瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2017/03/15 23:02   >>

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裏庭の片隅。
白い花が咲き乱れるその場所に眠るのは。
白い小さな命の真っ白な小さな骨。
そして。
幻のように消え去った“彼”がそこに残した記憶の欠片。



「アルジャーノンに花束を」

2017.3.11 マチネ 天王洲銀河劇場 1階F列30番台
2017.3.11 ソワレ 天王洲銀河劇場 1階A列10番台

原作:ダニエル・キイス
脚本・作詞・演出:荻田浩一
音楽:斎藤恒芳

出演:矢田悠祐、蒼乃夕妃、皆本麻帆、吉田萌美、小林遼介、長澤風海、和田泰右、戸井勝海、水夏希


この舞台を初めて見たのは、3年前の再演の時でした。
もともと原作を読んでいたり、仕事に関係のある分野だったりで、
思い入れがあるというかなんというか・・・とにかく冷静に観ることはできなくて。
凄く辛くて、沢山のことを考えて、でも、観て良かった、と思える舞台でした。
その中心にいたのは、やっぱり浦井くんのチャーリィで。

今回、再演と、そして主演が矢田くんだという情報が流れた時、
浦井くんじゃないんだ、とがっかりする気持ちと、
矢田くんだ!と大喜びする気持ちの両方が私の中に在りました。
ちょうど矢田くんの歌声とルカによろめいていた時だったので(笑)。

で、今回も日程の関係で、前回と同じくマチソワしたわけですが・・・
うん。
やっぱり冒頭から号泣したよね(^^;)
あのチャーリィのたどたどしい言葉の届けるまっすぐな願い。
その言葉が乗る、優しい旋律―――

物語そのものに対する、基本的な感覚は前回と大きく変わりありません。
というか、やっぱりいろいろ考えちゃって、冷静ではいられなかった。
私の中にある理想とか、願いとか、諦めとか、ビジネスライクな冷たさとか、そういう自分への絶望とか、
困惑とか、同情とか、愛情とか、尊敬とか、痛みとか、暖かい気持ちとか・・・
いろんなものが目一杯喚起されて、いまだ落ち着かない感じです。
観ている時も、特にソワレは最前列だったこともあって、もういろいろ辛すぎました(>_<)
溢れてくる感情を抑えるためにひたすら手を握りしめていたら、前腕が筋肉痛になったという(^^;)
拍手のし過ぎで筋肉痛になったことはあるけど(あるのか!)、こういう理由では初めてだなあ(笑)。

そんなこんなで、きちんとした感想は書けなそうなので、今回は役者さんの感想を。

矢田くんのチャーリィは、当然のことながら浦井くんとはまったく違うスタンスで。
でも、浦井くんが最初に荻田さんたちと創り上げた「チャーリィ」を、ちゃんと踏襲しているようにも思った。
矢田くんのチャーリィを一言で表すと、異質、かなあ。
手術を受けた後の変化は、とても繊細で鮮やか。
でも、なんというか、凄く揺るぎない部分があるようにも思いました。
彼の本質は変わらない。
だからこそ、変わっていく部分の異質感がとても強くて、それが周囲の拒否感を煽ったのかな、と。
チャーリィ自身も、手術前と同じ感覚で全てに接しているからこその、
齟齬であり、軋轢であり、困惑だったのかなあ・・・
だからかな。
矢田くんのチャーリィからは、怒りや焦りよりもむしろ戸惑いや恐れの方が強く感じられたように思います。

それは、もしかしたら彼の歌声にもあるのかな、と思う。
矢田くんの歌声って、なんだか凄く不思議な感じなんですよね。
厚みがあるというか・・・すっと一筋の光のように飛び込んでくるのではなくて、
包み込むような、柔らかな布のようなそんなイメージ。
って、良くわからないですね(^^;)
音声学的なことは良くわからないのだけど、
そういう不思議な感覚が、個人的には凄く好き。
で、チャーリィとしても、いろんな要素が絡み合っているようなその歌声はぴったりだったように思います。


ソワレで最前列で観て、とにかく衝撃的だったのが、長澤くんのアルジャーノンでした。
めちゃくちゃ可愛いのになんというか・・・凄まじかった。
キレッキレなダンスにももちろん目を引かれたのだけれど、
アルジャーノンとして、小さなチャーリィとしての在り方がとんでもなかったように思います。
ほんとに、ちょっと目が離せない感じ。
チャーリィとの関係性というか、言葉ではない関わり方、
無表情な部分と、豊かな表情の部分の落差、
お父さんを呼ぶか細い声と、その瞬間の稚い表情―――いろんな部分が気持ちに引っかかりました。
フェイが「生きた芸術!」って叫んでいる時に、後ろで同じ振りをしてるのも可愛かったし(笑)。
いやでも可愛いといったらやっぱりミニーとのシーンかなあ。
吉田さんのミニーが前回に引き続きとんでもなくキュートだったこともあり、
ソワレのあのシーンはひたすらマウスな二人を追ってしまいました(笑)。
だからこそ、二人の最期のシーンは凄く怖かったんですけどね(>_<)

アリス先生は、今回は水さん。
凛として大人な雰囲気なのだけれど、発展途上というか、凄く未熟な感じがしました。
教師としても、人としても。
でも、だからこその迷いや葛藤が、逆に真っ直ぐチャーリィと向き合う理由になったのかな、とも思う。
終盤はとにかくずっと泣いてらっしゃって(それでも歌声がぶれないのは凄い!)、
それでも自分の選択に、責任に―――罪に、きちんと向き合おうとしているようにも感じました。
うん、でも、このアリスはチャーリィを愛してはいなかったような気がするな。
でもって、水さんのスタイルの良さというか足の長さにはもう感嘆するばかりでした!(笑)

ローズやヒルダを演じた皆本さんは、とても綺麗なソプラノで!
でもだからこそローズの叫びがやっぱりとてもつらかったです。
チャーリィと再会するときの現在のノーマも皆本さんが演じてらっしゃるのですが、
この物語の中で、唯一救われたのがノーマなのかなあ、ってちょっと思いました。
救われた、というよりも、許された、重荷をおろした、という感じかな。
ノーマの中には、兄に関する諸々に対する怒りとか嫌悪とか拒否感は確かにあって。
でも、そういう感情に対する罪悪感とか、
自分が原因で兄がどこかにやられてしまったという申し訳なさとかにもきっと苛まれていただろうし、
それ以前に、もっとずっと小さい時に兄と育んだ優しい記憶や感情もあったと思うのね。
少女のころのノーマは吉田さんが演じてらっしゃるのだけれど、
そういう描かれていないいろんな部分も感じさせてくれたように思います。
だからこそ、皆本さん演じる大人のノーマの言葉に厚みがあった気がします。
家族だから母を施設には入れられない、という彼女の中には、
兄を施設に追いやってしまったことへの贖罪の感情もあったのではないかと思う。
このミュージカルでは(もしかしたら原作でも)、幼い兄妹の穏やかな交流は描かれないし、
再会して、また去っていく兄を見つめるノーマの表情は決して明るいものではないけれど、
でも、ノーマはチャーリィに謝罪できたことで、一つ重荷をおろしたし、
チャーリィは、ノーマの背負ってきたものを知ることで一つの答えを得ることができたんじゃないかな、と思う。
―――というか、そうであってほしいなあ。

フェイ役は蒼乃さん。
もう、素晴らしく生命力に溢れたフェイでした!
前回の秋山さんのエキセントリックで、でも絶妙なバランス感覚も良かったけれど、
本当に生命力の塊みたいな―――お日様みたいな蒼乃さんもフェイも素晴らしかったです。
これはチャーリィも縋るよね、って思っちゃった。
衣裳も、他の人たちが割とパステル調というか大人しいトーンで統一されている中で、
難色もの原色を使っているのが、フェイという存在にとってもお似合い!
でもって、本能というか感覚で生きている感じも。アリスとは正反対で、その対比が面白かったです。
研究員(?)の時は基本無表情なので、あの弾けるような笑顔に魅了されました。
だから、その分、チャーリィから離れるときに笑顔が消えるのが悲しかったなあ。

小林さんは、ニーマー教授とギンピィ役。
どちらも前回の良知くんよりも年上な設定・・・なのかな?
ニーマー教授も、研究者としてのスタンスが揺るぎなくて、
チャーリィに論破されても、ムッとしてはいても流せるだけの大人な部分があったようななかったような(笑)。
チャーリィに対しても、被験者、というスタンスは崩さないのだけれど、
チャーリィから見えない時の表情が凄く苦渋に満ちていたり、
倒れそうになるチャーリィに駆け寄るときの表情の真剣さとか、名前を呼ぶ声の強さとか、
ふとした瞬間にチャーリィという“人”に対する情が感じられることがあって、
でも、それを見せずに自分の役割に徹するところがかっこいいなあ、と思いました。
ギンピィはね・・・めちゃくちゃ兄貴肌な人なんだなあ、きっと。
チャーリィの異質さを一番感じたのは彼だと思うのだけれど、
それだけチャーリィの近くにいたということなのかな、と思います。

和田くんのバードは、若くて未熟で、でもだからこそ凄く素直にチャーリィに寄り添ってた気がする。
ニーマー教授ほどビジネスライクにはなれないけれど、
ストラウス博士ほどチャーリィの気持ちに踏み込むこともできない。
そんな中途半端さに若さを感じたのかな(笑)。
でも、それでもチャーリィに寄り添おうとしたバードがいたから、
チャーリィは救われた部分もあったのかもしれないなあ。
というか、バードはきっと、アルジャーノンのお墓にいつも花を手向けてる気がする。
あ、リロイは今回も非常に個性的な役柄でしたが、
ダンスホールのシーンで、後ろでノリノリで踊っている大人組二人の衝撃の方が強くて(笑)。
いや、あの二人、ほんとに楽しそうだったよね・・・

ストラウス博士は戸井さん。
一見穏やかなのに、実はニーマー教授よりも狡猾で強いように感じました。
チャーリィに対しても、距離感は近いけれど、ある一線以上は決して踏み込まない。
チャーリィが退行していくシーンは、ストラウス博士の歌で描かれていくけれど、
そして、その歌はとても感動的ではあるのだけれど、
どこか研究記録のような印象も受けたのが、自分でもちょっとびっくりしました。
そういう意味では、ドナーさんもチャーリィのお父さんも同じスタンスだったのかなあ。
チャーリィを受け入れてはいたけれど、やっぱり踏み込みはしなかった。
お父さんと再会するシーンのチャーリィは、観ていてほんとに切なかったなあ。
呼び止められた時の、期待と諦めの混じったチャーリィの表情、
もとに戻ってからアリスの前に現れて、一瞬記憶を取り戻して「アリス」と呼んだ瞬間の表情と、
切なさとしては一二を争うと思う・・・(;_:)

そういえば、ラストシーン、前回とはちょっと配置が違ってたかなあ。
舞台上方にはチャーリィだけで、アルジャーノンは下にいたのだけれど、
前回は二人とも上にいたように思います。
でもって、上に伸びる梯子は今回はなかったな。
だからかな。
関わった人たちが白い花を手向ける裏庭の片隅には、
チャーリィの遺した記憶が、想いが、アルジャーノンの小さな骨と共に、
ずっとそこにあるような、そんな気がしました。

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