瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2014/03/09 19:28   >>

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DLLの最初の方でジルーシャが、大学のお友達との会話の中で、
自分がいかにいろんなものを知らないのかを嘆くシーンがあります。
その中で出てきた一つが、ヘンリー8世。
私も高校生の頃に世界史は途中で挫折しているし、
イギリス王家の知識はこれまで観たシェイクスピアからの薔薇戦争あたりに限られているので、
ヘンリー8世がどんな人物かなんて、DLLの初演を観た頃は全然しらず・・・
今回、この舞台を観てからのDLLだったので、ジルーシャの台詞が妙にリアルに感じられてしまったのでした(笑)。


「9days Queen 〜九日間の女王〜」

2014.3.2 マチネ 赤坂ACTシアター 1階T列10番台

脚本:青木豪
演出:白井晃
音楽:三宅純
出演:堀北真希、成河、江口のりこ、田畑智子、浅利陽介、姜暢雄、愛名ミラ、和泉崇司、青葉市子、
    朴璐美、神保悟志、春海四方、久世星佳、銀粉蝶、田山涼成、上川隆也  ほか


物語の舞台は16世紀のイギリス。
生涯の6人の妻を迎えたヘンリー8世の死後、
彼の豪を背負わされた子どもたちと、その子どもたちを取り巻く大人たち、
そして、王座を巡る彼らの駆け引きの中に引きずりこまれた一人の少女の半生を描いた物語でした。

その少女―――ジェーン・グレイの存在を、私はこの舞台を観るまでまったく知りませんでした。
陰謀の果てに互いを潰しあう貴族や王族。
貴族の横暴のもと、農地―――生きる術も矜持も奪われて蜂起する農民たち。
想像もつかないくらい軽々しく一つの命が奪われる時代の中で、
その奔流に押し流されながら、それでも自分が選んだものに対して哀しいほどに真っ直ぐジェーン。
石の壁を模した沈んだ色合いの舞台の上で、
白い衣裳を纏い、常に思索をしているような不思議な目をした堀北真希ちゃんのジェーンは、
一人の少女の等身大の夢や希望、絶望や諦念を、
そして、選ばされた"女王"という立場を、けれど"選び取った"自分の責任として受け止める真摯さを、
なんともしなやかな綺麗さで見せてくれたように思います。
真希ちゃんと白井さんのペアは「ジャンヌ・ダルク」も観ていて、
あのジャンヌもとても好きだったのですが、
個人的には今回のジェーンの方が好きかなあ、と思います。
派手なエピソードは余りないのだけれど、
エドワード6世との穏やかで優しくて、でもどこか噛み合わない会話も、
キャサリンやメアリー、エリザベスを前に、けれど常に変わらない自分でいた彼女も、
ロジャーと本の話をするときの弾んだ声音やキラキラした目も、
両親に対する敬愛に混じった僅かな嫌悪や諦念も、
ギルフォードに縋る手の細さも、
ブラックバードに語りかける柔らかな声も、
そして、処刑台の上、隠された目で真っ直ぐに世界を見つめる凛とした姿も・・・
基本淡々とした物語の中で、それぞれの登場人物がそれぞれの色を纏いながらその存在を見せていて、
その中で彼女は、その身に纏う白そのもののような無理のない等身大の存在だったように思います。


ジェーンと同じようにさりげなく、けれど強烈な存在感を放っていたのが、
青葉さん演じるブラックバード。
ロンドン塔に棲むカラス、という役柄で、台詞はなくて歌だけ(それもスキャットが多い)なのですが、
その歌声が舞台の上から劇場を満たすと、時空をすっと飛び越えるような不思議な雰囲気がありました。
ジェーンが自分を投影して語りかけ、
ロジャーが同じ歴史の傍観者として語りかけるブラックバード。
でも、そんな想いとは次元の違うところにいるような気がしました。
音楽も歌声もとても綺麗だったので、音源欲しいなあ、と思ったのですが、
劇場から出るときは人の流れを横切ることができず、劇場限定のCDは買えませんでした(涙)。
とりあえず、そのうち青葉さんご本人のCDを探してみようと思います。


上川さんが演じたロジャーは、ジェーンたちの家庭教師。
本や言語に精通した賢く、豊かな感性を持つジェーンを、
生徒としてではなく、知識をもって世界に向かう同志としてみているような雰囲気でした。
彼女を助けようと奔走し、けれど彼女の決意の前に立ち去ることしかできなかったロジャー。
本当に、彼は最初から最後まで傍観者でしかありえなかったんだろうなあ。
それを自分でも分かっていて、でもあがかずには入られなかったロジャーが切なかったです。


ジェーンの夫ギルフォード役は成河くん。
前半殆ど出てこなくてびっくりし、でてきたと思ったらちょっと天然な新妻に逆ギレして出て行き、
帰ってきたと思ったら、両親を亡くして街娼になろうとした少女を連れ帰ってきて妻に託したりと、
なんなんだこの人は???と思ってしまいましたが(笑)、
ジェーンが女王に指名されたところからの、快進撃は凄かったです。
観ているときは、ジェーンといつ心を通わせたのか分からないなー、と思ったのですが、
後から思い返してみると、ジェーンが女王になることを選び取ったことで、
彼自身も自分が行くべき道を選び、そしてその道を邁進したんだなあ、と思ってみたり。
父から与えられるものを享受して生きてきた彼が、
自身で選び取った最初で最後のものが、ジェーンだったんだろうな、と思います。
だからかな。
王座の上で怯えるジェーンを抱きしめる姿が、恐怖と同じくらいの喜びに溢れているように見えました。
もっと彼自身の物語も観てみたかったけど、これはジェーンの物語だからね。


エドワード王は浅利くん。
ドラマでしか観たことなかったのですが、舞台にも出られていたのですね。
少年王、というにはちょっと大人な雰囲気でしたが、
無理やり大人にならざるを得なかった少年、という意味では合っているのかな。
ジェーンに対する想いが、ほのかな恋心というだけではなく、
縋りつくような切実さがあって、ちょっと切なかったです。
彼が、本当に遺言に記したのはなんだったのかなあ・・・
舞台の上で語られたのは全て憶測で、だからそれがちょっと気になっています。


エドワードを育てたヘンリー8世の最後の妻、キャサリンは朴璐美さん。
私の中ではこの方こそがエドワードなので、先にキャストを確認しちゃったせいで、
彼女が「エドワード!」と呼びかけるたびにちょっと混乱しました(笑)。
いえ、声の感じはもちろん全然違うし、というか凄く綺麗で堂々とした立ち姿で、
でもって権力に翻弄されつつも真っ当に前に進んでいく強さとか、
愛した男の裏切りの前に哀しい笑顔を浮かべるしかできない弱さやプライドの高さが感じられて、
個人的には凄く好きな役柄でした。
ジェーンもそうなのだけれど、この人はきっと賢いが故に悲劇的だったのかな、と思う。
もっと愚かであったなら、もっと穏やかに生きられたのかもしれないな・・・


キャサリンの元恋人で、ヘンリー8世の死後彼女と結婚したトマスは姜さん。
久々に拝見しましたが・・・恰幅が良くなりましたねー。
堂々とした優男っぷり(褒めてます)が素晴らしくトマスでした。
自分の欲しいものや優先順位がものすごくはっきりしていて、
キャサリンもエリザベスも結果的には利用したことになるのだけれど、
彼が王座を手にして本当にしたかったことはなんなのかなあ、と思ってしまいました。


この物語の悪役(笑)、ジョン・ダドリー役は田山さん。
いやー、見事な裏ボスっぷりでした!
かもし出す雰囲気がめちゃくちゃ悪役!
しかも、それがあからさまじゃなくて、凄く静かな怖さなんですよね。
まさに狡猾、という感じ。
ダドリーの息子ギルフォードとの結婚を知らされたジェーンが恐怖に慄くのも納得です。
彼女がこの男と対峙するためには、女王でなくてはならなかったんだろうなあ。


メアリー役は田畑さん。
舞台で拝見するのは初めてですが、その生い立ちゆえにメアリーの中に蓄積した怒りや恐怖が、
その言葉の端々に感じられるように思いました。
彼女自身が手にしているものは、たぶん彼女が心のそこから欲しいと思っているものではなくて、
そんな彼女にとって、学問という自分の欲しいものを選び取っているようなジェーンは、
きっととても羨ましくて眩しい存在だったんだろうなあ、と思います。
最後に彼女がジェーンの恩赦の条件として告げたことは、
"欲しいものを持っている"彼女から、何かを奪い取りたかったのかな、と思う。
奪い取って、欲しくはないものを与えて、自分と同じ場所に彼女を連れてきたかったのかな、と。
それが、なんだかとても哀しかったです。


エリザベス役は江口さん。
映像では見たことがあるのかもしれませんが、あまり意識していなかったので(すみません)、
今回が初見、という感じ。
最初は、その一本調子な台詞回しや能面のように変わらない表情に戸惑ったのですが、
終盤、彼女とジェーンとの会話のシーンで、なんだか全部に納得がいってしまったように思いました。
自分を取り巻く理不尽な状況に、
メアリーは距離を置いて外から眺めることで心の眼を閉じ、
エリザベスは全てを受け入れて受け流すことでやはり心の眼を閉じていたんだなあ、と。
「何も持たなくても生き続ける」
この台詞を、やっぱり感情の乏しい声音で発するエリザベスを観た時、
理屈でなく、ああ、この人が大英帝国の基礎を創り上げたんだなあ、と思った。
そして、そのさらに礎として、キャサリンが、メアリーが、ジェーンがいるんだなあ、って。
冷静で、頑なで、でも、自分の中に揺るがないものを持っている―――その孤独な強さ。
見終わって、彼女の在り方が一番印象に残りました。


そんな感じで、タイトルロールはジェーンですが、
個人的にはこの時代を生きた一人一人の群像劇的な受け止め方になりました。
淡々とした舞台だったけど、全然眠くならなかったし、凄く面白かった。
見ながら、びっけさんの「王国の子」が思い浮んで仕方ありませんでしたが(笑)。
あのお話、まるまるこの時代に重なってるよね?
あ、あのキャラってきっとこの役だ!とか考えて、一人でわくわくしてました。
ちょっとこれから読み返してみようかと思います。

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