はじまりのさよなら

春ごろに、今年の花は咲くのが早い、というようなことを書きましたが、
それはこの季節になっても変わらず。
大好きな彼岸花も金木犀も、咲き始めたな、と思ったらあっという間に満開になりました。
特に彼岸花は、例年よりも沢山咲いている印象・・・田んぼの畦道が真っ赤に染まるのを、
通勤途中に見るのがとても楽しみだったりします。
それもあと数日なのでしょうけど。
そんな日々を惜しむ間もなく今週後半から怒涛の日々に突入しますので、
(何が、とは尋ねないでください・・・(^^;))
その前に観劇記録を一つ。


「マイ・フェア・レディ」

2018.9.23 ソワレ シアターオーブ 1階22列10番台

翻訳・訳詞・演出:G2
出演:神田沙也加、別所哲也、相島一之、今井清隆、平方元基、春風ひとみ、伊東弘美、前田美波里、
    石井雅登、内田このみ、大月さゆ、上垣内平、川島大典、木村晶子、木村桃子、後藤祐香、
    小南竜平、佐々木重直、白山博基、菅谷孝介、鈴木結加里、辰巳智秋、華花、般若愛実、
    松村曜生、横岡沙季、吉田玲菜、若泉亮


とんでもなく有名なこの作品・・・なのですが、実は私、舞台を観るのは初めてでして。
映画も大学生の頃に1回だけ見たきり。
しかも、一緒に見にいった同級生(男)と、感想が全く違っていた印象が強くて(^^;)
21歳の私は、イライザがどうして教授の下に戻ったのかがわからない!と言い、
3つ年上の彼は(彼氏に非ず)、イライザがどうして教授の下を出ていったのかがわからない!と言い・・・
いやー、お互い若かったよね(笑)。
そんな思い出深い(?)ミュージカルですが、舞台版だとどんなふうになるのか、
はたまたあれからずいぶん時間が経って、ちょっとは成長したはずの私はどう感じるのか、と、
いろんな意味で興味津々だったわけですが・・・

今回も、イライザどうして戻ってきちゃったかな?!と思ってしまいました(^^;)

舞台版の、且つ初見ということもあってか、どうしてもイライザの成長に目が行ってしまったのと、
二人が互いに心惹かれていく過程が、兆し程度で結構端折られてた気がするので、
そのせいかなー、と自己分析しつつ、同時に私の恋愛偏差値の低さのせいかも、と思ったり(笑)。

でもね。
幕が降りる間際のイライザの表情に、頭で考えるような理屈は全部取っ払って、
ただただ「イライザ、良かったねー!!!」という気持ちで涙腺が決壊いたしました。

沙也加ちゃんのイライザは、ある意味もの凄く不安定な存在だったように思います。
子どもと大人。
愚かさと賢さ。
未熟さと経験。
そういう正反対の要素が複雑に混じり合っている、あるいは発展途上にある、という感じ?
正直なことを言ってしまえば、沙也加ちゃんって個人的に凄く綺麗な言葉を話す印象があるので、
下町のなまりや粗野な言動は、ちょっと浮いているなー、という気もしました。
でも、そういう言動の中にある、きらっと光るような聡明さとか、向上心とか、頑固さとかが見えた。
それはきっと沙也加ちゃん個人が本来持っているものでもあるし、
彼女が創り上げたイライザのものでもあるんだろうな、と思った。
でもって、そういう部分に、ヒギンズ教授は最初から無意識に惹かれてたんじゃないかな。
だって、そうでなければあれだけたくさんの人がいる中で、彼女の言葉だけを耳に止めることはないと思うの。
不安定で発展途上で、なにどこかキラキラしていて、知らず目が離せなくなる。
そんな魅力が、沙也加ちゃんのイライザにはあったように思います。
下町で、新しい世界を夢見て歌う彼女は、見ていて本当に微笑ましかったし、
「日は東・・・」と上手に言えた時の、一瞬呆然とした後、ぱーっと花開くような笑顔には、
私も内心で「やったー!!」と叫んでしまうくらい喜びに溢れてた。
競馬場での、ハラハラするような言動とは裏腹の得意そうな顔はとてもキュートだったし、
大使館の舞踏会での、張りつめるような緊張感と強い自信とが混じり合った様子はとても美しかった。
でも。
舞踏会の後、盛り上がる男性陣二人を見つめ、そして背を向ける彼女の表情―――
誇らしさから期待に、期待から不信に、不信から絶望に、絶望から悲しみに、悲しみから怒りに、
台詞でも歌でもなく、その表情と在り方だけで、彼女の心が鮮やかに伝わって来て、
イライザから一瞬も目を離すことができませんでした。

イライザは、自分で望んでヒギンズ教授を訪ねた。
自分で望んで、ヒギンズ教授に教えを請うた。
彼が教えるままに、彼が理想とする美しい言葉を話し、美しい振る舞いをする女になった。
ちゃんとした花屋の店員になる。
その最初の目的は、きっと途中からどこかに行ってしまった。
彼が創り出そうとする“理想の女”になることが、いつの間にか彼女の目的になった。
そうすれば、彼は自分を認めてくれる、見つめてくれる、そう、信じて。

でも、彼女が思っているほどには、ヒギンズ教授は大人の男ではなかった・・・んだよね?
傲慢で鈍感で頑なで皮肉屋でこれ以上ないほど面倒くさい男。
けれど同時に、不器用なまっすぐさと子どものような素直さと自覚のない臆病さを持つ男。
彼が、自分自身を見てくれないことに絶望していたイライザは、
自分も本当のヒギンズ教授を見ていないことに気づいて、
だからこそ、不器用ながらも自分に思いを伝えてくれた彼に「さよなら」を言ったのかなあ。
「さよなら」を言って、でも、初めて目の前に現れた“本当の彼”と向き合うために、
彼女はヒギンズ教授のもとに戻ったのかな?
一度は「さよなら」を言った相手のところに戻るのって、多分とても勇気がいる。
それでも、彼女は確かめたかったんだと思う。
この、臆病で扱いにくい面倒な男を、自分はどう思うのか―――

夕暮れの忍び寄る部屋で、昔の、何も飾らない頃の自分の声を一人聴く男の背中。
それを見つめるイライザの表情は、凪いでいたように思う。
でも、静かなその表情とは裏腹に、きっと彼女の中には嵐のような感情が渦巻いていた。
愛しさと。
恐れと。
衝動と。
覚悟と。
幕が降りる直前、ヒギンズ教授と並んで座ったイライザ。
その表情が崩れたのは、彼が彼女の手に手を重ねた後だったか前だったか。
子どものようなその泣き顔は、渦巻く感情の発露のようにも、
選んでしまった未来への不安のようにも、
やっと居場所を見つけた安堵のようにも見えて―――
どうして彼女が教授の下に戻ったのかちゃんとはわかっていないのに、
ただ引きずられるように私も涙してしまったのでした。

うーん、思い返しながら書いていたら、久々に妄想大暴走になった気がする(^^;)
まあとりあえず、私はこういう風に鮮やかな表情でいろんな感情を伝えて来てくれる沙也加ちゃんが、
役者さんとしてとても好きだ、ということなのだと思います!
そういえば、イライザが歌う♪あなたなしで は、「RENT」の同タイトル曲と逆のロジックで、
同じ思いを歌ってるなあ、と思いました。
私が知らないだけで、「RENT」はそういう意図で作られてるのかな、と思うくらい。
実際はどうなのかしら・・・?
どちらも本当に大好きな曲ですv


ヒギンズ教授役は別所さん。
舞台で拝見するのは久々かなー。
別所さんのバルジャンにめちゃくちゃ嵌って(博多まで行った・・・)いた身としては、
どんなヒギンズ教授なのかとても楽しみにしていたのですが、
面倒くさい男を、コミカルに且つ魅力的に見せてくださったように思います。
映画で記憶にあった以上のマザコンぶりにもちょっとびっくりした。
無意識に母親は他の女とは別格!って思ってるよね、この人(笑)。
でもって、無意識に俺のイライザ凄いだろう!っていう感情が駄々漏れだったよね?
皮肉屋なくせに結構感情があけっぴろげなところが可愛らしく思えてしまいました。
イライザもそういうところに惹かれたのかなー。
面倒くさい男を可愛いと思っちゃったら、それはもう抜け出せないってことだよ、イライザ!(笑)
別所さんの台詞のような歌声は健在。
歌になるとマイクの音量を上げるのが、最初ちょっと違和感ありましたが、
途中からは気にならなくなったかも。
研究対象としてしか見ていなかったイライザに、ふっと目を奪われるというか心惹かれる瞬間が、
凄くクリアに見えるシーンがあって、うわあ・・・!!となりました。
その後、二人の感情がそれぞれに相手に向かって寄り添っていくシーンがほぼなかったのは残念だけど、
その分ラストシーンがとても美しくて切ないシーンになっていたように思います。


イライザ変身計画の元凶のビッカリング大佐は相島さん。
いやー、これぞ大人の男!でも少年っぽさも忘れてないぞ!という感じでめっちゃ素敵でした!
なんというか、言動に凄く余裕があるの。
どんな状況でも楽しむ余裕、というのかな。
イライザの競馬場デビューや舞踏会デビューに緊張しながらも、その緊張も楽しんでいる。
というか、イライザとヒギンズ教授の関係を一番楽しんでいたのはこの人なのでは(^^;)
そういう風に、ある意味客観的で距離のある立場だったからこそ、
イライザを貴婦人として扱うことができたのかなあ、と思う。
町娘を貴婦人として扱うことすら、彼は楽しむ余裕があったのかなって。
それはそれで、結構怖いことかもしれないな、と今書いててちょっと思いました。
無意識に全力疾走な感じのヒギンズ教授との対比が面白かったです。
冷静にいろいろ突っ込んでたよね?(笑)

ヒギンズ教授との対比と言えば、平方くんのフレディ!
笑い上戸でめっちゃプラス思考なフレディと、何気にマイナス思考なヒギンズ教授の対比が楽しくv
若くてかっこよくて身分が高くてお金持ちで感情と行動がまっすぐに繋がっているようなフレディ。
イライザへの感情も、彼女がどんな存在なのか、という深いところではなく、
ただ素直に目の前にいる彼女に興味を持って、心惹かれたから突撃する、という感じに見えました。
それを、まったく嫌味なく表現できる平方くん、すごいな・・・!
イライザがフレディとどう決着をつけたのかは描かれていませんが、
多分彼は去る者は追わず、彼女の幸せを祝福したんじゃないかなあ、なんて思う。
そういえば、♪君の住む街 、個人的にCDで聴いた吉野さんのイメージが強かったのですが、
今回歌詞が違っていたので、まったく別物に聞こえました。
何というか、CDのフレディの恋心はイライザに向いているけど、
今回のフレディの恋心は彼の回りにふわふわ浮かんでいる感じ?
見事な夢見っぷりで、それもま深刻にならない感じでいいかも、と思いました。

ヒギンズ教授のお母様役は前田美波里さん。
素晴らしくかっこいいお母様でした!
ヒギンズ教授がお母様は別格!と思うのも納得な感じ。
気風が良くて、相手に依存はしないけれど愛情は深い感じはイライザと通じるのかなー。
二人が話しているシーンは、深刻な話のはずなのに、どこかあっけらかんとした明るさがあって、
なんというか安心感があったように思います。
とりあえず、ヒギンズ教授はこれからもお母様とイライザに、苦笑しながら振り回されるといいよ!

イライザのお父さん役は今井さん。
めっちゃ踊ってた・・・!!
現実だったら犯罪レベルにダメダメなお父さんなんだけど、なぜか憎めないのは、
物語の時代背景によるのか、今井さんのお人柄や役作りによるのか・・・?
あの時代のロンドンの下町で生きる人たちは、こんな風に刹那的で楽観的だったのかなあ。

そういえばこの舞台の女性陣の衣裳、どれもとても素敵でした。
時代背景的には20世紀初頭だと思うのですが、その頃の衣裳のトレンドを踏まえているのかな。
上流階級のドレスも綺麗でしたが(ビジュアルのイライザの白と黒のドレス、大好き!)、
個人的に下町のお嬢さん方の衣裳がとっても可愛くてお気に入りでした。
ダンスの時のスカートの翻り方とか、形とかがとっても好みでv
アンサンブルさんはみなさん歌もダンスも素晴らしくて、見応えありました。
冒頭でイライザに言い寄る4人組のハーモニーにはちょっと聞き惚れたよね。
ひとりめっちゃ好みの歌声の方がいたのですが、遠目だと誰だが見分けがつかなくて(^^;)
次の時にはチェックできたらいいなあ。
下町のシーンは、凄く活気に溢れていて楽しかったので、
2幕で家出したイライザが訪れた時、イライザとわかってもらえずに拒まれるシーンは、
あそこで彼女が名乗らなかったことも含め、なんだかとても切なかったです。
言葉や服装、立ち居振る舞い。
あの瞬間、彼女が見につけたそれらのものが、彼女を下町から隔て、ヒギンズ教授からも遠ざけた。
その静かな孤独の深さ―――
まあ、次の瞬間にはお父さんの勢いに全て吹き飛ばされましたが(^^;)
今回はイライザとヒギンズ教授の関係性に注目しちゃったけど、
今度は“言葉”というものにもっと注目して観てみたいかな。
言葉が彼女にもたらしたもの。
言葉が彼女から奪ったもの。
そういうのをつっこんで考えるのも面白いかなあ、と思いました。
プログラムによると、演出家によってラストシーンのニュアンスが異なるようですね。
今回のG2さんの演出でも、チームによって異なるとか?
朝夏・寺脇ペアは観劇の予定がないので、ちょっと残念かも・・・
この二人だと、どんなラストになるのかしら?
とりあえず、機会があったら映画も見直してみようと思います。

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