瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2015/02/04 21:50   >>

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その物語は、夜明け前の闇から始まりました。
神々が蠢く薄明から、人々の生きる黎明へ―――
徐々に太陽の光が満ちていくその世界は、
けれど、その光が創る陰の世界でもありました。


「ボンベイドリームス」

2015.2.1 マチネ 国際フォーラム ホールC 1階10列20番台
2015.2.1 ソワレ 国際フォーラム ホールC 2回12列10番台

出演:浦井健治、すみれ、加藤和樹、朝海ひかる、久野綾希子、安崎求、阿部裕、川久保拓司、
    ひのあらた、小松拓也、五大輝一、高谷あゆみ、、原田薫、高田亜矢子、碓井菜央、唐澤裕香、
    中川和泉、伊藤今人、梅沢裕介、鶴野輝一、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也


インドのムンバイ(かつてのボンベイ)を拠点に制作される人気娯楽映画、ボリウッド。
その世界を舞台にしたこの物語は、取り壊しの迫るスラムの一画から始まります。
そこに暮らすアカーシュ(浦井健治)は、ボリウッドの映画スターを目指す青年。
5年前、住んでいたスラムが撤去されたときに両親をなくしたアカーシュは、
今のスラムで、尊敬する長老のシャンティ(久野綾希子)や、
ヒジュラである親友のスウィーティ(川久保拓司)たち仲間と共に暮らしていました。
ある時、ひょんなことからボリウッドの偉大な監督の目に留まった彼は、
人気女優ラニ(朝海ひかる)の相手役に抜擢され、映画デビューを果たします。
助監督を務める監督の娘プリヤ(すみれ)に心惹かれ、彼女を口説こうとするアカーシュ。
けれど、彼女にはヴィクラムという弁護士の婚約者がいました。
しかも、そのヴィクラムは、スラムの撤去に大きく関わる人物だったのです。
映画の公開と共に一気にスターへの道を駆け上がるアカーシュ。
しかし、彼に突きつけられたのは、この国に未だはびこる差別で―――
スラムの人々との間にできた溝。
互いに心惹かれながら、決して自分の手を取らないプリヤ。
スラム撤去に繋がる陰謀。
その中で、最後にアカーシュが選んだものは―――

という感じの物語。

私自身、インド映画は見たことがなく、
ポスターの色合いのあまりの鮮やかさにちょっと気後れし、
「スラム街とインド映画を歌って、踊って、駆け巡る、ハートもときめく、マサラ・ミュージカル!」
という煽り文句や、事前に公開されたカーテンコールの振り付け指導画像にちょっと腰が引け、
大丈夫かな、私・・・とちょっと不安な状態での観劇だったのですが―――

いやこれ煽り文句のポイント全然違ってるから!!!

もちろん、衣裳の色合いの鮮やかさはインドだし、
映画シーンのキラキラ具合は、私が未だかつて経験したことのないキラキラさだし、
歌うし踊るし駆け回ってるしときめきもしたから、決して間違いではないのだけど、
でも、ここに描かれているのは、そんな軽い雰囲気のものでは全然なかった。

インドという、未だカーストの名残が強く、貧富の差も多きく、
けれど爆発的なエネルギーに満ちた場所で生きる人たち。
その一人一人の生き様を―――光への向き合い方を描いた群像劇。
それがこのミュージカルだと、観終わった後強く思いました。

闇の中から、まっすぐに光に向かって歩いていく者。
光に背を向け、闇へと堕ちていく者。
光を嘲笑うことで強さを手に入れる者。
光の中に在りながら、闇の気配に怯える者。
闇の中でも、自分の中の光を信じ続ける者。
光と闇の狭間で、生き続ける者―――

それぞれの生き方を、
それぞれの希求を、
それぞれの喪失を、
そして、それぞれの守るべきものを、
奔流のような色彩と、美しく不思議な響きを持つメロディが、強く鮮やかに描き出していた。


それを最も強く感じたのは、浦井くん演じるアカーシュと、加藤くん演じるヴィクラムの対比でしょうか。


アカーシュは、空を意味する名前の通り、明るくて大らかな愛されキャラ。
日々の生活は楽ではなくても、仲間たちと歌い、踊り、未来を夢見る。
そのキラキラした笑顔は本当に楽しそうで、観ているこっちが笑顔になっちゃう感じでしたv
途中、プリヤから「あなたはほんとにダイヤモンドの原石」というような台詞がありますが、
ほんとにそんな感じで、ついつい目を引かれてしまうの。
全開の笑顔で元気一杯に踊る姿はめちゃくちゃ楽しそうでこっちまで笑顔になっちゃったし、
(あんなに踊る浦井くんを観るのは初めてかも?)
ロングトーンも力強い多彩な歌声にはうっとりしたし、
ラニにしばかれながらも「てへっ」って笑いながらくじけない姿は可愛らしかったし、
観光客を口説き落すシーンには、プリヤと一緒に不覚にもよろめいちゃったりもしましたが、
印象的だったのはやっぱり1幕2幕それぞれの終盤のシーンだったかな。

1幕の終盤、キティ(高谷あゆみ)に突きつけられた現実を前に、
会いに来たスラムの友人たちを拒絶してしまったアカーシュ。
その直後、スウィーティと見つめ合うアカーシュの複雑な表情に、思わず目を奪われました。
怒りと絶望に満ちたスウィーティの視線を逃げることなく受け止めながら、
自分自身に向かう嫌悪、羞恥、哀切、当惑、懐疑、怒り。
そして、その上でなお失うことのできない夢、憧憬、そして、決意―――
一言の台詞もない、ほんのわずかな時間のシーンなのに、
私にはその一瞬が、とても長く重いものに感じられました。

スウィーティに投げつけられた、かつて、約束と共に自分がシャンティに送ったのと同じ花飾りを手に、
彼が歌うその旋律は、冒頭でスラムの仲間たちと共に歌った歌で。
同じ旋律のはずのその歌は、けれど全く違う曲のように聞こえて、なんだか呆然としてしまいました。

明るくて、前向きで、フレンドリーで、自分の気持ちに正直で。
アカーシュの最初の印象はこうだった。
でも、このシーンの後の2幕を観ていく中で、
もしかしてアカーシュの明るさは臆病さの裏返しなのかもしれないな、と思った。
強く何かを求める気持ちは、失うことを恐れる気持ちでもあるのかもしれない、とも。
その感覚は、2幕の最後、壊されゆくスラムを一人救おうと、
重機の前に立ちはだかったアカーシュの姿を見た時に、とても強くなりました。

プリヤの結婚式のシーンからここまでの流れは、
あまりに力技過ぎて実はちょっと私的には納得できない部分もあるのですが、
それでも、スラムを、そこに住む人たちを、自分の"帰る場所"を守ろうとする彼の必死さには、
どこか取り残された子どものような切実さと寄る辺なさがあったように思うのです。
けれど、そんな彼にシャンティがかける言葉。
それは、これ以上ないほどの慈しみに満ちて、けれど容赦のない厳しさがあって―――
その言葉を聴くアカーシュの、本当に子どものような泣き顔に、胸が引き絞られるような思いでした。

このシーンを見ながら、実は私、シャンティたちは―――もしかしたらプリヤも、
既に彼岸の存在なのではないか、と感じてしまったのね。
アカーシュは、本当に"独り"になってしまったのではないか、と。
それはきっと私の思い違いで、アカーシュはプリヤと共に新たな"帰る場所"を作るのだと思うけど、
でも、曙光の中一人立ち尽くすアカーシュの姿には、
そう感じるだけの孤独と、そしてそれでも尚光に向かって歩いていく彼の強さがあるように思えたのでした。


そんな風に光に向かっていくアカーシュとは対照的だったのが、加藤くん演じるヴィクラム。
最初は、上流階級のお坊ちゃま弁護士、という感じだったのですが、
光の中に在りながら、どんどん影へと堕ちていく様が何とも圧倒的でした。
2幕冒頭の♪Chaiyya Chaiyya をはじめ、あの高音の連続な歌声にもびっくりしたけれど、
1時間ちょっとの間に、どんどんその表情が荒んでやつれていって・・・
その壊れっぷりの潔さと説得力にもかなりびっくりしてしまいました。
で、その変化の中、自分の映画を撮るプリヤを見つめる瞬間に浮かべた笑顔が、
観てるこっちが泣きたくなるくらい、めちゃくちゃ優しい笑顔だったんだよね(/_;)
うん、彼はきっとプリヤが思うように理想高く誠実な男だった。
そして、本当に「唯一無二の存在」としてプリヤを愛していた。
スラム街のことにしても、最初は本当に彼らを救おうとしていたんだと思う。
けれど、その誠実さを、JK(阿部裕)の毒が飲み込んでいった―――
結婚式のシーンで歌うヴィクラムの、瞬きすらできないほどに凍り付いた表情が、
ぞっとするほど空虚で、でも、泣きたくなるくらい悲しげで・・・
あの後、アカーシュが全てを暴いたことは、そして、プリヤが流した涙は、
もしかしたら彼にとって救いだったのかもしれないなあ、と思いました。


ヴィクラムとの対比、という意味では川久保くん演じるスウィーティもかな。
ヒジュラという存在の意味を私はちゃんと理解してはいないのだけれど、
蔑まれる存在で在ると同時に、神に近い存在でもあるのかしら?
そういう聖性と俗性の境界に位置するような存在だったなあ、と思いました。
「愛することは簡単じゃない」
そう歌いながら、けれどこの物語の中の誰よりも、"愛すること"に向き合っていたのは彼だったと思う。
♪Closer Than Ever のシーンで、王子様とお姫様のように踊るアカーシュとプリヤを見つめる彼が、
プリヤのようにアカーシュに愛されたかったのか、
プリヤのようにアカーシュを愛したかったのかは、私にはわからない。
けれど、どちらであったとしても、そしてそのどちらもが叶わないものだとしても、
スウィーティはそういう自分の気持ちを決して否定はしないのだろうと思う。

それは、自らの罪とアカーシュという存在のために、プリヤの愛を信じられず、
プリヤを愛するのではなく支配しようとしていたヴィクラムにとって、どんなにか脅威だっただろう・・・
二人が対峙した時、ヴィクラムを凶行に走らせたのは、罪の発覚を揉み消すではきっとなかった。
思う人に愛されず、拒絶された、自分より惨めな存在のはずのスウィーティの中に、
変わらず輝き続ける想いに対する恐怖であり、絶望だったのではないか。
そんな風に思いました。

うん、この3人の対比というか、光に対する在り方ってすごい深読みし甲斐があって興味深いなあ。
阿部さん演じるJKの、闇の中で揺るぎない在り方も良かったし、
光の中に在ることを疑ってもいない安崎さんのマダンの弾けっぷりも素晴らしかったですv
(というか、安崎さんも踊りまくっててびっくりした!/笑)


もちろん女性陣も素晴らしかったですよーv
プリヤ役のすみれさんは、全てを跳ね返すような硬質な殻の中に、
傷つきやすい少女が隠れているような繊細さが素敵でした。
何不自由ない光の中に在りながら、父が隠している闇や、孤独という闇の気配に怯えている、少女。
「二都物語」のルーシーも良かったけど、プリヤの方が個人的には自然な感じだったかな。
歌声も、高音がとても綺麗に伸びていて、うわあ・・・!と思いました。
アカーシュに心惹かれていくさまもとても自然で、
それでも踏み出せない理性的な部分との揺らぎが、観ていてとても切なかったです。
全てを知った彼女が、本当にアカーシュとの未来を決意したのかどうかは、
やっぱり私的にはちょっと疑問なのだけれど、
それでも、そうあってほしいな、と思いました。

朝海さん演じるラニは、もうとんでもなく綺麗でしたたかな、まさに大女優!という感じ。
すみれさんといい、朝海さんといい、あのスタイルの良さは同じ人間とは思えません(笑)。
どちらかというとコメディパート寄りな感じのラニですが、
(キティとの遠慮なしな掛け合いがこっそりお気に入りでしたv)
彼女の矜持のかっこよさにはかなりよろめきましたよ、私。
もしかしたら、ラニもスラムの出身なのかもしれないなあ、なんて思いました。
そうだとしても、そんな過去を吹き飛ばすだけの覚悟と強さがある感じ。
歌声はちょっと苦手なタイプなのですが、ラニはかなり好きだったかなあ。

この二人とは全く別の魅力があったのが、久野さんのシャンティ。
いやもうあの癒しオーラはいったいなんなんですか?!と思いましたよ。
長老、という立ち位置だからなのかもしれないけれど、とにかく懐が深い。
でもって、その優しさや愛情の根本が揺るぎないの。
歌声も本当に綺麗で、♪The Journey Home の始まりの歌声とか、
アカーシュの歌声に重なり合う部分とか、
もちろんほかの歌での歌声も、まさに包み込むような柔らかさがあったように思います。

歌声といえば、今回が初ミュージカルの中川和泉ちゃん!
アッキーの妹さんで、以前から音楽活動をしているのは知っていたのですが、
歌声を聴く機会が今までなかったのですね。
で、今回出演されるということで期待していたのですが、本当に期待以上の歌声でした!
最初はお顔も知らなかったので、どの人かわからなかったのですね。
で、2幕冒頭の♪Chaiyya Chaiyya でソロがあると聴いていたところ、
まさに彼女の声から始まって―――その透明感と力強さに、ちょっと鳥肌立ちました。
(実は1幕もソロがあったのですが、
 初回は奥でわちゃわちゃしてるアカーシュに気を取られていて気づけず(^^;) )
同時に、1幕からずっとカンパニーみんなで歌う時に、すっと突き抜けて聞こえてくる歌声があって、
それがこの歌声だと気づいてなんだか嬉しくなっちゃいました。
もちろん、出演者のみなさんとても歌うまな方ばかりなのですが、
そんな中で際立って聞こえる声って、やっぱりあると思うんです。
それは好みの問題もあるのかもですが、やっぱり歌声の持つ力でもあると思う。
そういう力が、彼女の歌声にはあるように思いました。
これ、言われるのは彼女は嫌かもだけど、そういう部分は、やっぱり兄妹なんだなあ、と思いました。


まだまだいろいろ書き足らないけど、この辺でちょっと強制終了(笑)。
楽しさはもちろんだけれど、それ以上のものを受けとった舞台だったように思います。
インドの現状とかを私は全然知らなくて、
でも、それを知っていたらもっともっといろんなものを受け取れたのかも、とも思う。
夜明けと共に始まり、明るい昼と、暗く残酷な夜を経て、
再び曙光の中で終わりを迎えるこのミュージカル。
うまく言葉にできなかったけれど、そこに生きる人たちの光と影に、とても心惹かれました。
うん、とてもお勧めの舞台です。
もしこの辺境ブログに迷い込まれて、ちょっとでも興味を持たれたなら
ぜひぜひご覧になることをお勧めいたしますv
私ももう1回行っちゃおうかなー(え)。

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