を守るためにともに戦い、守り、あるいはその命を奪い、
誰も見ることのない花を咲かせ、
そして静かに降り注ぐ砂の一粒一粒がはじく微かな光に―――想いに、語り掛ける。
一人一人の物語を胸に、それぞれの矜持を持ち、それぞれの在り方で、
それぞれに歴史に―――物語に寄り添う。
あのピアノの曲のように、どこか淡々と、けれど狂おしいほどの何かを滲ませて描かれる彼らの姿が、
観終わった後、私に静かで、けれどとても深い満足感を与えてくれました。

うん。
わからなかったけど、面白かった。
わからなかったけど、だからこそ物語に深く沈み込めた。
わからなかったけど、彼らのその先がさらに気になった。
そういう意味では、とても印象深い舞台だったと思います。

まあ見ている最中は、ついていくのに必死で、でもついていけてないという状況でしたけどねー(^^;)
最初の方、ちょこちょこいろんな情報をさらっと詰め込んできたりしてたけど、
(先輩はやっぱり稲葉江で、時間はかかるけど顕現するの?とか、
 青江さんの単騎出陣の理由ってそれなの?とか・・・)
それらに引っかかっている余裕は全然なく・・・
そして、三日月宗近という機能についても、いったい何が起きているのか?!という感じでした(^^;)

全ての時代に影を―――そう、光ではなく影を落とす三日月宗近。
大典太光世は、その存在を“呪い”と言い。
将門はその言葉を危ぶみながらも拒絶し、
水心子正秀は、その重荷をともに背負おうとその姿を追った。
ミュ本丸での三日月宗近がどういう存在で、どういう立ち位置なのか。
審神者は、時の政府は彼の行動をどう見ているのか。
彼が、新々刀の二振りと、江の4人に告げた言葉―――
新々刀はこれまでとこれからをつなぐ存在であれ、
江のものは人と人ならざるものをつなぐ存在であれ、
(ちょっと記憶が曖昧なので違うかも! アーカイブで確認したら直します)
というあの言葉の意味。

謎は謎のまま、多分この物語では何も解決していない。
解決していないけど、でも、それが「心覚」というこの物語なのだと思う。
物語についての解釈は、歴史に疎いこともあって、私には何も言えることはないです。
でも、終盤、水心子くんが降り注ぐ砂に語り掛けた言葉は、
多分、今まさにこの時代を生きる私たちへの言葉でもあったのだと思う。
歴史の中で、悲しい役割を担う人たち。
名もなき花と言われる、けれど確かにそれぞれの名前を持つ人たち。
“この場所”に、辿り着いた人、辿り着かなかった人、
来ることを選んだ人、来ることを選ばなかった人。
それは、これまでの時間を生きてきた一人一人のことであり、
そして、劇場という場所に向かう私たち一人一人のことなんだと思った。
選んだ未来を言祝ぐように、選ばなかった未来を嘆くように舞うあの少女は、
私たちの想いの化身なのかもしれないと、そう思いました。

新型コロナの流行というこの状況は、私も含めて誰もが理不尽に何かを奪われていて。
その“歴史”を変えようと、新型コロナがはやらなかった歴史を作ろうとする存在―――時間遡行軍が、
もしかしたら今この瞬間にもいて、それを阻むために水心子くんは“現在の東京”に来ている。
そういうことなのかもしれない。
刀剣男子たちが守る“歴史”は、その瞬間に生きる人たちにとっては不確かな未来でしかなくて。
そして、まさに今、この瞬間も彼らが守る“歴史”で。
だから、水心子くんは、私たちにとっても理不尽で悲しいこの“歴史”も守る。
でも同時に、小さな小さな私たちの想いにも、ちゃんと寄り添って受け止めて、
そして、こう言ってくれた。

そのことに、傷つかないで。

この言葉を聞いた瞬間、思わず涙がこぼれました。
天狼傳の加州くんや、音曲祭の三人もだけれど、
彼らは、私たちの心に、想いに、確かに寄り添い守ってくれているんだな、と。
そのことがとても嬉しくて、なんだかほっとしてしまったのでした。

この物語は、刀ミュの中でもかなりイレギュラーな存在だと思います。
パライソを見ていないからわからないけれど、
あの本丸の時間軸の物語の一つであると同時に、
今この状況だからこそ作られた、追補的な存在でもあるように思う。
問わず語り―――独り言、というのは、そういうことなのかな、と。
この物語を挟んだことが、これから先の物語にどう影響するのかはわからないけれど、
でも、できることならミュ本丸の行きつく先を見届けたいと、そう強く思いました。


わからないからさらっと書くつもりだったのが、思いがけず長くなってしまいました(^^;)
やっぱり、この物語、私は凄く好きなんだなあ、と思います。
次に見た時には、きっともっとたくさんの何かを受け取れるんじゃないかな。
とりあえず、千秋楽のライビュは申し込もうと思います。
さて、役者さんのことを少しずつ。
ちょっと呆然としてたので、記憶が曖昧なのだけど(^^;)


大典太光世役、雷太さん。
とんでもなく大典太光世だった・・・!
ステとはまた違った怖さというか、畏れを感じさせる存在でした。
もの凄くだるそうに動いているのに、めちゃくちゃ強い。
猫背なのに、ほんとにとんでもなく強い!
座っての殺陣とか、押されてる風になってもおかしくないのに、
絶対全部斬り捨てるよこの人!という安心感(?)がありました。
というか、あの目で見据えられたら固まるよ・・・
首をゴキって鳴らすところとか、有無を言わさず大典太さんでした。
そして、歌がうまい!ダンスが素晴らしい!ボイパもやっちゃう!という多才さに呆然としました。
いやもう二部の存在感に思わず目を奪われたよね・・・
でもって腹筋が素晴らしかったですv(え)

ソハヤノツルキ役、中尾くん。
とんがってるのにめっちゃ育ちの良さを感じさせるソハヤさんでした。
大典太さんと一緒の殺陣が見ごたえあり。
ステの太陽のようなソハヤさんとは違う、ちょっと影がある感じなのだけれど、
それもまたソハヤさんだなあ、と。

豊前江役、立花くん。
ちょっと待って、りぃだぁ!!と何度も叫びたくなりました・・・
頼りがいのある明るく爽やかなお兄ちゃん、というイメージだったのですが、
こんなにも苛烈で、悲劇的な要素があったのか、と。
ある意味、「悲愴」が一番似合うのが豊前さんなのかも・・・
彼が発するあの明るく強い言葉たちも、優しく頼りがいのある笑顔も、
次に観た時には、違うものに見えてしまいそうな気がします。
守る相手を知るために関わる。
そして、時をともにし、言葉を、心を交わした相手を、
“歴史”を守るために躊躇なく斬り捨て、血に慣れすぎたと微笑む。
それは、情なのか業なのか。

江の彼らについて、私はちゃんとした知識はありません。
刀剣乱舞の彼らは、篭手切くんのインパクトのせいか(^^;)、
タイプの違う芸能人集団的なイメージだったのですが、今回かなりその認識が変わりました。
三日月さんの言葉どおりであるなら、彼らはこれから先の刀ミュの物語で、
多分とても重要な鍵の一つになるのだと思う。
その物語を見るのが、楽しみなような、怖いような・・・
でも、江の6人なら乗り越えられる、という根拠のない信頼感があるよね。

桑名江役、福井くん。
私的には、歌合で顕現した、という認識の彼。
顕現セリフでいきなり森羅万象を語るスケールの大きな存在(でもビジュアルはバンドマン)、
という印象だったのですが、思ってた以上にスケールが大きかった!
いきなり恐竜の話になるとは思わなかったし、水の循環の話にもびっくりしたけど、
でも、それをすんなり受け入れさせちゃう何かがあるなー、と。
地に足つけてこその桑名江、とい台詞が納得の包容力と安定感もありました。
というか、彼が耕していたあの世界はどこなのかなあ。
放棄された世界の成れの果てなのかな、なんてちょっと思ったのだけど。
でも、ツルハシで硬質な音を立てる地面って、加工されてる地面だよね・・・?
とりあえず、青空の下、一面の山吹の花が風に揺れる世界は、
きっと泣きたくなるほど寂しくて、美しいのだろうな、と思ったし、
もし放棄された世界の未来がそんな景色であるなら、それはとても幸福なことだと思いました。
しかし、あの前髪でよく殺陣をしたり踊ったりできるなー。

五月雨江役、山崎くん。
・・・ビジュアルの完成度がとんでもなかった!!
いや、ミュもステもみんな完成度高いのだけれど、
イラストがそのまま三次元になったような印象を持つことはさすがにあまりなくて。
でも、この五月雨さんは、びっくりするほどイラストそのままの印象でした。
で、あのビジュアルにあの動きが伴うと、あんなにも可愛くなるのか!と。
気持ちが昂ると「わん!」て言っちゃうとか、どれだけ可愛いの?!
でも殺陣は忍なんだよねー。
一句読むのはアドリブなのかな?

村雲江役、永田くん。
こちらもビジュアルの完成度がやばかった・・・
すぐにおなか痛い、という気弱なネガティブキャラっぽいのに、
文句言いつつも、殺陣はめっちゃアグレッシブというギャップが良かったですv
何気に気が強いよね、この子、と思ったり(笑)。
五月雨さんとのコンビはなんとも微笑ましく(*´▽`*)
うっかりよろめきそうになりました(笑)。

源清磨役、佐藤くん。
なんとも可憐な清磨でした・・・!
迷走する水心子の傍にいて見守り、言葉をかけながら、
同時に彼の強さを信頼している在り方がとても素敵でした。
水心子くんには、こんなに優しい清磨くんに心配かけちゃダメ!って言いたくなりましたが(笑)。
殺陣もたおやかな印象だった気がするけどどうだったかなあ・・・
なんというか、とても綺麗で仄かな暖かさのある早春の光のようなイメージが残りました。

水心子正秀役、小西くん。
最初は、いろいろなものに雁字搦めになっているような痛々しさがありましたが、
惑いから抜けた後、相手を見る澄んだまっすぐな目と、
真摯に、そして一生懸命相手に向き合う在り方が、なんだか愛しくて仕方なくなりました。
彼が、彼だけが、どうしてあんなにも三日月さんの重荷を軽くしようとしていたのかはわからないけれど、
三日月さんだけでなく、一人一人の相手の想いに正面から向き合おうとする彼だからこそ、
あの終盤の台詞があんなにも深く沁みわたったのかなあ、と思いました。
途中、彼が三日月さんに語り掛けるシーンで、水に映った三日月さんの姿が揺らぐ映像があって、
水鏡、という言葉がふと思い浮かびました。
平安と江戸、いくつもの時代を経た二振り。
それまでの刀の流れを経て鍛たれた水心子くんは、
それまでの刀の物語を映す鏡のような存在なのかもしれないなあ、と思いました。
ああ、だから、今までとこれからをつなぐ存在なのか。
新々刀についてもよくわかってないのだけど(蜂須賀さんの特命調査は私には難解・・・)、
どなたかの考察で「新々刀だからこそ」というものがあって、なるほどなあと思ったのでした。
でもって、二部衣装で最終形態の防御力の高さに深く納得したのでした(笑)。


というか、今回も二部衣装は相変わらずのクオリティでした。
あえて統一感なくそろえた感じなのが、この物語にとてもあっているなあ、と。
今回のキャストは歌も上手な方ばかりで、一部もストレスなく聞けたし、
というかぶっちゃけ聞き惚れたし(新々刀の二人の歌とかすごい好きだった!)、
二部も素直に楽しむことができました。
そういえば、今回の二部、ダンスバトル的な雰囲気のところもあったりして、
歌だけでなくダンスもみなさん素晴らしかったです!
一部で精魂尽き果てて、あんまり記憶にないのが残念(^^;)
客席降りできない分、ウェーブをしたりして工夫してたなあ、と。
最後のテーマ曲のアレンジも、ピアノが目立つ感じで、個人的にとても好みでしたv


歴史上の人物のお三方も素晴らしくv
三上さんの天海は、江戸を守った怪物じみた力を持つ存在だったし(時間遡行軍を法力で倒してた!)、
川隅さんの将門は、人としての情と怨霊としての業のどちらも鮮やかに見せてくれたし、
有馬さんの道灌は、飄々とした中に強い意志が感じられました。
それぞれにとても印象深い台詞もあったし。
しかし、将門の怨霊7人で江戸の結解を作るって・・・あれも放棄された世界なのかなー?
謎は残るばかりです(^^;)
とりあえず、二部の和太鼓お疲れ様でした!
アンサンブルの皆さんも、もちろん今回も大活躍!
二部の終盤(刀剣男士お着換え中)の殺陣?は大迫力でした。
能面の少女は、サイトに女の子の名前が二人あるのでどちらかかと思うのですが、
彼女が出てくると、すっと場の空気が変わる感じがするのは、
能面と、そして彼女のダンスの効果なんだろうな、と思います。
葵咲本紀の先輩もだけど、キャストスケジュール教えてほしいなあ。
まだ始まったばかりのこの舞台、無事に千秋楽まで走り抜けられますように!

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