瓔珞の音

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zoom RSS 縁(えにし)の糸

<<   作成日時 : 2009/10/18 21:21   >>

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お友達のるーくさんからTEAM NACSの「COMPOSER」のDVDを借りたのが、たぶん3年くらい前。
その後、残念ながら生の舞台は拝見したことはないのですが、
TEAM NACSの舞台のDVDを観るたびに、実は一番印象的だったのが安田顕さんでした。
最初はイロモノ係?とか思ってたんですが(だって、冒頭は大体そうですよね?)、
物語が進むにつれて、笑いの奥の悲哀とか願いとか、そういう深い部分が滲み出てくる感じが、
なんだかとってもいいなあ、と思って。
で、いつか生の舞台を拝見したいな、と思っていたのですが、
やっとその機会が廻ってきました!


「宮城野」

2009.10.11 マチネ 東京グローブ座 2階A列30番台

作:矢代静一
演出:鈴木勝秀
音楽・演奏:横川理彦
出演:草刈民代、安田顕


実はこの舞台、劇場も、演出家さんも、演奏も、出演者も、ぜーんぶ初めてな組み合わせでした!
劇場は、ちょっと入り口の狭さが辛いなあ、と思いましたが、
客席の雰囲気も、椅子の座り心地も、トイレの綺麗さも、かなりポイント高かったですv
いつかまた何か観に来たいなあ、と思いました。


物語は、一人の女郎・宮城野の座敷で終始します。

天井まで届くような、赤い格子。
その向こうは闇に沈み、息苦しさを覚えるようなその赤い部屋の中は、
ぴんと張られた赤い糸が、不規則に空間を区切っていました。
その閉鎖された空間の中で、男と女の濃密な芝居が繰り広げられます。
けれど、寄り添う二人からは、何故かやるせない寒々しさを感じました。

師匠であった東洲斎写楽を殺めた矢太郎。
全てを知りながら、幾重にも重ねた嘘で矢太郎を逃がす宮城野。

二人の他には、ヴァイオリンの音だけがその空間を満たしていました。
ヴァイオリンというのは、人の声に一番近い楽器なのだと聞いたことがあります。
その音は、二人のやり取りが甘い色をのせるときには、情感豊かな音を奏で、
矢太郎が殺人を語るときには、まるで悲鳴のような音が空気を切り裂きました。
矢太郎の声が低く、深く、決して激情に流されていない分、
彼の中の抑えられた想いを、ヴァイオリンの音が代弁しているようにも感じました。


安田さんの矢太郎は、一言で言うと、ずるい男。
宮城野に甘えながら、その心の内は、たぶん決して彼女に見せてはいない。
彼女の前の"矢太郎"も、彼自身であったのは確かだけれど、
それはきっと宮城野の前だけの矢太郎。
最終的に、矢太郎は宮城野の好意に甘える振りをして(と私には見えた)、
宮城野の想いには気づかない振りをして、写楽の娘のもとへと座敷を去っていきます。
彼の愛情が、本当に写楽の娘にあったのか、
既に彼女と情を通じていたのか・・・
それは、翻り続ける台詞からは明確に知ることはできませんでした。
ずるくて、弱くて、でも、たぶん宮城野にとっては抱きしめずにはいられない魅力を持った男。
そんなちょっと危うい雰囲気を感じました。


そして、草刈さんの宮城野は、とにかく立ち姿が綺麗!
僅かに背筋を逸らし、片方の肩を落とした姿に、
折れてしまいそうな儚さを感じました。
宮城野に、本当の思いを見せていなかった矢太郎。
でも、たぶん宮城野自身も嘘に塗れていた。
というか、彼女は生きていくために、全てを嘘にするしかなかったのだと思う。

無理やりに自分を組敷いた男の腕を、自分が望んだ愛情の結果とすり替え、
家族のために苦界に身を沈めた自分を、本当は蔑んでいる妹の言葉をすり替え、
そして、自分の命をもって逃がそうとした男の真意を、たぶん彼女はすり替えた。

あの嵐の中で、死んでいたはずの自分。
その預かりものの命を、やっと返せる相手を見つけた。
全てを納得しているように語る宮城野。
でも、私には、その納得すら彼女の"嘘"に見えてしまった。

宮城野は、矢代静一の「聖女」の典型。
そう、プログラムにはありました。
聖女が、自らを犠牲にして他者のために涙し、他者を救おうとするものであるとするなら、
けれど、私には彼女は決して聖女には見えなかった。
矢太郎を逃がすこと、それは、彼女自身の救いでしかなかった。
何故だかそう思えてしまったのです。

それは、もしかしたら、草刈さんの描いた宮城野像が、いまいち私好みでなかったからかもしれません。
特に声が、ちょっと苦手なタイプだったの。
なので、宮城野の独白のシーンでは、その言葉の奥に隠されたなにかを感じることができなかった。
こればっかりは好みの問題なので、仕方がないかなあ、と思います。

最後、舞台を横切っていた真っ赤な糸が、一本一本音を立てて切れていきます。
それが、私には、彼女を戒める一方で、彼女を繋ぎとめてもいた縁の糸を、
彼女自らが切っているように見えました。
それは、安堵とともにとてつもない寂しさを感じさせて・・・なんだかちょっと辛くなりました。


この日もらったちらしの中に、「宮城野」の映画のものがありました。
毬谷友子さんと片岡愛之助さんがこの二人を演じられるとのこと。
毬谷さんの宮城野って、凄く業の深い女になりそうで、なんだかとても気になります。
地元で上映するなら、見に行ってみたいかもです。

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