想いの励起

付喪神、という概念を知ったのはいつのことだったかな・・・
ぶんぶく茶釜?
・・・めっちゃ子どものころですね(^^;)
その後、雨柳堂を読んだり(大好きです!)、某ゲーム(笑)にはまったりしているのですが、
付喪神というのは、日本人にとっては凄くなじみのある概念なのかもしれません。
欧米にも、こういう概念はあるのかなー、と、このミュージカルを見てちょっと思いました。
今度調べてみようかな。



井上芳雄 by MYSELF Presentsオリジナル配信ミュージカル
「箱の中のオルゲル」

2021.1.17 配信

作・演出・作詞:安部康律
作曲・ピアノ:大貫祐一郎
出演:井上芳雄、咲妃みゆ


物語の舞台は、多分とても小さな箱の中。
円筒形と思われる空間の中、円が二つ連なった台の上。
音符柄の白ベースの衣裳を着た井上くんがポーズをとっているシーンから始まります。
彼は、オルゴールの中で歌う人形、らしいです。
小さなオルゴールの中、歌う彼の声は、たくさんの人たちに寄り添い、
その心に光を与えてきました。
でも、今は開かれない箱の中。
どういう状況なのか全然わからなくて、
サビついていく自分の体に不安を感じる日々。
自分の歌は―――音楽は、誰かのためにあるのに。
その状況に文句を言いながら、いつしか彼は自分を手にした人たちの記憶たどりだします。
そして、自分を作った男・ファーベルと、自分を最初に手にした彼の妻・アリーセ(咲妃みゆ)の記憶へと―――

という感じの物語。
いやー、素敵なミュージカルでした!
上質な小品を観た、という満足感が凄かった。
スタジオ(多分)という閉鎖空間、そして、映像だからこその演出を存分に使っていました。
カメラワークも楽しかった!
細かな表情を最前列以上の近さで観られることに加え、
オルゲルが多重人格的に自分と話をするシーンでの切り替わりとか、
カメラを壁に見立ててオルゲルが絡むところとか、
上方のカメラからの映像が、箱の中という閉塞感を感じさせることとか。
・・・壁に絡むのはちょっとウザかったですけどね(^^;)
でも、あのちょっと空回りっぽい感じは演出だったのか、アドリブだったのか・・・?(笑)

いやでも、井上くん、すごい頑張ってたなー、と思いました。
目の前に観客がいない状況って、戸惑うこともあったろうし、
テンションとか力の向け方とか、舞台とは全然違うんだろうな、と思います。
でも、当然のこと、歌声は全然力を抜いていなくて、
普段の綺麗な歌声も、地声を強く感じさせる歌声も、堪能させていただきましたv
そして、咲妃みゆさんのアリーセが出てきてからは、
なんというかミュージカルの魅力全開!!という感じでした。
閉鎖された空間の横に、窓と机だけで記憶の中の空間が広がり、
その空間を行き来することで、オルゲルがファーベルと重なり、
二人が育む愛情を丁寧に見せ、
そして、一人になったアリーセの時間を見守るオルゲルの想いを切なく紡いでいました。

ファーベルとアリーセの時間を描いた♪あなたとなら 、
そして、ファーベルを失ったアリーセを見まもるオルゲルを描いた♪いつまでも は、
目に見えるものを越えて、幾重にも重なった時間を、感情を感じさせてくれました。
井上くんと咲妃さんの歌声の重なりがまた、本当に繊細にその心情を伝えてくれて、
ちょっと目を閉じて聞き惚れてしまいました。
多分このミュージカルのテーマである♪あなたを照らす音楽 をアリーセが歌う時、
彼女を見つめるオルゲルの表情は本当に切なくてね・・・
最初にオルゲルが歌ったときとは全然違う。
音楽を届ける側ではなく、音楽を受け取る側、
光を与える側ではなく、光を受け取る―――求める側。
同じ曲でも、歌われる場所で、歌う人で、歌われる状況で、
こんなにも見えてくるものが違う・・・これこそミュージカル音楽の醍醐味の一つかな、と。

その後、アリーセがたどる時間が語られるのですが、
声と表情だけで、その時間の経過を、重ねてきた年を感じさせる咲妃さん、素晴らしい!
年老いたアリーセが、オルゴールを開いて、オルゲルの歌を聴くシーン。
オルゲルが歌った♪とおくから は、
ずーっとずーっと彼女を見守ってきたオルゲルの想いでもあり、
彼女を迎えに来たファーベルの曲でもあるように感じました。
閉じられた空間のはずなのに、なぜかとても遥かな広がりの中にいるような気がしました。

オルゲルという存在は、どういう存在なんだろう?
ファーベルの魂が宿ったものなのか、
ファーベルやアリーセの想いが励起したオルゲルという魂なのか。
後者だとすると、オルゲルは付喪神化してるのかなあ、なんてちょっと思ってしまいました。

♪沢山の出会い という曲が、冒頭と終盤で歌われます。
アリーセのあと、オルゲルを手にした人たちの記憶を軽やかに、楽しく歌う曲。
でも、1回目と2回目では、受ける印象が全然違った。
1回目では、オルゲルの矜持のようなものを強く感じたけれど、
2回目では、オルゲルの歴代の持ち主たちに向ける愛情が、
彼が触れた想いが、彼が受け取った愛情が、暖かな光となって迸るようでした。
・・・まあ、そんな感動的なところに耳毛エピソードを突っ込んでくるところはさすが(笑)。
そして、それを見事にぶった切る大貫さんのピアノも最高!(え)

物語は、オルゲルが次の持ち主(咲妃さん二役)の手に取られるところで終わるのですが、
(この時、大貫さんが店主役でした(笑))
そこに至る前に、オルゲルが辿り着く答え―――

今は誰かのために歌えなくても、自分のために歌う。
そして、いつか誰かの手に開かれたら、この歌を―――たくさんの人の心に寄り添った歌を届ける。

それは、とても強い未来への希望を感じさせる言葉で。
それは、届ける側の言葉だけではなく、受け取る側の言葉でもあって。
オルゲルが、新しい持ち主に向けて歌うことができたように、
劇場に行くことすらできない私も、いつかきっとまたあの歌声に寄り添うことができる。
そんな光を感じさせてもらいました。

うん。
いつか、このミュージカルを劇場で観ることができるといいな。
できれば、200人くらいの小さな劇場やライブハウスで、
オルゲルと一緒に箱の中にいるような、というか壁になったような気持ちで(笑)。
その時が来るのを楽しみにしていようと思います。

配信では、開演前に収録の前振り(井上くんと大貫さん)、
終わってからアフタートーク(井上くん、大貫さん、咲妃さん、安部さん)がありました。
裏話的なことから、この上演にかけた想い、
上演中のトラブル(ごめん、終盤のあれは井上くんが間違えたと私も思いました(^^;))など、
聴きごたえたっぷりでした!
あと、脚本演出の安部さんがツイッターでいろいろ裏話をしてくれるのも嬉しいv
あのオルゴール、中にちゃんとオルゲルがいるのだとか。
小道具さん、グッジョブ!というか、そのオルゲル見たいです!
アーカイブ配信は月末まで見られるようですので、
もしこの辺境ブログに迷い込まれて、ちょっと気になった方がいらっしゃったら、
ぜひぜひご覧になってみてください!
とてお暖かい気持ちになる、素敵な素敵なミュージカルですv

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