瓔珞の音

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zoom RSS 余白の誘惑

<<   作成日時 : 2017/02/02 21:22   >>

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全てが作りこまれた完璧なものの美しさには、感嘆するし圧倒される。
でも、隙のある、完璧ではないものにも心惹かれる。
それはきっと、その余白に隠された何かを感じるから。
その余白に、自分の心を忍ばせることができるから。


「フランケンシュタイン」

2017.1.28 ソワレ 日生劇場 GC階A列50番台

出演:中川晃教、加藤和樹、音月桂、鈴木壮麻、相島一之、濱田めぐみ、朝隈濯朗、新井俊一、
    後藤晋彦、佐々木崇、当銀大輔、遠山裕介、原慎一郎、丸山泰右、安福毅、彩橋みゆ、
    江見ひかる、可知寛子、木村晶子、栗山絵美、谷口あかり、原宏美、福田えり、山田由美子、
    難波拓臣、齋藤さくら


というわけで、中川+加藤ペアの東京千秋楽。
マチネとはちょうど対角線あたりの席での観劇になりました。
この席も面白いなあ。
もちろん、真正面から観た方が良いのだとは思いますが、
このミュージカルの場合、正面からでないと効果が半減してしまうような演出はないので、
ある意味安心して観ることができました。

前回このペアを観た時、自分でも呆れるくらい妄想が暴走しまして(笑)。
書いた記録を読み返して、これはもはや二次創作なのではないだろうか・・・、と呆然。
今回もそれはそれはいろいろ妄想いたしまして、
これを私はブログに書くのか?!と、ちょっと悩んだりもしたのですが、
幕間にお会いしたアッキーファンの方に、
他の方たちも脚本に書かれていない部分を驚くほど読み込んでいる、と言っていただいて、
それなら私の暴走っぷりも大丈夫かな、と開き直ることにいたしました(笑)。
いやでも、ほんとにこの脚本、穴だらけですよね。
ストーリーの肝となる部分はかなり放置されているし、
登場人物の感情の変化も、描かれることなく次のステップに行ってしまう。
ストーリーを堪能するには、不親切といえる部分もあるかもですが、
そういう描かれない“余白”があるからこそ、
キャストのみなさんがそこに詰め込んだものを受け取る喜びがあるし、
その受け取ったものを、自分の解釈で深めていくことができる。
そういう能動的な見方ができるのも、このミュージカルの魅力の一つなのかなあ、と思いました。

そんなわけで、今回も妄想大暴走するかも(と言いつつ、ちょっと時間ないのでさらっと行きます!)ですが、
どうぞご容赦くださいませ。


前回このペアには、気持ちを根底から揺さぶられるくらいの衝撃を受けたのですが、
今回は距離があったせいか、そこまでではありませんでした。
でも、あのラストシーンを見た瞬間に、思った、
「彼らは、取り戻した」という感覚は、前回よりも強かったように思います。
そしえt、やっぱりこの二人だとハッピーエンドに見えちゃうんだな(笑)。

アッキービクターって、基本的にいい人だと思うのね。
でも、その他者と交われる普通の“いい人”の部分と、
他者に理解され難い孤高の“天才”の部分が、ビクターの中では複雑に混ざり合っていて。
それ故の不安定さや、他者に及ぼす影響を彼自身もわかっていた。
だからかな、彼からは、深い抑圧と厳しい自律を感じました。
でも、彼の中には、子どものころからの切望と、自らが創り出す未来への熱情があって。
ビクターが歌う時、彼の中にあるそういう感情が一気に迸るみたいで、
その唐突さと切実さと強さに圧倒されました。
酒場での絡み上戸な様子とか、振り切れて前回の笑顔な様子とかも、そのカテゴリーだったかも?(笑)

あと、この日のリトルビクターは、前回アッキービクターとの親和性がすごく高い!と思った難波くんでして。
彼がリトルジュリアに対して「生命、有機の結合・・・」って歌うシーンは、
やっぱり一直線にアッキービクターに繋がってるなあ、と思ったのだけど、
この日は更に下手奥で彼を見守るエレンがちょうど彼の後ろに見えまして。
最初は微笑ましそうに二人を見ているエレンの表情が、
次の瞬間愕然として、どんどん強張っていく様に、一緒になって戦慄してしまいました。
小さな弟の中に在る、純粋な歪み
他者には受け入れがたいその異質な部分を、けれどエレンは“魔法”と言って受け入れようとした。
受け入れて、その彼の“天才性”が、正しい方向へ行くことを願った。
あの後のエレンの祈りや、2幕の回想でのエレンの歌声には、もう本当に泣かされました。

そうそう、この日のリトルジュリアなさくらちゃんも、
大きくなった時の一途さと包容力を感じさせるしっかりした可愛い女の子でして。
エレンが愕然としたビクターの様子をものともせず、
後ろから本を奪おうと忍び寄る、悪戯っぽい様子が何とも無邪気で可愛らしくv
ジュリアはどうしてあそこまでビクターに一途でいられたのかな、というのが疑問の一つだったのですが、
今回、彼女のリトルジュリアを見て、なんとなく納得がいってしまいました。
ジュリアが犬に手を噛まれた後、ビクターは同じ歌を歌います。
その様子に、エレンは焦りを、ルンゲは懸念を、ステファンは嫌悪を示す中、
ジュリアは最初驚いて、でもその後にこにこしながら彼を見つめて頷いていたように見えました。
なんというか、ジュリアにとってビクターは、
浮世離れした危なっかしい守ってあげたくなるような存在であると同時に、
魔法を使う王子様のような尊敬し、憧れる相手であったのかもしれないなあ、と思った。
だから、頑張れたのかな、って。

昨日の記事で、空白の3年間、ジュリアは頑張ったんだなあ、と書きましたが、
このシーンを観て、ジュリアは3年どころでなく、
この瞬間からずーっと頑張り続けてたんだなあ、と思いました。
登場人物の年齢や時系列は良くわからないけど、
お城が閉じられた、つまり、あの事件が起きてから20年以上経ってる。
直後に姉弟がステファン市長に引き取られたとしても、
ジュリアとビクターの出会いから20年近くは経っているわけですよね。
当時ビクターが10歳くらいとしたら、ジュリアは小さくても7歳くらい?
そうすると、本編ではジュリアは20代後半なわけで・・・
このころの女性の結婚適齢期がいくつぐらいなのかは調べていませんが、多分20歳前後ではないかと。
しかも、彼女は市長のお嬢さん・・・つまり、きっと縁談は降るようにあったと思うのですよ。
それを全て拒絶して、その年齢までビクターを待ち続けるって、生半可な気持ちじゃできないですよね?
当時は、女性の権利ってそんなに強くなかったでしょうし・・・
そう考えると、もう本気で「頑張ったね、偉かったね」ってジュリアを抱きしめてあげたくなるし、
その気持ちが、ビクターをひと時ではあっても救ったんだな、と思うと、
私もちょっと救われた気持ちになりました。
で、そういうジュリアだからこそ、あの時加藤アンリはジュリアに笑いかけ、頷いたのかな、とも思った。

加藤アンリは、今回不思議と幼く見えました。
というか、アッキービクターがお兄ちゃんに見えた(笑)。
中川+小西ペアや柿澤+加藤ペアは同級生感があって、柿澤+小西ペアはどう見てもビクターが弟で・・・
その辺の違いも面白かったなー。
で、加藤アンリに話を戻しまして。
この日は、加藤アンリがビクターの夢に恋に落ちる瞬間が凄く鮮やかだった気がします。
数回観て、ビクターの歌う歌詞がクリアに聞き取れるようになった、ということもあるのかもですが、
加藤アンリの気持ちがすっとビクターに向かう瞬間が見えた気がした。
・・・まあ、誤解かもですが(^^;)
あと、この日は加藤アンリの創りだす“間”の雄弁さにも魅了された。
断頭台に上がる前の、ビクターと引き離されてから歌いだすまでの間。
断頭台での、最後の歌声の前の涙と、その後の笑顔での間。
加藤アンリは、ビクターと共に生きたいと思っている、というのは前回と同じく感じたのですが、
そういう望みや、無念や、恐怖や―――それらを全て凌駕する愛情と勇気に、またしても打ちのめされました。
そして“怪物”が、夢の記憶を歌う前の間も凄かった。
それまでの怒りや絶望といった暗い感情を一瞬で拭い去り、
哀しくて寂しくて愛(かな)しくて・・・だからこそ求めずにはいられない“怪物”の孤独が、
一気に彼を包んだように見えました。
周囲は炎の赤に染まっているのに、彼だけ静かな水底にいるみたいだった。
誰かに抱きしめられた記憶―――その後の歌詞を考えれば、それは当然カトリーヌのことなのだけれど、
もしかしたらその記憶には、意識ではなく体が覚えている生まれ落ちた最初の温もりが、
彼を歓喜の中で抱きしめたビクターのあの温もりが、混ざっていたんじゃないかな、ってちょっと思いました。

というか、2幕後半のビクターと“怪物”の攻防・・・切なさに加えてもどかしくてしかたなく!
何がって、ビクターが“アンリ”を再生しようとした理由が、
ジャックの吹き込んだ“毒”のせいで、全然“怪物”に伝わっていなかったこと。
ビクターがどれだけの想いと祈りと願いを込めて“アンリ”を再生し、
再生した彼を見て、ビクターがどれだけ歓喜し、どれだけ優しく彼を抱きしめ、
そして、呪われた“怪物”である自分の創造物に対して、どれだけの絶望の中で責任を取ろうとしたのか・・・
1幕最後、緞帳が降りる間際の、アンリの名を呼ぶビクターの後ろ姿、
そのまま死んじゃうんじゃないかっていうくらいの絶望感だったよね(>_<)
ほんとにジュリア、頑張った!(やっぱりそこか)
でもそういうもどかしさがあったからこそ、ラストシーンで「取り戻した」って思ったのかなあ。

北極でのビクターと“怪物”の対峙は、凄い緊迫感でした。
あのシーン、音楽流れてましたっけ? それすら全然記憶にない(^^;)
“怪物”に銃を突きつけられる時、“怪物”のコートを掴んで彼を見上げるビクターの表情がまた・・・
強張っているのに、どこか安堵が混じっているような、稚い表情だったように思いました。
そして、“怪物”に銃を向けながらも、撃つことができないビクターの泣きそうな顔。
“怪物”―――“アンリ”が倒れてから、彼を抱きしめるまでのビクターの、
死していく者の声とは思えない決意と歓喜すら感じられる歌声。
“アンリ”に辿り着くまでの動きや歌いだしのタイミング、前回観た時とは違っていたように思うけど、
やっぱり毎回気持ちの動きが異なるのかなあ・・・
あのシーンは、少しでも沢山のものを受け取りたくて、息をのんで見つめてしまうのだけど、
結局キャパオーバーになっちゃって、凄く限られた記憶しか残らないんですよね。
そういえば、あのシーンで薔薇に光が当たっていたか確認するのも忘れたなー。
透明な水の底のような、氷に閉ざされた場所のような、蒼い光に満ちていたような気がするんだけど。


4組のビクターとアンリ(怪物)の感情の流れを、クリアにしたい気持ちもありますが、
もしかしたら、観るたびに届くものも受け取るものも違っていたかもしれないなあ。
そういう揺らぎって、演劇としていいことなのか悪いことなのか私にはわからないけど、
でも、私にとってこの舞台の余白や揺らぎは、私にとってとても魅力的な世界でした。


結局長くなっちゃったので、あとは思ったことや気になったことをちょこっとだけ。

アッキージャックとエヴァの関係性って、やっぱりとっても愛を感じるんですよねー。
ちゃんと情で繋がっている、というか。
アッキージャックが、道化を演じている風に感じたせいもあるのかな。
エヴァに役立たず認定された後、
イゴールに「俺の話を聞いてくれるのはお前だけだ」的なことを言ってたのも可愛かったv
何気にあのファミリーの男性陣はみんな仲良しなのかも(笑)。
ルンゲさんも、ビクターによって距離感が違った気がします。
向かう気持ちの暖かさや方向性は同じなのだけれど、
柿澤ビクターには不用意に近づかないようにしていて、
アッキービクターには、必要な時に必要なだけ近づいていたような・・・?
村人たちや街の人たちのシーンは、毎回怖いなあ、と思いながら観ているんだけど、
回数を重ねるにつれて、そのリアルさというか、現代のネット社会に通じるような危うさに、
ちょっとぞっとするような感覚がありました。
僅かな情報からどんどん真実が歪められていく様。
自分の恐怖や嫌悪、集団での勢いに流されて、多数が正義というような感覚になっていく様。
ステファン市長は、観るたびに物語の中の重要性が増していくように思いました。
リトルビクターが再生した犬を、「呪われた怪物」と言ったのはステファンだった。
ルンゲを噛み殺したアンリ―――“怪物”を見た時、
きっとビクターの脳裏には、彼のこの言葉が浮かんでいたんじゃないかなあ、と思う。

そろそろ、大阪公演初日の幕も下りた頃でしょうか。
思わず遠征を計画しそうになっちゃうくらい、思いがけずよろめいちゃったこのミュージカル。
音源化もDVD化も予定はないとのことですが、
それは再演のフラグと信じて、今からその時を心待ちにしていようと思います(笑)。
この後の地方公演も、キャストスタッフのみなさんが、怪我なく病気なく、
最高の状態でこの物語を紡ぎ、深めていくことができますように!

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内 容 ニックネーム/日時


恭穂さま
長編大作のような「フランケンシュタイン」のご感想
完読(笑)いたしました。
恭穂さんがおっしゃっていた通り、キャストによって、
また組み合わせによっていろんな表情や感情が観られた
のだなぁととても興味深かったです。

そして、いろいろツッコミどころのある脚本についても
「そういう描かれない“余白”があるからこそ、キャストの
みなさんがそこに詰め込んだものを受け取る喜びがあるし、
その受け取ったものを、自分の解釈で深めていくことができる」
という恭穂さんの言葉で、とても腑に落ちた思いです。

1回では観きれないもの、受け止めきれないものもたくさんあって、
時間が許せばもう一度観たかったのですが、再演を楽しみに
待ちたいと思います。
その前にできることなら恭穂さんとこの公演についてぜひ一度
レビューしたいです^^;
スキップ
2017/02/24 08:52
スキップさん、こんばんは!
いやもう妄想大暴走ですみません…と土下座したくなるような記事になってしまいました(^^;)
読んでくださって、本当にありがとうございます。
…呆れられていないといいのですが。

キャストの組み合わせで、受け取るものが違うのは、
やはり面白いですね。
カッキービクターもぜひスキップさんに観ていただきたかったです。
再演、ぜひして欲しいですねー。
そして、私もスキップさんとお話したいです!
今年は大阪出張がありますし、
大阪遠征をもくろんでいる舞台もありますので、
タイミングが合いましたら、ぜひ遊んでくださいねv
恭穂
2017/02/25 14:55

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