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ヤマトタケルの物語には、ちょっと思い入れがあります。 といっても、そんなにたいしたことではなくて、 好きな本の題材がヤマトタケルであった、というだけなのですが・・・(笑) そのひとつは黒岩重吾さんの「白鳥の王子」。 読んだのはずいぶん昔なので、ディテールは覚えていないのですが(え)、 タケルの生き様に感動した記憶があります。 そして、もう一つは荻原規子さんの「白鳥異伝」。 勾玉三部作の2冊目であるこの物語。 三部作の中で、実は一番好きな物語で、これまで何度読み返したかわかりません。 これは、ヤマトタケル伝説をモチーフとした、全く別の物語なので、 ヒロインの遠子(≒弟橘姫)は小倶那(≒小碓命)と様々な困難を経て幸せになります。 けれど、そこに至るまでの彼女の苦難の道筋を、 血縁というものに縛られ翻弄された小倶那の絶望と苦悩を、 そして、彼らが失ってきた多くのものを思うと、 その幸福な結末は、ただ晴れやかなものではなくて――― 心の奥底に刻み込まれた消えない疵。 何度も夢に見る別離の記憶。 消えてしまった誰かの手のぬくもり。 そんな痛みを抱えた彼らだから、得ることのできた、今。そして未来(これから)。 市川猿之助さんと、梅原猛さんが創り上げたこの「ヤマトタケル」も、 そんな痛みを感じさせる物語でした。 スーパー歌舞伎 「ヤマトタケル」 2008.3.16 夜の回 新橋演舞場 2階2列20番台 作:梅原猛 脚本・演出:市川猿之助 出演:市川段治郎、市川右近、市川笑也、市川笑三郎、市川猿寿、市川春猿、市川猿弥、 市川門之助、市川猿四郎、市川喜猿、市川猿紫 他 初めて観るスーパー歌舞伎。 そこここで素晴らしいとの評判を聞いて、 でもその分、期待と不安でちょっとどきどきしながら開幕を待ちました。 客電が落ち、勇壮な音楽と共に闇の中に浮かび上がったのは、 大きく描かれた地球と、数多の星のきらめく宇宙。 次に現れたのは、アンモナイトの化石。 なんだか、この時点でちょっとうるうるきてしまいました。 自分でも早っ!(笑)と思ったのですが、 この二つの絵柄が私の中の(たぶん)原始の記憶に働きかけたのだと思うのです。 そして、その背後から現れたのは、左右に白木蓮の樹を配した聖宮。 回り舞台の回転と共にせり上がる帝と皇后。 そのきらびやかな装いの見事なこと!! 今回観劇して、印象にのこったのは、その色彩の豊かさでした。 まず衣装だけでも、 帝や皇后の、沢山の色を使った豪奢な衣装。 熊襲兄弟の、蛸と蟹をモチーフにした勇壮な衣装。 弟橘姫の、赤を基調にした愛らしい衣装。 兄橘姫の、落ち着いた色合いの衣装。 タケヒコの、清廉な蒼い衣装。 小碓命の運命をあらわすかのような、徐々に豪奢に、そして白から血の赤へと染まっていく衣装。 舞台美術や演出では、 熊襲の館の朴訥な色合いと、色鮮やかな衣装の対比。 崩れ落ちる館の背後に浮かぶ落日の赤。 伊勢の大宮の凛とした白と赤。 焼津の火攻めの多彩な赤と橙が翻る炎の表現。 荒れる海の暗い青と、目を射る稲妻。 そして最後。 ヤマトタケルの墓前、志貴の里からエピローグにかけての、圧倒的なまでの皓(しろ)の演出。 これまで数回観た歌舞伎のどの舞台も、 伝統的な衣装や表現に目を奪われたけれど、 この舞台の照明や舞台美術の全てを含めた色彩の表現には、 本当に驚いて、そして一気に引き込まれました。 ほんとうにまさしくスーパー!というかスペシャル!! 更にはその色彩の中に、きちんと浮かび上がってくる人物像、 そして、人間関係の機微の深さに歌舞伎の奥深さを見せていただいたような気がしました。 どのシーンも素晴らしかったけれど、 私が一番楽しませていただいたのは、焼津のシーン。 段治郎さん演じるヤマトタケルの剣さばき、 右近さん演じるタケヒコの旗さばき、 そして、二つの対立する炎の息を呑むような立ち回りに、 心から拍手をしてしまいました。 あの背後を覆う深い赤の幕を後ろで揺らしながらの炎の表現、 確か「鳴神不動北山櫻」でも不動明王のシーンに使われていたと思うのですが、 あれ、実はとっても好きなんですよねーv(ピンポイントすぎますか?) そして、一番心に残ったのは、志貴の里からエピローグ。 志半ばに旅路に散ったヤマトタケルと、 残された人々の想いに、最後まで泣きっとおしでした。 猿紫さん演じるヘタルベの嘆きは余りにも激しく。 タケヒコの怒りと諦念は、たぶんとても静かで深く。 笑也さん演じる兄橘姫の哀しいまでに強く、そして美しく。 そしてそんな彼らを彩るのは、眩しいほど白い衣装。 日継ぎの皇子となったワカタケルと共に宮へ向かう兄橘姫は、 これから始まるはずの新しい御世への道行きに、泣き伏すヘタルベを誘います。 花道の上から彼を見やる兄橘姫。 ここで、私は彼女は鮮やかな笑みを浮かべるのかなあ、と思ったのです。 けれど、兄橘姫には、一片の笑みもなかった。 その目は、自らを翻弄するであろうこれからを凛と見据え、 そして宮という戦いの場で、命に代えてもワカタケルを守ろうとする気概が見えました。 その姿は、鳥肌が立つほど美しかった。 彼らが去った墳墓の中から、白い鳥に姿を変えたヤマトタケルが飛び立ちます。 空へと飛び立つその直前、彼は愛する全ての人に別れを告げます。 「さよなら」という一つの言葉が、 それを告げる相手への想いをこめることで、 こんなにも多彩で、様々な情感に溢れることに、私はただ感嘆するばかりでした。 全ての人に別れを告げて、飛び立ったヤマトタケル。 けれど、その面には、焦がれ続けた空へ飛び立つ喜びではなく、 胸を引き絞られるような悲哀があった。 手に入れたはずなのに、掌から零れ落ちてしまった何か。 残していく愛しい人々。 最後まで届かなかった父帝への敬慕。 なのに、全てを置いて、旅立っていかなければならない自分――― 戸惑うように、後ろ髪を惹かれるように頼りなげに飛ぶ彼の姿に、 彼の中にある、未練や後悔がひしひしと伝わってきて、 目の前を飛ぶ段治郎さんに拍手喝采を浴びせる周りの観客の方にのりきれず、 一人泣きつづける私・・・(汗) そして、カーテンコール。 最後に出てきたヤマトタケルが、帝の前に跪き、その手をおし抱く姿に、 またしても涙腺が決壊してしまいました。 この物語に描かれたヤマトタケルは、英雄ではなかった、と私は思います。 強い力を持っているけれど、泣き虫で、流されやすい男。 差し出された愛情に、同じだけの強さで愛情を返してしまう情の深い男。 血の絆に縛られ、ただ家族の愛情を求め続けた男。 闘い続けることに、血を流すことに疑問を感じながらも、 そうすることでしか父へ自己をアピールすることのできなかった男。 そして、だからこそ心惹かれる男。 「白鳥異伝」の小倶那に少し通じるところのあるその造形に、 私自身も、なんだかどうしようもなく心惹かれてしまったのでした。 つらつら書いてたら、なんだかとっても長くなってしまいました・・・(汗) が、とりあえず、役者さんのことも書かずにはいられません!! 市川段治郎さん(小碓命後にヤマトタケル/大碓命) 「鳴神〜」でかっこいいなあ〜vと思っていたのですが、 今回もめちゃくちゃかっこよかったです。というか可愛かったv(え) あの泣きっぷりが素晴らしい!!(笑) 一幕の小碓と大碓の早変わりも、声立ち居振る舞いが全然違っていてすごかったし (この演出、どうやるのかと思いましたが、柱や御簾の使い方が秀逸でした!)、 殺陣のかっこよさにも見惚れてしまいました。 弟橘姫においていかれたあとのしおれた風情も素敵でしたが(笑)、 やっぱり何よりあの最後の飛翔のシーンの「さよなら」と表情にやられた感じです。 市川右近さん(タケヒコ) 軽快な動きと台詞回しが印象的でした。 焼津の場面での旗の動きは本当に圧巻でした! ヤマトタケルとタケヒコはダブルキャストなのですが、 右近さんのヤマトタケルも観てみたくなりました。 段治郎さんとはまた違った、骨太な感じのヤマトタケルなのかなあ、とちょっと想像してみたり(笑)。 市川笑也さん(兄橘姫/みやず姫) 実は今回の舞台で、一番心惹かれたのがこの方でした。 私の中の「美しい女性」像を、まさに具現していただいたような気持ちです。 とにかくお美しい! 声にも全く違和感無し!! その凛とした佇まいと、抑えた情の深さにひたすら目を奪われました。 夫(大碓命)の敵を撃とうと小碓命を追い、 けれどその真意を知り、逆に心惹かれて行く過程はとても説得力がありました。 熊襲を倒し帰京したヤマトタケルとの再会シーンは、美しいと共に可愛らしく。 そして、上記の最後のシーンの見事さ! 兄橘姫がヤマトタケルと一緒にいられた時間は、本当にとてもとても短かった。 周り全てが敵といっても過言ではない宮の中で、 ただひたすらにヤマトタケルを待ち続けた兄橘姫。 その心の中には、彼と共にある弟橘姫への嫉妬もあったでしょう。 時にはヤマトタケルへの疑心もあったかもしれない。 そういうマイナスの感情も全て飲み込んで、その上で生きていく女の強さを見せていただいた気がします。 市川笑三郎さん(倭姫/帝の使者) 小碓命を支える叔母・倭姫を、 等身大の「女」の部分と、神に仕える巫女としての神々しい部分と、 両方かっちり見せていただきました。 笑いを取ったりしながらも、その足場がまったく揺らがないところが凄い! 他の演目も観てみたくなりました。 市川春猿さん(弟橘姫) とにかくめちゃくちゃ可愛らしかったです!! もう、登場シーンから可愛い!! 個人的にはちょっと声に違和感があるのですが、 この可愛らしさはもうとんでもないと思うのです・・・(え) でも、ただ可愛いだけではなくて、入水のシーンでは、 わが身を犠牲にしてでも愛する人を助けようとする情の深さと、 姉への嫉妬や自らの立場への複雑な想いと、 そして、ただ嘆くヤマトタケルを説得する冷静さと強さがありました。 市川門之助さん(皇后/伊吹山の姥神) ヤマトタケルが東征を命じられたシーンでの、あの冷たい笑みが素晴らしかったです! まさに継母な皇后! この皇后なら暗殺も企てるだろうし、大碓も恐れるだろうなあ、と思っちゃった。 姥神さまは、あの雹攻撃には「それはないだろう・・・」とちょっと突っ込みたくなりましたが、 とにかく凄い存在感でした。 ・・・この舞台、実は女形の方々の役が、それぞれとても印象的でした。 ヤマトタケルの物語ではあるけれど、 彼を取り巻く女性の物語でもあるのかもしれませんね。 市川猿弥さん(帝/ヤイラム/伊吹山の山神) 3役もやってらしたんですねー・・・ それぞれ趣が違っていたので、見終わってから筋書を見て、 同じ方だったんだ!とびっくりしました。 個人的には山神さまが好きですv あの猪も可愛かったなー。 市川猿紫さん(ヘタルベ) 少年、という感じで、可愛らしい役柄でした。 でも、志貴の里でのあの嘆きと怒りのエネルギーは凄い! 劇中ではあまり台詞としては語られませんでしたが、 本当にヤマトタケルを慕っていたのでしょうね。 彼が兄橘姫の言葉を受けて立ち上がり、前を向いて歩き出せたことが、 この物語の一つの救いであるのかもしれないな、と思いました。 他にもいろいろ書きたいことはあったのですが、とりあえず強制終了いたします(汗)。 右近さんのヤマトタケルも見たいなあ、と思うのですが、さすがに無理かなあ・・・ とか言いつつ、大阪や名古屋に出没してたら笑ってやってください(え) |
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08/03/22 スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」!
{/star/} 前回のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」の感想はこちら 今回、私が観た公演の主な配役は以下の通り。 小碓命後にヤマトタケル/大碓命(ダブルキャスト):段治郎で タケヒコ(ダブルキャスト):右近で ヘタルベ(ダブルキャスト):猿紫で 兄橘姫/みやず姫:笑也 倭姫/帝の使者:笑三郎 弟橘姫:春猿 老大臣/尾張の国造の妻:寿猿 ヤイラム/伊吹山の山神:猿弥 皇后/伊吹山の姥神:門之助 帝(ダブルキャスト):猿弥で {/kirakira/} 3年ぶりに「ヤマトタケル」が演舞場に帰ってきた。... ...続きを見る |
ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記 2008/03/24 22:52 |
スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』 段治郎天翔ける之記
「猿之助さんのいないスーパー歌舞伎なんて・・・」と、スーパー歌舞伎からかなり遠ざかっていたため、『ヤマトタケル』を観るのは、初演(多分1986年の南座)以来でした。 右近さんタケルと段治郎さんタケルの2回(で済めばよいが)観るから、まずは全体を見渡せる席で、そ.. ...続きを見る |
地獄ごくらくdiary 2008/05/10 10:38 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
22日夜の部で段治郎タケルで観た感想をTBさせていただきますm(_ _)m |
ぴかちゅう 2008/03/25 02:27 |
ぴかちゅうさん、こんばんは! |
恭穂 2008/03/25 20:30 |
こんばんは。 |
花梨 2008/03/26 00:16 |
花梨さん、こんばんは! |
恭穂 2008/03/26 20:20 |
恭穂さま |
スキップ 2008/05/10 10:37 |
スキップさん、こんばんは! |
恭穂 2008/05/10 18:18 |
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