瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2011/12/24 21:12   >>

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黄金という元素を思うとき、何故か闇い光を思い浮かべてしまいます。
それは、漆に装飾された金箔や、錬金術、ギリシャ神話のミダス王や金の林檎、
黄金にまつわる戦乱の歴史などが連想されるからなのかもしれません。
そして、ただ輝くだけでなく、背後に闇を抱えた光であるからこそ、
人は黄金を求め続けるのかもしれない、とも思います。

このミュージカルで、彼女たちが探し、手に入れた"GOLD"も、
彼女たちに深い陰影を刻んでいるように思いました。


「GOLD 〜カミーユとロダン〜」

2011.12.17 マチネ シアタークリエ 15列20番台

作曲:フランク・ワイルドホーン
脚本/作詞:ナン・ナイトン
訳詞:森雪之丞
上演台本/演出:白井晃
出演:新妻聖子、石丸幹二、伊礼彼方、根岸季衣、西岡徳馬、
    穴田有里、池谷京子、大泰司桃子、小暮キヨタカ、清水彩花、西川大貴、平田小百合、森山純、横田裕一


舞台は19世紀後半のフランス。
女性の芸術家は認められず、強い偏見さえ持たれていたこの時代に、
自らの芸術を追い求め続けた女性―――カミーユ・クローデル(新妻聖子)。
誰に教わったわけでもなく、少女の頃から石が秘めた思いや形を感じ取り、
それを形作る天与の才を持った彼女は、
父(西岡徳馬)や弟(伊礼彼方)に支えられ、母(根岸季衣)の反対を押し切って、パリに出ます。
そこで出合ったのは、既に彫刻家として名声を得ていたオーギュスト・ロダン(石丸幹二)。
感情ではなく、そこに在る肉体の瞬間の真実を捕らえ、石に写し取ろうとするロダンと、
肉体を越えた感情を刻もうとするカミーユ。
初対面で激しく対立した二人は、けれどカミーユの彫刻の才を認めたロダンが、
彼女を弟子として受け入れることで、いつしか互いをかけがえのない存在として認め合うことになります。
共に在ることで、芸術に対する互いの感性を研ぎ澄ますことが出来る創作上のパートナー。
そして、創作という枠を超え、一人の男と女として愛し合う二人―――
けれど、ロダンには長年連れ添った内縁の妻と子どもがおり、
また、ロダンの下で開化したカミーユの才能は、
歴史と因習に凝り固まったパリの美術協会で認められることはありませんでした。
芸術家としても、女としても、未来を閉ざされたカミーユ。
それでも、自分の芸術を追い求める彼女は、一つの悲劇的な出来事をきっかけにロダンと訣別し―――


というお話。
私は芸術にはとんと疎くて、ロダンやカミーユ・クローデルの名前は知っていても、
作品として思い浮ぶのは「考える人」くらいなのですが(笑)、
この舞台に描かれた二人の天才の人生の交わりに、なんだかもう圧倒されるばかりでした。


カミーユを演じた新妻聖子さん。
まさに当たり役!という感じ。
この前にクリエで見た「ピアフ」の大竹しのぶさんといい、
自らを破壊するくらいの才能を持った女性の熱情を前にすると、
憧憬や羨望、嫉妬、賞賛、嫌悪、安堵―――様々な感情が沸き起こって、
自分の奥底にある感情を素手で掴まれるような気持ちになります。
新妻さんのカミーユにも、ピアフと同じように共感することはできませんでした。
でも、ピアフの時よりもずっと、"どうして"という問いが思い浮んだ。

どうして、彼女はロダンとであってしまったのだろう。
どうして、彼女はロダンと完全に訣別することができなかったんだろう。
どうして、彼女はこの時代に生まれてしまったんだろう。

たくさんの問いがピークに達したのは、
彼女とロダンがまるで魂から寄り添うように抱き合った雨の夜ではなく、
ロダンとの訣別のシーンでの激しい歌声でもなく、
惑乱した彼女が、ロダンの下にある自分の作品を壊す瞬間でもなく、
弟のポールが語った、彼女の晩年を聞いたときでした。
精神に混乱をきたし、精神病院に入れられた彼女が、天に召されるまでの30年間、
全く彫刻を行うことも、家族の下へ帰ることもなかった、という事実。
30年―――
多分、彼女が自らの中の芸術を形作ろうとした時間とほぼ同じだけの長さの時間。
その長い時に、何故か私のほうが打ちのめされてしまいました。
彼女自身を蝕み、彼女の人生を壊したのは、母でも、ロダンでも、美術協会でもなく、
彼女が持つ天与の才そものだった―――

彼女がロダンと共に探し当てた、自らの中に在る才能―――GOLD。
彼女がロダンと共に育んだ、自らの中で燃え盛る愛情―――GOLD。
いずれの黄金も、光と陰とを彼女にもたらした。
その光と陰は、彼女の人生に深い陰翳を刻み込んだ。

そのことが、幸せだったのかどうかは私にはわかりません。
彫刻の才能がなければ、彼女はもっと穏やかな人生を歩んだかもしれない。
ロダンとカミーユの間に芸術がなければ、二人は共に生きることが出来たのかもしれない。
けれど、もしそんなGOLDを持たない人生を提示されたとしても、
彼女はきっと迷わずGOLDのある人生を選んだ。
最後、カミーユが歌い上げる♪GOLD を聴いていて、そう確信し、そして何故だか涙を止めることができませんでした。

今回も新妻さんの歌声は素晴らしかったですv
あれだけの歌をあれだけのテンションで歌いきるって・・・彼女の声帯はまさにGOLDに違いない!(笑)
てらいのない少女時代も良かったなあ。
いつか新妻さんのエリザベートが観てみたい!と心底思いました。
その一方で、とにかく幸せ一杯!な役柄も見てみたいなあ、と思ってみたり(え)。


石丸幹二さんのロダンは、とにかく芸術家としての業と無自覚な身勝手さが素晴らしかったです!
「コースト・オブ・ユートピア」「十二夜」でちょこっと歌声は聴いていましたが、
え「エリザベート」を見逃したので、ミュージカルを拝見するのは初めてだったりします。
いやー、ほんとにいい声ですねv
そして、歌声の中にちゃんとドラマがある!
2幕冒頭のソロも良かったですが、個人的にはカミーユと二人で歌うシーンが好きだったかな。
愛情に溢れるシーンも、激しく対立しあうシーンも、大迫力でしたし、
カミーユが彼のミューズであるということが、すんなり納得できてしまう感じでした。
なんとも煮え切らない、でもって芸術を前にいくらでも身勝手になれるロダン。
男としてはどうしようもないけれど、彼が創り出す芸術が、多分周囲に全てを許させてしまったんだろうな、とも思う。
カミーユとローズへの思いも、彼の中では明確に異なっていたんだろうな。


西岡さん演じるカミーユの父は、ほんとに素敵なお父さんv
カミーユの才能を見出し、信じ、育み―――常に彼女の味方であろうとした父。
西岡さんの演じる役で、ここまで癒しを感じたのは初めてでした(笑)。
お父さんが作った雪の日の歌、素敵だったなあ・・・


根岸さん演じるカミーユの母は、この物語の中では一番共感しやすく、
でも、その反面思いっきり反発したくなるお母さん像でした。
カミーユが出て行った後、お母さんが歌う歌は、お母さん自身の凝り固まった常識と、
カミーユへの愛情が混在していて、聞いていてとても切なかったです。
わりと朴訥とした歌声なので、余計にそう思ったのかも。


弟ポールは伊礼彼方くん。
「眠れぬ雪獅子」に引き続き、詩人な役柄です(笑)。
子どものころから闊達な姉に引きずりまわされ、でもそんな姉をとても敬愛している可愛い弟でしたv
姉の影響で詩人や劇作家としても活躍し、
一方で母の期待に応えて外交官にもなったポール。
彼の中でも、もの凄い葛藤があったんだろうなあ、と、
ポールが歌う♪天国の園 を聴いていて思いました。
自由奔放で才能に溢れ、だからこそ破滅への道をひた走る姉を前に、
彼が至った境地が銀色の光に溢れる場所だったのかと思うと、
優しい歌声なのに、何故か容赦のないものを感じてしまって、ちょっと怖くなりました。
人が生きるにはやっぱり影も必要なんじゃないかなあ、とちょっと思ったり・・・



この舞台、美術もとても素敵でした。
上手奥に据えられたロダンの「地獄の門」。
下手奥には、天井まで届く、大樹のような、流れる川の様な、複雑なオブジェ。
と思ったら、それはロダンやカミーユの作品がたくみに隠されていて、
光の加減で様々な表情を見せてくれました。
また、台に乗ったロダンやカミーユの作品が様々に配置されて、
それを人の手で動かしていくことで、空間を形作っていました。
そして、光。
このミュージカルでの光は、常に陰を伴っていました。
舞台上の全てに光があたることは瞬間もなくて、
どんなに明るいシーンでも、舞台のどこかに必ず暗い場所があった。

彫刻は、陰影の芸術だと何かで読んだ記憶があります。
光のあたる加減で、様々な表情を見せる彫刻。
滑らかな石に刻まれる、肉体の美しさと醜さ、精神の深さと業。
自らの全てを刻み込んだカミーユの彫刻を、
この目で見てみたいという気持ちと、見るのが怖いという気持ちが私の中にあります。
いつか、カミーユの刻み込んだ人の想いを前する瞬間が来たとき、
私は何を思い、何を受け取るのだろうか―――

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