残骸

11月最後の日曜日です。
すっかりおうち時間を過ごすのに慣れてしまった自分がいて、
月に何回も東京に行っていたのがなんだか嘘みたいです。
状況が落ち着いても、東京に行くのが面倒になっちゃいそうでちょっと怖い(^^;)
でも、来年は応援している役者さん勢ぞろいな舞台もあるので、
そんなことも言ってられない!ってなるといいな。
それまでは、配信で舞台を楽しませていただきますv


5 Guys Shakespeare Act1:[HAMLET]

2020.11.23 品川プリンスホテル ステラボール  配信

原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本・演出:松崎史也
出演:岡宮来夢、立花裕大、橋本真一、法月康平、中村誠治郎


5人の役者で創り上げるシェイクスピア、というコンセプト・・・な舞台なのかな。
岡宮くんがハムレット、ということもあって、配信を買ってみました。

うん、面白かった!

岡宮くんがハムレットに固定で、
そのほかの役をほかの4人が演じるのですが、それも役固定ではなくて。
黒い上下でそろえた役者さんたちが、
役に固定の衣裳を羽織る形で1つの役を複数人で演じ繋いでいく、という形でした。
四角い舞台の上手と下手に二つずつ衣裳かけと椅子があって、
役者さんごとのドレッシングスペースになっているのですが、
JBよりもよく見えるというか、そうやって着替えることすらも物語の一部のようでした。
最初はちょっと混乱したのだけど、
役固定の衣裳が、それぞれわかりやすい色使いで、
よく見るとその名前がその色で刺繍(?)してあったりして、
だんだん役者さんではなく、衣裳で判断していくようになりました。
もちろん、役者さんごとに姿かたちも声も雰囲気も違うのだけれど、
役としての核の部分がきちんとしていたのか、どの違和感も徐々に薄れて、
むしろ、生身の役者ではなく衣裳という物質で物語が紡がれていく感じを面白く感じるようになりました。
物語の中でその人物の命が終わる瞬間を、その衣装を脱ぎ落すことで表現するのですが、
最後、ホレイシオ以外の衣裳がすべて地に投げ出され、
その最後の衣裳も舞台奥に並べられた4体のトルソーの一つに着せられて終わります。
そしてすべてを脱ぎ捨てた5人の声が重なります。

物語とはすなわち、物、語る。
何もなくなり、すべてが残る。

最初の歌でそのことは歌われていて。
演じること、生きること、選ぶこと、つながること、終わること。
二律背反。
表裏一体
そういう答えのないという答えに、すべてが消えた後に残るものに向かい合う。
そんなコンセプトの舞台なのかな。
蜷川シェイクスピアのように、人間の命―――綺麗なものも汚いものも分かちがたい生を描くのではなく。
鵜山シェイクスピアのように、人の生き様が織りなす複雑な文様を描くのではなく。
まるで人形劇のような、命の気配の希薄な舞台の上、
その瞬間描かれた激情も、情熱も、愛憎も、狂気も、
全て終わった後に残るのは、命のない残骸で。
でも、その残骸には、確かにそれが彩った命の気配があって。
役者という存在の根本をある意味否定しながら、
その否定の果てに役者という存在の大きさを実感する。

物言わぬ衣裳が語る、その物語―――命。

うん、面白い舞台でした。


そういう、どこか無機質な印象のある舞台の中で、唯一生身の人間の熱を放っていたのが、
ハムレット役の岡宮くんでした。
去年の舞台で初めて彼を見た時から、すごい子が出てきた!とこっそり応援していた役者さんです。
これまで観たのは、最初の舞台での飄々としたどこか超越したような鶴丸さんで、
その次に観たのは、朗読劇でのやはり人外な役柄だったので
人間の業を凝縮したようなハムレットをどう演じるのかな、と楽しみにしていたのですが、
ハムレットと岡宮くんの親和性、高いなあ、と。めっちゃ似合ってました。
彼は本当に声がよくて、冒頭の歌から、この歌声が聞きたかった!と大満足だったのですが、
芝居の上でも、すごい頑張っているなあ、と思いました。
メイクの影響もあるのかもしれませんが、苦悩する繊細な少年だったハムレットが、
父の亡霊と会い、復讐を誓い、復讐に囚われて―――まわりだけでなく自分をも破滅に導いていく過程で、
その表情がどんどん変わっていくその凄まじさに、目を奪われる瞬間もありました。
物語が進むにつれてどんどん激しく追いつめられるようにほとばしっていく感情が、
最後すっと本来の賢明さに戻るのが、とても哀しかった。
歌も多かったのですが、その歌声も、どんどん変わっていって。
本当にミュージカル向きの役者さんだなあ、と改めて思ったり
ただ、なんというか、最初から最後まで全力疾走という感じもありました。
カーテンコールでも言っていたけれど、多分ほかの4人が彼をハムレットたらしめた部分も大きいと思う。
彼の勢いを真正面から受け止めて、ちゃんと打ち返すまわりがいたからこそ、
彼のハムレットが形作られたようにも思います。
でもそうであったとしても、彼の魅力というか、ポテンシャルは確かにあると思うのは、
ファンのひいき目ではない・・・と思うんですよね。
来年は「王家の紋章」のルカで帝劇デビューですね。
これが速いのかどうかはわからないけれど、
多分彼の実力、そして覚悟を試される舞台になるのではないかな、と思う。
才能と魅力だけではない、役者としての強さを、彼が手にできるといいなあ、と思います。


立花裕大くんは初見の役者さん。
すらっとした長身と、柔らかい声が印象的でした。
クローディアスはかっこよかったし、
ガートルードはとても色っぽくて美しかったし、
どの役もさらっとその色をまとっている感じでした。
一番印象的だったのは、やっぱり最後のホレイシオかな。
もともとホレイシオという役がとても好きなのもあるのですが、
最後にハムレットから全てを託された時の絶望と悲しみ、
そして、ハムレットへのゆるぎない友情と忠誠。
ほかの舞台でも拝見してみたいなあ、と思いました。


橋本真一くんも初見かな。
尼寺へ行け!なシーンのオフィーリアと、
終盤のレアーティーズの兄妹を、とても魅力的に演じてらっしゃいました。
オフィーリアの真摯さや母性ともいえるような優しさも素敵だったし、
それは、家族を思うレアーティーズの愛情ゆえの怒りと表裏一体のようにも見えました。
決闘シーンが、多分唯一のガチの殺陣だったと思うのですが、
劇場で観たらすごい迫力だったろうな、と思います。
剣での殺陣、新鮮でした。
ラストシーン、彼とハムレットの手がつながるシー、よかったなあ。
個人的には、彼のクローディアスが好きでした。
悪に振り切ったシーンを演じていたと思うのですが、
悪と言い切れない何かを感じました。


法月康平くんは、なんというかもうさすが!の一言でした
岡宮くんの次に歌が多かったんじゃないかなー。
ハムレットと話をするシーンのガートルードは、母でありると同時に女である存在として、
ハムレットの激情をそのままに受け止めていて、その凄まじさに目を奪われました。
その直後、立花くんのクローディアスとのシーンで、
クローディアスの不信を自覚しながらも、彼に縋らずには生きられない彼女の業も見せてくれました。
というか、赤いドレスがめっちゃ似合ってた!(笑)
最後にハムレットの代わりに毒をあおって命を落とすシーンの、
衣裳の脱ぎ方がなんというか、とても優雅で物語性を感じました。
幸せを信じている時期のオフィーリアと、狂気に落ちた後のオフィーリアも演じていましたが、
後者は、完全にあの場を支配していたなあ、と思います。
あ、もちろん男役もかっこよかったですv


中村誠治郎さんは、めっちゃかっこいいクローディアスでした!
あの紫紺のマントを翻して羽織るの、もっとがっつり見たかったな(笑)。
罪の意識に揺れるシーンの歌は聞きごたえがありました。
体格のいい方なので、女役はないだろうなあ、と思っていたら、
ありましたガートルードのシーン!
最初ちょっとびっくりしたのだけど、全然違和感なかった・・・
オフィーリアの死を見届けて、彼女の中で何かが変わった瞬間を見せてくれたように思います。


そんなこんなで、楽しませていただきました。
これまでオールメールのシェイクスピアを観ていたから、受け入れやすかったし。
Act.1ということは、このあとほかの演目も同じ形でやるのかな?
違う演出になるのかもしれないけれど、次があるならまた観てみようと思います。

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