天気雨

午前中のお仕事を終えて、お昼ご飯を食べた後ちょっとお昼寝をしていたら、
遠い雷の音と、波のような細かい雨の音で目が覚めました。
夕立かな、と思って窓の外を見ると、そこには青空があって。
天気雨の、何度見てもどこか不思議な空間に、しばし窓際に佇んでしまいました。

天気雨は、涙雨、とも言うそうです。

光の中、降り注ぐ不確かな雨
遠雷が掻き立てる不安。
導く未来。

彼女がカーネギーで歌う光に溢れたシーンは、まるで天気雨の中のようだった。

ふと、そんなことを思いました。


「Beautiful The Carole King Musical」

2017.8.11 帝国劇場 ソワレ 1階A席35番

出演:水樹奈々、中川晃教、伊礼彼方、ソニン、武田真治、剣幸、伊藤広祥、神田恭兵、長谷川開、
   東山光明、前田元、山野靖博、清水泰雄、エリアンナ、菅谷真理恵、高城奈月子、MARIA-E、
   ラリソン彩華、綿引さやか、原田真絢


以前からこちらにも良く書いていますが、私は英語がとーーーーっても苦手で(^^;)
というかもうほとんどトラウマ状態でして・・・
だから、好きなミュージカルでも海外版はほとんど聞かないし、トニー賞にも(実は)興味がないし(え)、
もちろん洋楽も自分からはほとんど聞きません。
ので、キャロル・キングという存在も、名前は聞いたことがあるけど、
その人がどんな曲を作っているか、ということは全然知りません。
・・・明言するのはちょっと情けなくて恥ずかしいですけどね(←この辺がトラウマ(笑))。
このミュージカルも、だから多分アッキーが出ていなかったら、観ることはなかったと思います。
で、夏休みシーズンの忙しさにかまけて、今回も何の予備知識も持たずの観劇で、
しかも初回にして最前列という状況にめちゃくちゃ緊張していたわけなんですが・・・

とんでもなく楽しかったです!!!

いやー、やっぱり音楽の持つ力ってとんでもないんだわ、と実感いたしました。
1幕は、キャロルの10代後半から20代前半を描くと共に、
キャロルたちが創る楽曲を、それを提供されたアーティスト―――シュレルズとか、ザ・ドリフターズとか、
リトル・エヴァとか、ライチャス・ブラザーズとかが歌う形で構成されているのですが、
で、もちろんのこと、これらのアーティストも私は全然知らないわけなのですが、
どの曲も、どこかで聞いたことがあるものばかりだし(この曲もキャロルが!ってびっくりした)、
何よりアーティストに扮するアンサンブルさんたちの素晴らしいパフォーマンスが、
足元から響き押し寄せてくる生演奏に乗せて、目の前で繰り広げられるわけですよ。
もう思わず満面の笑みで聴き入っちゃったし、自然に手拍子しちゃったし、
というか、手拍子じゃ足りない!!と、椅子の上で体がうずうずしてしまいました(笑)。
いやもうほんとにみんな綺麗でかっこよくってキュートでダンディで素敵だったなあ・・・!
なんだかもうほんとに楽しくなっちゃって、どうしようかと思いました。
だからこそ、最後にキャロルを襲う事実とそれに対しての闇に沈み込むようなキャロルの歌声に、
思いっきり突き落とされて呆然としてしまったのですが。

キャロルを演じる水樹さんは声優でご活躍の方。
めちゃくちゃ有名な方ですが、アニメをほとんど見ない私的には、
紅白に出てる歌手としてのイメージの方が強く(笑)。
この日は、某イベントと重なっていたこともあるのか、
客席には水樹さんのファンと思われる殿方がとても多くて、
こんなに男性客の多い帝劇客席はめずらしいなあ、と思ってしまったり(笑)。
でも同時に、キャロルと同世代で、
リアルタイムで彼女たちの楽曲を楽しんでいたのであろうご年配の方も多くて、
その方たちが楽しそうにリズムを取ってらっしゃるのがなんだか凄く嬉しくて。

キャロルに話を戻しますと。
タイトルロールになっている、凄いシンガーソングライターのキャロル・キングの最初の印象は、
才能に溢れているけれど、それよりも夢や熱意に動かされている普通のティーンの女の子、でした。
音楽が大好きで、曲を作ることが大好きで、歌うことも好きだけど人前はちょっと苦手で、
歌詞を作るのも実はちょっと苦手。
両親は離婚したし、母と父の関係にはちょっと不満はあるけれど、
でもたくさんの愛情を注がれてまっすぐに育った―――そんな、才能以外はたぶんどこにでもいる女の子。
彼女が、ジェリー(伊礼彼方)と出会って、二人で最高の楽曲を創り上げる喜びと、
家族として共に人生を歩んでいく充足感を得、
シンシア(ソニン)やバリー(中川晃教)と切磋琢磨することで、彼女自身の感性や技術も磨き上げられ・・・
多分1幕は、キャロルの才能がどんどん外に向かって飛び立ち成長していく過程であったように思うのです。
悩みや心配や葛藤もあるけれど、基本順風満帆で明るさに溢れた時期の、
晴れやかで幸せに溢れたキャロルの笑顔は、観ている私も笑顔になってしまうような高揚感があった。
この物語は、ガールミーツボーイの物語であり、シンデレラストーリーでもあるのかな、と思った。
でも―――
その後のジェリーの裏切り、和解、再度の裏切りと別離を描いた2幕は、全く異なっていた。
なんというか、2幕は、キャロルが自分の内側にあるものと向き合い、
それを解き放つ過程なのかな、と思った。

今の自分の居場所はジェリーと築き上げてきたものだと、
ジェリーがいたからこそ、今の自分はあるのだと、たぶんキャロルはそう思っていた。
彼を失って、多分キャロルは自分の足者が崩れていくような感覚を得ていたと思う。
だって、10代後半から人生の多くの時間、ずっと一緒にいたわけですよ。
ある意味、彼女の成長はジェリーと共にあったわけで・・・
でも、その互いに依存し合うような関係性は、多分キャロルの中の何かを抑圧していた。

湧きあがるメロディだけではなく、彼女の中に生まれてくるもの―――
彼女の想い。
彼女の願い。
彼女の欲望。
彼女の悲しみ。
彼女の希望。
彼女の過去。
―――彼女の人生。

戸惑いながら、自分の中にあるそれらにちゃんと向き合って、
そしてやっぱり“音楽”という形でそれらを表現することを選んだキャロル。
ジェリーとの時間を否定するのではなく、なかったことにするのではなく、
受け入れて、受け止めて、抱きしめて、解き放つ―――
レコーディングで、ジェリーが書いた言葉を歌う彼女の表情の変化が本当に鮮やかで。
そして、カーネギーでのコンサートの前。
楽屋に会いに来たジェリーの謝罪を受けるキャロルは、本当に静かだった。
それを見た時、ああ、この瞬間に、本当に二人の関係はリセットされたんだな、と思った。
彼に向かう怒りも、妬みも、憎しみも、嘆きも、執着も―――愛情も全てがリセットされた。
それはとんでもなく晴れやかで、でもだからこそこの上なく哀しかった。
煌びやかなホールで歌うキャロルの笑顔は光り輝くようで。
その歌声は本当にのびやかで。
でも、そこには遠雷のような過去の気配と、彼女が流した涙の気配があって。
なんだか泣けて泣けて仕方がありませんでした。

結果的に、キャロルは自立したシングルマザーであり、素晴らしいシンガーソングライターになった。
でも、彼女の“幸せ”は、多分彼女にしかわからない。
彼女の選択が、正しかったのかどうかも、多分彼女にしかわからない。
それでも、キャロルは、自分の歩んでいく未来から、決して目を反らさないんだろうな。
そんな風に感じました。


伊礼くん演じるジェリーは・・・なんとも複雑な役柄で(^^;)
少しだけ語られる彼の生い立ち―――父との関係やを鑑みると、
今の自分が創り出しているものに対する疑問や、
“普通の幸せ”に埋没することへの漫然とした恐怖や、
そういうものを、クリエイティブな人が持つ繊細さ、ということもできるのかもしれないけど、
単なるキャロルへの甘えと言えなくもないところがなんともねー。
まあ、このミュージカルはキャロル視点だから、ジェリー視点だとまた違った見え方があるのかな、と思う。
そんな、一歩間違えるとただの嫌なダメ男になってしまいそうなジェリーを、
伊礼くんは端正で繊細で危うい存在のギリギリのラインで演じられていました。
キャロルに謝罪を拒否された(というか、彼女は謝罪を必要としていなかった)あとの彼が、
どんな人生を歩んだのか、ちょっと気になります。


そんな二人とは違った意味で波瀾万丈で、でも素晴らしい安定感を見せていたのが、
アッキーのバリーとソニンちゃんのシンシア。
ほんとにこの二人にはめちゃくちゃ癒されましたv
出会いもコンビ結成も結構行き当たりばったりだし、
互いが互いに求めるものも違っているし、
音楽のことでもプライベートのことでも喧嘩するし、
でも、この二人はそれぞれにちゃんと自分の足で立っていたように思う。
その上で、互いにとって最適な距離感を保っている感じ。
この二人は、もし違う人と組んで楽曲を作るようになったとしても、きっとこの距離感を保つんだろうな。
そんな安心感がありました。

二人が歌うシーンはそれほど多くはなかったのだけれど、
一見(一聴?)弾きあうような二人の歌声が、追いかけ合い、重なり合った時の爽快感は、
ちょっと癖になる感じだなあ、と思ったり。
♪Walking in the Rain は、二人の身体だけでなく気持ちが寄り添っていく過程がとても鮮やかで、
なんだかこっちまで幸せな気持ちになってしまいました。
この日、NHK FMのミュージカル特集の最後でアッキーがこの歌を歌ってくれたのだけど、
あのとんでもない幸福感が蘇って、ちょっとどうしようかと思いました(笑)。
そうそう、キャロルの新居でバリーが歌った曲、ギターを弾きながらだったのだけど、
あれってほんとに弾いてたのかな?
アッキーってギターも弾けるんだ?!と最初びっくりしたのだけど、
その後は歌声とパフォーマンスに目も気持ちも持っていかれてしまって、手元は観てませんでした(^^;)
そういえば、この舞台ではアップライトのピアノの向きを変えることで場面転換をしていましたが、
あのピアノも水樹さんやアッキーは生で弾いてたのかなー。
その辺、ちょっと気になります(笑)。

ソニンちゃんのシンシアは、ほんとにかっこよくってキュート!!
というか、ある意味この物語の中で一番男前!(笑)
キャロルとシンシアのシーンでも、甘えさせるときと突き放すときの距離感が絶妙で、
こういう友達いたらいいなあ、としみじみ思ってしまいました。
ああ、そうか、シンシアのコミュ力が素晴らしいからこそ、この4人の関係性だったのかもしれないなあ。
キャロルが旅立つ時の♪You’ve Got a Friend も凄く良かった。
もちろん、彼女自身の葛藤とか、臆病さとかも見えていて、
その彼女の弱さを分かった上で、受け止めて待ち続けるバリーの懐の深さが、
少しずつその弱さを彼女に肯定させていったんだなあ、と感じられたのも、
なんだかとても救われたような気持ちになりました。
シンシアからのプロポーズシーンは、その後のキャロルの覚醒でちょっと薄味になっちゃったけど、
個人的にとっても好きなシーンでしたv


武田さんのドニーは、目立つ在り方ではないのだけれど、
4人のアーティストを自分の立場のなかで常に支えてくれている存在だったと思います。
なんというか、確固たるものを持ってこの時代のミュージックシーンを生き抜いている感じ。
あれ? ニックって実在したんだっけ?とちょっと混乱しましたが(笑)。


剣さん演じるキャロルのお母さんは、
母親の良いところと困ったところをとっても自然に演じられていたように思います。
このお母さんがいることで、キャロルは苦労した部分もあるかもしれないけど、
常に娘の幸せを願っている存在が居ることは、キャロルにとって救いでもあったかなあ、と思う。


アンサンブルさんは、はじめましての方も他の舞台で観たことのある方もいらっしゃいましたが、
とにかくどなたもほんとに素敵でした!
それぞれがその役をやられているか、全部把握するのはさすがに難しかったですが・・・(^^;)
女性陣は、ステージ衣装がどれも可愛くってちょっとテンション上がりました(笑)。
シュレルズの歌声とビジュアルのゴージャスさにはちょっと目を見張ってしまったり。
MARIA-Eさんのリトル・エヴァが歌う♪The Locomotion もほんとに楽しくて可愛くてv
というか、この曲もキャロルとジェリーの曲だったんですね!(ほんとすみません・・・)
でも、いろんな歌声を聴く中で、やっぱり引っかかる歌声があって、自分の好みを再確認した感じです。
神田くん、ソロの歌声を聴くのは結構久しぶりな気がするのですが、
♪On Broadway の歌声がほんとに素晴らしくて、聞き惚れてしまいました。
東山くんは、ダンスでも歌声でもいろんな表情を見せてくれて、凄い楽しかった!
長谷川さんと伊藤さんはたぶん初見なのだけど、この4人の歌声の重なり、気持ちよかったなあ。
でもって、実は一番よろめいたのが、ライチャス・ブラザーズの1曲だったりします(笑)。
いやもうあのお二人の低音の響きはちょっと圧倒的!
山田さんは初めて拝見する方ですが、
キャロルを表舞台に弾き出すきっかけとなる役(ニック?)もされてましたよね。
穏やかで優しい微笑みにこっそり癒されてました。
山野さんはJBにも出演されていた方ですよね。
劇中でいろんな楽器を演奏されていた気がするのですが、歌声とともにびっくりしたのは、
あの細さと背の高さだったり(笑)。
ルー・アドラーの時のキャロルを諭す声の静かな強さが印象的でした。
JBにはまた出演されるのかなあ。出演して欲しいなあ、と思います。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック