真夏のクリスマス

気づいたら7月。
今年の半分が終わってしまいました・・・
という事実よりも、ここ数日の暑さの方が目下の一大事な感じです(^^;)
こんな暑さの中、あの凄まじいお芝居を連日2公演とか、役者さんってほんとに凄いなあ。
本当に、お体に気をつけて楽しんで演じてほしいです(多方面へ向けて)。

そんな暑さの中、ちょっとブラックな真夏のクリスマスを経験してまいりました(笑)。


「フリー・コミティッド」

2018.6.30 ソワレ DDD青山クロスシアター D列10番台

作:ベッキー・モード
翻訳:宮田景子
演出:千葉哲也
出演:成河


成河さんが38役を演じるという一人芝居を見てきました。
実は当直明けで、しかも劇場に辿り着くまでの電車と外の温度差にへろへろになっていたので、
ストプレだと寝ちゃうかもしれないなあ、とちょっと心配だったのですが、とんでもない!
始まったらもう成河さんの演技から目は離せないし、
内容はめちゃくちゃシビアでいろいろ考えさせられるしで、
眠る間もないあっという間の2時間でした。


物語の舞台はニューヨーク。クリスマスを控えたとある一日。
俳優志望の青年サムが、アルバイト先(?)のレストランの地下に出勤するところから始まります。
予約係が待機するその部屋には電話が2台。
既に鳴り響く電話と、誰もいない部屋に一瞬呆然として時計を確認した後、
混乱しながらもサムは仕事を開始します。
一緒に予約対応をするはずの同僚が、車のトラブルで出勤できない中、
なぜか集中的にかかってくる客からの電話。
動力のウェイターやウェイトレスからの無茶ぶり。
傍若無人なシェフからの恫喝。
本業であるはずの舞台のオーディションの結果に絡むあれこれ。
田舎の父と、母を亡くしたばかりの父を心配する兄からの電話。
陽の射さない小さな部屋の中で孤軍奮闘するサムは、そんな状況の中、
どんどん追い詰められていき―――

という感じの物語でした。
基本、サムとその電話(外線・内線・インターフォン)の相手との会話で成立しているお芝居なのですが、
小さな、でも一人には広い舞台の上を右に左に走り周りながら、
(外線は中央のデスク、内線とインターフォンが下手の机、シェフからの内線が下手壁という・・・)
年齢も性別も地位も人種も全然違う(であろう)客や同僚たちとサムを一瞬で演じ分け、
そして、その混乱した状況の中から、
しっかりと“サム”という人物の輪郭を明確にしていく成河さん、ほんとに凄まじかった!
チェックのシャツが、どんどん汗で色合いを変えていくのも納得の台詞量・運動量でございました。

最初はね、それぞれにアクの強い電話の相手のインパクトの強さとに驚き、
少しの台詞から彼らの背景に想像を駆り立てられ、
そして、ちょっと綱渡り的ながらも、いくつもの電話を見事にさばいていくサムに、
内心で拍手喝采したり、一緒になって達成感を覚えたりしていたのです。
でも、物語が進んでいくうちに、笑っていられる状況ではなくなっていきました。

無理難題をまくしたてる客。
面倒ごとを全て押し付けて、こっちのことは何も配慮してくれない同僚。
職権を乱用して命令しながら、本当にやったのかと嘲笑う上司。
自分の電話に出てくれない、エージェントのボス。
忙しい最中に、クリスマス休暇についての電話をかけてくる家族。
その家族を、面倒だと思ってしまう、自分―――

サムの表情からどんどん余裕がなくなっていって、
でも、立ち止まって考えることも、一度リセットして仕切りなおすことすらも許さないように、
鳴り続ける電話のベル。
ひたすらに、ただ目の前のことに対処することを求められ、
でも、そうしていくうちにどんどんのっぴきならない状況になっていく恐ろしさ・・・
途中何度か照明がふっと暗くなって、上手に設置されたクリスマスツリーの光と、
サンタのおもちゃの歌声がクローズアップされる瞬間がありました。
それらに目をやるサムの表情が、ぞっとするほど強張っていて、
まるでその瞬間が、サムの限界を表しているようにも見えました。

というか、このレストラン、めちゃくちゃブラック企業ですか?!
いや、単純にサムがお人好しで、
みんながサムに物理的にも心理的にも頼っている結果なのかもしれないし、
サムの視点で見ているだけだから、実際は他のフロアも同じようなとんでもない状況なのかもだけど、
(内線の様子からはそうは思えなかったけど・・・(^^;))
でも、友人からも親からも、「まだやめてなかったのか」と言われるような職場から、
逃げ出すという思考すら奪われていくようなサムの様子には、ほんとに笑っていられなかった。

そして―――サムが爆発する瞬間が来ます。
管轄外の汚れ仕事を無理やりさせられて、瞳孔がひらいたみたいになって戻ってきたサム。
その直後、予約の電話に対応しながら、サムは大泣きしてしまいます。
その気持ちがね、なんだか凄い良くわかって、私まで泣けてしまった。
キャパを越える、というのかな。
もう、自分ではどうしようもなくて、理性を通り越して溢れてくる涙って、あるんだよ。
自分がそういう状況になったときの苦しさが蘇って、本当にもういたたまれない気持ちになりました。
その時の客が、凄くいい人っぽかったのにちょっと救われた。
慌てたようにサムを気遣って、♪諸人こぞりて を大きな声で歌うようにサムに話しかけて、
一緒に歌っているうちにサムが落ち着いていったのに、心底ほっとしました。
電話に出た瞬間、いきなり歌いだしたときにはイラッとしたのに(笑)。
落ち着いて、あれ?という表情をしたサムに、ほんとに良かった・・・と思いましたよ。
まあ、その後勢いで無理やり予約をねじ込んだその相手が、
シェフから絶対に予約を取るな!と厳命されてた相手だった時には、
サムと一緒に気持ちが右往左往しちゃったけど(^^;)

その後、状況がちょっと変わっていきます。
予約をねじ込むために、大金を事務所に放り込んでいった客への対応。
遅刻してきた同僚(実は別の仕事の面接に行っていた)の配慮の代わりに、
クリスマス休暇をもぎ取れたこと。
(そのことを伝えたお父さんへの電話が留守電だったのが凄い不穏な感じだったけど(^^;))
ダメだと思っていた最終オーディションへの参加の連絡。
何度も電話をかけてきた迷惑な客の同伴者が、そのオーディションのお偉いさんで、
予約をねじ込むことで、暗黙の契約がなされたこと。
江―じぇんごのボスの援護射撃。
俺様なシェフに、強気の対応をしたらいきなり下手に出られたこと。
事態が好転するような気配の中、でも、サムの表情はどんどん冷たくなっていったような出来事が続く。

でも、全て遅すぎた。

電話を幾つも保留にして。
同僚からのお願い―――客の誕生日祝いにねだられた歌を誰も知らないので歌ってほしい、
というお願いを引き受けて。
鳴り響く(というか信号機に繋がってて光っている)シェフからの内線に視線だけ送って。
放り込まれた札束から、一枚だけ紙幣を抜いて。
鼻歌を歌いながら帰り支度をして、片方だけ履いたままだった長靴をスニーカーに履き替えて。
全てを置いて、サムは、その部屋を出ていった。

その選択が、前向きなものなのか、自暴自棄なのか、悟りの結果なのかはわからない。
でも、この不運な一日で、彼の中の何かが壊れたのだと、
楽しそうに歌う、けれど冷ややかな彼の笑顔を見ながら、そう思いました。
彼は、このあとどうするつもりなのかな?
明日のオーディションに、彼は行くのかな?
全てを捨て去って、別の人生を選ぶのかな?
シェフや同僚に頭を下げて、またあの地下の部屋で電話に対応し続けるのかな?
そんな疑問が、帰り道もずっと頭の中にありました。
あの後ろ姿からは、不穏な未来も、明るい未来も、どちらもあり得るように思った。
明るい未来を選んでも、きっと彼はいろんな困難にぶち当たるのだと思うけど、
でも、あの2時間を懸命に生き抜いた“サム”という青年の未来に幸あれと、祈るように思いました。

そんなこんなで、非常に刺激的なお芝居でした。
まだ始まったばかりなので、このあとちょっと変わってくるかな?
アメリカの著名人の名前がそのまま出てくるのだけど、ほとんどわからなかったので(^^;)、
そういう予備知識を入れたり、あの曲についても調べた上で、機会があればもう1回くらい見てみたいかな。
クロスシアターは久々でしたが、あの階段や客席の椅子の雰囲気、好きだったのを思い出したしv
とりあえず、もの凄く消耗するお芝居だと思うので、成河さんもスタッフさんも、
お体に気をつけて頑張ってほしいなあ、と思います。
あ、あとグッズのTシャツめっちゃ可愛かったのでお勧めです!
明日仕事に着ていこうかな。

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