瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2015/10/29 21:37   >>

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彼はただ、守りたかっただけ。
でも、彼にとって守る方法は戦うことしかなかった。
戦って、戦って、戦って―――気づいたら、守りたいものは遠くに去っていた。
それでも。
だからこそ。
彼は、彼のパートナーになろうとしたのかもしれない。
戦う以外の方法で、大切な彼女を守るために。


「CHESS」

2015.10.24 ソワレ シアター・ドラマシティ 7列一桁台
2015.10.25 マチネ シアター・ドラマシティ 11列30番台

作曲:ベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァース
原案・作詞:ティム・ライス
演出・訳詞:荻田浩一
音楽監督:島健
出演:安蘭けい、石井一孝、田代万里生、中川晃教、AKANE LIV、戸井勝海、
    ひのあらた、天野朋子、池谷京子、角川裕明、高原紳輔、田村雄一、遠山祐介、横関咲栄、大野幸人


岡山出張の帰りに途中下車、という言い訳をして、行ってきました、「CHESS」大阪公演!
東京で観た時に、今一つしっくりしない感じがあったので、
3週間ぶりの大阪公演がどんな感じになっているのか、ちょっと不安だったりもしたのですが・・・

いやもう、ほんとに観に行って良かった!!と心から思いました。
3週間でこれだけの深化を遂げているとは思ってもみませんでした。
いや、東京公演の完成度だって高かったんですよ。
もしかしたら、これは舞台の深化ではなく、私がこのミュージカルに馴染んだ、というだけかもしれない。
でも、東京で感じた余白のなさは、私的にはずいぶん軽減されていたなあ、と思うのです。

まあ、1幕の駆け足っぷりとかは、初めて観る人にはやっぱり不親切かなあ、と思う部分もあるのですが、
それを補って余りある、2幕の濃密さに、もう本当に心奪われました。
インタビューのシーンから、アナトリーがチャンピオンになるまでの、あの緊迫した空気ときたら!!
それぞれの役柄の感情の交錯と、その鮮やかささを更に際立たせるアービターの声と仕草、そして表情。
アービターという存在が、ただのチェスオタクチェス連盟会長を超えたものになったのを、
目の当たりにした気がして、ちょっと鳥肌が立ちました。
なんだかもう、息を呑んで、知らずぎゅっと手を握りしめて見つめちゃったよ。


そして、アッキーのフレディの感情の変遷も素晴らしかった。
24日は下手側の端っこだったので、♪SOMEONE ELSE'S STORY は、
ほとんど彼の後ろ姿しか見えなかったのだけれど、
それでもなお、静かに、クリアに、そして切実に伝わってくる、フレディの感情―――
1幕での彼の振る舞いから、アービターのいうその“絶望的な試合”に至るまでが、
ちゃんと一本の線として私の中で繋がったような気がしました。
これは、私の思い込みかもしれないけれど、
多分、フレディはフローレンスの過去をちゃんと知っていて、
その上で、彼女から家族を奪ったソビエトを、最初から敵として、戦う相手として認識していた。
そして、戦うことで、彼女を守ろうとしていた。
ただ、守ろうとしていたんだと、そう思うのです。
そこには、守ろうとして守れなかった母の面影もあったと思う。
戦うことでしか、自分の居場所を勝ち取ることのできなかった彼自身の経験もあると思う。
でも、その戦いは、フローレンスを守るのではなく、彼からフローレンスを失わせた―――

守ることは、戦うこととイコールではないのだということを。
敵となるものを打ちのめすことでは、守れないものがあるのだということを。
彼は、フローレンスを失うことで、初めて知ることができた。
そして、彼はきっとたくさんたくさん考えたのだと思う。
描かれない1年の中での彼の葛藤はどれほどのものだったのだろう。

2幕冒頭から、インタビュー、そしてアナトリーにフローレンスの父のことを伝えるまで、
彼の表情にはたくさんの葛藤があったように思います。
アナトリーへの複雑な感情。
フローレンスへの未練。
ウォルターから求められること。
自分の存在意義。
自分がすべきこと。
自分が、フローレンスを守るために、今、できること―――

小さな自分の手ではどうにもできない状況の中で、フレディが選んだのは、ただフローレンスの幸せだった。
自分が与えるのでなくていい。
自分が傍にいるのでなくてもいい。
ただ、彼女が幸せになれば―――孤独な小さな子どもではなくなるのであれば。
呟くように歌われる「パートナー」という言葉には、
アナトリーに向けての本当に素直で、痛みを伴うけれど強い強い想いがあったのではないか。
そんな風に思ったら、♪SOMEONE ELSE'S STORY が初めて“別れ”の歌に聞こえました。
千秋楽、この曲の最後の彼の声は、涙に掠れていたように感じました。
彼は、この瞬間にフローレンスへの想いを断ち切ったのかな?
フローレンスもチェスも失ったフレディ。
いつか、彼の荒野に優しい雨が降り注ぐことを、その雨がその荒野に一面の花を咲かせてくれることを、
なんだか願わずにはいられませんでした。

なんだか2幕のことばかりですが、1幕のフレディももちろん素晴らしかったですv
東京の時より、歌い方が素直になった気もするなー。
「CHESS」の曲って、割と低い音程のものが多い気がするので、
フローレンスやアナトリーに迫るときに、がーっとハイトーンで歌い上げるところは、
なんだかめちゃくちゃ気持ちが高揚しましたv
感情が染み渡るような歌声も好きだけど、こういう攻撃的な歌声も大好き!


曲の印象が変わったのは、♪Anthem もかなー。
初めてこの曲で涙してしまいました。
いや、もともと素敵な曲だなあ、とは思っていたんですよ?
ただ、歌詞の流れというか、アナトリーの心境を、私はきちんと理解できていなくて。
でも、下手から見て、歌うアナトリーの表情を真正面から見た時に、
ああ、これはもう仕方ないんだなあ、と思ってしまったの。
全てを捨てても。
自分の中の一部分を切り離しても。
それでも、それだけの喪失を覚悟してでも、彼は新しい空を目指さずにはいられなかった。
それが、なんだか理屈でなく納得できてしまったのでした。
そして、最後の彼の選択の理由も、今回やっと納得できたように思うのです。

それは、たぶん、フローレンスの変貌。

2幕が始まると、フローレンスの1幕とのあまりの違いにいつも驚いていた。
恋愛は、こんなにも人を変えてしまうのかと、なんだか哀れにすら思えた。
凛として、まっすぐ前を向いて、アービターに、モロコフに、自分に向かってきた彼女。
アナトリーが惹かれた“スタイル”は、多分見た目ではなくて、
そういう彼女の品格というか、在り方だったのではないかと思う。
コンサートバージョンの初演を観た時、
アナトリーにとってフローレンスは自由の象徴だったのではないか、と思った。
故郷を奪ったソビエトに一人立ち向かうその姿は、
チェスの試合ですら“自分一人のもの”にできていないアナトリーにとって、
どれだけ強くまばゆい光であったのだろう、と。
だからこそ、彼は彼女と共に旅立つことを決意したのだと。
でも―――
アナトリーの傍にいる彼女は、まるで違う存在になってしまった。
怯え、諦め、おもねり、いつも自分を守るかのように自分の体を抱きしめているフローレンス。
彼女を“そう”したのは自分であることを、
そして、その根底にあるのは、彼女の“過去”であることを、
彼女は、未だ一人惑う子どもであることを―――たぶん、アナトリーは理解していた。
理解して、だからこそ、彼はあの最後の選択をしたのだと、思う。
あの選択は、彼女を守るために、彼女を解放するために、
ただ、彼女をもとの“自由な”彼女にもどすためのものだったのだと、思う。

まあ、一人でその選択をしちゃうところが、アナトリーのアナトリーたる所以なんでしょうけどねー(え)。

そんな風に二人の男から守られた(実際守られたかどうかは別としてね)フローレンス。
彼女の最後の台詞は、やっぱりちょっと力技だと思ったし(笑)、やるせない気持ちにもなったけど、
でも、あの時の彼女の眼の輝きは、1幕の時のそれに戻っていたように思った。
守られるのでも、寄生するのでも、依存するのでもない、自由な強い女性。
迷子のこどもが、そんな風に変化を遂げた、そんな瞬間だったのかもしれません。


それにしても戸井さんのウォルターは徹底してますよねー。
2幕の彼の短い独白(な歌)の前に、彼がチェスを指すような仕草をするシーンがあって、
そのかっこよさと酷薄さに、ちょっとびっくりしました。
顔は笑ってるけど、目は笑ってないってこういう人なんだよねー。
彼自身は、きっと世界というチェスのプレイヤーになりたくて、
でも、自分自身が駒の一つであることも理解していたんだろうな。

ひのさんのモロコフは、もう見るたびに好きになってしまってどうしようかと思いました(笑)。
歌声には毎回酔いしれてるわけなのですが、なんだかどんどん可愛くなってませんか?
この人は、笑う時はちゃんと全部で笑って、凄むときは全部で凄んでいるような気がする(笑)。
チェスのチャンピオンのトロフィーを持ったシーンのめっちゃ嬉しそうな笑顔に、場違いに和んでみたり・・・
ほんとにこれが欲しかったんだねー、良かったねー、と思いました(*^_^*)
そうそう、あの紙袋をパーン!とするシーン、
前楽と楽の2回とも上手く音が出なくて、自分で「ばーん!」って言っていて、
で、2枚目の袋(ちゃんと内ポケットに入ってるのね!)がちゃんと割れた時には、
思わず拍手しちゃいましたよv
というかこのシーンはほんとに楽しくて、楽の時は手拍子も起きてました!
私、基本物語の中の曲では手拍子しないのだけど(手拍子に気を取られて集中できなくなっちゃうので)、
この時は思わずしてしまいました。
そういえば、千秋楽の時は、女性陣二人が「私もやる!」ではなくて「私がやる!」って言ってました。
あれ、アドリブかなー?
アドリブと言えば、1幕の試合のシーンで、立ち去るフレディがアナトリーの胸を叩きながら言う台詞、
毎回違ったのかな。
前楽は「楽しめよ」で、楽は「落ち着けよ」だった気がします。
お前に言われたくねーよ!ってきっとアナトリーは思ったに違いない・・・
このシーンだけは、アナトリーに深く共感いたしました(笑)。


AKANEさんのスヴェトラーナは、台詞も歌も少ない中で、彼女の衝撃や絶望を赤裸々に見せてくれました。
たぶん、スヴェトラーナはメラーノへは行かずに、本国で待ってたんだよね。
そこに、もたらされた夫の亡命の報―――
大粒の涙を流しながら、まっすぐに背筋を伸ばして立ち去っていくそのシルエットが、とても印象に残りました。
あの1幕での存在感があったからこそ、
2幕での唐突なアナトリーとのデュエットも、説得力があったように思います。


大野さんのチェスの精は、個人的にはちゃんとその存在に意味付けができていないのだけど、
それぞれの登場人物との関係性とか、楽曲の中で歌と同じくらいの感情を見せてくれるところとか、
やっぱりちょこちょこ目を奪われました。
♪Pity the Child で、フレディーが拳を突き上げるのと同じタイミングで、
何かを求め、何かをつかもうとするかのようにまっすぐにのばされた手が脳裏に焼き付いています。
そして、メラーノでの一瞬の笑顔がキモ可愛くv(だってあのメイクなんだもの―!)


田代くんのアービターは、ますます迫力が増していたように思います。
なんか、ほんとに思いっきり振り切れてるよね。
さっきも書いたけど、人以上の存在を感じさせてくれるようになったのは、とても嬉しい。
前楽は結構前方席だったので、正面でアービターが歌うと、
マイクを超えて、質量を伴うようにして歌声が届いて来て、おおお!と思いました。
そういえば、♪The Deal の冒頭あたりでマイクトラブルがあったのだけど、
その時も、全然動じず、でも生声でもしっかり届けようとしてくれたのがわかって、
さすがだなあ、と思いました。
うん、ちゃんと聞こえたよ。
そして、アービターの行動はやっぱりツッコミどころ満載で楽しかったのでしたv
そうそう、千秋楽の時のあいさつで、石井さんが「もう数日前から泣きたくて、
でもとうこちゃんにまだ早い、って言われて我慢してたんだけど、もう泣いていいよね?」的なことを言った時、
アッキーが「アナトリー的には誰の胸で泣きたい?」って質問して、
石井さんが動揺しつつ「選んだら語弊があるから」って交わしてたのだけど、
その後ろで両手をわきわきしながら胸を貸そうとしていたアービターに爆笑しました。
いやでも、ほんとにこのアービターはフレディよりもアナトリーに近い存在だな、と思う。
あ、楽の挨拶、田代くんは「終わっちゃうのが淋しくて、昨日チェス盤を買いました。
しばらく家で独りでやろうと思います」って言ってました。
そういえば、楽の日、劇場入りする田代くんを見かけたのですが、
あの小さなキャリーバッグの中にそのチェス盤、入ってたのかなー。

アンサンブルのみなさんのことも一人一人書きたいのですが、そろそろ時間切れ!
ドラマシティは、音響の関係なのか、お一人お一人の歌声が凄くクリアに聞こえました。
あと、前楽の時は下手からだったので、2幕冒頭で1列になって手を広げるのが、
ぴったり重なって見えて凄かったです!
役柄もシーンもほんとにたくさんあって、大変だったろうなあ・・・
でも、どの役も見ごたえがありました。
回数稼げたなら、お一人お一人をもっとちゃんと見たかったな。

オケも、相変わらずのかっこよさでした!
トランペットの音が、今回は凄く良く聞こえたかな。
そして、やっぱり、ギター、かっこよすぎる!!
カーテンコールのとき、メインのメロディーを奏でながら、リズムに合わせて拳を2度突き上げるのだけど、
一緒にやりたくてそわそわしちゃいました(笑)。
そして、千秋楽ではやってしまいました・・・楽しかったー!!

挨拶で、アッキーや安蘭さんが、キャストだけでなくオケもスタッフも4年前から一緒、って言っていましたが、
だからこその練度だったんだろうな、と思う。
そういう安心感と、同時に研ぎ澄まされた感覚がこの舞台の魅力だったように思います。

うん、いろいろ考えたし、まだ思うところもあるけれど、やっぱり素晴らしい舞台でした。
再演、今から心待ちにしておりますね。
そしてできれば音源をくださいおねがいします!!!(笑)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
先日はありがとうございました。
感想拝読して、なるほどなーと深く頷くことがたくさんありました。
やはり一度だけでは話を追うことに精一杯で、深く感情を追うには足りない感じですね。
それでも、2幕のフレディの歌にはぐっと感情を揺さぶられるなにかがありましたけど。
女性陣それぞれの感情や、アナトリーとフレディの複雑な思いや葛藤を思うと、次はもう少し違った視点で彼らを見ることができるかなと思いました。
アービターは理解はできないでしょうけど、なにかを彼から感じ取りたい(笑
同じ舞台を観ても着眼点や感じ方は本当に別々で、だから楽しいんだなとも改めて思いました。今、この記事を読んだ今こそ、もう一度CHESSを観たい気分でいっぱいです!

2015/10/29 23:21
朔さん、こんばんは!
コメントありがとうございます。
そして、一緒に観劇してくださってありがとうございました。
いやー、あの後見事に妄想スイッチが入ってしまって(笑)。

フレディの歌が、朔さんの心に響いたのは、私もほんとに嬉しかったです。
朔さんに腕をつかまれた後、実はそれに感動してちょこっと涙していました。
私はどうしてもファンの贔屓目になっちゃうので、こんな風に彼の歌声が誰かの気持ちに届くのがとても嬉しくてv
いつか再演されたら、またぜひご一緒いたしましょう!
そして、沢山お話しましょうねv
恭穂
2015/10/30 22:56

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