花灯

最近、というか去年くらいから、ネットの小説に嵌って、いろいろ読んでいます。
異世界転生ものとか、悪役令嬢ものとか。
ときどき、これは!という作家さんに出会ったりして、大変楽しませていただいています。
テンプレ的な設定でも、いろんな物語が広がるのが面白いなあ、と。
そんな中で時々見かけるのが、悪役令嬢が何度も時間をループするもの。
“以前”の自分の人生の記憶をもとに、そうではない未来を目指すわけなのですが、
その記憶は、主人公を助けることもあれば苛むこともあって。

起点と終点の曖昧な放棄されたあの時間軸の中で、
繰り返す生を生きたあの男の中にある別の時間軸の記憶。
その記憶があの男にもたらしたのは、一体どんな想いなのか―――

そんなことを、ふと思ってしまいました。


科白劇 舞台 『刀剣乱舞/灯』
綺伝 いくさ世の徒花
改変 いくさ世の徒花の記憶

2020.8.9 ソワレ 日本青年館ホール(配信)

脚本・演出:末満健一
出演:和田琢磨、梅津瑞樹、佐野真白、松井勇歩、伊崎龍次郎、大見拓土、塚本凌生、星本裕月、
   三浦浩一、早乙女じょうじ、山浦徹、黒川恭佑、堀田勝、石原正一、船木政秀、
   神田山緑、七海ひろき


物語は、とある本丸の歌仙兼定(和田琢磨)の手に、主から一冊の記録が渡されたことから始まります。
その記録は、別の本丸での慶長熊本における特命調査の記録でした。
同じ調査に同じ編成で赴いた歌仙と山姥切長義(梅津瑞樹)、にっかり青江(佐野真白)、
亀甲貞宗(松井勇歩)、獅子王(伊崎龍次郎)、篭手切江(大見拓土)は、
その記録を読み進めていきます。
放棄された世界である慶長熊本。
先行調査に赴いた古今伝授の太刀(塚本凌生)と地藏行平(星本裕月)が対峙した、
大友宗麟(三浦浩一)らキリシタン大名―――そして、細川ガラシャ(七海ひろき)。
ガラシャの手をとり出奔する地蔵行平。
そこに居るはずのない細川忠興(早乙女じょうじ)。
同じ調査、同じ編成、同じ流れ―――けれど、そこに記録された物語は、
彼らが経験した物語とは異なる部分もあり・・・

というような物語でした。
もともとは、従来通りの公演の予定だったわけですが、
昨今の状況により、しぐさ(科)とせりふ(白)による科白劇としての上演となりました。
口元を覆う透明なフェイスシールドをつけて、徹底的なソーシャルディスタンスを保っての演技。
時間遡行軍は映像で表し、殺陣は役者のしぐさと光と音と映像で演出。
物語の進行をひっぱる、刀装・講談師(神田三緑)の語り。
手探りの中で創り上げられてきた物語は、配信で観たということもあってか、
やはりどこか迫力はもの足りないようにも思いました。
けれど。
丁寧に紡がれる彼らの心情は、物理的な距離を越えた共鳴を感じさせてくれたし、
直接交わることのない刃は、それぞれの殺陣の色をクリアに見せてくれたようにも思いました。

これまでの刀ステとも違う。
朗読劇でもない。
全く異なる形で、でも紛れもない刀ステの世界が、確かにそこにあった。

どんなに準備をしても、どんなに心を配っても、
確実に明日を迎えられると言いきれない、不安。
それは、きっと千穐楽を迎えるその日まで、カンパニーを苛んだのだと思う。
そんな状況の中で創り上げられたこの舞台は、
きっと暗闇の中、風に揺らめく小さな灯のように、確かな熱を持って周囲を照らした。
カーテンコールで、感謝を述べ、夢が叶ったと目を潤ませ、
楽しかった!と花のような笑みを浮かべ、また会いましょうと微笑み、
これが刀ステだと、これが演劇の力だと強く、熱く、その想いを放ち、
そして、歌う時を選ぶことでその時を強く望んだ彼ら。
彼らが創り上げたこの舞台は、決して徒花ではない。
美しく咲き誇り、潔く散り、そして確かな実りをもたらした。
そんな風に、思いました。


物語としては、刀剣男士が自らを形作る元主の想いと向き合う物語、というように感じました。
いや、これまでもそうだったのかもしれないけれど、
なんというか、これまでの物語は、刀剣男士が元主ないしその歴史と真正面から向き合う感じで、
今回は、自分の中にある元主の想いと、自分自身の心の関係性という感じ?
元主の想い、あるいは自分を形作る逸話に引きずられ、寄り添い、同化し、
けれどその想いは、逸話は、彼らの全てではないのだと、それを強く見せつけられたように思いました。
まあ、この辺は感覚的なので、ちょっと自分の中でもすっきりしないかなー。
すっきりしないといえば、どちらの本丸が、今まで見守ってきた本丸なのかももやもやしました(笑)。
やりとりなどからは、この記録されている本丸の方なのかなあ、とも思いつつ、
この記録とは異なる黒田孝高は一体何をしたのかとか、
歌仙さんがこの後行く遠征先って今ですか?!とか、
この本丸の古今さんと地蔵さんはどこにいるのか、とか、
まあ例の如くいろいろぐるぐるしております(笑)。
とりあえず、今夜の再配信をもう一度観て、ネットの考察など拾ってみようと思います。


役者さんのことを少し。

山姥切長義役、梅津くん。
うん、強くなった長義、確かに見せていただきました。
最初はツッコミが彼しかいないのがめっちゃ心配だったのですが、
本丸のみんなにちゃんと馴染んで、本丸の中にちゃんと居場所を見つけているのが感じられて、
なんだかほっとしてしまったり。
自由な亀甲さんに翻弄されつつも、冷静に、緻密な思考で敵と相対する胆力とか、
(このシーンの長義くんと亀甲さんそれぞれの椅子の座り方がめっちゃツボでした!)
「酒はのめない」と言えるようになったところとか、
自分は刀であって人ではない、と繰り返すことの真意とか、
殺陣の素早さは増しているのに、余裕があるのか凄く強くなったなあ、と感じられるところか、
仲間を認め、仲間を気遣い、自分のやるべきことをクリアに見据え行動する有能さとか、
闇り通路で遅れてきたのはやっぱり迷子になってたのかとか(え)、
その後の登場シーンがとんでもなくヒーローだったこととか、
なんというか、役としての成長と役者としての成長の両方を見せていただいたように思いました。
黒田孝高に山姥切くんのことを言われた時の表情を見て、
彼のこの行動は、山姥切くんに託されたことも影響しているのかなあ、と思ったけど、
こちらの本丸があの本丸かどうかで、前提が全く変わっちゃうなあ。
特典映像での「にせものくん」に余計に惑わされてます(笑)。

にっかり青江役の佐野くん。
刀ミュの青江さんが強く刷り込まれているので、最初は若干違和感があったのですが、
何というか、とても若くて無垢で凛とした感じのにっかりさんだなあ、と思いました。
心配だ、という言葉をまっすぐに伝える青江さん・・・新鮮!
その後ではぐらかしたのは、照れてるのかなー、とか思っちゃいました(笑)。
亀甲さんとの絶妙な雰囲気も素晴らしかったです(笑)。
カーテンコールで、夢が叶った、と涙ぐみながら一生懸命話してくれて、
ちょっともらい泣きしちゃいました。
次の夢も、きっと叶うよ。頑張れ!

亀甲貞宗役、松井くん。
私の好きな亀甲さんの要素・・・しなやかで前向きな強さのある亀甲さんで、
なんだかとっても嬉しくなりましたv
相手との距離感を、知らないうちにすっと縮めてくるような怖さも、
笑顔だけど目が笑っていない瞬間があるように見えたところも!
短いマントを翻しての、舞うような、流れるような殺陣もとても素敵でした。
物語の中でも、要所要所でいい働きをしているように見えたのですが・・・気のせいかな?

獅子王役、伊崎くん。
こちらも、明るくて人懐っこくて可愛くてかっこよくて強くて、
でも、平安刀の底知れなさもちゃんと感じさせてくれる、私の大好きな獅子王くんでしたv
ソハヤくんと同じ陽性のカテゴリーなのだけど、太陽というよりは向日葵の花みたいな印象。
彼が喋るとぱっと場が明るくなる感じで、観ていてほんとに癒しでしたv
あの鵺をずーっと背負って、力強くも軽やかな殺陣も見せてくれるし、
鵺をちゃんと可愛がって信頼関係もありそうな感じだったし、
(カーテンコールの挨拶で、鵺の頭をぺしっとするの可愛かったv)
小烏丸さんと仲良しっぽいところも微笑ましかったし!
また登場してくれると嬉しいなあ。

そういえば、カーテンコールで一人一人が出てきた時、
刀剣男士のそれぞれが花みたいだなあ、と思いました。
歌仙さんは牡丹、にっかりさんは竜胆、亀甲さんは百合、篭手切くんは白詰草、
長義くんは勿忘草、獅子王くんは向日葵。
うん、まあ、単にイメージなんですけどね。

篭手切江役、大見くん。
刀ミュよりは大人というか、ちょっと腹黒さも感じさせる篭手切くん、新鮮でした!
部分的ですが、ちゃんと歌って踊ってくれましたしね(笑)。
殺陣は、同じ脇差でも青江さんとは距離感や高さが全然違っていて興味深かったです。

古今伝授の太刀役、塚本くん。
あの衣裳であの声で演技をするの、大変だったろうなあ、と思います。
存在がちょっと曖昧な感じがして、それが不思議な雰囲気を醸し出していたような。
なんというか、何を考えているかわからない感じ?
ラストシーン、地藏くんを歌仙さんに託して後片付けのために残るのですが、
ちょっとそのままどこかへ行ってしまいそうな危うさがあって、
歌仙さんでなくても声をかけてしまうよね、と思いました。
でも、殺陣は結構アグレッシブな感じで、歌仙さんに通じるものがあるような・・・?(笑)
同じ政府派遣の長義くんとの会話も意味深な感じでちょっと気になったり。
維伝の南海先生や肥前くんとだとどんな感じになるのかなあ。

地蔵行平役、星本くん。
ビジュアルはそのまま「宝石の国」に紛れ込めちゃいそうな感じでした(笑)。
ドキュメンタリーでも思ったのだけど、この子、男の子だよね?!
地蔵くんも、元主の想いに翻弄された刀だなあ、と思いました。
ガラシャを「姉上」と呼びはじめるシーンも描かれていたのですが、
なんというか、彼はガラシャに負い目のようなものを持っているように感じた。
ガラシャを助けたい、生きていてほしい・・・その想いは、
細川の、そして明智の人々―――ガラシャの弟たちの想いなのかな、とか。
この辺は正直良くわからなかったので、みなさんの解説に頼ろうと思います(笑)。


細川ガラシャ役、七海さん。
もと宝塚のトップの方、なのですよね。
強く美しく、情の深いガラシャさまでございました。
愛憎という言葉を、とても端的に見せてくれたように思います。
忠興の愛情。
忠興の執着。
忠興の憎悪。
そのどれもが、彼女にとって愛しいものであり、そして嫌悪するものでもあったのかなあ。
小西行長が、本能寺の変がなければ二人は幸せに暮らしていたのに、というようなことを言っていたけど・・・
この二人の情の深さでは、いつかその穏やかな幸せは破たんしたのではないかな、と思ったり。
長身でスタイルの良い方なので、薙刀を使っての殺陣は、ダイナミックでかっこよかったです。
それにしても、変身後(違)のビジュアルはねー(^^;)
まんまオスカルさまで、観た瞬間、自分が何を見ているのかちょっと混乱しました(笑)。
せめて髪はストレートにしておいてほしかったなあ。
その方が地藏くんとのつながりも見えたようにおもうのだけど。
まあ、個人の好みですけどね。
というか、むしろ狙った?!(え)
そういえば、彼女が花か蛇か、についての答えは、彼女自身が選んだ蛇だったわけですが、
古今さんと地蔵くんが大蛇であるという説明とどう繋がるのかな・・・?

黒田孝高役、山浦さん。
ジョ伝に引き続いての黒田官兵衛孝高の登場!
そして、今回もキーパーソンという感じなのですが、
ジョ伝の時間軸の官兵衛とは全く違う立ち位置だったなあ、と思います。
彼は、この時間軸を何度も何度も繰り返していて、
その中で、別の時間軸の自分の記憶もぼんやりと手に入れていて―――
時間遡行軍すら利用しようとした彼が、繰り返している自覚を持った場合、
その先の未来を変えようとしないはずはないと、そう思ったのですが、どうなのかなー。
あと、刀剣男士は自分たちが勝つまで戦い続ける、と言っていて、
まあ、確かに負けたままだと歴史改変されちゃって、その時間軸は放棄されちゃうのだろうけど、
それって、三日月さんだけじゃなくて、みんなループしてるってことなんですか?!とか・・・
ほんとにこの御方は謎を深めてくださいます(笑)。
今回は時間遡行軍にガッツリ取りこまれちゃいましたけど、
それまでのループではどうだったのかなあ。
時間軸が異なるとしても、二振の山姥切に阻まれるということが、
彼にとってどんな意味を持っているのか気になりました。


細川忠興役、早乙女さん。
この時代、この熊本にいるはずのない、この世界の忠興。
放棄された世界は、特命調査の舞台となる場所だけでなく、全ての世界が狂っているのだなあ、
と改めて思いました。
正史でも、この時間軸でも、忠興はガラシャを殺すことができなかった。
それは、愛情からなのか、執着からなのかわからないけれど、
その想いをまるごと、歌仙さんは受け取っているのかなあ。


歌仙兼定役、和田さん。
素晴らしく完璧な歌仙さんでした。
元主に対する想い、元主から受け継いだ想い。
元主が殺すことのできなかった女を、斬る。
それは、忠興ができなかったことを果たすのではなく、
忠興の想いとは別の存在として、ガラシャと向き合った結果なのかなあ。
忠興は、妻を見つめた庭師を斬った後、刀に付いたその血を妻の袖で拭った。
歌仙は、忠興が斬れなかった女の血の付いた刃を、己の袖で拭った。
それは、特に意味のない動作だったのかもしれないけれど、
なんだか凄く印象に残りました。
ガラシャとの殺陣も、小西行長との殺陣もかっこよかったなあ。
冒頭、「無作法者め!(だっけ?)」の台詞の後、ジャンプして斬るのが、
凄く重さの感じられる殺陣で、おおお!と思いました。
武骨で、華やかで、雅。
うん、それこそ歌仙兼定!
カーテンコール、凛々しく挨拶をしながら、本当に静かに美しい涙をこぼされていた和田さん。
いつか、どこかの千穐楽で、和田さんの詠む歌を聴くことができるといいな。
その日を待ち遠しく思っています。


講談師の神田さん。
まさかの刀装でした!(笑)
圧巻の語りで、物語の流れを作ってくださっていたように思います。
歌仙さんと会話するシーンとかもあったし、
刀剣男士に声を掛けるシーンもあったり、割とメタな存在?
というか、刀装って喋れるんだ?!(笑)
ラストシーンで、歌仙さんが記録を長義くんに渡そうとしたときに、
「ソーシャルディスタンス!」と注意して、
戸惑う歌仙さんがちょっと可愛かったですv
いつかまた、この特殊刀装が派遣されてくることがあるといいなあ。


そのほかの歴史上の人物の方も、それぞれに生きる重みの感じられる役柄でした。
白い衣裳もそれぞれ凝っていてかっこよかった!
パライソとかインヘルノとかマルチリとか言われると、
どうしても「SHIROH」を思い出しちゃいますが(^^;)
キリスト教の弾圧で散って行った命を救おうとした大友宗麟。
でも、その命が救われることはきっと別の命の終わりに繋がっていた。
忠興とガラシャ夫妻の幸せを願った高山右近。
でも、それはもしかして、別の不幸をもたらしたのかもしれない。
自分は武士として死んだのか、キリスト教徒として死んだのか、と叫んだ有馬晴信。
彼にとっての正史は、もしかしたら歴史としての正史とは違っていたのかもしれない。
基礎知識がないために、いろんな誤解もしているんだろうなあ。
今日の再配信で、もう少し理解できるといいな。


そんなこんなで、配信、楽しみました。
次回作(ステアラ!)の情報も解禁されましたが、
来年には東京に行けるようになっているといいなあ。
まあ、その前にチケット確保できないでしょうけど・・・(^^;)
でも、やっぱりこのシリーズは、ちゃんと最後まで追いかけていきたいなあ、と思いました。
で、完結したら解説本出してください!(笑)


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