瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2013/11/13 21:37   >>

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ここ数日で、一気に気温が下がりましたねー。
数日前から浅間も真っ白になっていましたが、今朝は赤城山のてっぺんもちょこっと白くなっていました。
やばい、まだスタッドレスに変えてないや(汗)。
いろいろ思い悩むことがあったり、日々の仕事に追われたりしていますが、
時間はちゃくちゃくと過ぎていて・・・今年もあと1ヶ月ちょっとなことに、ちょっと動揺しております(笑)。
明日はどうなるかわからない、ので(え)、先週末の観劇記録を書いちゃおうかな。
うーん、それにしても寒い!(暖房入れなさい)


いのうえシェイクスピア
「鉈切り丸」

2013.11.9 ソワレ シアターオーブ 1階18列40番台

脚本:青木豪
演出:いのうえひでのり
音楽:岩代太郎
出演:森田剛、成海璃子、秋山菜津子、渡辺いっけい、千葉哲也、山内圭哉、木村了、須賀健太、宮地雅子、
    麻実れい、若村麻由美、生瀬勝久 ほか


というわけで、久々の劇団☆新感線、観てまいりました!
今回は脚本が青木さん、主演が森田くん、という「IZO」タッグであること、
シェイクスピアの「リチャード三世」をモチーフにした物語であること、ということで、とても楽しみにしておりました。

で、見終わってまず思ったのが、これはまさに「リチャード三世」だったなあ、ということ。
物語は、時代を源平合戦の後にうつした翻案物。
このあたりの歴史の知識は曖昧な私としては、
どこまでが史実でどこからが脚本家の"嘘"なのかは判然としませんでしたが、
「リチャード三世」の複雑な人間関係や物語が、驚くほどぴたりと嵌っていたように思います。

リチャード三世にあたるのは、源頼朝の異母弟・源範頼(森田剛)。
顔の痣、背中の瘤、右足の麻痺―――幾つものハンディを持ち、
けれどそれらを補って余りある頭脳と、そして努力をしてきた男。
兄・頼朝(生瀬勝久)の忠実なブレーンとして彼に仕えながら、
けれど幾重にもめぐらせた周到な策略と巧みな言葉で弟を、兄を、戦友を陥れ、
征夷大将軍の位まで上り詰めた男。
邪魔なもの全てを切り捨て、欲しいものを次々と手にいれ、
けれど彼の背負う深く暗い闇の穴は決して埋まることなく、常に孤独であった男―――
森田くん演じる範頼の在り方は―――その切望、その孤独、その絶望は、まさにリチャード三世に通じていました。

森田くんというと、あのちょっと舌足らずに聞こえる甘い声と、鋭い佇まいのギャップが結構好きなのですが、
今回は、その声の魅力全開だったように思います。
兄・頼朝に対するときの誠実でどこか甘えのある声。
弟・義経(須賀健太)に対する時の静かで優しさに溢れた声。
巴御前(成海璃子)を追い詰めたときの、嗜虐の喜びに染まった声。
頼朝の右腕である梶原景時(渡辺いっけい)に囁くときの、冷たく突き放したような声。
独白の時の暗い場所から響くような声。
そして、最後の瞬間の、高く、強く、けれど儚く惨めな翼を求める声―――

後方のサイド席で細かな表情が見えなかったことが、更にその声の力を感じさせてくれたように思います。
印象的なシーンは幾つかあったけれど、
個人的には最初の登場シーンが好きだったなあ。
降りしきる細かな雨の中、照明の加減で彼の周りに虹のような光があって。
でも、その光の中に居る赤と黒を纏った彼は、その光すら飲み込んでしまうような暗さがあったように思います。
その暗さは、彼が上り詰めれば上り詰めるほど深く強く彼を絡みとっていくようにも感じました。

物語の中、範頼は生まれつき暗い穴の中にいると評されます。
体のハンディ。
母に捨てられ―――殺されかけた過去。
彼の責任ではないそのマイナスに、彼はマイナスを掛け続けた。
プラスを―――愛情や友情や・・・そんな暖かな感情を掛けても、マイナスはマイナスのまま。
それならば、全ての悪を、毒を、マイナスの感情を掛け続けることで、
彼は自分のいる場所をプラスに変えようとしていたのではないか。
でも、マイナスの感情は自身を蝕み苛むマイナスでしかありえなくて―――

最後まで全てを否定した彼は、最後まで全てに否定され、拒絶されてその一生を終えました。
空を駆け巡る鳶の姿に思いを馳せ、語りかけ、そして最後の最後にその翼を望みながら、
冷たい雨のなか泥水に塗れるようにして息絶えた彼。
無造作に手足を持たれて運ばれていく彼の行く先には、
彼が背負っていたものよりももっと深く、もっと暗い闇があるようで・・・
その光景を見た瞬間、脳裏に浮かんだのは「IZO」のラストシーンでした。
以蔵の行く先も同じ闇だったけれど、でも、その先には光り溢れる場所があった。
でも、範頼の行く先にはきっとその闇しかなくて―――
全然違う物語なのに、その対比がなんだかものすごく胸に迫って。
そして、カーテンコールの光の中、全ての人に迎えられて出てきた森田くん―――範頼は、
まだ確かにその闇を纏っていることが感じられて。
何故かカーテンコールで一人涙してしまったのでした。


そんなこんなで森田くんのリチャード三世もとい範頼にかなり気持ちを持っていかれたのですが、
もうお一人、その素晴らしい存在感に圧倒された方がおりまして。
建礼門院役の麻実れいさん!
たぶん、マーガレットにあたる役柄で、生霊として頼朝たちの前に現れるのですが、
とにかくとんでもなくお美しくて、しかもめちゃくちゃ妖しかった!!(笑)
衣裳とか、登場の仕方とか、冷静に見ちゃうと結構笑えちゃう感じなのですが(すみません)、
この舞台の上では、建礼門院さまが出てくるだけで、ぱっと雰囲気が変わるの。
でもって、ただ呪いを吐き続けるだけじゃなくて、平家の生き残りとしての無念や苦悩、
生霊として彷徨っている自分自身への嫌悪、
その幼名「鉈切り丸」の意味を知らない範頼に対する嘲笑と哀れみ、
そういういろんな感情が真っ白な光の中にしっかりと影を落としている感じでした。
そういえば、原案の「リチャード三世」でも、マーガレットが一番好きだったな、私(笑)。

リチャード三世の母、ヨーク公爵夫人にあたるのが、秋山さん演じるイト。
源義朝に愛された娼婦で、義朝の子どもを身ごもったことで、その苦界から出ることを夢見、
けれど、その願いはかなえられないまま、生きてきた女。
自分が掬い上げられなかったのは、醜く生まれた子どものせいだと思い、
その子を鉈で何度も殺そうとしても果たせず、子どもを捨てて生きてきた女。
うーん、個人的にイトの造形はこの物語の中で一番理解できない部分だったりします。
だって、鉈で殺そうとしたけど寝返り打って殺せなかったから鉈切り丸という名前にしたとか、
えええ?って感じじゃないですか?
でもって、捨てたはずの息子が、ちゃんと義朝の息子として源一門に入ってるのって何故??とか思っちゃって・・・
まあ、この辺りって、たぶん私の個人的な思い入れが影響しちゃってるんですが。
なんというか、ヨーク公爵夫人には、リチャード三世に対して憎しみや怒りだけでなく、愛情もあって欲しいと思うのね。
その延長で、イトは鉈切り丸にたいして愛情があったと思いたくなっちゃう。
彼を殺そうとしたのも、怒りの果てとか、彼をなかったことにしよう、という意図よりも、
心中的な意味合いであって欲しいなあ、とか。
でも、母は子どもを殺すことができなくて・・・鉈が当たらなかったのも、その心情の表れで。
そして、最終的に子どもだけでも源家に、と頼み込んだんだったらいいなあ、とか。
でも、そうするとイトの登場の時の台詞と齟齬が出ちゃうんですよね(笑)。
まあ、最後のイトの台詞はかなり深読みできる感じだし、
そこにいたるまでのイトの表情や動き、言葉も、裏の意図があってもいいような感じだったので、
この点については、自分のみたいように見せてもらっちゃおうかな、と思います(笑)。

アンにあたるのは璃子ちゃん演じる巴御前。
凛とした立ち姿や強い視線がとても素敵なのですが、
台詞まわしがTVとまったく変わらなくて、森田くんとは違う意味の舌足らずさが耳についちゃって残念でした。
子どもを楯に無理やり範頼の妻にさせられる巴。
範頼が巴を口説くシーンは、なんというかまさに脅迫といった感じで、
巴はまったく範頼によろめいてないんですよねー。それがちょっと残念(え)。
「平清盛」に出ていたときの雰囲気が結構好きだったのですが、舞台の上だと所作もちょっとぎこちないかな。
彼女はどちらかというと映像向きなのかもですね。

対して所作がとても美しいなあ、と思ったのが、エリザベスにあたる北条政子役の若村さん。
割と軽い造形でがんがん笑いをとってくる生瀬さんの頼朝を尻に敷く強い女性なわけですが、
そこにちゃんと頼朝への愛が見えるところが素敵v
範頼の策略が全て明るみに出た後、歴史を書き換える、と宣言する彼女の言葉に強い決意が感じられて、
歴史というのはこういう風に作られていくのかもしれないなあ、と思ってしまいました。

その歴史を書き留める―――書き換えていくのが山内さん演じる大江広元。
普段は口下手なのに、書きとめた歴史を読むときは非常に流暢で、
しかも頼朝の「もっと簡単にわかりやすく!」という要望に答えてラップで歌っちゃったり、
いきなり歌舞伎の「勧進帳」な感じになっちゃったり、と、
頼朝ともども見事に笑いを取ってらっしゃいました(笑)。
しかもほんとにわかりやすいのが凄い!
その一方で、この人は全部がわかっていたんじゃないかなあ、と思わせる不思議さもありました。
最後、範頼の存在を全て消し去るような"歴史"を範頼に向かって読み上げるその声の冷徹さに、
なんだかちょっとぞっとしてしまいました。

渡辺いっけいさん演じる梶原は、とにかく渋くてかっこよかったですv
というか、最初渡辺さんだってわからなかった(笑)。
遠目で表情は良く見えなかったのだけれど、木村了くん演じる和田に手柄を取られてから後の、
梶原の感情の動きが凄くクリアにこちらに伝わってきて、さすがだなあ、と思いました。
ついていく背中を常に求める、という彼のスタンスの危うさも感じられたり。

義経役の須賀健太くんも頑張ってました!
特別な存在、というよりも等身大の男の子、という感じ。
裏切られ、絶望のまま自害していく様は、なんとも切なかったです。


こうやって思い返してみると、なんというか凄く淡々とした舞台だったなあ、という印象です。
新感線の舞台なので、もちろん照明は素晴らしかったし、
派手な立ち回りもあったし、
範頼が亡霊に囲まれる蓮の花のシーンは美しかったし、
他にも印象的なシーンはたくさんあったし、
観ている最中は全然そんな風には思わなかったんですけどねー。
でも、最終的な感想はやっぱり"淡々としている"になるかな。
でも、この物語は範頼がその穴から出るためにいろんな悪を地道に積み重ねていくものだから、
そういうニュアンスであってるのかもしれないなあ、とも思ってみたり。
とりあえず、この舞台を観て「IZO」と「朧の森に棲む鬼」が観たくなりました。
まあ、そんな時間はないですけどね(笑)。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
恭穂さま
見ごたえのある舞台でしたね。
新感線でシェイクスピアをリライトした作品としては
「メタルマクベス」がとても好きなのですが、
この「鉈切り丸」も「リチャード三世」の世界観を
すごく上手く置き換えていたと思います。
あ、でもこの作品、いのうえシェイクスピアですが
新感線ではないのですよ。
開演前のジューダスとか新幹線の発車音もなかったですよね。

森田剛くんは以前から役者さんとしてとても好きなのですが、
今回また階段上がったな、という感じです。
悪役フェチとしてはたまらないです(笑)。
いわゆる「判官びいき」で義経好きなのですが、「範頼〜♪」
と思っちゃいました。

麻実れいさんの存在感とか、若村麻由美さんの凛とした佇まいとか
女優さんたちの活躍も際立っていたのもうれしかったです。
スキップ
2013/11/26 12:56
スキップさん、こんばんは!
あ、確かに新感線とは書いてないですね。
だからジューダスがかからなかったんですね!
(今更すみません・・・)

森田くん、ほんとにいい役者さんですよねー。
決して派手ではないのですが、ちゃんと花も実もある、というか。
もともと「リチャード三世」は好きなお芝居なのですが、
今回も見事なまでに世界観が嵌っていてびっくりしました。
女優さんたちもかっこよかったですねv

あ、私も「メタルマクベス」大好きです!
恭穂
2013/11/27 21:18

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