瓔珞の音

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zoom RSS 揺らぎの果て

<<   作成日時 : 2009/10/16 23:28   >>

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新橋演舞場の2階ロビーには、公式HPやちらしでも見た(たぶん)蛮教の仏像が鎮座していました。
きらびやかな飾りで口元を隠したその面は、何かを思索するかのように閉じた瞼が印象的でした。

けれど、舞台が終わった後。
飾りの取り払われたその面には、激しい嘆きがあった。
叫ぶように大きく開き、歪んだ口元。
穏やかな思索を感じさせたはずの眼は、全てを拒否するかのように硬く閉じていました。
そして、身の内から硬く格子を握り締める、閉じ込められた"何か"。

胸の奥底に隠した、陰謀と、裏切りと、復讐と・・・
自らが選んだその道の果てに、彼が、彼らが見つけたものは、
この引き裂かれるような"嘆き"だけだったのでしょうか―――



劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎
「蛮幽鬼」

2009.10.11 夜の部 新橋演舞場 3階3列一桁台

作:中島かずき 
演出:いのうえひでのり
出演:上川隆也、稲森いずみ、早乙女太一、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、山内圭哉、山本亨、
    千葉哲也、堺雅人 他


久々の新橋演舞場は、初の3階席からの観劇でした。
舞台を上から覗き込む感じで、細かな表情や花道は見えなかったけれど、
舞台全体を俯瞰できるのは、原田さんファンの私にとってはかなりポイント高かったかもですv
客席を満たすあの青い光の中に入れないのはちょっと寂しかったですが、
繊細に、大胆に、自由自在に空間を彩る原田さんの照明には、やっぱりうっとりしてしまいました。

緞帳に当たる部分は、不定形のくすんだ色の布の上に、タイトル。
その形は、私には地図のように見え、一緒に行った友人には羊皮紙の古文書のように見え、
そして、1幕を終えた後には、嘆く人の横顔のように見えました。
これって、きっと人それぞれに感じ方が違うんだろうなあ・・・
その布をはじめ、セットにも映像が写されて物語が進んでいくのですが、
導入から再びタイトルが示されるところがめちゃくちゃかっこよかったです!
これは、ゲキ×シネやDVDで観たら、とんでもなくかっこいいに違いない、と思いました。
・・・って気が早いですね(笑)。


今回の物語は、「巌窟王」をモチーフにしたもの。
日本を思わせる島国・鳳来(ほうらい)の国から、
隣の大国・果拿(かだ)の国の国教“蛮教”を学ぶために留学した4人の若者。
帰国を間近に控えたある日、その一人、京兼調部は何物かに暗殺されてしまいます。
たまたま親友の殺害の場に居合わせた伊達土門は、
友の命を奪った短刀を手にしていたため、調部殺害の罪に問われます。
共に学んだ友であるはずの稀浮名と音津空麿に裏切られ、無実の罪を背負った土門は、
異国人の罪人が流される監獄島へと幽閉されてしまいました。
二人への復讐を胸に刻みながら、過酷な10年の月日を耐えた土門。
ある時、牢の片隅から聞こえる男の声に従い、ひたすらに地面を掘り続けた土門は、
とうとう地下道へとたどり着きます。
そこで出会ったのは、ずっと聞こえていた声の持ち主。
四肢を鎖で戒められていたその男は、凄まじい殺人の技術を笑いながら行使し・・・
そして、彼らは監獄島から脱出します。
暗く荒んだ牢獄の中で、とてつもなく大きく育った復讐の念を胸に抱いて―――


というような感じで始まった舞台。
衣裳も音楽もセットも素晴らしかったですが、
今回とにかく良かったのが、キャスティングと殺陣!!
新感線の殺陣は、計算されつくした動きと効果音と照明で、
ほんとにドキドキするほどかっこいいのですが、
今回はそれに役柄それぞれの魅力が加わって・・・
殺陣の時間そのものもかなり長かったと思うのですが、全然飽きることがありませんでした。

土門の力強く真っ直ぐな殺陣。
刀衣の滑らかで美しい殺陣。
そして、サジの軽やかでとらえどころのない殺陣。

殺陣だからもちろん戦うわけなのですが、
互いに剣をあわせることで、それぞれの色が更に際立ったように思いました。
この舞台、伝えたいことはきっと沢山あったのだと思うけれど、
この殺陣をみせることこそ、一番の目的だったんじゃないかなあ。
その位力の入った殺陣の連続だったと思います。


伊達土門を演じたのは上川隆也さん。
優秀で爽やかな青年から、復讐を胸に抱くまでの流れに説得力がありました。
でも、鳳来の国へ戻ってきてからの土門は、もの凄く揺らいでいたように思います。
復讐復讐とことあるごとに叫んでいるのだけど、
叫ぶことでその気持ちを繋ぎとめている、というか。
サジに対しても、疑念を抱いたまま彼を親友と呼ぶ。
それも、やはり口に出すことで自分を納得させているように聞こえました。
復讐の鬼になるには、きっと賢すぎて、優しすぎて、周りが見えすぎたのだろうな、と思う。
だからこそ、故郷での様々な再会に、
自分に寄せられる純粋な思いに、
自分が引き起こした復讐の連鎖に、惑い、悩み、揺れうごき続けた。
ああ、そういう意味では、最初のシーンの土門から、一貫した立ち位置だったのかもしれません。
細かい表情とかが見えたら、また違う風に感じたのかもしれませんけどね。


そんな土門とは対照的に、ぶれの全くなかったのが、堺雅人さん演じたサジと名乗る男。
堺さんというと、私の中で最初にきちんと認識されたのが、
何かの雑誌の高橋洋さんのインタビューで、
大学の劇団の同期で今も役者をやっているのが、自分と堺さんだけ、と言っていたのを読んだ時(え)。
で、その後「篤姫」や「はちみつとクローバー」や「アフタースクール」や「壬生義士伝」を見て、
なんとも味のある笑顔をする人だなあ、と思っていたのですが・・・
いやー、あの笑顔、しっかり3階席まで届きましたよ。
ほんと、凄い破壊力(笑)。
でもって、思っていた以上に舞台役者さんで、ちょっと嬉しくなっちゃいましたv

殺陣は殆ど経験がない、とプログラムで語ってらして、
確かに動き的にはもしかしたらぎこちなさがあったのかもしれませんが、
それを補って余りある"サジ"としての動きと表情だったと思います。
人を殺すときも、何かを企む時も、"友"として土門と向き合う時も、常に笑顔のサジ。
その笑顔の下に隠された彼の復讐心。
最後の最後まで隠されていたその想いは、たぶん最初から伏線としてあって、最後まで全くぶれなかった。
それが凄く魅力的でした。


早乙女太一くん演じる刀衣は、サジと同じ一族の出身。
けれど、サジにその一族を滅ぼされ、行き倒れていたところ(だよね?)を美古都に救われ、
その後彼女を守ることに命をかけている青年、という役柄。
見た直後にもちょっと叫びましたが、とにかく動きが素晴らしい!
TVで見るのと生で観るのではこんなに違うのかと思ってしまいました。
最初、踊り子の美女として登場したときも、滑らかに舞うなあ、と思いつつもちょっと物足りなかったのですが、
その後のシーンの殺陣が、もうめちゃくちゃ美しかったんです!
かっこいい、というよりも、とにかく美しい!!
華麗とか流麗とか、そういう言葉がぴったりな感じで、本気で見惚れちゃいましたよ。
殺陣のあと拍手が起こりましたが、これは当然、と思っちゃった。
2幕後半のサジとの戦いのシーンも、二人とも力強さというよりも技巧的な太刀筋なので、
やはり舞を見ているような気持ちになりました。

で、これも直後に叫びましたが、この子、いい声してますねー。
TVでは普通に喋ってるのを見たことがあるきりだったので、
舞台の上で響く声が、甘さは少ないのに色気はある感じで、
サジの笑顔と同じように、無表情が基本形(笑)な刀衣とのギャップに、
ちょっとよろめいてしまいました(え)。
演技そのものがどうなのかはなんともいえませんが、
この、舞台の上での雰囲気というかオーラは、やっぱり凄いなあ、と思いました。

それにしても、このサジと刀衣の一族、そして彼らの設定って、
ちょっと「デルフィニア戦記」のファロット一族に通じるものがあると思ったのは私だけかな・・・?(笑)


京兼美古都役は稲森いずみさん。
「篤姫」の滝山が凄い好きだったんですよねーv
で、今回の美古都さまも、素敵でした。
声の感じとか台詞の言い方が、いまいち私好みでなかったのが残念ですが、
でも、美しくてたおやかな"普通の女性"である美古都が、
降り注ぐ悲劇と明らかになる凄惨な事実の果てに、
哀しいほどの強さを手に入れていく様を、丁寧に演じてらっしゃいました。
最後の台詞とか、「メタル・マクベス」のグレコに通じるものがある感じで、
見終わってからちょっと呆然としてしまうくらいの迫力と雰囲気がありました。
台詞そのものも「この国を―――」で終わっているところが意味深でいいなあ、と(笑)。


ペナン役は高田聖子さん。
笑いもしっかりとるけど、魅せるところではしっかり魅せ、泣かせるところはきちんと泣かせるところがさすが!
蛮教発祥の国の王女で、監獄島に幽閉されているところを土門に助けられ、
その後一途に土門を思い続ける女性。
母国語(?)で土門とやり取りするシーンは、上川さんも楽しそうでした(え)。
で、再登場では鳳来語を覚えてるのですが、それが方言だの古語だのまじりまくりで(笑)。
素晴らしい歌声と脱ぎっぷり(え)も披露してくださいましたv


橋本じゅんさんは、稀道活役。
黒幕ではなく、悪役ですな。
しかも、詰めが甘くて憎めないタイプの悪役(笑)。
凄味をきかせるところはシリアスに、でも基本笑いをとってらっしゃいました。
客席と掛け合いするシーンもあって、
3階だとちょっと遠くて疎外感だなあ、と思っていたら、
「2階3階口パクするな!!」としっかりチェックが入りました。さすがです(笑)。

じゅんさんの息子・稀浮名役の山内圭哉さんと、音津空麿役の粟根まことさんも、
それぞれ個性的な役柄だったのですが、なんとなーく印象が薄くてちょっと残念。
むしろ、浮名の妻・鹿女役の村木よし子さんが強烈でした(笑)。
突拍子もないことをやっているんだけど、根底にちゃんと旦那への愛情があって、
きちんと鹿女として生きて死んでいっていました。
彼女の死が、美古都の転機の一つになっているのも納得な熱演だったと思います。


で、全ての黒幕・・・なはずの京兼惜春役は千葉哲也さん。
「牡丹燈籠」で源次郎をやっていた方ですね。
プログラム読むまで全然気づきませんでした・・・だって全く雰囲気が違うのですもの!
結構早い時期からこの人が全部仕組んでるんだろうなあ、と解かっちゃったのが残念だなあ。
だって、出てきた瞬間から、かなり胡散臭かったですよね?(え)
山本カナコさん演じる丹色への態度とか、うわ!怪しい〜と(笑)。
でもって、黒幕というには、この方も詰めが甘いなあ、と思っちゃった。
実の息子を殺し、娘を政治の道具につかう冷淡さのようなものがもっと欲しかったかも。
そういう意味では、右近健一さんの大王は、サジと同じくらい徹底した感じがあったかも。
「朧〜」の大王と同じくらい好きでしたv


うーん、思い返してみると、やっぱりもう一捻り欲しかったかなあ。
読み返して、残念、っていう感想が多くて我ながらちょっとびっくり。
だって、本当に楽しめた舞台だったので。
新感線へは、どうしても期待が大きくなっちゃうので、
満足するためのハードルが凄く高いのかもしれません。
とりあえず、東京公演の終わり間際に1階席後方ですが、もう1回観劇する予定なので、
今回見切れなかった役者さんの表情や花道の演技も、しっかり見てこようと思います。
そうすると、あの仏像への印象も、また変わってくるかもしれませんね。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
09/10/17 「蛮幽鬼」復讐心という監獄からの解放
{/book/}→{/tv/} 小学生の時に少年少女版の「岩窟王」を読んだのだが結末が思い出せなかった。内野聖陽主演の文学座での「モンテ・クリスト伯」をTVの録画で観て、救いのある結末がわかって安堵したものだ。さて、劇団☆新感線「蛮幽鬼」はどんなだったか。 17日新橋演舞場で「蛮幽鬼」夜の部を観た時の簡単な記事はこちら 【蛮幽鬼】中島かずき作 あらすじと主な配役を書き出してみよう。 鳳来国の伊達土門(上川隆也)は海を渡って留学。帰国直前に親友・京兼調部が殺され、他の仲間び稀浮名(山内圭哉)・音津... ...続きを見る
ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記
2009/10/22 22:19

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
久しぶりのいのうえ歌舞伎で中島さんの新作だから
見る側の期待がものすごく大きくなっちって
普通に面白い、程度では物足りなくなっちゃうんでしょうね。
私はゲキシネ待ちですが、感想を読んでとても楽しみになりました。
二度目の感想もお待ちしています。

「デルフィニア戦記」もお読みでしたか^^
みずたましまうま
2009/10/18 07:57
みずたましまうまさん、コメントありがとうございます!
いのうえ歌舞伎って、「吉原御免状」も、
「朧の森に棲む鬼」も「IZO」も
凄味の感じられる大好きなお芝居だったので、
やっぱり期待が大きくなっちゃうんですよねー。
もちろん、とっても楽しめたのですが、
もう一声!って思ってしまうのです(笑)。

「デルフィニア戦記」、読んでますよー!
というか、みずたましまうまさんも読まれてたんですね。
いつかお会いして、舞台と本のお話ができるといいなあ。
恭穂
2009/10/18 21:29
>新感線へは、どうしても期待が大きくなっちゃうので、満足するためのハードルが凄く高いのかもしれません。......確かに期待しすぎると後でつらかったりすることがありますよね。最近の私はあまり期待しすぎないようになりました(^^ゞ
復讐心に支配されていることを「監獄」と表現した中島かずきの極め台詞に唸りました。復讐心→復讐神であり、ロビーの像はそれかもしれないと思い当たります。
復讐からの解放というテーマを今年は野田秀樹の「パイパー」や井上ひさし×蜷川幸雄の「ムサシ」にも感じています。今の時代の反映かと思えます。
ゲキ×シネ版でキャストのアップを堪能できるのを楽しみにしるところです。ええ、待ちますとも!

ぴかちゅう
2009/10/22 22:35
ぴかちゅうさん、こんばんは。
復讐心に支配されていることが監獄・・・
その深さまで、私はたどり着けませんでしたが、
なるほどなあ、と納得です!
次に見るときには、そのキーワードも大事に、
観劇したいと思います。
映像化するとまたかっこよさの増す舞台だと思うので、
ゲキ×シネ化、私も今から楽しみだったりします。
「パイパー」も「ムサシ」も、アプローチの仕方は違いますが、
確かに共通するテーマかもしれませんね。
うーん、どちらもまた見てみたい舞台です。
恭穂
2009/10/24 19:26
恭穂さま
土門の揺らぎの部分、ほんとに同感です。
「復讐だ」「サジは親友」・・・叫べば叫ぶほど、
自分に言い聞かせているように聞こえましたね。
そこがまた迷いがないというか人間味が感じられない
サジとの対比で活きていましたが。

じゅんさん、「2階3階〜」は大阪でも大ウケでした。
劇場全員味方につけるようなじゅんさんの持っていき方、
ホレボレしてしまいます(・・って贔屓目入ってます?)

ゲキ×シネ、楽しみですね。
スキップ
2009/11/23 06:36
スキップさん、こんばんは!
土門とサジの対比は、本当に鮮やかでしたね。
もちろん共通点もあるのですが、
土門があれだけ揺れていたからこそ、
サジの異様さ(=魅力?)がさらに際立ったように思います。

じゅんさんの場の盛り上げ方、私も惚れ惚れしていますよー。
ほんとに凄い役者さんですね。
来年の「ピーターパン」のフック船長、続投とか。
今年は観なかったので、来年こそは見に行ってみようと思いますv
恭穂
2009/11/23 23:38

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